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挿話: 仁義なきロボ・ハンティング
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今年の9月あたりからだったろうか、
ロボがよく庭に出たがるようになった。
ロボの能力であれば、幾らでも敷地の外にも行ける。
しかし、俺の言いつけを守って、ロボは庭の中で遊ぶ。
もちろん、ロボの「安全」のための言いつけではない。
ロボ以外の「安全」のためだ。
ロボには不可抗力の概念がない。
よく、柳がそのせいで壮絶なロボキックを喰らっている。
ロボが大抵一階のウッドデッキの窓の前で鳴く。
気付いた誰かが窓を開けてやり、ロボを外へ出す。
またロボが窓の前で鳴く。
気付いた誰かが窓を開けてやり、置いてある雑巾で足を拭ってから入れてやる。
そんな習慣が出来上がった。
「タカさーん!」
ハーに呼ばれた。
「どうした?」
「これ」
窓の前のウッドデッキにロボと何かある。
見ると、カナヘビの死骸だった。
ロボが狩って来たらしい。
ネコは狩の習性がある。
飼い猫でも、飼い主に得物を見せに来ることがある。
諸説あるが、猫が褒めてもらいたいらしい。
「おー、ロボ。これ獲って来たのか」
俺は頭を撫でてやった。
ロボは嬉しそうに目を細め、ゴロゴロと喉を鳴らした。
「タカさーん、これは?」
「後で捨てておけ」
「はーい」
ロボの足を拭いて、抱き上げて一緒に上に上がった。
それから、時々ロボが狩の獲物を見せることがあった。
必ず俺がいる日だ。
カナヘビ、ネズミ、スズメなどが多い。
でかいカラスを持って来た時は驚いた。
亜紀ちゃんが俺を呼んだ。
「今日はカラスですよ」
「でかいな」
「どうやって獲ったんですかね」
「こいつ、飛べるからな」
「あー」
「タカさん!」
「あんだよ!」
ハーに呼ばれた。
ウサギがいた。
「おい!」
「私に言わないで!」
「だってよ」
「だってだもん!」
「どっから持って来たんだ?」
「分かんないよ!」
取り敢えずロボを褒めた。
「タカさーん!」
「うるせぇぞ!」
「見て下さい!」
ルーに呼ばれた。
イノシシがいた。
首が半分取れかかっている。
「おい!」
ルーの頭を引っぱたいた。
「ロボだよー!」
「イノシシなんかこの辺にいねぇだろう!」
「知らないよ!」
「イノシシはお前らのシンボルだろ!」
「何言ってんの!」
亜紀ちゃんが止めに来た。
「タカさん、これ食べよっか」
ルーが言う。
食べたいらしい。
「うーん、やめとけよ」
「そうだねー」
ルーが文句を言いながら、ウッドデッキの血だまりを掃除した。
何故イノシシが……。
分子分解しても大量の質量が残るので、ルーに相談された。
佐藤家に放り込んだ。
「タカさーん!」
それから、大型動物が続いた。
ウマ、ウシ、ヤギ。
ここまでは、なんとか分かる。
孔雀、キリン、ワニ……。
「おい、いい加減にしろよ」
「にゃー」
孔雀は綺麗だったので、羽だけ残した。
他は佐藤家に放り込んでいった。
「た、た、タカさーん!」
ハーが絶叫した。
「どうした!」
牛がいた。
まだちょっと生きてた。
額から血を流している。
人間の顔だった。
「件(クダン)じゃねぇか!」
伝説の幻獣で、牛の身体に人間の顔。
世の中が大混乱し、戦争など大量の人間が死ぬ前に現われると言う。
そして、不吉な予言を残す。
ハーが他の子どもたちを呼んだ。
みんなに、件のことを話して聞かせる。
「まだ生きてんぞ」
「あ、なんか喋りそう!」
ハーが言った。
件が口を開いた。
「いずれ、「業」という者が世界を混乱に陥れる」
「知ってんよ!」
