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救出作戦
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ハワイで俺たちは乗り換え、聖の会社には、早朝の6時過ぎに着いた。
「セイントPMC」には、私有の滑走路がある。
ここから直接、輸送機で出撃することもある。
武装のある軍用機は無理だが、人員を輸送するだけの航空機は自前で持つことが出来る。
聖が出迎えてくれた。
「よう! 世話をかけたな」
「トラ! まずは飯だ!」
聖は何も言わず、まず食堂へ案内してくれた。
俺たちのために職員を集め準備してくれていた。
大量のステーキとバーガーがある。
子どもたちが旺盛に喰い出した。
俺も聖もガンガン食べる。
「拉致現場が特定できた。ブロードウェイだ。監視カメラに、突然倒れたレイを運ぶ男たちが写っていた」
「ブロードウェイ?」
「ああ。他の監視カメラの映像も見てみた。よくあそこへ行っていたようだ。静江夫人に聞いたら、何か思い出があったらしい」
「レイ!」
亜紀ちゃんたちが突然泣き出した。
俺に、ニューヨークで三人が案内してもらったのだと言った。
警察などの伝手で、聖はカメラの映像を集め、検索してくれていた。
「そうか。行動を読まれていたんだな」
「ああ。レイチェルを最初から狙っていたんだろう。お前の親しい女だったらしいからな」
「そうだ」
俺の顔を見て、亜紀ちゃんたちが硬直した。
恐ろしい顔をしていたのだろう。
「映像では誰も接触していない。倒れてからだ」
「麻酔弾か」
「多分な。エアガンでやられたんだろう。映像はトロくて写ってないけどな」
レイに戦闘経験は無い。
気付けば対応できただろうが、こういうやり方には無力だっただろう。
「それで行き先は?」
「今、警察の監視カメラ網を使って追っている。レイチェルを積み込んだバンまでは分かっている。西に向かっているらしい」
「西? じゃあ」
「ああ。多分D基地だろうな」
「俺たちに協力するという人間から何か聞いているか?」
「確認したが、何も知らないようだ」
俺は決意した。
もう実力行使しかない。
「聖、「ヴァーミリオン」の中枢と渡りをつけたと言ってたよな」
「ああ」
「そいつに、レイを帰さなければ基地を破壊すると伝えてくれ」
「分かった」
「NSAと陸軍の方にも、同じことが出来るか?」
「ああ、やってみるよ」
「俺はロックハートとマリーンにも働きかける。5時間以内に解放だ。さもなければ終わりだと」
「おし、分かった!」
「1時間後に示威行為をする」
「うん?」
「まあ、そう伝えてくれ。午前8時な」
「あ、ああ、分かったよ」
俺たちはロックハートの家まで送ってもらった。
でかいリムジンの中で、聖は俺の隣に座り、目を閉じていた。
静江さんが青い顔で待っていた。
アルは出掛けている。
「石神さん!」
「お陰様で、こんなに早く到着できました。ありがとうございます」
「いいえ!」
俺は聖と話した内容を静江さんにも伝えた。
「ロックハートからも、NSAと陸軍に御伝えしてもらえますか。もちろん、皆さんのご迷惑にならない方法で」
「分かりました。必ず」
「これからD基地へ向かいます」
「はい」
「必ずレイを取り戻しますよ」
「はい! お願いします!」
静江さんが泣きながら俺の手を握った。
俺たちは着替えた。
タイガーストライプのコンバットスーツ。
「Ω」の翅を縫い込んである。
顔にペイントをし、ロングヘアーのウィッグを被った。
走ってブロードウェイまで行った。
まだ朝は早いが、人通りはそこそこある。
俺たちの格好は異様だが、ここではそれほど目立たない。
特に双子のあどけなさは、むしろ可愛らしくさえある。
亜紀ちゃんが超特大の「轟閃花」を頭上に放った。
頭上を覆うように極大の電光が拡がり、街の上空を覆った。
そこから地上に幾つもの稲妻が降り注ぐ。
一瞬で街の電灯、自動車、様々なものが停止した。
俺たちは空中へ上がり、「飛行」した。
二時間後に、ソルトレークシティ近くの山に降りた。
聖に電話をする。
俺たちの電話には「Ω」の翅が付いている。
電磁波の障害は受けない。
「お前ら、派手にやったな」
「当然だ。あれを喰らいたいなら、それまでだけどな」
「今、慌てて交渉しているはずだ」
「何とかなりそうか?」
「分からねぇよ。あいつら、屁理屈が大好きだかんな」
「そうか」
静江さんにも連絡したが、まだ事態は動いていない。
あと二時間だ。
ルーとハーが野生のシカを捕まえて来た。
四人で焼いて食べる。
みんな口数は少ない。
黙って時間を過ごした。
二時間後、聖から電話が来た。
「トラ、だめだ。それにお前らがテロリスト扱いになってる」
「そうか」
「行くんだな?」
「ああ」
「俺の手が必要なら、すぐに呼べ」
「その時は頼む」
静江さんにも連絡したが、進展は無かった。
「ルー、ハー! 分かるか!」
「はい! あっちです」
ハーが指さした。
「物凄い嫌な感じだよ」
「あんなのは見たことない」
二人が心底嫌そうな顔をした。
俺は三人に小さなピルケースを配った。
「俺が合図をしたら、この中身を飲め」
「タカさん、これは?」
「お前らを守るためのものだ。いいか、絶対に飲めよ!」
「「「はい!」」」
