348 / 3,202
地獄VS悪魔 Ⅱ
しおりを挟む
六月中旬の土曜日の夕方。
栞と一江が双子を迎えに来た。
「それでは部長。ルーちゃんとハーちゃんをお借りします」
「おう、宜しくな。まあ、あの二人については、何の心配もしてねぇんだが」
「石神くん、私がちゃんと送るからね!」
「はい、お願いします」
「おい、二人とも! 花岡さんが暴れたらしっかり止めろよ!」
「「はーい!」」
「ちょ、ちょっとぉー! 石神くん、ひどいよ!」
四人は出掛けて行った。
家の前に停めていたタクシーに乗り込む。
一江が助手席に座ったようだ。
これから一江のマンションに向かう。
大森が既にたこ焼きの支度をしているそうだ。
「じゃあ、俺たちも出掛けようか!」
「「はーい!」」
今日は新宿の焼き肉屋へ行く。
こないだ亜紀ちゃんとは行ったが、結構落ち着いて食べられた。
今日も双子がいないので、この機会にと思った。
「皇紀、今日は安心安全快適に食べられるぞ!」
「ほんとうに、こんな日が来るなんて」
涙目になっている。
男なんだから泣くな、と言った。
三人で青梅街道まで歩き、タクシーを拾った。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「では、第九回「石神くんスキスキ乙女会議」:小悪魔が魔王を止めるよ! を開催します」
「なんか、タイトル気に入らない」
「はい、そこは深く反省の上で黙って! 今日はたこ焼きパーティです。ルーちゃん、ハーちゃん、一杯食べてね!」
「「はーい!」」
タコは既に、大森によって切り分けられている。
大変な量だ。
朝から頑張った。
六花は、いつも通り何もしていない。
そういうものなのだ、とみんないつしか納得していた。
大森がでかいタコ焼き器に油を敷き、慣れた手つきで液を流し込む。
素早い動作で、次々とたこ焼きを作って行った。
最初の10個は、当然のように双子に渡す。
「熱いから気を付けてね!」
一江が注意した。
双子はフーフーと冷ましながら、口に入れる。
「アフイけどオイヒー!」
みんなで笑った。
「あ、おいしーよ!」
「大阪で食べたのとオナヒヘフ!」
「大森! やるじゃん!」
「エヘヘ!」
大森も作りながら、一個食べ、満足そうに笑った。
「あたしさ! 今度双子ちゃんと皇紀くんとで、量子コンピューターを作ることになったの!」
一江が宣言した。
双子は、ニコニコしている。
「こないだ部長のお宅に伺って、そういう約束をしたんだ。部長も許可してくれた」
「そーなんだ。じゃあ、時々休みの日に行くの?」
「うん。まあ、三人は勉強もあるから、時々になるけどね」
「へぇー」
栞は何となく面白くない。
あの家に自由に出入りするのは、自分の特権だと思っていた。
「あ、栞もしかして妬いてるの? 大丈夫だよ。子どもたちと会うだけだから」
「何言ってんの。陽子を妬くわけないじゃない」
「あ! 六花、何飲んでんだよ!」
六花はいつのまにかハイネケンを飲んでいる。
恐らく、以前の飲み会で冷蔵庫に残っているものを見つけたのだろう。
一江も大森も、あまりビールは飲まない。
「すいません。たこ焼きだけだと、どうしても口の中が」
「今日はお酒抜きだって言っただろう!」
「まあまあ、大森。六花の言うこともわかるよ。結構食べたからなぁ」
双子は50個くらいずつ。
他の四人も、30個は食べていた。
さすがに飽きてくる。
ちょっとだけ飲もうか、ということになった。
栞にもしものことがあっても、双子の抑止力がある。
一江も大森もどこか、安心していた。
六花は、何も考えていない。
石神も響子もいない環境では、考えるべきものがない。
双子が100個を超えた。
予想はしていたが、大食いだ。
「ねえ、一江さん」
「なーに?」
「たこ焼き以外にないの?」
「飽きちゃった」
子どもは酒を楽しめない。
「一江、ピザでもとろうか?」
「そうだねぇ。ルーちゃん、ハーちゃん、ピザでいい?」
