689 / 3,202
御堂家の夕餉
しおりを挟む
御堂の家に戻ったのは、3時だった。
「すいません、遅くなりました」
「石神さん、お帰りなさい!」
澪さんと柳が出迎えてくれた。
「お父さんはちょっと出掛けてるの」
「そうか。じゃあ、今のうちに防衛システムを見回ろうかな」
「あ、私も一緒にぃ!」
俺は笑って早くしろと言った。
母屋の近くにある、シェルターに入る。
「あの時ここにみんなで入ったのね」
「ああ」
「怖かったんだけど、お父さんが石神さんが作ったものだから大丈夫だって」
「そうか」
核でも耐えられるものになっている。
俺は一通り確認し、レールガンや荷電粒子砲などを見た。
イーヴァはまだ柳にも隠してある。
こことロックハート家のイーヴァは、「虚震花」だけではない。
「トールハンマー」と「ブリューナク」そしてまだ表には出ていない、俺たちの奥義が繰り出せるようになっている。
ジェヴォーダンにも有効なはずだ。
家に戻ると、御堂が丁度帰っていた。
「悪かったね、出掛けていて」
「いや、カワイイ柳と一緒だったからな」
「エェー! 嬉しい!」
御堂は笑っていた。
「石神が好きな栗ご飯を作りたくてね。今栗をもらって来たんだ」
「そうなのか、悪かったなぁ」
俺は座敷で、澪さんが淹れてくれたコーヒーを飲んでいた。
柳も一緒に飲んでいる。
「お前、勉強はいいのか?」
「大丈夫ですよ!」
「もうすっかりうちは準備してるんだからなぁ。頼むぞ」
「はいはい」
「墓参りはどうだった?」
御堂が言った。
「ああ、来て良かったよ。やっとお礼が言えた」
「そうか」
「静馬くんがいなかったら、お前とも出会えなかったしな」
「うん」
夕飯の準備が出来たと、澪さんが呼びに来た。
俺が蛤が好きだと知っているので、ハマグリの甘露煮。
鶏の七味焼き。
俺のリクエストでおでんの鍋、ちくわぶ多め。
あとは器が4つと刺身の御造り。
そして栗ご飯。
「俺、このちくわぶが大好きなんですよ」
俺が言うと、正巳さんがどんどん食べてくれと言う。
「へー」
柳が一本取る。
初めて食べるようだ。
「あ、美味しい」
「そうだろう?」
澪さんが笑っている。
「こちらでは、ちくわぶは入れないんですか?」
俺が澪さんに聞くと、御堂家ではそのようだ。
澪さん自身は知っている。
「これからはうちでも入れるようにしよう。石神さんが好きなんだから」
正巳さんが言った。
食事を終え、正巳さん、御堂、俺の三人で飲み続ける。
つまみは、おでんが沢山あるので大丈夫だ。
柳がお茶を飲みながら一緒にいた。
「うちが襲われた時にね、お父さんが「紅茶を飲もう」って言ったの」
柳が言った。
「そうなのか」
「みんな不安そうだったからね。落ち着こうと思ったんだ」
御堂が言う。
「でも、画面にいろんな表示が出るでしょ?」
「ああ、コンピューターが敵の武装を瞬時に解析するんだよ」
「お父さんに聞いても、全然分からなかった」
「アハハハハ!」
御堂が笑った。
「しょうがないよ。あれは兵器を知らなきゃな。でも、二機のヴァイパーが来たことは分かってる」
「あ、それ出た!」
「スーパーコブラというアメリカの攻撃ヘリの最新型なんだ。黙ってりゃ、この辺一帯は焼け野原よな」
「へぇー!」
「俺も戦闘記録を見たけど、本当は荷電粒子砲だけで対応するはずだったんだ。でも、オロチが出てきた」
「そうそう! ミサイルが発射された瞬間に、オロチが」
「凄いよなぁ、あいつ」
「だけど、オロチは本当は隠しておきたかったんだよね?」
御堂が言った。
「ああ。あいつ、結構喧嘩好きなようだな」
「石神に懐いてるものね」
「アハハハハ!」
「石神さんのお陰で、こうやって無事にいられる」
正巳さんが嬉しそうに言った。
「いいえ。元々は俺のとばっちりですから」
「いや。石神さんといると、まったく面白いことばかりだ」
「そんな」
「石神の先輩の井上さんが、僕を探しに出ようとしてたんだよ」
「ああ、あの人はそういう人だ。男気があって、優しい人なんだよ」