子どもたちは不審がったが、頷いた。
「行くぞ!」
「「「はい!」」」
俺たちは向かった。
「セイントPMC」には、私有の滑走路がある。
ここから直接、輸送機で出撃することもある。
武装のある軍用機は無理だが、人員を輸送するだけの航空機は自前で持つことが出来る。
聖が出迎えてくれた。
「よう! 世話をかけたな」
「トラ! まずは飯だ!」
聖は何も言わず、まず食堂へ案内してくれた。
俺たちのために職員を集め準備してくれていた。
大量のステーキとバーガーがある。
子どもたちが旺盛に喰い出した。
俺も聖もガンガン食べる。
「拉致現場が特定できた。ブロードウェイだ。監視カメラに、突然倒れたレイを運ぶ男たちが写っていた」
「ブロードウェイ?」
「ああ。他の監視カメラの映像も見てみた。よくあそこへ行っていたようだ。静江夫人に聞いたら、何か思い出があったらしい」
「レイ!」
亜紀ちゃんたちが突然泣き出した。
俺に、ニューヨークで三人が案内してもらったのだと言った。
警察などの伝手で、聖はカメラの映像を集め、検索してくれていた。
「そうか。行動を読まれていたんだな」
「ああ。レイチェルを最初から狙っていたんだろう。お前の親しい女だったらしいからな」
「そうだ」
俺の顔を見て、亜紀ちゃんたちが硬直した。
恐ろしい顔をしていたのだろう。
「映像では誰も接触していない。倒れてからだ」
「麻酔弾か」
「多分な。エアガンでやられたんだろう。映像はトロくて写ってないけどな」
レイに戦闘経験は無い。
気付けば対応できただろうが、こういうやり方には無力だっただろう。
「それで行き先は?」
「今、警察の監視カメラ網を使って追っている。レイチェルを積み込んだバンまでは分かっている。西に向かっているらしい」
「西? じゃあ」
「ああ。多分D基地だろうな」
「俺たちに協力するという人間から何か聞いているか?」
「確認したが、何も知らないようだ」
俺は決意した。
もう実力行使しかない。
「聖、「ヴァーミリオン」の中枢と渡りをつけたと言ってたよな」
「ああ」
「そいつに、レイを帰さなければ基地を破壊すると伝えてくれ」
「分かった」
「NSAと陸軍の方にも、同じことが出来るか?」
「ああ、やってみるよ」
「俺はロックハートとマリーンにも働きかける。5時間以内に解放だ。さもなければ終わりだと」
「おし、分かった!」
「1時間後に示威行為をする」
「うん?」
「まあ、そう伝えてくれ。午前8時な」
「あ、ああ、分かったよ」
俺たちはロックハートの家まで送ってもらった。
でかいリムジンの中で、聖は俺の隣に座り、目を閉じていた。
静江さんが青い顔で待っていた。
アルは出掛けている。
「石神さん!」
「お陰様で、こんなに早く到着できました。ありがとうございます」
「いいえ!」
俺は聖と話した内容を静江さんにも伝えた。
「ロックハートからも、NSAと陸軍に御伝えしてもらえますか。もちろん、皆さんのご迷惑にならない方法で」
「分かりました。必ず」
「これからD基地へ向かいます」
「はい」
「必ずレイを取り戻しますよ」
「はい! お願いします!」
静江さんが泣きながら俺の手を握った。
俺たちは着替えた。
タイガーストライプのコンバットスーツ。
「Ω」の翅を縫い込んである。
顔にペイントをし、ロングヘアーのウィッグを被った。
走ってブロードウェイまで行った。
まだ朝は早いが、人通りはそこそこある。
俺たちの格好は異様だが、ここではそれほど目立たない。
特に双子のあどけなさは、むしろ可愛らしくさえある。
亜紀ちゃんが超特大の「轟閃花」を頭上に放った。
頭上を覆うように極大の電光が拡がり、街の上空を覆った。
そこから地上に幾つもの稲妻が降り注ぐ。
一瞬で街の電灯、自動車、様々なものが停止した。
俺たちは空中へ上がり、「飛行」した。
二時間後に、ソルトレークシティ近くの山に降りた。
聖に電話をする。
俺たちの電話には「Ω」の翅が付いている。
電磁波の障害は受けない。
「お前ら、派手にやったな」
「当然だ。あれを喰らいたいなら、それまでだけどな」
「今、慌てて交渉しているはずだ」
「何とかなりそうか?」
「分からねぇよ。あいつら、屁理屈が大好きだかんな」
「そうか」
静江さんにも連絡したが、まだ事態は動いていない。
あと二時間だ。
ルーとハーが野生のシカを捕まえて来た。
四人で焼いて食べる。
みんな口数は少ない。
黙って時間を過ごした。
二時間後、聖から電話が来た。
「トラ、だめだ。それにお前らがテロリスト扱いになってる」
「そうか」
「行くんだな?」
「ああ」
「俺の手が必要なら、すぐに呼べ」
「その時は頼む」
静江さんにも連絡したが、進展は無かった。
「ルー、ハー! 分かるか!」
「はい! あっちです」
ハーが指さした。
「物凄い嫌な感じだよ」
「あんなのは見たことない」
二人が心底嫌そうな顔をした。
俺は三人に小さなピルケースを配った。
「俺が合図をしたら、この中身を飲め」
「タカさん、これは?」
「お前らを守るためのものだ。いいか、絶対に飲めよ!」
「「「はい!」」」
子どもたちは不審がったが、頷いた。
「行くぞ!」
「「「はい!」」」
俺たちは向かった。
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