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I ♡ NY Ⅶ
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聖のマンションへ行き、訓練場へ移動。
三人は燃えている。
双子が聖に襲い掛かった。
夕べ石神に言われた通り、二人での同時攻撃だ。
「お?」
聖が笑みを浮かべる。
「おい、トラになんか言われたか!」
笑いながら、双子の攻撃を受け流す。
「ちょっと厄介だな」
双子が同時に放ったブロウが、聖の腹に吸い込まれる。
ルーの攻撃を避け、聖はハーの拳を腹筋で受け止めた。
「いってぇなぁ!」
双子が同時に左右から回し蹴りを放った。
聖は前方に移動しながら、両手で二人の顔面を殴る。
双子は左右にぶっ飛んだ。
聖は休憩にしようと言った。
四人でまた食堂に移動する。
大量のハンバーガーとステーキが出てくる。
「おい、チビ共」
「「はい!」」
「今日のはなかなか良かった。俺も一発喰らったしな」
「「はい!」」
「あれはトラの言いつけか?」
「はい、二人で同時攻撃をしろって」
「なるほどな」
聖は次々とハンバーガーを喰らって行く。
「お前らはその意味が分かるのか?」
「はい、面での攻撃かと」
「よし!」
聖は嬉しそうに笑い、食べかけのハンバーガーを喰えとルーに渡した。
汚いからいらないと断られた。
「点での攻撃は、足の速い奴に回避される。とくにお前らみたいにピョンピョン跳ねる奴はな」
「「はい!」」
「でも面の攻撃ならば、かわす奴はすくない。異常に速い奴と、予見できる奴だけだ」
「「はい!」」
「だから、攻撃が面でできるようになるのが、一人前の第一歩だな」
「でも、聖さんの攻撃って点ですよね?」
「俺は一瞬で無数の攻撃パターンを読んでいるんだ。だから結果的に面と同じなんだよ」
「?」
「幾らでもどこにでも攻撃できるってことだ」
「ルー、オイラー標数でポリトープを作って行くじゃない」
「そうか、必ず凸面になるよね!」
「そうそう」
「ファセットを組むのはそんなに大変じゃないから」
「そっから複素ヒルベルト空間に展開すれば!」
「すごいものが出来るんじゃない!」
「そうそう、それだ。よく気付いたな」
「「「……」」」
「ブサ姉、今日はお前も面の攻撃をやってみろ」
「はい!」
昼食後、主に亜紀と双子でやらされた。
互いの手の内は見えているので、激しい攻防になった。
やはり強いのは亜紀だったが、亜紀も双子の攻撃を受けることもあった。
その後で亜紀はまた聖と対戦した。
双子は互いとやり合う。
「ブサ! もっと状況を見ろ!」
「はい!」
「足で移動しようとするな! 全身を使え!」
「はい!」
腕や足を振り回すことで動くことを覚えた。
「よし! 俺のチンチンを舐めてもいいぞ!」
「いりません!」
「じゃあ、いいものを見せてやる」
聖の身体が霞んだ。
亜紀は左脇腹に衝撃を感じた。
フックだ。
空手で言う鍵突き。
ほんの一瞬、身体が止まった。
こめかみに衝撃。
左頬に衝撃。
胃に衝撃。
首に衝撃。
後頭部に衝撃。
右脇腹に衝撃。
膀胱に衝撃。
顎に衝撃……
48回。
全身を殴られ蹴られた。
倒れることすら出来なかった。
防御することも出来なかった。
その後で、やっと地面に倒れることが出来た。
「「テンペスト」だ。トラと二人で考えた。防御不能、回避不能。死ぬまで攻撃が続く」
「は、はい」
「ブサは、これを覚えて帰れ」
「も、もう一度」
「無理だ。今日のお前は壊れた。あとはチビブサたちを見ていろ」
「……」
「ああ、「テンペスト」っていうのはな。あ、ああ、アレの代表作だろ」
「シェイクスピア」