「そうだね。シェルターの中でも、みんなを元気づけてくれてた。「トラが作ったものに間違いはないから」って」
「そうだったか」
「今は別な場所に行ってしまったけど、ここにいる間はうちのことも随分と気に掛けてくれたよ」
「うん、そうだろうな」
「休みの日なんか、みんなで畑仕事までしてくれたり、家や他の修繕なんかもね」
「本当にいい人なんだよ」
「「トラに助けられたから」だって」
「そんなことはないよ。俺の方こそ助けられてる」
「フフフ」
「アハハハハ」
俺は話題を変えた。
子どもたちが、ロックハート家に行った話をする。
「向こうでもあいつら、とんでもない大食いで」
「アハハハハ!」
正巳さんが嬉しそうに笑った。
「大きな家なんで、専任の料理人が大勢いるんです。その人たちにも気に入ってもらえて」
「そうだろう、そうに決まってる」
「でも「肉」ばっかなんですよ。肉が切れて焼いてる間に、豪華な他の料理を喰うっていう」
「ワハハハハハ!」
「毎日、ステーキを何キロも喰うんですからねぇ。ああ、俺の友人が向こうにいて、遊んでもらって」
「そうなのか」
「そいつが夕飯をご馳走してくれたんですけど、またステーキハウスなんですよ」
「「「「「アハハハハハ!」」」」」
「こないだ、東京でも大雪が降って。双子が牛の像を雪で作ったんで、線香を焚きました」
全員に大爆笑された。
「牧場を買い取ろうかって、真面目に話してます」
「相当大きなのを買わないとなぁ」
「そうなんですよね」
楽しく飲んで、解散した。
俺は御堂たちに先に風呂に入ってくれと言い、また庭に出た。
卵を二つもらい、オロチを見に行った。
俺が行くと、呼ぶ前から顔を出していた。
「なんだ、お前の話が出たのが聞こえたか?」
俺が笑って卵を割ると、また器用に呑んだ。
「お前、守ってくれるのは嬉しいけど、無理はしないでくれよな」
オロチは、しゃがんだ俺の肩に顔を乗せていた。
「それになぁ。お前は最後の砦なんだからな。いよいよって時に登場して、敵の度肝を抜いてくれよ」
舌が俺の後頭部を軽く叩いた。
「あ? お前、喧嘩好きなのか? 俺もそうだぁ! アハハハハハ!」
家の中に戻ると、柳が待っていた。
「さあ、早くぅ!」
「うちにも同じのがいるよ」
「知ってますよ!」
「そうかよ!」
二人で一緒に風呂に入った。
「すいません、遅くなりました」
「石神さん、お帰りなさい!」
澪さんと柳が出迎えてくれた。
「お父さんはちょっと出掛けてるの」
「そうか。じゃあ、今のうちに防衛システムを見回ろうかな」
「あ、私も一緒にぃ!」
俺は笑って早くしろと言った。
母屋の近くにある、シェルターに入る。
「あの時ここにみんなで入ったのね」
「ああ」
「怖かったんだけど、お父さんが石神さんが作ったものだから大丈夫だって」
「そうか」
核でも耐えられるものになっている。
俺は一通り確認し、レールガンや荷電粒子砲などを見た。
イーヴァはまだ柳にも隠してある。
こことロックハート家のイーヴァは、「虚震花」だけではない。
「トールハンマー」と「ブリューナク」そしてまだ表には出ていない、俺たちの奥義が繰り出せるようになっている。
ジェヴォーダンにも有効なはずだ。
家に戻ると、御堂が丁度帰っていた。
「悪かったね、出掛けていて」
「いや、カワイイ柳と一緒だったからな」
「エェー! 嬉しい!」
御堂は笑っていた。
「石神が好きな栗ご飯を作りたくてね。今栗をもらって来たんだ」
「そうなのか、悪かったなぁ」
俺は座敷で、澪さんが淹れてくれたコーヒーを飲んでいた。
柳も一緒に飲んでいる。
「お前、勉強はいいのか?」
「大丈夫ですよ!」
「もうすっかりうちは準備してるんだからなぁ。頼むぞ」
「はいはい」
「墓参りはどうだった?」
御堂が言った。
「ああ、来て良かったよ。やっとお礼が言えた」
「そうか」
「静馬くんがいなかったら、お前とも出会えなかったしな」
「うん」
夕飯の準備が出来たと、澪さんが呼びに来た。
俺が蛤が好きだと知っているので、ハマグリの甘露煮。