「お肉が食べたいな」
ルーが言った。
「亜紀ちゃんも皇紀ちゃんも、今頃お肉食べてるんだろうなー」
ハーが言う。
「こら、二人とも無理言わないの! 今日はたこ焼きパーティでしょ?」
栞が二人との距離が近い関係だと思い、二人のワガママを諫める。
「えー! ソレ、なんかおかしくない?」
ルーが反発した。
栞は一瞬たじろぐ。
双子が自分に反発するとは思ってもいなかった。
謝られて、すぐに終わると思っていた。
「まあまあ。実はお肉があるんだ! 部長から「双子ちゃんが欲しがるだろうから」って、ブロックでいただいてるの」
「そうか、さすが部長だな!」
一江と大森が、険悪になりかけた空気を戻そうとした。
「まあ、そういうことなら」
栞がホッとした声で言った。
六花は、空気を気にすることなく、無心にたこ焼きをビールで流し込み、幸せそうな顔をしていた。
「ほら、栞。私たちだってちょっとお酒飲んじゃってるじゃない。双子ちゃんがワガママ言ったって、何も言えないでしょ?」
「うん。ごめんね、二人とも」
「いーよー」
「気にしてないよー」
大森は一江とキッチンに行き、2キロの肉を受け取った。
「いい肉だなぁ! じゃあ、二人ともステーキでいいか?」
「ステーキすてき! ステーキすてき!」
双子は上機嫌で歌った。
予想外のことが起きた。
500グラムずつ、二回に分けてステーキを焼いて出した。
「おかわりー!」
「今度は宮のタレがいいな!」
無い。
肉もタレも。
一江は石神に言われていたことを思い出していた。
「いいか、これは双子がどうしても我慢できない場合にだけ出せ。くれぐれも最後の最後だぞ?」
「分かりました」
「序盤はもちろん、まだ食材が残っている間は絶対に出すな! 悪魔が出るぞ」
「分かりました。気を付けます。お気遣い、すいませんです」
(部長、「最後」って、いつよー!)
「あのね、ごめんね。今のでおしまいなんだ」
「「エェー!」」
大森が困った顔で言うと、双子がショックを受けた。
「コラ! いい加減にしなさい。あなたたち二人で全部食べちゃったじゃないの! 私たちは一切れも食べてない!」
栞がまた言った。
「そんなこと言ったってぇー」
「ワガママ言わない!」
栞は二人の頭を小突いた。
一瞬で空気が変わった。
「ハー、これはオッパイ王降臨だよね」
「ルー、その通りだね。オッパイもぎ放題だね」
双子が恐ろしい顔をして言った。
栞の顔も変わる。
「ちょ、ちょっとぉー! 三人ともやめて! 落ち着いて!」
一江が叫ぶ。
「そうだそうだ! 仲良く食べようよ!」
大森も立ち上がった双子をなだめようとする。
「あ、これからあたしが肉を買ってくるから! すぐ戻るよ!」
一江が財布を掴んでそう言った。
六花は、たこ焼きを口に詰め込んで目を丸くしている。
「お肉なら、そこにあるじゃん」
「二人分あるじゃん」
双子は栞の胸を掴んだ。
「これに触っていいのは一人だけぇ!」
双子が吹っ飛ぶ。
「ま、魔王降臨!」
「ヤバイぞ、一江!」
栞は一升瓶を飲み干した。
「ルー、絶花は使った?」
「とっく、とっく!」
双子は栞の両側から鋭いハイキックを放つ。
栞は両手で受け止め、物凄い音がした。
衝撃波が部屋にいた全員に伝わる。
「表でやってー!」
三人は一江を一瞬見て、同時に窓から飛び出す。
針金の通った窓ガラスが、サッシごと粉砕し、三人は地上へダイブした。
一江と大森がとっさにベランダに出た。
地上の三人は、もちろん何ともない。
三つの影がぶつかり合いながら、移動していった。
「部長に電話……」
「した方がいいよな、やっぱ」
《全PCおよび白バイに通達! 現在、国道246にて暴走車両が青山から二子玉川方面へ移動中! 周辺の車両を破壊しながら移動中!》
《通達訂正! 暴走車両ではなく、半裸の女性と小柄な二名の計三名の模様! 銃火器を使用していると思われる。厳重注意の上で追跡せよ!》