「……」
件は黙り込んだ。
俺たちは次の言葉を待った。
「おい、もっと何か言え!」
「あの……」
「なんだ!」
「知ってるの?」
「おう!」
「……」
死んだ。
「タカさん」
ハーが俺に言った。
「あんだよ」
「食べられるかな?」
「お前、マジか」
「どうかなーって」
「絶対やめとけ!」
「はーい」
肉なら何でも喰ってみたいのか。
ロボの頭を撫で、「もっとちっちゃいのにしてくれ」と言った。
佐藤家に放り込んだ。
「タカさーん! またヘンなのが来ましたよ!」
亜紀ちゃんに呼ばれた。
「またかよ!」
「今日は特にヘンです」
俺が一階に降りてみると、直径50センチほどのケーキみたいな奴がいた。
結構臭い。
「アニコレ?」
「分かりませんけど。でも、なんかまだ生きてるみたいな」
「またか!」
よく見ると、下側に10センチほどの触手みたいなやつがびっしり生えていた。
《ボクはチーズの妖怪です》
「喋ったぞ!」
「はい! でもテレパシーですかね。頭に直接来ましたよ!」
《ボクを殺さないで》
「そう言われてもなー。ロボの獲物だし」
《悪い妖怪じゃないよ》
「みんなそう言うんだよな」
《ボクの名前は「カルマンベール」です》
「何! カルマだと!」
《はい!》
「おう! 殺せ殺せぇ! 苦しめながら殺してやれや!」
「はい!」
亜紀ちゃんが獰猛に笑いながら、「電子レンジ」でジワジワと炙って行く。
《ギャーーーーーーー! なんでぇーーーーー!》
「「ガハハハハハハハ!!」」
徐々に溶けて、そのうち焦げて死んだ。
物凄い臭さが残った。
9本脚の極彩色の鳥、ピンク色の1メートルのムカデみたいな奴、人間の足を持つ魚等々。
佐藤家行き。
《我が名はヨグソトート! 旧き神の……》
「殺せ」
「はーい」
俺はロボによくよく言い聞かせた。
「狩は禁止! その代わり「ばーん」を月に二回やらせてやる」
「ニャン!」
それからやっと、ヘンなものを持って来なくなった。
ロボがよく庭に出たがるようになった。
ロボの能力であれば、幾らでも敷地の外にも行ける。
しかし、俺の言いつけを守って、ロボは庭の中で遊ぶ。
もちろん、ロボの「安全」のための言いつけではない。
ロボ以外の「安全」のためだ。
ロボには不可抗力の概念がない。
よく、柳がそのせいで壮絶なロボキックを喰らっている。
ロボが大抵一階のウッドデッキの窓の前で鳴く。
気付いた誰かが窓を開けてやり、ロボを外へ出す。
またロボが窓の前で鳴く。
気付いた誰かが窓を開けてやり、置いてある雑巾で足を拭ってから入れてやる。
そんな習慣が出来上がった。
「タカさーん!」
ハーに呼ばれた。
「どうした?」
「これ」
窓の前のウッドデッキにロボと何かある。
見ると、カナヘビの死骸だった。
ロボが狩って来たらしい。
ネコは狩の習性がある。
飼い猫でも、飼い主に得物を見せに来ることがある。
諸説あるが、猫が褒めてもらいたいらしい。
「おー、ロボ。これ獲って来たのか」
俺は頭を撫でてやった。
ロボは嬉しそうに目を細め、ゴロゴロと喉を鳴らした。
「タカさーん、これは?」
「後で捨てておけ」
「はーい」
ロボの足を拭いて、抱き上げて一緒に上に上がった。
それから、時々ロボが狩の獲物を見せることがあった。
必ず俺がいる日だ。
カナヘビ、ネズミ、スズメなどが多い。
でかいカラスを持って来た時は驚いた。
亜紀ちゃんが俺を呼んだ。
「今日はカラスですよ」
「でかいな」
「どうやって獲ったんですかね」
「こいつ、飛べるからな」
「あー」
「タカさん!」
「あんだよ!」
ハーに呼ばれた。
ウサギがいた。
「おい!」
「私に言わないで!」
「だってよ」
「だってだもん!」
「どっから持って来たんだ?」
「分かんないよ!」
取り敢えずロボを褒めた。
「タカさーん!」
「うるせぇぞ!」
「見て下さい!」
ルーに呼ばれた。
イノシシがいた。
首が半分取れかかっている。
「おい!」
ルーの頭を引っぱたいた。
「ロボだよー!」
「イノシシなんかこの辺にいねぇだろう!」
「知らないよ!」
「イノシシはお前らのシンボルだろ!」
「何言ってんの!」
亜紀ちゃんが止めに来た。
「タカさん、これ食べよっか」
ルーが言う。
食べたいらしい。
「うーん、やめとけよ」
「そうだねー」
ルーが文句を言いながら、ウッドデッキの血だまりを掃除した。
何故イノシシが……。
分子分解しても大量の質量が残るので、ルーに相談された。
佐藤家に放り込んだ。
「タカさーん!」
それから、大型動物が続いた。
ウマ、ウシ、ヤギ。
ここまでは、なんとか分かる。
孔雀、キリン、ワニ……。
「おい、いい加減にしろよ」
「にゃー」
孔雀は綺麗だったので、羽だけ残した。
他は佐藤家に放り込んでいった。
「た、た、タカさーん!」
ハーが絶叫した。
「どうした!」
牛がいた。
まだちょっと生きてた。
額から血を流している。
人間の顔だった。
「件(クダン)じゃねぇか!」
伝説の幻獣で、牛の身体に人間の顔。
世の中が大混乱し、戦争など大量の人間が死ぬ前に現われると言う。
そして、不吉な予言を残す。
ハーが他の子どもたちを呼んだ。
みんなに、件のことを話して聞かせる。
「まだ生きてんぞ」
「あ、なんか喋りそう!」
ハーが言った。
件が口を開いた。
「いずれ、「業」という者が世界を混乱に陥れる」
「知ってんよ!」
「……」
件は黙り込んだ。
俺たちは次の言葉を待った。
「おい、もっと何か言え!」
「あの……」
「なんだ!」
「知ってるの?」
「おう!」
「……」
死んだ。
「タカさん」
ハーが俺に言った。
「あんだよ」
「食べられるかな?」
「お前、マジか」
「どうかなーって」
「絶対やめとけ!」
「はーい」
肉なら何でも喰ってみたいのか。
ロボの頭を撫で、「もっとちっちゃいのにしてくれ」と言った。
佐藤家に放り込んだ。
「タカさーん! またヘンなのが来ましたよ!」
亜紀ちゃんに呼ばれた。
「またかよ!」
「今日は特にヘンです」
俺が一階に降りてみると、直径50センチほどのケーキみたいな奴がいた。
結構臭い。
「アニコレ?」
「分かりませんけど。でも、なんかまだ生きてるみたいな」
「またか!」
よく見ると、下側に10センチほどの触手みたいなやつがびっしり生えていた。
《ボクはチーズの妖怪です》
「喋ったぞ!」
「はい! でもテレパシーですかね。頭に直接来ましたよ!」
《ボクを殺さないで》
「そう言われてもなー。ロボの獲物だし」
《悪い妖怪じゃないよ》
「みんなそう言うんだよな」
《ボクの名前は「カルマンベール」です》
「何! カルマだと!」
《はい!》
「おう! 殺せ殺せぇ! 苦しめながら殺してやれや!」
「はい!」
亜紀ちゃんが獰猛に笑いながら、「電子レンジ」でジワジワと炙って行く。
《ギャーーーーーーー! なんでぇーーーーー!》
「「ガハハハハハハハ!!」」
徐々に溶けて、そのうち焦げて死んだ。
物凄い臭さが残った。
9本脚の極彩色の鳥、ピンク色の1メートルのムカデみたいな奴、人間の足を持つ魚等々。
佐藤家行き。
《我が名はヨグソトート! 旧き神の……》
「殺せ」
「はーい」
俺はロボによくよく言い聞かせた。
「狩は禁止! その代わり「ばーん」を月に二回やらせてやる」
「ニャン!」
それからやっと、ヘンなものを持って来なくなった。
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