富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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クリスマス・パーティ Ⅱ

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 午後五時。

 テーブルに並べられた料理を前に、クリスマス・パーティを始めた。

 コタツは別にあるが、どうせ鍋になれば戦場になることは目に見えている。
 だからテーブルで、まずは会食らしい会食を、と俺が考えたのだ。



 メインのすき焼きのために用意した霜降りは20キロ。
 単純に一人当たり1キロを超えるわけだが、これが多すぎると言う奴は、うちの食事を知らない奴だ。

 この量で下手をすれば殴り合いの喧嘩になるんだからなぁ。



 これまでに、皇紀は二度ほど亜紀ちゃんに顔面パンチを喰らい、10回以上は双子に蹴りを入れられている。
 双子は亜紀ちゃんに20回以上頭をはたかれ、双子同士は百回以上掴み合をしている。

 皇紀だけは手を出していない。





 ターキーのローストは、最初はもの珍しさから子どもたちもせがんだが、好みの味ではなかったようだ。
 大人たちでゆっくりと食べられる。

 カナッペは100種類以上あるので、その組み合わせを求めて争奪戦になった。
 同じ種類で20個ほどもあるのだから落ち着いて食べれば良い、と思うのが浅はかな大人の考えだ。

 子どもたちは「至高の組み合わせ」の存在を信じ、さらに上位の組み合わせを独占しようとしているのだ。
 響子はローストを少し口に入れ、カナッペを数枚食べた。



 俺は響子にコンソメスープをよそってやる。
 俺が作った辰巳芳子直伝のものだ。


 俺は以前に辰巳先生のスープ教室に通ったことがある。
 脳腫瘍で食欲の落ちたお袋に、最後の最後まで口に出来るスープを作ってやるためだ。



 今はネットなどで簡単なレシピが見られるが、教室で教わるのはとんでもなく難しい。

 食材が限定されるのだ。京都のどこそこの人参、大根は静岡の○○農場のもの。
 それを手に入れることから始まる。

 しかし、教えの通りに作ったスープは、絶品になる。





 「おいしい」

 響子はため息と共に漏らした。
 ロックハート家ではさぞいいものを口にしていただろうが、このスープはそれに負けないはずだ。

 辰巳先生の下には、多くの料理人が教えを請いに来る。
 それほど食を極めた方なのだ。











 大変手間がかかるので、量をそれほど作ってない。
 大人達にカップ1杯ずつ配った。



 「ほんとうに美味しい」
 栞が感動した。

 「ウガァ!、ゴオオオオゥッってぇ!」

 六花が何言ってるのかわからない。多分感動している。



 俺は争奪戦の亜紀ちゃんを呼んで、残り少ないスープを飲ませた。
 亜紀ちゃんは目でカナッペの減りを追っていたが、一口飲んでカップに釘付けになる。

 「なんですか、これは!」



 「もう、それで終わりだからな」
 「エェー!」

 「作るのが本当に面倒だから、もうしばらくは作らないからな」
 「そんなぁ、死んじゃいますぅ!」

 死なねぇよ。





 子どもはまだ味蕾も未発達の上、味覚も覚束ない。
 皇紀あたりならもう分かるかもしれないが、自分たちを差し置いて皇紀が美味いものを食べたと知ったら、恐ろしいことになるからなぁ。





 その時、皇紀が叫んだ。
 「ゴフゥッー!!」

 あ、食べたな。

 栞と亜紀ちゃんが目を合わせて笑っている。
 自分のジュースを取りに、慌ててこちらへ戻る皇紀。



 カワイそうになぁ。でも盛り上がったぞ。



 爆弾があることを知った双子は、手を止めた。

 「亜紀ちゃんー!」
 「いや、栞さんも作ってるのよ!」



 「ちきしょー、でかいオッパイでわるだくみかぁー!」
 ひでぇことを言う。

 「もぐぞ!」



 「え、なにをー?」



 六花は幸せそうな顔でカップを握っていた。



 響子が明るく笑っていた。
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