双子の猛攻で栞の服は所々破れ、ほとんど下着姿になっていた。
双子も上半身は裸に近い。
三人とも、静電気のせいか、髪が逆立っている。
険しい形相は人間のものではない。
熱なのか何のエネルギーなのか、三人の姿は歪んでいるようによく見えない。
そもそも、すごい速さでぶつかり合っている。
「やはり本家は強い!」
「うん、ここまでやるとは!」
双子は攻撃のたびに跳ね返され、時々、周囲の車にぶつかる。
大破した車は今のところない。
重傷者も死者もいない。
誰もが車を止め、恐怖で蹲っていた。
「あの二人はやっぱり強い! 押されるのも時間の問題!」
栞も次第に技が解析されていっているのを感じていた。
徐々に、ダメージが与えられなくなっている。
栞は結構な頻度で電光を放っていた。
その直後に周辺の車はエンジンが止まった。
電子機器が破壊されていたのだ。
現在、三軒茶屋を過ぎた辺り。
数台の警察車両が、数百メートル先で止まってている。
栞の電光のせいだ。
しかし、双子の攻撃はやまない。
(これは、そろそろマズイ!)
栞は事態収拾がおぼつかずに混乱していた。
警察はまだまだ集まって来るだろう。
後ろから高速で何かが近づいてきた。
時々、巨大な電光が光っている。
後ろの警察車両をあっという間に追い越し、自分たちに迫って来る。
あんなことができるのは、一人しかいない。
「「「亜紀ちゃん!!!」」」
顔を黒く塗った金髪の女は振り返り、拳を振るった。
路面が200メートルにわたって粉砕され、爆炎と激しい土ぼこりが舞い、辺りを覆う。
プラズマが迸り、周辺400メートルの電子機器を破壊した。
亜紀ちゃんは駒沢大学周辺の入り組んだ道に三人を連れ出し、脱出した。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
石神の家の応接室。
一江、大森、栞、六花、ルー、ハーが正座している。
石神は日本刀を手に立っている。
斬からせしめた「虎徹」だった。
「お前ら、死ぬ覚悟はいいな?」
「「「「「ヒィッ!!!!!」」」」」
死にはしなかったが………………。
栞と一江が双子を迎えに来た。
「それでは部長。ルーちゃんとハーちゃんをお借りします」
「おう、宜しくな。まあ、あの二人については、何の心配もしてねぇんだが」
「石神くん、私がちゃんと送るからね!」
「はい、お願いします」
「おい、二人とも! 花岡さんが暴れたらしっかり止めろよ!」
「「はーい!」」
「ちょ、ちょっとぉー! 石神くん、ひどいよ!」
四人は出掛けて行った。
家の前に停めていたタクシーに乗り込む。
一江が助手席に座ったようだ。
これから一江のマンションに向かう。
大森が既にたこ焼きの支度をしているそうだ。
「じゃあ、俺たちも出掛けようか!」
「「はーい!」」
今日は新宿の焼き肉屋へ行く。
こないだ亜紀ちゃんとは行ったが、結構落ち着いて食べられた。
今日も双子がいないので、この機会にと思った。
「皇紀、今日は安心安全快適に食べられるぞ!」
「ほんとうに、こんな日が来るなんて」
涙目になっている。
男なんだから泣くな、と言った。
三人で青梅街道まで歩き、タクシーを拾った。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「では、第九回「石神くんスキスキ乙女会議」:小悪魔が魔王を止めるよ! を開催します」
「なんか、タイトル気に入らない」
「はい、そこは深く反省の上で黙って! 今日はたこ焼きパーティです。ルーちゃん、ハーちゃん、一杯食べてね!」
「「はーい!」」
タコは既に、大森によって切り分けられている。
大変な量だ。
朝から頑張った。
六花は、いつも通り何もしていない。
そういうものなのだ、とみんないつしか納得していた。
大森がでかいタコ焼き器に油を敷き、慣れた手つきで液を流し込む。
素早い動作で、次々とたこ焼きを作って行った。
