富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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御堂家の夕餉

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 御堂の家に戻ったのは、3時だった。

 「すいません、遅くなりました」
 「石神さん、お帰りなさい!」
 澪さんと柳が出迎えてくれた。

 「お父さんはちょっと出掛けてるの」
 「そうか。じゃあ、今のうちに防衛システムを見回ろうかな」
 「あ、私も一緒にぃ!」

 俺は笑って早くしろと言った。
 母屋の近くにある、シェルターに入る。
 
 「あの時ここにみんなで入ったのね」
 「ああ」
 「怖かったんだけど、お父さんが石神さんが作ったものだから大丈夫だって」
 「そうか」

 核でも耐えられるものになっている。
 俺は一通り確認し、レールガンや荷電粒子砲などを見た。
 イーヴァはまだ柳にも隠してある。
 こことロックハート家のイーヴァは、「虚震花」だけではない。
 「トールハンマー」と「ブリューナク」そしてまだ表には出ていない、俺たちの奥義が繰り出せるようになっている。
 ジェヴォーダンにも有効なはずだ。




 家に戻ると、御堂が丁度帰っていた。

 「悪かったね、出掛けていて」
 「いや、カワイイ柳と一緒だったからな」
 「エェー! 嬉しい!」

 御堂は笑っていた。

 「石神が好きな栗ご飯を作りたくてね。今栗をもらって来たんだ」
 「そうなのか、悪かったなぁ」

 俺は座敷で、澪さんが淹れてくれたコーヒーを飲んでいた。
 柳も一緒に飲んでいる。

 「お前、勉強はいいのか?」
 「大丈夫ですよ!」
 「もうすっかりうちは準備してるんだからなぁ。頼むぞ」
 「はいはい」

 「墓参りはどうだった?」
 御堂が言った。

 「ああ、来て良かったよ。やっとお礼が言えた」
 「そうか」
 「静馬くんがいなかったら、お前とも出会えなかったしな」
 「うん」



 
 夕飯の準備が出来たと、澪さんが呼びに来た。
 俺が蛤が好きだと知っているので、ハマグリの甘露煮。
 鶏の七味焼き。
 俺のリクエストでおでんの鍋、ちくわぶ多め。
 あとは器が4つと刺身の御造り。
 そして栗ご飯。
 
 「俺、このちくわぶが大好きなんですよ」
 俺が言うと、正巳さんがどんどん食べてくれと言う。

 「へー」
 柳が一本取る。
 初めて食べるようだ。

 「あ、美味しい」
 「そうだろう?」

 澪さんが笑っている。

 「こちらでは、ちくわぶは入れないんですか?」
 俺が澪さんに聞くと、御堂家ではそのようだ。
 澪さん自身は知っている。

 「これからはうちでも入れるようにしよう。石神さんが好きなんだから」
 正巳さんが言った。



 食事を終え、正巳さん、御堂、俺の三人で飲み続ける。
 つまみは、おでんが沢山あるので大丈夫だ。
 柳がお茶を飲みながら一緒にいた。

 「うちが襲われた時にね、お父さんが「紅茶を飲もう」って言ったの」
 柳が言った。

 「そうなのか」
 「みんな不安そうだったからね。落ち着こうと思ったんだ」
 御堂が言う。

 「でも、画面にいろんな表示が出るでしょ?」
 「ああ、コンピューターが敵の武装を瞬時に解析するんだよ」
 「お父さんに聞いても、全然分からなかった」
 「アハハハハ!」
 御堂が笑った。

 「しょうがないよ。あれは兵器を知らなきゃな。でも、二機のヴァイパーが来たことは分かってる」
 「あ、それ出た!」
 「スーパーコブラというアメリカの攻撃ヘリの最新型なんだ。黙ってりゃ、この辺一帯は焼け野原よな」
 「へぇー!」

 「俺も戦闘記録を見たけど、本当は荷電粒子砲だけで対応するはずだったんだ。でも、オロチが出てきた」
 「そうそう! ミサイルが発射された瞬間に、オロチが」
 「凄いよなぁ、あいつ」

 「だけど、オロチは本当は隠しておきたかったんだよね?」
 御堂が言った。

 「ああ。あいつ、結構喧嘩好きなようだな」
 「石神に懐いてるものね」
 「アハハハハ!」

 「石神さんのお陰で、こうやって無事にいられる」
 正巳さんが嬉しそうに言った。

 「いいえ。元々は俺のとばっちりですから」
 「いや。石神さんといると、まったく面白いことばかりだ」
 「そんな」

 「石神の先輩の井上さんが、僕を探しに出ようとしてたんだよ」
 「ああ、あの人はそういう人だ。男気があって、優しい人なんだよ」
 「そうだね。シェルターの中でも、みんなを元気づけてくれてた。「トラが作ったものに間違いはないから」って」
 「そうだったか」

 「今は別な場所に行ってしまったけど、ここにいる間はうちのことも随分と気に掛けてくれたよ」
 「うん、そうだろうな」
 「休みの日なんか、みんなで畑仕事までしてくれたり、家や他の修繕なんかもね」
 「本当にいい人なんだよ」
 「「トラに助けられたから」だって」
 「そんなことはないよ。俺の方こそ助けられてる」
 「フフフ」
 「アハハハハ」





 俺は話題を変えた。
 子どもたちが、ロックハート家に行った話をする。

 「向こうでもあいつら、とんでもない大食いで」
 「アハハハハ!」
 正巳さんが嬉しそうに笑った。

 「大きな家なんで、専任の料理人が大勢いるんです。その人たちにも気に入ってもらえて」
 「そうだろう、そうに決まってる」
 「でも「肉」ばっかなんですよ。肉が切れて焼いてる間に、豪華な他の料理を喰うっていう」
 「ワハハハハハ!」
 「毎日、ステーキを何キロも喰うんですからねぇ。ああ、俺の友人が向こうにいて、遊んでもらって」
 「そうなのか」

 「そいつが夕飯をご馳走してくれたんですけど、またステーキハウスなんですよ」
 「「「「「アハハハハハ!」」」」」

 「こないだ、東京でも大雪が降って。双子が牛の像を雪で作ったんで、線香を焚きました」
 全員に大爆笑された。

 「牧場を買い取ろうかって、真面目に話してます」
 「相当大きなのを買わないとなぁ」
 「そうなんですよね」

 楽しく飲んで、解散した。
 俺は御堂たちに先に風呂に入ってくれと言い、また庭に出た。



 卵を二つもらい、オロチを見に行った。
 俺が行くと、呼ぶ前から顔を出していた。

 「なんだ、お前の話が出たのが聞こえたか?」
 
 俺が笑って卵を割ると、また器用に呑んだ。

 「お前、守ってくれるのは嬉しいけど、無理はしないでくれよな」
 オロチは、しゃがんだ俺の肩に顔を乗せていた。

 「それになぁ。お前は最後の砦なんだからな。いよいよって時に登場して、敵の度肝を抜いてくれよ」
 舌が俺の後頭部を軽く叩いた。

 「あ? お前、喧嘩好きなのか? 俺もそうだぁ! アハハハハハ!」




 家の中に戻ると、柳が待っていた。

 「さあ、早くぅ!」
 「うちにも同じのがいるよ」
 「知ってますよ!」
 「そうかよ!」




 二人で一緒に風呂に入った。
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