富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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Ⅰ♡ NY

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 12月25日午前8時。
 俺は子どもたちをハマーに乗せて、空港に着いた。
 言われたロビーへ連れて行く。
 ゲートで、手荷物検査を受けた。

 「石神さん!」
 レイが笑って駆け寄って来た。

 「レイ! しばらく振りだな。もう身体は大丈夫か?」
 「ええ、まったく。元気ですよ」
 「そうか、良かった。口から熱線とか吐かないよな?」
 「?」
 不思議そうな顔をしたが、レイは俺に抱き着いて来た。
 オッパイの感触が嬉しい。

 「会いたかった、石神さん」
 「俺もだ。こないだは子どもたちをありがとう」
 「いいえ、こちらこそ」
 ハーが俺の尻をつつく。

 「なんだよ、いまいいオッパイなんだぞ!」
 「私たちもー」
 俺とレイは笑って離れた。
 子どもたちがレイに抱き着く。

 「みんな元気そうで良かった。またお願いします」
 「「「「はーい!」」」」

 「皇紀くん」
 レイが皇紀を抱き締める。
 身長差で、皇紀の顔がレイの胸に埋まる。

 「皇紀くんのシステムは本当に素晴らしい。宜しくお願いします」
 「ふぁい」
 
 「じゃあ、お前ら、しっかり働いて来い!」
 「「「「はーい!」」」」

 亜紀ちゃんが俺に抱き着いて来た。

 「タカさん、無茶なことしないで下さいね」
 「ああ、分かってるよ」
 「タカさん、好きですぅー」
 「ああ、みんなを守ってくれな」
 「はい!」
 亜紀ちゃんに軽くキスをした。

 「じゃあ、行ってきます!」
 「おう!」
 子どもたちは何度も振り返り、俺に手を振った。
 俺はロックハートの自家用機が飛び立つまで見守っていた。



 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■



 ガルフストリーム社の「G650ER」。
 ロックハートはこの機体を更に改造し、飛行速度や航続距離を伸ばしている。

 「ねえ、レイ」
 「なんです、ハーちゃん」
 「レイはお腹空いてない?」
 「はい」
 「本当に?」
 「はい?」
 「無理してない?」
 「!」

 「ああ、そう言えばペコペコでした。一緒に何か食べませんか?」
 「うん!」

 レイはクルーに食事の準備をするように伝えた。
 予定よりも大分早いが、いいだろう。
 テーブルに大量のステーキが並ぶ。

 「すみません。機内なので、一人5キロまでしか用意がありません」
 「レイさん申し訳ありません」
 亜紀が言う。

 「大丈夫ですよ。この機体は速いんです。10時間ほどでJFK空港に着きますから」
 「え、じゃああと9時間以上はお食事は」
 レイが笑った。

 「ご安心下さい。石神ファミリーを御乗せするんです。あと2回は出しますよ」
 「「「「やったぁー!」」」」
 通常は1回だけだ。



 子どもたちは食事を楽しみ、歌って踊って過ごした。
 レイは石神ファミリーの明るさを、あらためて知って微笑んだ。

 空港からリムジンで移動する。
 10人も乗れる、大きなリムジンだった。

 「みなさん、時計を合わせて下さい」

 レイが現在のニューヨークの時刻を言った。
 亜紀ちゃんはブライトリングのブラックバード。
 皇紀はゼニスのオープンハート。
 双子はGショックをそれぞれ合わせた。