鶏の七味焼き。
俺のリクエストでおでんの鍋、ちくわぶ多め。
あとは器が4つと刺身の御造り。
そして栗ご飯。
「俺、このちくわぶが大好きなんですよ」
俺が言うと、正巳さんがどんどん食べてくれと言う。
「へー」
柳が一本取る。
初めて食べるようだ。
「あ、美味しい」
「そうだろう?」
澪さんが笑っている。
「こちらでは、ちくわぶは入れないんですか?」
俺が澪さんに聞くと、御堂家ではそのようだ。
澪さん自身は知っている。
「これからはうちでも入れるようにしよう。石神さんが好きなんだから」
正巳さんが言った。
食事を終え、正巳さん、御堂、俺の三人で飲み続ける。
つまみは、おでんが沢山あるので大丈夫だ。
柳がお茶を飲みながら一緒にいた。
「うちが襲われた時にね、お父さんが「紅茶を飲もう」って言ったの」
柳が言った。
「そうなのか」
「みんな不安そうだったからね。落ち着こうと思ったんだ」
御堂が言う。
「でも、画面にいろんな表示が出るでしょ?」
「ああ、コンピューターが敵の武装を瞬時に解析するんだよ」
「お父さんに聞いても、全然分からなかった」
「アハハハハ!」
御堂が笑った。
「しょうがないよ。あれは兵器を知らなきゃな。でも、二機のヴァイパーが来たことは分かってる」
「あ、それ出た!」
「スーパーコブラというアメリカの攻撃ヘリの最新型なんだ。黙ってりゃ、この辺一帯は焼け野原よな」
「へぇー!」
「俺も戦闘記録を見たけど、本当は荷電粒子砲だけで対応するはずだったんだ。でも、オロチが出てきた」
「そうそう! ミサイルが発射された瞬間に、オロチが」
「凄いよなぁ、あいつ」
「だけど、オロチは本当は隠しておきたかったんだよね?」
御堂が言った。
「ああ。あいつ、結構喧嘩好きなようだな」
「石神に懐いてるものね」
「アハハハハ!」
「石神さんのお陰で、こうやって無事にいられる」
正巳さんが嬉しそうに言った。
「いいえ。元々は俺のとばっちりですから」
「いや。石神さんといると、まったく面白いことばかりだ」
「そんな」
「石神の先輩の井上さんが、僕を探しに出ようとしてたんだよ」
「ああ、あの人はそういう人だ。男気があって、優しい人なんだよ」
「そうだね。シェルターの中でも、みんなを元気づけてくれてた。「トラが作ったものに間違いはないから」って」
「そうだったか」
「今は別な場所に行ってしまったけど、ここにいる間はうちのことも随分と気に掛けてくれたよ」
「うん、そうだろうな」
「休みの日なんか、みんなで畑仕事までしてくれたり、家や他の修繕なんかもね」
「本当にいい人なんだよ」
「「トラに助けられたから」だって」
「そんなことはないよ。俺の方こそ助けられてる」
「フフフ」
「アハハハハ」
俺は話題を変えた。
子どもたちが、ロックハート家に行った話をする。
「向こうでもあいつら、とんでもない大食いで」
「アハハハハ!」
正巳さんが嬉しそうに笑った。
「大きな家なんで、専任の料理人が大勢いるんです。その人たちにも気に入ってもらえて」
「そうだろう、そうに決まってる」
「でも「肉」ばっかなんですよ。肉が切れて焼いてる間に、豪華な他の料理を喰うっていう」
「ワハハハハハ!」
「毎日、ステーキを何キロも喰うんですからねぇ。ああ、俺の友人が向こうにいて、遊んでもらって」
「そうなのか」
「そいつが夕飯をご馳走してくれたんですけど、またステーキハウスなんですよ」
「「「「「アハハハハハ!」」」」」
「こないだ、東京でも大雪が降って。双子が牛の像を雪で作ったんで、線香を焚きました」
全員に大爆笑された。
「牧場を買い取ろうかって、真面目に話してます」
「相当大きなのを買わないとなぁ」
「そうなんですよね」
楽しく飲んで、解散した。
俺は御堂たちに先に風呂に入ってくれと言い、また庭に出た。
卵を二つもらい、オロチを見に行った。
俺が行くと、呼ぶ前から顔を出していた。
「なんだ、お前の話が出たのが聞こえたか?」
俺が笑って卵を割ると、また器用に呑んだ。
