富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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アラスカの休日 Ⅱ

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 夕飯はサーモンステーキだった。
 まあ、報告は聞いているので納得はしているのだが。
 アラスカで、鮭が大量に集まっているらしい。
 異常事態と言ってもいい程で、一部の河は鮭で埋まる程だ。

 理由はなんとなく分かっている。
 俺の土地だからだ。
 ちなみに野生動物も一気に増え、絶滅危険種と言われていたヒグマなども、ガンガン増えているらしい。
 渡り鳥も多くなり、生態系が変わりつつあるということだった。

 また農業の経過も好調で、作物はもちろん、畜産の方も順調過ぎるほどだ。
 寒い土地なので厳しいと思われていたが、農業地は地熱が高まり、植物も動物も育ちがいい。
 それ以外の要素もあるようだと言われている。
 クロピョンとかか。
 海洋生物も集まって来ており、クジラはイヌイットたちに捕鯨許可を出している。

 ということで、サーモン以外の食卓であってもいいのだが、栞が俺たちはそんなにサーモンを食べていないだろうと言っていた。
 まあ、普段自分が喰わされているので、付き合えというつもりなのかもしれない。
 ここには早乙女原作の『サーモン係長』が最新巻まで揃っている。
 あれにはサーモン料理が数多く入っているので、栞たちも参考にしていると言っていた。

 ほどよく脂の乗った鮭は、確かに美味い。
 子どもたちもガンガン食べている。
 ロボも唸りながら食べていた。

 「タカさん! サーモンもいいですね!」
 「そうかよ」

 亜紀ちゃんが喜んでいた。
 人間は同じものだけを喰っていてはいけない。

 シチューは牛肉が入っている。
 どうせ肉だけ喰おうとするから、俺が挽肉にさせた。
 栞が俺のために吹かし芋を作ってくれた。

 「あなたの好物だよね?」
 「ああ、そうだ。美味そうだな」

 俺が言うと、栞がニッコリと笑った。
 お袋がよく作ってくれた。




 夕飯の後で栞と一緒に士王を風呂に入れ、士王を桜花に預けた。
 俺たちは風呂場で愛し合った。




 桜花たちを入れて、「人生ゲーム」をやった。
 桜花たちが楽しそうで、声を出して笑っていた。
 栞がそれを嬉しそうに見ていた。

 俺と栞、桜花たちと亜紀ちゃんで酒を飲んだ。
 士王はロボに任せた。
 俺は日本から持って来た山田錦の「光明」を開けた。
 桜花は断っていたが、俺は飲めと命じた。
 三人が飲めることは知っている。

 「桜花たちは大丈夫なの?」
 「はい?」
 「帰って来た時に、様子がおかしかったから」

 栞が三人に聞いた。
 三人が俺を見る。
 話していいことかを確認しているのだ。

 「桜花たちに、ここの霊的防衛を担っている神獣を会わせたんだ」
 「へぇー!」

 栞が驚く。

 「お恥ずかしいのですが。二体の神獣様を見た途端に、身体の震えが収まりませんでした」

 桜花が言った。
 俺は御堂家を襲った二体の上級妖魔の話をした。

 「水晶のような身体で下半身が馬になっている騎士。それと緑色の弓使いの化け物だ」
 「それで!」
 「御堂家に設置した通常防衛装置が大破した。弓使いの攻撃で、一瞬だった」

 俺は無数の矢のような光が飛んで来たことを話した。

 「その時に、家を守ろうとオロチが立ちはだかった。オロチも相当やられた」
 
 三人は想像しているようだった。

 「弓使いは体長4メートル、水晶の騎士は9メートルだったな。広範囲攻撃と一点突破の強襲タイプだ。弓使いは俺が「虎王」で両断した。水晶の騎士は「花岡」でだ」
 「「花岡」が通じたのですか?」
 「特別なブーストをかけてな。まあ、あまりに強力で、使えば時空が裂ける。前にとんでもねぇ化け物が出て来そうになった」
 「その時は?」
 「強大な妖魔に裂け目を修復させた。それを見込んでのブーストだからな。いろいろ使用制限があるんだよ」
 「はぁ」

 「桜花、椿姫、睡蓮。俺たちの敵は強大だ。だけどな、俺たちは全部が出来なくてもいいんだ。お前たちはお前たちの戦いをしろ。それでいい」
 「「「はい!」」」

 「恐らく「業」は俺たち以上に強い妖魔は用意出来ない」
 「そうなんですか?」
 「ああ。多分制御出来ないという制約のためだ」
 「こちらは?」
 「まあな」

 俺は言葉を濁した。

 「ただ、数だけは向こうが優勢だ。それと、戦いは戦闘力だけではない。狡猾な手段できっと俺たちを攻めて来る」
 「「「はい!」」」
 
 今も俺の家が散発的に妖魔に襲撃されるのは、俺たちとの戦い方を探っているのだろう。
 まあ、全てタヌ吉の「地獄道」とロボが狩っているが。

 「油断はするな」
 「「「はい!」」」




 俺は三人にもっと飲めと言った。

 「タカさん」
 「なんだ?」

 「士王ちゃん、カワイイですよね」
 「おう」
 「実は、私、こないだ夢を見たんです」
 「ほう」

 亜紀ちゃんが語り出した。

 「ほら、響子ちゃんと一緒に別荘にいて、私がタカさんのベッドで寝てたじゃないですか」
 「ああ、あったな」
 「あの時です」
 「どんな夢だよ」

 亜紀ちゃんがちょっと迷っている。
 俺も別に夢の話なんか聞かなくてもいい。

 「あの、私とタカさんが、夢の中で逃避行なんです」
 「あ?」
 「戦いから逃げて、二人で東北の港町に行くんです」

 前に亜紀ちゃんとそんな話をしたことがあるのを思い出した。

 「タカさんと二人で暮らして。それで……子どもが生まれるんですよ」
 「へぇ」
 
 俺が余り反応しないので、亜紀ちゃんがちょっとむくれた。
 栞は笑っている。

 「それで、子どもに名前を付けるじゃないですか」
 「まだ続くのか?」
 「タカさんが、私の「亜」という字を付けたいって」
 「あのよ」
 「だから私も、タカさんの「虎」という字を付けたいって」
 「そうかよ」
 
 「「亜虎」! ね! いい名前だと思いません?」
 「なんだそりゃ」

 栞と我慢して聞いていた桜花たちが爆笑した。

 「え?」

 亜紀ちゃんが驚いている。

 「あのなー。別にどんな夢を見てもいいけどよ。まあ夢というのはいろいろと思考も制限されるからな。下らない夢でもしょうがねぇけど」
 「タカさーん」
 「自分でいい夢だと思ってりゃ、それでいいんじゃねぇの?」
 
 「亜虎ぁー!」

 みんながまた笑った。
 酒の席での下らない話は楽しい。

 栞も士王がお腹の中にいる時に見た夢を話した。

 「それがね、自分が男になってるのよ」
 「へぇー」
 「それで25人の女の人と、えーと、アレするのね」
 「!」

 亜紀ちゃんが反応した。

 「夜也ちゃんっていう、すごくカワイイ子がいて……」

 「タカさん!」

 亜紀ちゃんが立ち上がった。
 長い髪が横に拡がっている。
 亜紀ちゃんの「激怒モード」だ。

 「おい! 栞の夢だろう!」
 「その夢って、あれですよね!」
 「待て! 夢じゃねぇか!」
 
 桜花たちが驚いている。
 栞も事態が呑み込めずに戸惑っている。

 「なんでぇーーーー!」

 慌てて亜紀ちゃんを抱き締めて宥めた。
 そうしながら、前に俺が出演したAVの話をした。






 栞と桜花たちがドン退きした。
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