 「これ、前に乗ったのと違うね」
 ルーがレイに言った。

 「はい。何台か所有していますから」
 「そーなんだ」

 ニューヨークのロックハートの家に着いた。
 警備の人間が門を開ける。
 巨大な庭を進み、リムジンは玄関前で止まった。
 アルジャーノンと静江が迎えに出ていた。

 「「「「こんにちはー!」」」」
 子どもたちは揃って頭を下げた。

 「よく来てくれました。さあ、中へ入って」

 静江が招き、荷物をメイドたちが引き受ける。
 四人は広大な屋敷に入った。
 吹き抜けの玄関や豪華な装飾に、しばし圧倒される。

 「亜紀ちゃん」
 「なに、ルー?」
 「タカさんの家も改造しようか?」
 「え、いいよ! こんなお城みたいなの、私住みたくない」
 「そっか」 

 一階の応接間に通された。
 紅茶が出る。
 
 「みなさん、お腹は空いてない?」
 静子が聞いて来た。

 「はい、飛行機の中で一杯いただきました」
 「あたし、まだ食べるよ」
 亜紀がハーの頭をはたく。

 「いいんですよ。メイドに声をかけてもらえば、いつでもお好きなだけ作りますからね」
 「いいえ、タカさんに「節度を持ってお世話になれ」と言われていますので、決まった時間にいただければと」
 「そうなの。石神さんは厳しいのね。じゃあ、朝は8時、昼は12時、夜は6時でどうかしら」
 「はい、それでお願いします」
 「でも、何かあれば遠慮なく言ってね」
 「ありがとうございます!」

 「あの静江様」
 「何かしら、レイ?」
 「機内で15キロずつステーキを召し上がりました」
 「アハハハハ!」
 「石神家の「節度」は、そういうものとお考え下さい」
 「分かったわ、レイ。ありがとう」

 子どもたちは、二階の部屋へ案内された。
 並びの三室で、皇紀、亜紀、ルーとハー。
 50平米ほどの広い部屋だった。
 各部屋にシャワー室とトイレがある。
 亜紀ちゃんの部屋で、全員にレイが説明した。
 
 「一階のバスルームは自由にお使い下さいね」
 「あの、御屋敷の出入りは制限がありますか?」
 「いいえ。皆様はどうぞご自由に。警備の人間も、全員お顔を覚えていますから」
 「そうですか」

 「あの、レイさん」
 「はい、皇紀さん」
 「早速ですが、調整に入りたいんですけど」
 「!」
 「いけませんか?」
 「いいえ。ありがとうございます。今日はゆっくりされるかと」
 「出来るだけ早く、このお屋敷を守れるようにしたいです」
 「ありがとうございます」

 レイは皇紀の手を握った。
 二人で出て行った。

 「さて、どうしようか」
 「やることないんだよねー」
 皇紀の警護がある。

 「いきなりヒマだよね」
 「取り敢えず、散歩でも行く?」
 「「うん!」」

 三人で屋敷を出た。
 警備員は笑って門を開いてくれた。




 「さて! ニューヨークの悪人でもやっつけるかな!」
 「亜紀ちゃん、それはダメだよ」
 「タカさんに怒られるよ」

 「襲われたらしょうがないじゃない。スラムはどこだー」
 「ダメだって!」
 しかし三人とも、編み上げのコンバットブーツに、ジーンズ。
 それと「石神一家」のトレーナーにボンバージャケットを着ている。
 やる気だ。



 一時間後。

 「あー、全然相手にならないね」
 全部で4組の男たちに襲われた。
 ガンを持っている人間もいたが、38口径の弾を指ではじくと、それだけで逃げ出した。
 もちろん、追って潰した。
 一応、骨折などはない。
 ただの遊びだ。

 「もうちょっと手応えが欲しいにゃー」

 「あ!」
 「どうしたの、ハー!」
 「いるじゃん!」
 「「え?」」
 「ここニューヨークじゃん!」
 「そうだけど?」

 「聖がいるじゃん!」
 「「アァッー!!」」

 石神に電話した。

 「タカさーん!」
 「おう! 亜紀ちゃんか。そっちはどうだ?」
 「はい! まあボチボチ」
 「なんだよ、それ」
 石神は笑っていた。

 「あの、聖さんに会っておこうと思いまして」
 「ああ、そうか。じゃあ、俺が感謝してたって伝えてくれよ!」
 「はい!」
 石神から、聖の住所を聞いた。
 三人でガッツポーズを取った。



 まってろー、聖ぃ~!
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