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再び、皇紀と風花 Ⅱ
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「申し訳ないなー」
皇紀は歩きながら、何度もそう言った。
風花はその度に笑った。
「風花さん、何かご馳走したいんですが」
「じゃあ、買い物して行きましょう!」
「え?」
「私がお料理します!」
「そんな!」
「大丈夫ですよ。石神さんに言われて、あれから結構作るようになりましたから。あ、石神さんみたくはできませんよ?」
「うーん」
「任せて下さい」
「じゃあ、一緒に作りましょうか?」
「ええ、そうしましょう!」
二人でスーパーに寄った。
風花はたくさんの肉を買おうとしたが、皇紀は普通でいいと言った。
「姉や妹と一緒じゃないと、そんなに食べませんから」
「でも、こないだはあんなにたくさん食べたじゃないですか!」
「あ、ああ!」
「ほら、遠慮しないで下さい」
皇紀は笑って風花の言う通りにした。
「こんなに買い物をしたのは初めてです」
「アハハハハ」
二人で大きな包みを抱えて帰った。
「じゃあ、僕はステーキを焼きますね」
「はい、じゃあ私はシチューを」
二人で一緒にキッチンに立った。
皇紀は持って来た「殴られ屋」のエプロンを付けている。
風花がそれを見て笑った。
「姉や妹に殴られてばかりで」
「皇紀さんは優しいですもんね」
皇紀は4キロのステーキを焼き、合間に風花のためにナスの煮びたしとサラダを作った。
「ああ、やっぱり皇紀さんの方が手際がいい」
「そんなことありませんよ」
二人で笑いながら作った。
皇紀は最後にもう一枚ステーキを焼いた。
ヒレ肉のもので、それは風花のためだった。
丁寧に皿に盛られ、風花は皇紀の優しさを感じた。
食べながら、皇紀は風花にいろいろな話をした。
「タカさんと姉が、ロボの毛を集めてるんですよ」
「ええ?」
「クッションを作るらしいですよ」
「カワイイ!」
「六花さんがうちに来て、タカさんの部屋で見つけて」
「どうなったんです?」
「そっと持って帰ろうとして、タカさんと姉に怒られてました」
「アハハハハハ!」
「六花さん、ああいうの好きなんですよね」
「ロボとも仲が良くって」
「そうなんですよ。よくうちに来ると一緒に遊んでます」
二人で作った食事も美味しかった。
風花はステーキが本当に美味しいと言い、皇紀はシチューが美味しいと言った。
話しながら、皇紀がステーキを次々に食べるのを、風花は嬉しそうに見ていた。
「そういえば、石神さん一時は大変だったそうで」
「あ、ああ。聞いてますか」
「ええ。もう大丈夫なんですか?」
「はい! すっかり元気ですよ。ああ、あの時に、みんなには黙っていたもんで」
「そうなんですか」
「特に栞さんには。あの人は感情的に高まっちゃう人なんで」
「はい」
「それがバレちゃって! 病院で一江さんがタカさんに電話してきたんです」
「それで!」
「逃げて下さいって。でもタカさんは本当に凄かったんですよ」
皇紀は、石神がどうやって栞を宥めたのかを話した。
「来た時には物凄い怒りで。タクシーの基板が壊れて止まっちゃいましたからね」
「ええ!」
「それが、タカさんとちょっと話したら笑って帰るんですから」
「アハハハハ!」
「週末に来た時なんか、僕たちにセリフを覚えさせて」
「はい?」
「僕が、タカさんが寝言で栞さんの名前を呼んでいたとか」
「アハハハハハ!」
「姉は起きたら手を握られて「栞か!」って叫んだって言ったんです」
「もう、やめてください、アハハハ!」
「栞さん、ニコニコして上機嫌で帰りましたよ」
「石神さんって、本当に面白いですよね」
楽しく食事を終え、皇紀は風呂をいただいた。
ヘンな毛が落ちていないか、丹念にチェックして風呂を出た。
風花が風呂に入っている間、落ち着かなかった。
