富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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NY Passion Ⅸ

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 聖と飲んだ翌朝。
 ベッドで目が覚めると、亜紀ちゃんと柳が両側で寝ていた。
 二人とも、顔の腫れは退いている。
 柳が、俺の方を向いて足を絡めていた。
 俺はコブラツイストを掛けてやる。

 「イタイイタイイタイイタイ!」
 「ワハハハハハ!」
 「何するんですかぁ!」
 「いや、お前にはやっぱ蛇系の技だよな」
 「なんなんですかぁー!」

 亜紀ちゃんが笑っていた。

 「タカさん、元気ですね」
 「そりゃな」
 「あんなに飲んでたのに」
 「楽しい酒だったからな」

 俺はトイレに行って、またベッドへ戻った。
 もう少し寝ようかと思ったが、亜紀ちゃんに酒臭いと言われた。
 シャワーを浴びると、すっかり目が覚めてしまった。

 三人で食堂に行った。
 俺はスープだけ頼んだ。
 亜紀ちゃんと柳は普通に食べる。
 皇紀と双子も来た。
 みんなで食べていると、響子と六花も静江さんと一緒に来た。
 双子はまだ椅子に座ると痛むようだ。
 相当蹴られたのだろう。
 
 「柳は大丈夫か?」
 「はい。夕べルーちゃんとハーちゃんがマッサージしてくれましたので」
 「なるほど」

 二人が俺に親指を立てた。
 俺も返してやる。

 「お前らの尻はダメだったか」
 「ううん、私たちはやらなかったの」
 「Ω軟膏だけ」
 「なんでだ?」

 「「この痛みを忘れないようにだよ!」」

 俺は笑った。
 聖にいいようにやられて悔しいのだろう。
 打ち身程度なら、二人の「手当」で大抵治る。

 楽しく朝食を食べた。

 「お前らは今日はどうすんだ?」
 「そーですねー」
 「聖はダメだぞ」
 「そうですよね」
 「ジャンニーニもやめてやれよ」
 「わかりましたー」

 亜紀ちゃんが考えている。

 「悪人狩りもダメだぞ!」
 「わ、分かってますよ!」

 絶対考えてた。

 「響子ちゃんは?」
 「ママンと映画を観るの」
 「なるほどー」
 「『スパイダーマン』だよ」
 「あ、いいね!」

 亜紀ちゃんが窓から見える高層ビル群を眺めた。
 兄弟と柳を呼ぶ。
 なんか窓際で外を指差しながら話している。
 六花も呼ばれた。
 なんか話している。

 「じゃあ、そういうことで」
 「「「「「はい!」」」」」

 決まったらしい。

 「俺はちょっと寝るからな」
 「「「「「「はーい!」」」」」」

 不安は残るが、流石に眠い。
 亜紀ちゃんたちは外へ出掛けた。
 普通の服だった。
 じゃあ、大丈夫だろう。
 コンバットスーツだったら止めていたが。

 昼過ぎに起きて、ちゃんと昼食を貰った。
 ロドリゲスが野菜のスープと鳥の胸肉のソテーを作ってくれた。
 消化に負担の掛からないものだ。
 給仕をしてくれている人に聞いた。

 「子どもたちは出掛けたのかな?」
 「はい。午前中は買い物に行かれたようで。またランチを召し上がって出掛けられました」
 「そうか。ちなみにランチは?」
 「はい。本日はピッツァを」
 「どれほど?」
 「80枚でしたか」
 「アハハハハハ」
 「アハハハハハ」

 申し訳ない。

 「午前に、お揃いの服を買われたようです」
 「へぇ」
 「遠目だったので分かりかねますが、赤いものだったようで」
 「そうなんだ」
 
 なんだろう。
 まあいい。
 俺も出掛けた。
 MoMAに行った。
 双子以外の子どもたちや六花には興味は無いだろう。
 双子も多分、兄弟たちと遊んでいる方が楽しい。

 俺は独りでじっくりと見て回った。
 6階のカフェで一休みする。
 小腹が減ったので、アーティチョークをグリルしたパンとコーヒーを頼んだ。
 美味かった。

 もう一回りして外へ出た。
 充実した時間になった。

 通りに出ると、何か騒がしい。
 みんながビルの上を指差している。

 「なんだ、あれは!」
 「スパイダーマンじゃないのか!」

 俺も上を見た。
 赤い衣装を着た連中が、ビルの間を飛んでいる。
 ビルの壁面を蹴って、別なビルに飛んで行く。

 「なんだ、ありゃ?」

 数えると、6人いた。
 みんな同じ赤い服だ。

 「6人か」

 そいつらが地上に降りて来た。
 今度はストリートを疾走する。
 誰かが言っていた通り、スパイダーマンの衣装だった。
 二人が消火栓の上を同時に蹴って空中に上がる。
 そこで二人がお互いの靴底を蹴り合い、両側に飛んだ。
 通りの人々から歓声が上がる。

 一人の女性らしき人物が、車道に飛び出た。
 走る車の屋根を蹴えいながら反対側に降り立った。
 大歓声。
 壁面を駆け上がり、外灯で大車輪の後に伸身8回転。
 走って来るバイクに飛び乗り、ライダーを持ち上げて空中で一回転してまた戻す。
 トラックの開いた助手席に飛び乗り、握手をしてまた空中へ。

 異常に見事なパフォーマンスだった。
 パルクールという奴か。

 「6人……あ、待てぇ!」

 俺が大声を上げると、6人がこっちを見た。
 慌てて別方向へ散って飛んで逃げた。

 「……」






 タクシーでロックハート家に戻った。
 食堂へ行く。

 「あ、タカさんお帰りなさい!」
 「「「「「おかえりなさーい!」」」」」

 「……」

 みんなコーヒーを飲んでいる。
 響子と静江さんもいた。

 「タカさん、どこ行ってたんですか?」
 「スパイダーマン見物」
 「へ、へぇー!」

 亜紀ちゃんがニコニコ笑っていた。

 「楽しかったか?」
 「へ? ああ、観光名所をいろいろと。楽しかったですよ?」
 「そうか」

 俺は六花の隣に座った。
 全員緊張している。

 「お前は何を着てもスタイルが抜群だな!」
 「ありがとうございます!」
 「スパイダーマンまで似合うとはなぁ」
 「ちょっと胸がきつかったんですけどね」
 「流石だな!」
 「はい!」

 「六花さん!」

 「てめぇら! 何やってやがる!」
 「「「「「「すいませんでしたー!」」」」」」」

 何事かと見ている響子と静江さんに、MoMAの前で子どもたちがスパイダーマン・ショーをしていたと言った。
 静江さんが大笑いした。

 ビルを蹴って跳び回っていたと言うと、自分も見たかったと言った。

 「じゃあ、これから行きましょう!」

 亜紀ちゃんの頭を引っぱたいた。

 アルから電話が入った。

 「タカトラ! 謎の超人がニューヨークで暴れまわったらしいぞ!」
 「ああ、知ってる」
 「あれは敵だと思うか?」
 「そうだ。これからNYPD(ニューヨーク警察署)に連れて行く」
 「君がもう捕まえたのか!」
 「ああ。目の前にいる。ロドリゲスが焼いたケーキをガンガン食べているよ」

 アルがちょっと間を置いて大笑いした。

 「なんだ、君の子どもたちか」
 「まったく申し訳ない。今日は俺が目を離してしまったせいで」
 「いや、いいよ。じゃあ楽しい事件だったわけだな」
 「全然楽しくねぇ」

 静江さんがきっとニュースになっていると言った。
 みんなで夕食前にテレビのニュース番組を見た。

 《突然、ニューヨーク市内に謎の「スパイダーマン」たちが現われました!》

 キャスターが市民が撮影したらしい動画を流しながら説明していた。
 響子と静江さんが大喜びだった。
 バカ6人も喜んで見ていた。

 


 俺も大笑いした。
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