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KYOKO DREAMIN Ⅱ
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「ホーク・レディはどうなったの!」
アラスカの「タイガー・ホール」で、作戦司令室が混乱していた。
司令官のプロトンは、作戦空域から送られてくるデータを睨みながら、部下たちを叱咤している。
現在「ホーク・レディ」はロシア近辺にいるはずだ。
「5分前にロシアの最新鋭戦闘機集団が全兵装を解放しました! およそ二百機からの一斉攻撃です!」
「フェロン(Felon:重罪人)か」
マッハ20を超える未知の推進システムと、1000キロメートル先からの先制攻撃を可能とする、ロシアの第六世代戦闘機だった。
NATO軍からは「重罪人」と呼ばれ、その超絶の性能が恐れられていた。
「コウキ・システムは!」
「ほぼ同時に起動! しかし衛星リンクの一斉攻撃は、すべてを防ぎ切れませんでした」
「巡航ミサイルの8割が中性子爆弾であった模様! ホーク・レディの殺傷を目的としていたと思われます!」
「なんてこと!」
「現場付近は電磁波障害のため、情報収集ができません!」
「すぐに救出部隊を! 誰が行けるか!」
「落ち着け、ヨーコ!」
プロトンの右腕、ビッグ・フォレストが叱責する。
「でも、あいつはあたしらの大事な友達だ」
「分かってる。でもホーク・レディだって只者じゃない。俺たちの「命」が認めたネームドの実力者だぞ!」
「そんなこと! でも」
「いいか、まずは情報収集だ。お前の量子コンピュータは何でもできるだろう?」
「うん。よし、現場の1000キロ周辺での情報を徹底的に解析する」
「そうだ、クールになれ」
「ありがとう。少し熱くなり過ぎた」
プロトンの肩にビッグ・フォレストの大きな手が置かれた。
プロトンは、その手に自分の手を重ねる。
「3秒前に、ロシアの戦闘機集団が消滅!」
「なに!」
「周辺に強力なプラズマの拡散を確認! これはホーク・レディです!」
「映像は取れるか!」
プロトンは満面の笑みを浮かべ、涙を流した。
「いえ、今も超高速移動をしているらしく、解析はできません」
「いや、いい。やっぱり生きていたかぁ!」
「攻撃と同時にマッハ800で移動したんだろう。あいつの速さは「虎」以外に追いつけないもんな」
「良かった、良かったよ!」
プロトンとビッグ・フォレストは抱き合って喜ぶ。
「ホーク・レディから通信です」
「よし、つなげ!」
「ああ、プロトン。そちらではもう状況は分かっていると思うけど」
「もちろんだ。でも一時は冷や汗をかいたぞ」
「アハハ! なんだ、心配してくれたの?」
「当たり前だ」
「あんなの。プラズマジェットだって言っても、所詮は幼稚園よ。こっちは「虎」の奥義を授かってるんだからね」
「そうだったな。柄にもなく狼狽えてしまった」
「ありがとう。やっぱりあなたは親友ね」
「よせよ」
「これからロシアの全空軍基地を叩こうと思うんだけど、許可してもらえるかな」
「いや、ロシアはディアブロ・アキに任せるから。あなたは引き続き各国のミサイルの状況を監視して」
「え、アキちゃんが出るの? あちゃー、ロシアもかわいそうに」
「でも、一瞬で終わるんだ。ある意味じゃ慈悲深いよ」
「そうかもね。でも「審判」で生き残る人が一人もいないなんてねぇ」
「仕方がないさ。ロシアは≪汚染≫が一際高い。南米はドラゴン・レディに任せるから随分と生き残る人間は多いだろうがね」
「ヨーロッパは予定通り?」
「ああ」
「じゃあ、そっちも全滅かぁ。もう一度パリでフレンチが食べたかったな」
「お前が自分で作ればいいじゃないか」
「私は料亭の娘よ! 頭がおかしくなったって、フレンチは作らないの」
作戦行動中の司令部で、日常会話が交わされている。
しかし、全員がにこやかにそれを聴いていた。
「アフリカは大体残るみたいよ。まあ、「自然」がほとんどだけどね。いい店が残ることを期待してなさい」
「分かったわよ。じゃあ、また任務に戻るね!」
「ああ、気を付けてな」
「ほんとに気を付けて……、アレ?」
「なんだ、響子。何か言ったか?」
まだ眠い。
「なんかね、危なかったの」
「何がだ?」
「あのね、うーん、なんだっけ」
「俺が知るわけないだろう」
タカトラが笑ってる。
六花が、その後ろでタカトラの肩に手を乗せてニコニコしている。
いつも仲がいいな。
「でもよかったな」
「だから何がだよ」
「なんか、そんな気がする」
「ヘンな奴だな」
タカトラがベッドに腰かけて頭を撫でてくれる。