最初の10個は、当然のように双子に渡す。
「熱いから気を付けてね!」
一江が注意した。
双子はフーフーと冷ましながら、口に入れる。
「アフイけどオイヒー!」
みんなで笑った。
「あ、おいしーよ!」
「大阪で食べたのとオナヒヘフ!」
「大森! やるじゃん!」
「エヘヘ!」
大森も作りながら、一個食べ、満足そうに笑った。
「あたしさ! 今度双子ちゃんと皇紀くんとで、量子コンピューターを作ることになったの!」
一江が宣言した。
双子は、ニコニコしている。
「こないだ部長のお宅に伺って、そういう約束をしたんだ。部長も許可してくれた」
「そーなんだ。じゃあ、時々休みの日に行くの?」
「うん。まあ、三人は勉強もあるから、時々になるけどね」
「へぇー」
栞は何となく面白くない。
あの家に自由に出入りするのは、自分の特権だと思っていた。
「あ、栞もしかして妬いてるの? 大丈夫だよ。子どもたちと会うだけだから」
「何言ってんの。陽子を妬くわけないじゃない」
「あ! 六花、何飲んでんだよ!」
六花はいつのまにかハイネケンを飲んでいる。
恐らく、以前の飲み会で冷蔵庫に残っているものを見つけたのだろう。
一江も大森も、あまりビールは飲まない。
「すいません。たこ焼きだけだと、どうしても口の中が」
「今日はお酒抜きだって言っただろう!」
「まあまあ、大森。六花の言うこともわかるよ。結構食べたからなぁ」
双子は50個くらいずつ。
他の四人も、30個は食べていた。
さすがに飽きてくる。
ちょっとだけ飲もうか、ということになった。
栞にもしものことがあっても、双子の抑止力がある。
一江も大森もどこか、安心していた。
六花は、何も考えていない。
石神も響子もいない環境では、考えるべきものがない。
双子が100個を超えた。
予想はしていたが、大食いだ。
「ねえ、一江さん」
「なーに?」
「たこ焼き以外にないの?」
「飽きちゃった」
子どもは酒を楽しめない。
「一江、ピザでもとろうか?」
「そうだねぇ。ルーちゃん、ハーちゃん、ピザでいい?」
「お肉が食べたいな」
ルーが言った。
「亜紀ちゃんも皇紀ちゃんも、今頃お肉食べてるんだろうなー」
ハーが言う。
「こら、二人とも無理言わないの! 今日はたこ焼きパーティでしょ?」
栞が二人との距離が近い関係だと思い、二人のワガママを諫める。
「えー! ソレ、なんかおかしくない?」
ルーが反発した。
栞は一瞬たじろぐ。
双子が自分に反発するとは思ってもいなかった。
謝られて、すぐに終わると思っていた。
「まあまあ。実はお肉があるんだ! 部長から「双子ちゃんが欲しがるだろうから」って、ブロックでいただいてるの」
「そうか、さすが部長だな!」
一江と大森が、険悪になりかけた空気を戻そうとした。
「まあ、そういうことなら」
栞がホッとした声で言った。
六花は、空気を気にすることなく、無心にたこ焼きをビールで流し込み、幸せそうな顔をしていた。
「ほら、栞。私たちだってちょっとお酒飲んじゃってるじゃない。双子ちゃんがワガママ言ったって、何も言えないでしょ?」
「うん。ごめんね、二人とも」
「いーよー」
「気にしてないよー」
大森は一江とキッチンに行き、2キロの肉を受け取った。
「いい肉だなぁ! じゃあ、二人ともステーキでいいか?」
「ステーキすてき! ステーキすてき!」
双子は上機嫌で歌った。
予想外のことが起きた。
500グラムずつ、二回に分けてステーキを焼いて出した。
「おかわりー!」
「今度は宮のタレがいいな!」
無い。
肉もタレも。
一江は石神に言われていたことを思い出していた。
「いいか、これは双子がどうしても我慢できない場合にだけ出せ。くれぐれも最後の最後だぞ?」
「分かりました」
「序盤はもちろん、まだ食材が残っている間は絶対に出すな! 悪魔が出るぞ」
「分かりました。気を付けます。お気遣い、すいませんです」
(部長、「最後」って、いつよー!)