「お前、守ってくれるのは嬉しいけど、無理はしないでくれよな」
オロチは、しゃがんだ俺の肩に顔を乗せていた。
「それになぁ。お前は最後の砦なんだからな。いよいよって時に登場して、敵の度肝を抜いてくれよ」
舌が俺の後頭部を軽く叩いた。
「あ? お前、喧嘩好きなのか? 俺もそうだぁ! アハハハハハ!」
家の中に戻ると、柳が待っていた。
「さあ、早くぅ!」
「うちにも同じのがいるよ」
「知ってますよ!」
「そうかよ!」
二人で一緒に風呂に入った。
0
あなたにおすすめの小説
烏の王と宵の花嫁
水川サキ
キャラ文芸
吸血鬼の末裔として生まれた華族の娘、月夜は家族から虐げられ孤独に生きていた。
唯一の慰めは、年に一度届く〈からす〉からの手紙。
その送り主は太陽の化身と称される上級華族、縁樹だった。
ある日、姉の縁談相手を誤って傷つけた月夜は、父に遊郭へ売られそうになり屋敷を脱出するが、陽の下で倒れてしまう。
死を覚悟した瞬間〈からす〉の正体である縁樹が現れ、互いの思惑から契約結婚を結ぶことになる。
※初出2024年7月
芙蓉は後宮で花開く
速見 沙弥
キャラ文芸
下級貴族の親をもつ5人姉弟の長女 蓮花《リェンファ》。
借金返済で苦しむ家計を助けるために後宮へと働きに出る。忙しくも穏やかな暮らしの中、出会ったのは翡翠の色の目をした青年。さらに思いもよらぬ思惑に巻き込まれてゆくーーー
カクヨムでも連載しております。
【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。
文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。
父王に一番愛される姫。
ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。
優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。
しかし、彼は居なくなった。
聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。
そして、二年後。
レティシアナは、大国の王の妻となっていた。
※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。
小説家になろうにも投稿しています。
エールありがとうございます!
後宮なりきり夫婦録
石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」
「はあ……?」
雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。
あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。
空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。
かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。
影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。
サイトより転載になります。
【完結】狡い人
ジュレヌク
恋愛
双子のライラは、言う。
レイラは、狡い。
レイラの功績を盗み、賞を受賞し、母の愛も全て自分のものにしたくせに、事あるごとに、レイラを責める。
双子のライラに狡いと責められ、レイラは、黙る。
口に出して言いたいことは山ほどあるのに、おし黙る。
そこには、人それぞれの『狡さ』があった。
そんな二人の関係が、ある一つの出来事で大きく変わっていく。
恋を知り、大きく羽ばたくレイラと、地に落ちていくライラ。
2人の違いは、一体なんだったのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる