富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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双子の漂流記 Ⅲ

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 「ルー、なんかヘンだよ?」
 「うん、軍隊いるよね?」
 警官隊が下がり、メキシコ陸軍が出てきた。

 「あ、FX-05だ!」
 「ERC90(装甲車)もいるじゃん!」
 二人とも、石神の教育よろしく、武器兵器に精通している。

 「どーする? 私たちねらってんじゃん」
 「じゃー決まってんじゃん!」
 「「絶花!」」

 「怪物二体が向かってきます!」
 「ファイアァー!!」
 プローンでFX-05を構えていた20人が一斉に撃った。
 ミニミ軽機関銃とブローニングM2重機関銃も火を吹く。
 後方からM29迫撃砲とM40無反動砲が撃ち込まれる。
 激しい弾幕が双子を襲う。
 すべてが双子の前方で消失した。

 「!」

 二人は左右に分かれ、兵士を傷つけることなく、武器を破壊した。
 ハーが装甲車に取りつく。
 側面の装甲を無理矢理引き剥がした。
 衝撃で装甲車が横転する。

 「「轟雷」!」

 すべての無線機器が破壊され、兵士のほとんどが電撃で昏倒した。
 指揮官が二人に拘束された。

 「どんと・あたーっく!」

 意識のある全ての兵士が武装を解く。
 恐怖の表情でサメとウツボを従える双子を見ていた。

 「Monstruo!(怪物め!)」
 「Que miedo!(ああ、恐ろしい!)」

 「てれふぉん・ぷりーず」
 ルーがニコニコして指揮官に言った。
 震えながら指揮官がスマートフォンを取り出して渡した。

 「アレ?」
 「ルー、そりゃ壊れてるって」
 「「轟雷」かぁ!」
 ニヤリと笑い、双子は走り去った。



 兵士たちが無事を確認しに指揮官に走り寄った。

 「大佐!」
 「ああ、無事だ」
 「何よりです!」
 「ああ」
 口々に、先ほどの恐怖を話し出す。
 
 「サメの口が大きく開いたぞ!」
 「ヘビの目が俺を睨んだ!」
 「なんだ、あの動きは!」
 「触手から電光が迸った!」
 「自分の髪を引き抜いていた!(ワカメを取った)」
 「パンツ履いてなかった!」
 
 「なんだと?」
 「パンツ履いてませんでした!」

 ちょっと見たかったと大佐は思った。





 双子は荒れ地を疾走していた。
 裸足だ。
 ノーパンだ。

 「ハー、どうする?」
 「とにかく、小さな村にでも行こう!」
 「どうして?」
 「もうお尋ね者じゃん!」
 「そっかー!」
 山の中に入った。
 そのまま木々を縫って踏破する。
 ハーがルーを手で制した。
 止まった。

 ハーは前方を指さす。
 開けた場所に川があり、イノシシに似た動物が群れている。
 顔を見合わせてニッコリする。

 「「轟雷」!」

 激しい電撃が群れを襲った。
 数頭が昏倒し、残りは逃げ去った。
 二人は駆け寄って、一頭ずつ「電子レンジ」する。
 皮を剥いで手刀で肉をそぎ落として喰らいついた。
 逆にするといいと、半分食べて気付いた。
 しばし、満腹で休んだ。
 2頭が骨になっていた。





 寝転んでいると、気配に気づいた。
 二人は危険や悪いものを波動で感じる。
 物凄く薄汚い悪意を感知していた。

 「ハー!」
 「シッ!」
 囲まれていた。
 二人は相談することもなく、次の瞬間に行動に移っていた。
 瞬時に飛び上がり、森に入った。
 10人ほどの男たちは、二人が突然消え失せたように見えた。
 全員が小銃で武装していた。
 H&K G3だった。

 両端から次々に絶叫が上がる。
 バキボキと何かが折れる音が聞こえる。
 一発の銃声もなく、数分で男たちは地面に這いつくばった。
 双子は軍隊のように手加減しなかった。
 全員が手足や肋骨がへし折られた。

 「こいつら悪い奴だよね」
 「うん。きったない波動だったよね」
 「こんな山の中で武装しちゃってさ」
 「ろくなもんじゃないよね」
 いい判断だった。
 しかし、男たちが麻薬カルテルの一員だとは分かっていない。
 帰る途中で見つけた双子を拉致しようとしていたのだ。
 サメやウツボの頭には驚いていたが。
 腕が折られた比較的軽傷の男にルーが言った。

 「てれふぉん!」

 男は恐怖の表情のまま、ポケットからスマートフォンを取り出してルーに手渡す。
 ルーが使おうとすると、圏外だった。

 「はうす!」
 アジトへ案内しろということだが、それで通じた。
 ハーがその間、全員の足をへし折って回った。
 大の男たちが泣き叫んで命乞いした。

 「すてあうぇい・ふぉーる!(階段落ち)」
 「ハー、いいんだよ、この場合!」
 「そっか!」
 ルーが男に案内させた。
 男は折られた右腕をかばいながら進んだ。
 度々「遅い!」と二人で尻を蹴った。
 男が痛みに泣いた。
 ますます遅くなった。


 昼過ぎに、ようやくアジトに着いた。
 山中に広大な屋敷があり、周辺に畑が広がっていた。
 ハーが男の腰を折り、ルーと駆け出す。
 屋敷から百数十人の男が飛び出してきた。
 携帯ミサイルを持っている奴もいた。
 3階の窓から、重機関銃が火を吹く。
 残してきた連中が無線か何かで伝えたのだろう。

 「「轟雷」!」
 「ハー!」
 「あ!」
 一帯が巨大な電光に覆われ、男たちが昏倒し、すべての電子機器とスマーフォンが破壊された。 
 ハーがルーに頭をはたかれた。





 気を取り直し、屋敷を襲撃する。
 意識のある者もいたが、20分で制圧した。
 男たちの手足をへし折って、女子どもは広間に監禁した。
 女の一人に食堂へ案内させる。

 「「うわぁー!」」
 並べられていた数十人分の昼食にかぶりつく。
 タンブラーの水をガブガブと飲んだ。
 風呂を見つけて二人で入った。
 結構臭かったことにやっと気づいた。
 お互いの背中を流し、シャワーを浴びてサッパリした。

 「あー、髪がぼさぼさだよね」
 「うちのシャンプーいいものだったんだね」
 二人で裸で屋敷をうろつく。
 もう全裸は慣れたものだ。
 やっと自分たちのサイズの服を見つけた。
 フリルの一杯ついたものも見つけたが、動きやすいズボンとシャツを選んだ。
 パンツも履いた。



 「ねー、ここって麻薬工場じゃない?」
 外に精製工場を見つける。
 皇紀の実験室で、大体の理科器具は精通している。
 ゴキブリの飼育で、麻薬のことも研究していた。
 
 「じゃー、外の畑って」
 「燃やそう!」
 二人で「轟閃花」を放った。
 全ての芥子畑が消失した。
 屋敷から人間を運び出し、屋敷も破壊した。
 全員が呆然とその様子を見ていた。




 二人はまた走り出した。
 途中で気付いた。




 まだ裸足だった。  
 がんばれ! ルー! ハー!
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