六花が、タカトラにくっつきながら、ウェットティッシュで顔を拭いてくれる。
よかったぁ。
アラスカの「タイガー・ホール」で、作戦司令室が混乱していた。
司令官のプロトンは、作戦空域から送られてくるデータを睨みながら、部下たちを叱咤している。
現在「ホーク・レディ」はロシア近辺にいるはずだ。
「5分前にロシアの最新鋭戦闘機集団が全兵装を解放しました! およそ二百機からの一斉攻撃です!」
「フェロン(Felon:重罪人)か」
マッハ20を超える未知の推進システムと、1000キロメートル先からの先制攻撃を可能とする、ロシアの第六世代戦闘機だった。
NATO軍からは「重罪人」と呼ばれ、その超絶の性能が恐れられていた。
「コウキ・システムは!」
「ほぼ同時に起動! しかし衛星リンクの一斉攻撃は、すべてを防ぎ切れませんでした」
「巡航ミサイルの8割が中性子爆弾であった模様! ホーク・レディの殺傷を目的としていたと思われます!」
「なんてこと!」
「現場付近は電磁波障害のため、情報収集ができません!」
「すぐに救出部隊を! 誰が行けるか!」
「落ち着け、ヨーコ!」
プロトンの右腕、ビッグ・フォレストが叱責する。
「でも、あいつはあたしらの大事な友達だ」
「分かってる。でもホーク・レディだって只者じゃない。俺たちの「命」が認めたネームドの実力者だぞ!」
「そんなこと! でも」
「いいか、まずは情報収集だ。お前の量子コンピュータは何でもできるだろう?」
「うん。よし、現場の1000キロ周辺での情報を徹底的に解析する」
「そうだ、クールになれ」
「ありがとう。少し熱くなり過ぎた」
プロトンの肩にビッグ・フォレストの大きな手が置かれた。
プロトンは、その手に自分の手を重ねる。
「3秒前に、ロシアの戦闘機集団が消滅!」
「なに!」
「周辺に強力なプラズマの拡散を確認! これはホーク・レディです!」
「映像は取れるか!」
プロトンは満面の笑みを浮かべ、涙を流した。
「いえ、今も超高速移動をしているらしく、解析はできません」
「いや、いい。やっぱり生きていたかぁ!」
「攻撃と同時にマッハ800で移動したんだろう。あいつの速さは「虎」以外に追いつけないもんな」
「良かった、良かったよ!」
プロトンとビッグ・フォレストは抱き合って喜ぶ。
「ホーク・レディから通信です」
「よし、つなげ!」
「ああ、プロトン。そちらではもう状況は分かっていると思うけど」
「もちろんだ。でも一時は冷や汗をかいたぞ」
「アハハ! なんだ、心配してくれたの?」
「当たり前だ」
「あんなの。プラズマジェットだって言っても、所詮は幼稚園よ。こっちは「虎」の奥義を授かってるんだからね」
「そうだったな。柄にもなく狼狽えてしまった」
「ありがとう。やっぱりあなたは親友ね」
「よせよ」
「これからロシアの全空軍基地を叩こうと思うんだけど、許可してもらえるかな」
「いや、ロシアはディアブロ・アキに任せるから。あなたは引き続き各国のミサイルの状況を監視して」
「え、アキちゃんが出るの? あちゃー、ロシアもかわいそうに」
「でも、一瞬で終わるんだ。ある意味じゃ慈悲深いよ」
「そうかもね。でも「審判」で生き残る人が一人もいないなんてねぇ」
「仕方がないさ。ロシアは≪汚染≫が一際高い。南米はドラゴン・レディに任せるから随分と生き残る人間は多いだろうがね」
「ヨーロッパは予定通り?」
「ああ」
「じゃあ、そっちも全滅かぁ。もう一度パリでフレンチが食べたかったな」
「お前が自分で作ればいいじゃないか」
「私は料亭の娘よ! 頭がおかしくなったって、フレンチは作らないの」
作戦行動中の司令部で、日常会話が交わされている。
しかし、全員がにこやかにそれを聴いていた。
「アフリカは大体残るみたいよ。まあ、「自然」がほとんどだけどね。いい店が残ることを期待してなさい」
「分かったわよ。じゃあ、また任務に戻るね!」
「ああ、気を付けてな」
「ほんとに気を付けて……、アレ?」
「なんだ、響子。何か言ったか?」
まだ眠い。
「なんかね、危なかったの」
「何がだ?」
「あのね、うーん、なんだっけ」
「俺が知るわけないだろう」
タカトラが笑ってる。
六花が、その後ろでタカトラの肩に手を乗せてニコニコしている。
いつも仲がいいな。
「でもよかったな」
「だから何がだよ」
「なんか、そんな気がする」
「ヘンな奴だな」
タカトラがベッドに腰かけて頭を撫でてくれる。
六花が、タカトラにくっつきながら、ウェットティッシュで顔を拭いてくれる。
よかったぁ。
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