「今俺が言おうとしてただろう!」
「……」
「嵐って意味だよな」
「合ってますよ」
「なんか、もう一つあったような……」
「なんですか?」
「あ、いいや」
「……」
「トラと一緒に、攻撃しながらどういう防御が可能か考えながら作った。流石のお前も回避は無理だ。頭の良いトラが考えたんだからな」
「やっぱりタカさんが考えたんじゃ」
「俺も手伝ったんだぁ!」
亜紀は立ち上がろうとした。
石神が作ったという技を、すぐにでも会得しようと思った。
しかし、立ち上がれなかった。
「無理だ。威力を抑えたとはいえ、あの技は全身を殺す技だ。お前は今日は立てないよ。お前がブサイクじゃなきゃ、俺にレイプされるところだ」
「……」
「大人しく寝てろ」
「分かりました」
その日、ボロボロになった双子と、死人のように動けない亜紀を見て、レイが卒倒しそうになった。
風呂に入り、双子は復活したが、亜紀はまだ動き辛いようだった。
「皇紀、食べさせて」
食欲はあった。
その夜、遠くにいる石神のことを思い、ベッドで亜紀は泣いた。
「タカさんは、ずっと遠くにいるんですね。でも、私必ずそこへ行きますから」
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「よし、鷹! もう一回行くぞ!」
「石神先生、すこし休ませてください」
「だめだだめだ! 俺はもうギュインギュイン・ロックンロールが始まったんだぁ!」
「ウフフフ」
「お、笑う余裕があるな!」
「いえ、本当に」
「喋れるうちはまだ大丈夫だ、行くぞぉーーー!」
「ああ、ハウッ!」
「よし! このまま家中を回るぞ! 誰もいないんだからなぁ!」
「死んじゃいます」
「おう! 涅槃に連れてってやるぜぇ!」
「アァッ!」
「まずは玄関からだぁ!」
「ちょっと、深いです!」
「ギュインギュインだぜぇ!」
「もういきます!」
「ガハハハハハ!」
子どもたちのことなど、まったく忘れていた。
三人は燃えている。
双子が聖に襲い掛かった。
夕べ石神に言われた通り、二人での同時攻撃だ。
「お?」
聖が笑みを浮かべる。
「おい、トラになんか言われたか!」
笑いながら、双子の攻撃を受け流す。
「ちょっと厄介だな」
双子が同時に放ったブロウが、聖の腹に吸い込まれる。
ルーの攻撃を避け、聖はハーの拳を腹筋で受け止めた。
「いってぇなぁ!」
双子が同時に左右から回し蹴りを放った。
聖は前方に移動しながら、両手で二人の顔面を殴る。
双子は左右にぶっ飛んだ。
聖は休憩にしようと言った。
四人でまた食堂に移動する。
大量のハンバーガーとステーキが出てくる。
「おい、チビ共」
「「はい!」」
「今日のはなかなか良かった。俺も一発喰らったしな」
「「はい!」」
「あれはトラの言いつけか?」
「はい、二人で同時攻撃をしろって」
「なるほどな」
聖は次々とハンバーガーを喰らって行く。
「お前らはその意味が分かるのか?」
「はい、面での攻撃かと」
「よし!」
聖は嬉しそうに笑い、食べかけのハンバーガーを喰えとルーに渡した。
汚いからいらないと断られた。
「点での攻撃は、足の速い奴に回避される。とくにお前らみたいにピョンピョン跳ねる奴はな」
「「はい!」」
「でも面の攻撃ならば、かわす奴はすくない。異常に速い奴と、予見できる奴だけだ」
「「はい!」」
「だから、攻撃が面でできるようになるのが、一人前の第一歩だな」
「でも、聖さんの攻撃って点ですよね?」
「俺は一瞬で無数の攻撃パターンを読んでいるんだ。だから結果的に面と同じなんだよ」
「?」
「幾らでもどこにでも攻撃できるってことだ」
「ルー、オイラー標数でポリトープを作って行くじゃない」
「そうか、必ず凸面になるよね!」
「そうそう」
「ファセットを組むのはそんなに大変じゃないから」
「そっから複素ヒルベルト空間に展開すれば!」
「すごいものが出来るんじゃない!」
「そうそう、それだ。よく気付いたな」
「「「……」」」
「ブサ姉、今日はお前も面の攻撃をやってみろ」
「はい!」
昼食後、主に亜紀と双子でやらされた。
互いの手の内は見えているので、激しい攻防になった。
やはり強いのは亜紀だったが、亜紀も双子の攻撃を受けることもあった。
その後で亜紀はまた聖と対戦した。
双子は互いとやり合う。
「ブサ! もっと状況を見ろ!」
「はい!」
「足で移動しようとするな! 全身を使え!」
「はい!」
腕や足を振り回すことで動くことを覚えた。
「よし! 俺のチンチンを舐めてもいいぞ!」
「いりません!」
「じゃあ、いいものを見せてやる」
聖の身体が霞んだ。
亜紀は左脇腹に衝撃を感じた。
フックだ。
空手で言う鍵突き。
ほんの一瞬、身体が止まった。
こめかみに衝撃。
左頬に衝撃。
胃に衝撃。
首に衝撃。
後頭部に衝撃。
右脇腹に衝撃。
膀胱に衝撃。
顎に衝撃……
48回。
全身を殴られ蹴られた。
倒れることすら出来なかった。
防御することも出来なかった。
その後で、やっと地面に倒れることが出来た。
「「テンペスト」だ。トラと二人で考えた。防御不能、回避不能。死ぬまで攻撃が続く」
「は、はい」
「ブサは、これを覚えて帰れ」
「も、もう一度」
「無理だ。今日のお前は壊れた。あとはチビブサたちを見ていろ」
「……」
「ああ、「テンペスト」っていうのはな。あ、ああ、アレの代表作だろ」
「シェイクスピア」
「今俺が言おうとしてただろう!」
「……」
「嵐って意味だよな」
「合ってますよ」
「なんか、もう一つあったような……」
「なんですか?」
「あ、いいや」
「……」
「トラと一緒に、攻撃しながらどういう防御が可能か考えながら作った。流石のお前も回避は無理だ。頭の良いトラが考えたんだからな」
「やっぱりタカさんが考えたんじゃ」
「俺も手伝ったんだぁ!」
亜紀は立ち上がろうとした。
石神が作ったという技を、すぐにでも会得しようと思った。
しかし、立ち上がれなかった。
「無理だ。威力を抑えたとはいえ、あの技は全身を殺す技だ。お前は今日は立てないよ。お前がブサイクじゃなきゃ、俺にレイプされるところだ」
「……」
「大人しく寝てろ」
「分かりました」
その日、ボロボロになった双子と、死人のように動けない亜紀を見て、レイが卒倒しそうになった。
風呂に入り、双子は復活したが、亜紀はまだ動き辛いようだった。
「皇紀、食べさせて」
食欲はあった。
その夜、遠くにいる石神のことを思い、ベッドで亜紀は泣いた。
「タカさんは、ずっと遠くにいるんですね。でも、私必ずそこへ行きますから」
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「よし、鷹! もう一回行くぞ!」
「石神先生、すこし休ませてください」
「だめだだめだ! 俺はもうギュインギュイン・ロックンロールが始まったんだぁ!」
「ウフフフ」
「お、笑う余裕があるな!」
「いえ、本当に」
「喋れるうちはまだ大丈夫だ、行くぞぉーーー!」
「ああ、ハウッ!」
「よし! このまま家中を回るぞ! 誰もいないんだからなぁ!」
「死んじゃいます」
「おう! 涅槃に連れてってやるぜぇ!」
「アァッ!」
「まずは玄関からだぁ!」
「ちょっと、深いです!」
「ギュインギュインだぜぇ!」
「もういきます!」
「ガハハハハハ!」
子どもたちのことなど、まったく忘れていた。
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