「あのね、ごめんね。今のでおしまいなんだ」
「「エェー!」」
大森が困った顔で言うと、双子がショックを受けた。
「コラ! いい加減にしなさい。あなたたち二人で全部食べちゃったじゃないの! 私たちは一切れも食べてない!」
栞がまた言った。
「そんなこと言ったってぇー」
「ワガママ言わない!」
栞は二人の頭を小突いた。
一瞬で空気が変わった。
「ハー、これはオッパイ王降臨だよね」
「ルー、その通りだね。オッパイもぎ放題だね」
双子が恐ろしい顔をして言った。
栞の顔も変わる。
「ちょ、ちょっとぉー! 三人ともやめて! 落ち着いて!」
一江が叫ぶ。
「そうだそうだ! 仲良く食べようよ!」
大森も立ち上がった双子をなだめようとする。
「あ、これからあたしが肉を買ってくるから! すぐ戻るよ!」
一江が財布を掴んでそう言った。
六花は、たこ焼きを口に詰め込んで目を丸くしている。
「お肉なら、そこにあるじゃん」
「二人分あるじゃん」
双子は栞の胸を掴んだ。
「これに触っていいのは一人だけぇ!」
双子が吹っ飛ぶ。
「ま、魔王降臨!」
「ヤバイぞ、一江!」
栞は一升瓶を飲み干した。
「ルー、絶花は使った?」
「とっく、とっく!」
双子は栞の両側から鋭いハイキックを放つ。
栞は両手で受け止め、物凄い音がした。
衝撃波が部屋にいた全員に伝わる。
「表でやってー!」
三人は一江を一瞬見て、同時に窓から飛び出す。
針金の通った窓ガラスが、サッシごと粉砕し、三人は地上へダイブした。
一江と大森がとっさにベランダに出た。
地上の三人は、もちろん何ともない。
三つの影がぶつかり合いながら、移動していった。
「部長に電話……」
「した方がいいよな、やっぱ」
《全PCおよび白バイに通達! 現在、国道246にて暴走車両が青山から二子玉川方面へ移動中! 周辺の車両を破壊しながら移動中!》
《通達訂正! 暴走車両ではなく、半裸の女性と小柄な二名の計三名の模様! 銃火器を使用していると思われる。厳重注意の上で追跡せよ!》
双子の猛攻で栞の服は所々破れ、ほとんど下着姿になっていた。
双子も上半身は裸に近い。
三人とも、静電気のせいか、髪が逆立っている。
険しい形相は人間のものではない。
熱なのか何のエネルギーなのか、三人の姿は歪んでいるようによく見えない。
そもそも、すごい速さでぶつかり合っている。
「やはり本家は強い!」
「うん、ここまでやるとは!」
双子は攻撃のたびに跳ね返され、時々、周囲の車にぶつかる。
大破した車は今のところない。
重傷者も死者もいない。
誰もが車を止め、恐怖で蹲っていた。
「あの二人はやっぱり強い! 押されるのも時間の問題!」
栞も次第に技が解析されていっているのを感じていた。
徐々に、ダメージが与えられなくなっている。
栞は結構な頻度で電光を放っていた。
その直後に周辺の車はエンジンが止まった。
電子機器が破壊されていたのだ。
現在、三軒茶屋を過ぎた辺り。
数台の警察車両が、数百メートル先で止まってている。
栞の電光のせいだ。
しかし、双子の攻撃はやまない。
(これは、そろそろマズイ!)