「あ、そうだ!」
石神に、寝る前に風花に渡せと言われていた土産があることを思い出した。
「良かったぁー」
風花が風呂から出て来る。
お互い寝間着で、ちょっと恥ずかしかった。
「これ、タカさんからです」
「え? お土産はさっきいただきましたけど」
「はい。寝る前に渡せって、タカさんからです」
「はぁ」
風花が包みを受け取り、リボンを解いた。
包装を開く。
「「アァッーーーーー!!!」」
《ヒアルロン酸 超薄型0.01ミリ Sサイズ》
皇紀が風花から奪い取り、ダッシュで部屋の荷物へ仕舞った。
「す、すいません」
「い、いいえ」
二人でソファに座り、黙り込んだ。
「あ、あの」
「はい!」
「私、皇紀さんのことは好きなんですけど」
「え!」
「でも、やっぱりまだ早いって言うか」
「そ、それはもう!」
二人は間を置いて笑った。
寝る前に荷物を整理していると、見慣れない袋があった。
袋にマジックで書いてあった。
《亜紀 ルー ハー ガンバレ、皇紀!》
中身はコンドームだった。
皇紀は大笑いして寝た。
翌朝、朝食を食べて二人でマンションを出た。
風花が駅まで送ってくれると言う。
並んで歩いた。
「あ、そうだ!」
「どうしたんです?」
「風花さん、あなたは僕が絶対に守りますから!」
「皇紀さん!」
「タカさんに、絶対にそう言えって言われてました」
「アハハハハ! それは言わなければいいのに」
「いえ、やっぱりその」
「ウフフフ」
「でも、僕も本当にそう思ってます! 絶対に守りますよ」
風花は笑って、皇紀の頬にキスをした。
皇紀は抱き締めて、風花の唇にキスをした。
「強引ですね」
「コンドームはまだ我慢しますから」
「ウフフフフ」
風花は新幹線のホームまで見送ってくれた。
「風花さん、また来ますね!」
「はい、待ってます!」
「うちにもまたいらして下さい!」
「必ず!」
「ダサ!」
「タマなし!」
「右手ヤロウ!」
皇紀が家に帰ると、姉と妹たちに散々言われた。
皇紀はなじられながら、姉と妹たちの優しさに笑っていた。
皇紀は歩きながら、何度もそう言った。
風花はその度に笑った。
「風花さん、何かご馳走したいんですが」
「じゃあ、買い物して行きましょう!」
「え?」
「私がお料理します!」
「そんな!」
「大丈夫ですよ。石神さんに言われて、あれから結構作るようになりましたから。あ、石神さんみたくはできませんよ?」
「うーん」
「任せて下さい」
「じゃあ、一緒に作りましょうか?」
「ええ、そうしましょう!」
二人でスーパーに寄った。
風花はたくさんの肉を買おうとしたが、皇紀は普通でいいと言った。
「姉や妹と一緒じゃないと、そんなに食べませんから」
「でも、こないだはあんなにたくさん食べたじゃないですか!」
「あ、ああ!」
「ほら、遠慮しないで下さい」
皇紀は笑って風花の言う通りにした。
「こんなに買い物をしたのは初めてです」
「アハハハハ」
二人で大きな包みを抱えて帰った。
「じゃあ、僕はステーキを焼きますね」
「はい、じゃあ私はシチューを」
二人で一緒にキッチンに立った。
皇紀は持って来た「殴られ屋」のエプロンを付けている。
風花がそれを見て笑った。
「姉や妹に殴られてばかりで」
「皇紀さんは優しいですもんね」
皇紀は4キロのステーキを焼き、合間に風花のためにナスの煮びたしとサラダを作った。
「ああ、やっぱり皇紀さんの方が手際がいい」
「そんなことありませんよ」
二人で笑いながら作った。
皇紀は最後にもう一枚ステーキを焼いた。
ヒレ肉のもので、それは風花のためだった。
丁寧に皿に盛られ、風花は皇紀の優しさを感じた。
食べながら、皇紀は風花にいろいろな話をした。
「タカさんと姉が、ロボの毛を集めてるんですよ」
「ええ?」
「クッションを作るらしいですよ」
「カワイイ!」
「六花さんがうちに来て、タカさんの部屋で見つけて」
「どうなったんです?」
「そっと持って帰ろうとして、タカさんと姉に怒られてました」
「アハハハハハ!」
「六花さん、ああいうの好きなんですよね」
「ロボとも仲が良くって」
「そうなんですよ。よくうちに来ると一緒に遊んでます」
二人で作った食事も美味しかった。
風花はステーキが本当に美味しいと言い、皇紀はシチューが美味しいと言った。
話しながら、皇紀がステーキを次々に食べるのを、風花は嬉しそうに見ていた。
「そういえば、石神さん一時は大変だったそうで」
「あ、ああ。聞いてますか」
「ええ。もう大丈夫なんですか?」
「はい! すっかり元気ですよ。ああ、あの時に、みんなには黙っていたもんで」
「そうなんですか」
「特に栞さんには。あの人は感情的に高まっちゃう人なんで」
「はい」
「それがバレちゃって! 病院で一江さんがタカさんに電話してきたんです」
「それで!」
「逃げて下さいって。でもタカさんは本当に凄かったんですよ」
皇紀は、石神がどうやって栞を宥めたのかを話した。
「来た時には物凄い怒りで。タクシーの基板が壊れて止まっちゃいましたからね」
「ええ!」
「それが、タカさんとちょっと話したら笑って帰るんですから」
「アハハハハ!」
「週末に来た時なんか、僕たちにセリフを覚えさせて」
「はい?」
「僕が、タカさんが寝言で栞さんの名前を呼んでいたとか」
「アハハハハハ!」
「姉は起きたら手を握られて「栞か!」って叫んだって言ったんです」
「もう、やめてください、アハハハ!」
「栞さん、ニコニコして上機嫌で帰りましたよ」
「石神さんって、本当に面白いですよね」
楽しく食事を終え、皇紀は風呂をいただいた。
ヘンな毛が落ちていないか、丹念にチェックして風呂を出た。
風花が風呂に入っている間、落ち着かなかった。
「あ、そうだ!」
石神に、寝る前に風花に渡せと言われていた土産があることを思い出した。
「良かったぁー」
風花が風呂から出て来る。
お互い寝間着で、ちょっと恥ずかしかった。
「これ、タカさんからです」
「え? お土産はさっきいただきましたけど」
「はい。寝る前に渡せって、タカさんからです」
「はぁ」
風花が包みを受け取り、リボンを解いた。
包装を開く。
「「アァッーーーーー!!!」」
《ヒアルロン酸 超薄型0.01ミリ Sサイズ》
皇紀が風花から奪い取り、ダッシュで部屋の荷物へ仕舞った。
「す、すいません」
「い、いいえ」
二人でソファに座り、黙り込んだ。
「あ、あの」
「はい!」
「私、皇紀さんのことは好きなんですけど」
「え!」
「でも、やっぱりまだ早いって言うか」
「そ、それはもう!」
二人は間を置いて笑った。
寝る前に荷物を整理していると、見慣れない袋があった。
袋にマジックで書いてあった。
《亜紀 ルー ハー ガンバレ、皇紀!》
中身はコンドームだった。
皇紀は大笑いして寝た。
翌朝、朝食を食べて二人でマンションを出た。
風花が駅まで送ってくれると言う。
並んで歩いた。
「あ、そうだ!」
「どうしたんです?」
「風花さん、あなたは僕が絶対に守りますから!」
「皇紀さん!」
「タカさんに、絶対にそう言えって言われてました」
「アハハハハ! それは言わなければいいのに」
「いえ、やっぱりその」
「ウフフフ」
「でも、僕も本当にそう思ってます! 絶対に守りますよ」
風花は笑って、皇紀の頬にキスをした。
皇紀は抱き締めて、風花の唇にキスをした。
「強引ですね」
「コンドームはまだ我慢しますから」
「ウフフフフ」
風花は新幹線のホームまで見送ってくれた。
「風花さん、また来ますね!」
「はい、待ってます!」
「うちにもまたいらして下さい!」
「必ず!」
「ダサ!」
「タマなし!」
「右手ヤロウ!」
皇紀が家に帰ると、姉と妹たちに散々言われた。
皇紀はなじられながら、姉と妹たちの優しさに笑っていた。
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