富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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ちびトラちゃん、再び Ⅳ

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 翌朝、6時頃に目を覚ました。
 夕べは確か、10時頃に寝た。
 全裸だ。
 隣で麗星も全裸で寝ている。
 ベッドを出たいが、俺がうろうろすると蓮花かミユキがやって来る。
 こんなに朝早くは申し訳ない。
 まあ、蓮花は既に起きているのかもしれないが。
 何もすることが無いので、仕方なく麗星パイで遊んだ。
 先端を指で転がしながら、麗星の耳元で囁いた。

 「Je t’aime.」
 「ダメ! 私は石神様のものなのです!」

 フランス野郎の名前が出るかと思った。
 ちょっと申し訳ない気がした。

 「愛してるよ、麗星」
 「ムッフォー!」

 なんか喜んだ。
 物凄い力で抱き締められた。
 顔がオッパイに埋まって苦しい。
 オッパイを噛んだ。

 「イタイ!」
 「起きろ! このショタ!」
 「あ、ちびトラちゃん……」

 麗星が俺の顔を舐め回して来る。

 「やめろ!」

 麗星が優しくキスをしてきた。
 と思ったら舌を入れられ、また息が出来なくなった。

 「いい加減にしろってぇ!」
 
 俺はベッドから出た。
 俺の全裸を見て麗星の目が輝き始めたので、いそいでパンツを履いた。
 散らばった寝間着も集めて着る。
 ウサギのパジャマだ。

 「まだ早い。もうちょっと寝てろよ」
 「はーい」

 俺は洗面所で顔を洗った。
 特にヘンな匂いがする指先は丁寧に洗った。
 亜紀ちゃんの部屋に入った。
 ロボが一緒に寝ていて、俺を見て顔を上げた。
 ベッドに潜り込む。
 ロボに顔を舐められた。

 「あ、ちびトラちゃんだー!」
 
 半分寝惚けた亜紀ちゃんに抱き締められる。
 ちょっとポキっと背骨が鳴った。
 亜紀ちゃんが自分の胸に俺の顔を押し付ける。
 全然息は大丈夫だった。

 「あー、冷たくなってるよ?」
 「ちょっと顔を洗って来たんだ」
 「そーなんでちゅかー」
 「その喋り方はよせって!」
 「ウフフフフフ」

 もうひと眠りしようかと思っていたが、もう眠気はない。
 亜紀ちゃんパイで遊ぶわけにも行かず、俺はロボとじゃれた。
 ロボはいつもより優しく俺の相手をし、また顔を舐めて来た。

 亜紀ちゃんに捕まえられ、身体の上に乗せられた。
 もう、俺なんか自由自在だ。

 「……」
 「ちびトラちゃん、カワイイよー」
 「おい」
 「いい匂い」
 「嗅ぐな!」

 亜紀ちゃんも完全に目が覚めたようだった。

 「なんか、アレみたいですよね?」
 「アレってなんだよ?」
 「ほら、『名探偵コナン』!」
 「あー」

 冗談じゃねぇ。

 「俺はすぐに戻れるけどな」
 「えー! このままでいましょうよー!」
 「バカを言うな! 「業」はどうすんだよ!」
 「私がやりますよ!」
 「おい!」

 身体をくすぐられて、大笑いした。

 「や、やめてー!」
 「ワハハハハハ!」

 二人で起きて、食堂へ行った。
 蓮花はもう支度をしていて、俺たちの朝食を出してくれる。

 焼いたハム。
 だし巻き卵。
 しらすおろし。
 野沢菜。
 焼きナス。
 味噌汁はシジミだった。

 美味しかった。
 亜紀ちゃんは別途ついている厚切りハムをムシャムシャと食べていた。

 「じゃあ、そろそろ帰るな」
 
 紅茶を持って来た蓮花に言った。
 
 「はい。では、もう元に戻られますか?」
 「何?」
 「私も麗星様も、もう十分に堪能いたしましたので」
 「はい?」
 「わざわざお出で下さいまして、誠にありがとうございました」
 
 「おい! 俺が戻ってるのを知ってたのかよ!」
 「はい」

 蓮花が楽しそうに笑った。

 「何で知ってる!」
 「はい、皇紀様が電話ですぐにお知らせ下さいましたので」
 「なんだと!」
 「ですので、まさかこちらへいらしていただけるとは」
 「おい!」

 蓮花は麗星と一緒に俺の子ども化の身体について相談しようと考えていたようだ。
 一昨日の電話は、麗星が到着したことを俺に知らせるためのものだった。

 「じゃあ、俺が来た時には!」
 「はい。また皇紀様からご連絡頂きまして、石神様が「ちびトラちゃん」に戻って向かったと。ですので、わたくしも麗星様も、石神様がどう勘違いされたのかが分かりまして」
 「言えよー!」
 「オホホホホ! まあ、楽しませて頂きました」
 「お前らよー!」

 まあ、俺も楽しんだが。
 元々は、俺が連絡を忘れていたことが原因だ。
 俺が悪い。

 「じゃあ、タカさん、戻りますか」
 
 亜紀ちゃんが言った。

 「いや、ちょっと寄る所がある」
 「え?」
 「こないださ、鷹がもっと見たかったって言ってたんだ」
 「ああ!」
 「栞には秘密な!」
 「はい!」

 俺と亜紀ちゃんは起きて来た麗星にも挨拶し、蓮花の研究所を出た。
 亜紀ちゃんがダッジの「デーモン」を運転する。

 門を出て、ウイリーを見せてくれた。

 「やっぱスゲェな!」
 「はい!」

 エンジン音がヤバい。
 アメ車のバカみたいな唸り声がいい。

 「やっぱ、これにして良かっただろう」
 「はい! 最高ですね!」

 フェラーリやランボルギーニのようなエンジン音とは違う。
 パワーも剥き出しの野獣のように逞しい。
 繊細さは無いが、それがまたいいのだ。
 まあ、俺はアヴェンタドールの方がいいが。
 それと、このペイントはやり過ぎだ。
 一昔前の族車でも、こんなのはいねぇ。

 途中のサービスエリアで一休みする。

 「トイレに行っておきまちょーねー」
 「……」

 もうちょっとの辛抱だと我慢した。
 まあ、行っておいて良かった。

 二人で蓮田のサービスエリアで休憩した。

 「さー、なんでも買ってあげまちゅよー」
 「……」

 亜紀ちゃんに合わせてスタミナ丼の店に入った。
 俺は普通のスタミナ丼を頼んだが、量が多く、半分亜紀ちゃんに食べてもらった。
 亜紀ちゃんはスタミナ丼セット(唐揚げ付き)×2、鬼盛唐揚げのスタミナ丼×3と、塩スタ丼×1を食べた。
 タイ焼き屋でソフトクリームを食べ、お土産にタイ焼きとみたらし団子を買った。
 俺が持って、時々亜紀ちゃんに喰わせた。
 俺はお腹一杯で食べなかった。




 鷹に連絡し、亜紀ちゃんに送ってもらった。
 用意していた着替えも受け取る。
 もちろん、大人トラちゃんのものだ。

 「ちびトラちゃん!」

 玄関で鷹が抱き締めて来た。

 「おう! ちょっと戻ったからな。折角だから、こないだ楽しみにしてたって鷹の所に来たんだ」
 「ありがとうございます!」

 鷹が一杯かわいがってくれた。
 俺も幸せだった。




 その夜。
 タマを呼び出してクロピョンに元に戻させた。

 「主」
 
 タマが言った。

 「あんだよ?」
 「そのままでいるのかと思ったぞ」
 「そんなわけあるかよ」
 「あと3時間遅かったら戻れなかったぞ」
 「なんだと!」
 「魂が定着するからな」
 
 「お前ら! いつもそういうことは、最初に言え!」

 タマの頭をひっぱたいた。
 まったく、危ねぇ。
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