栞は事態収拾がおぼつかずに混乱していた。
警察はまだまだ集まって来るだろう。
後ろから高速で何かが近づいてきた。
時々、巨大な電光が光っている。
後ろの警察車両をあっという間に追い越し、自分たちに迫って来る。
あんなことができるのは、一人しかいない。
「「「亜紀ちゃん!!!」」」
顔を黒く塗った金髪の女は振り返り、拳を振るった。
路面が200メートルにわたって粉砕され、爆炎と激しい土ぼこりが舞い、辺りを覆う。
プラズマが迸り、周辺400メートルの電子機器を破壊した。
亜紀ちゃんは駒沢大学周辺の入り組んだ道に三人を連れ出し、脱出した。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
石神の家の応接室。
一江、大森、栞、六花、ルー、ハーが正座している。
石神は日本刀を手に立っている。
斬からせしめた「虎徹」だった。
「お前ら、死ぬ覚悟はいいな?」
「「「「「ヒィッ!!!!!」」」」」
死にはしなかったが………………。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】狡い人
ジュレヌク
恋愛
双子のライラは、言う。
レイラは、狡い。
レイラの功績を盗み、賞を受賞し、母の愛も全て自分のものにしたくせに、事あるごとに、レイラを責める。
双子のライラに狡いと責められ、レイラは、黙る。
口に出して言いたいことは山ほどあるのに、おし黙る。
そこには、人それぞれの『狡さ』があった。
そんな二人の関係が、ある一つの出来事で大きく変わっていく。
恋を知り、大きく羽ばたくレイラと、地に落ちていくライラ。
2人の違いは、一体なんだったのか?
【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。
文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。
父王に一番愛される姫。
ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。
優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。
しかし、彼は居なくなった。
聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。
そして、二年後。
レティシアナは、大国の王の妻となっていた。
※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。
小説家になろうにも投稿しています。
エールありがとうございます!
【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
竜帝は番に愛を乞う
浅海 景
恋愛
祖母譲りの容姿で両親から疎まれている男爵令嬢のルー。自分とは対照的に溺愛される妹のメリナは周囲からも可愛がられ、狼族の番として見初められたことからますます我儘に振舞うようになった。そんなメリナの我儘を受け止めつつ使用人のように働き、学校では妹を虐げる意地悪な姉として周囲から虐げられる。無力感と諦めを抱きながら淡々と日々を過ごしていたルーは、ある晩突然現れた男性から番であることを告げられる。しかも彼は獣族のみならず世界の王と呼ばれる竜帝アレクシスだった。誰かに愛されるはずがないと信じ込む男爵令嬢と番と出会い愛を知った竜帝の物語。
芙蓉は後宮で花開く
速見 沙弥
キャラ文芸
下級貴族の親をもつ5人姉弟の長女 蓮花《リェンファ》。
借金返済で苦しむ家計を助けるために後宮へと働きに出る。忙しくも穏やかな暮らしの中、出会ったのは翡翠の色の目をした青年。さらに思いもよらぬ思惑に巻き込まれてゆくーーー
カクヨムでも連載しております。
後宮なりきり夫婦録
石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」
「はあ……?」
雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。
あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。
空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。
かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。
影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。
サイトより転載になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる