富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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БРАТЬЯー兄弟ー

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 ヨシの葬儀が終わった、12月の第三週の土曜日。
 朝食の後で、亜紀ちゃんと柳、双子と頂き物の仕分け作業をした。
 本当はもっと前にやりたかったのだが、いろいろと忙しかった。
 俺が「ちびトラちゃん」なんかになったせいだ。
 もうギリギリの期日だ。
 誰にやるにしても、年末になれば迷惑になることもある。
 生モノはそれでも事前にやっていたが、冷凍物などはこれからだ。

 「よし! じゃあ始めるぞ!」
 「「「「はい!」」」」

 いつものように亜紀ちゃんが中心に、品物と送り主を読み上げる。
 俺が指示を出し、柳がパソコンに記録して行く。
 双子は品出しと仕分けの運びだ。

 「〇〇製薬、ビール詰め合わせ」
 「銘柄は?」
 「あ、えーと、ああ! バドワイザーです!」
 「じゃあ最初だから家使い」
 
 「△△製薬、ビール。ええと」

 亜紀ちゃんが調子悪い。

 「おい、あそこはいつも缶詰のはずだぞ?」
 「あ、すいません。行を間違ってました」
 「しっかりしろよ。量が多いんだからよ」
 「すいません!」

 他の三人も困っている。
 責める気は無いのだが、亜紀ちゃんがおかしいのには気付いている。

 「千万組、あ、ヨシさん……」

 亜紀ちゃんが固まった。
 俺は大丈夫かと見ていたが、やはり泣き出した。

 「あの、すいません! ヨシさんは……」
 「ハー! 交代!」
 「はい!」

 亜紀ちゃんに休んでいろと言い、四人で続けた。





 昼食を作り始め、俺も手伝った。
 亜紀ちゃんはまだ自分の部屋にいる。

 「あの、亜紀ちゃん、何かあったんですか?」

 ヨシの件は子どもたちにも詳しいことは話していない。
 亜紀ちゃんも葬儀が終わって、表面的には元気に取り繕っていた。
 そうしなければいけないと、思っていた。
 子どもたちは、亜紀ちゃんが親しくしていた千万組のヨシが死んだとだけ話していた。
 でも、特にルーとハーは亜紀ちゃんが尋常でなく取り乱しているのを知っている。
 ある程度は察していただろう。
 その二人も、他の人間には口にしていない。
 分かっている。

 「仕分けはもう少し掛かるな。おい、ルー、ハー」
 「「はい!」」
 「仕分けが終わったら皇紀も連れてよ、亜紀ちゃんとドライブに行って来い」
 「「え?」」
 「別に慰めなくてもいい。ただ、一緒に行って来い」
 「「分かりましたー!」」

 「柳」
 「はい!」
 「お前は俺と留守番だ。悪いな、四人兄弟だけで行かせてやってくれ」
 「はい、それはいいんですが」

 柳も心配している。
 一緒に行きたいだろうが、俺が止めた。

 昼食が出来る頃、亜紀ちゃんが降りて来た。

 「ごめんなさい、手伝えなくて」
 「まったくだ! しっかりしろ! ちゃんと喰えよ!」
 「はい!」

 昼食はチャーハンと天津丼だった。
 うちには米が一杯あるからだ。
 タケの店にも半分送ったが、それでも尋常では無い量があった。
 
 「一人2皿ずつは喰え!」
 「「「「「はい!」」」」」

 まあ、こいつらは余裕だ。
 亜紀ちゃんを除いて。
 亜紀ちゃんはチャーハンを一皿だけでダメだった。
 双子が俺に隠しながら、亜紀ちゃんの分を食べた。
 俺も気付かないフリをした。





 「これで半分かー」

 食後にまた仕分けを再開した。
 いつもは亜紀ちゃんが手際よくやるが、仕方が無い。
 一旦休憩にする。

 「今年もカニが多いねー」

 ルーが嬉しそうに言う。

 「ああ、明日の晩はまたカニ鍋だな!」
 「はい!」
 「鷹もまた呼ぶか」
 「いいですね! 響子ちゃんと六花さんは?」
 「そうだなぁ。食べさせてやりたいなー」
 「じゃあ、今晩呼んで、泊まってもらって」
 「いや、じゃあ来週の土曜日にしよう。冷凍だから大丈夫だろう」
 「「「はーい!」」」

 柳が今晩ではダメなのかと思っているだろう。
 今晩は、多分こいつらは遅くなる。
 
 「じゃあ、再開するぞ!」
 「「「はい!」」」

 亜紀ちゃんが一度降りて来たが、俺が「寝てろ」と言って追い返した。




 夕方の5時に、ようやく終わった。
 最後は皇紀も来て手伝った。
 仕分けをしながら、ルーが亜紀ちゃんと一緒にドライブに行くことを話した。
 皇紀も何となくは感じているので、すぐに了承した。

 俺は亜紀ちゃんの部屋へ行った。
 亜紀ちゃんはベッドで寝ていた。

 「顔を洗って来い」
 「はい!」

 無理して大丈夫そうな顔をする。

 「それから、みんなでドライブへ行って来い」
 「え?」
 「俺がそう話した。兄弟四人で行って来い」
 「え、でも、これから夕食の支度を」
 「黙れ! 俺が行けと言ってるんだぞ!」
 「はい!」

 俺の剣幕に、亜紀ちゃんも驚きながら従った。
 すぐに顔を洗って、リヴィングへ降りて来た。

 「あの、どこへ」
 「お前! 俺が何度ドライブへ連れてったぁ! そんなもの、行きたい場所に決まっているだろう! 好きな所へ行って来い!」
 「は、はい!」

 俺は亜紀ちゃんのダッジ・デーモンのキーを渡し、四人に支度させた。

 「ハー!」
 「はい!」
 「小遣いだ。好きなように使え」
 「はい!」

 俺は帯封の100万円を5つ渡した。
 高級焼肉を喰えば、こいつらはそれくらい喰う。

 「残したら返せ」
 「はい!」
 「出来れば、ちょっとは残せ」
 「はい!」

 三人が笑った。
 亜紀ちゃんも無理して笑顔を作った。
 四人が出掛けて行った。




 「さーて、柳。俺たちも出掛けるぞ」
 「はい、どちらへ?」
 「インペリアルだ。あいつらよりもいいものを喰おう!」
 「はい!」

 柳をいい服に着替えさせ、アヴェンタドールを出した。

 「柳、悪かったな」
 「いいえ、兄弟ですもんね」
 「そういうことだ。お前も家族だけど、俺たちがいない方がいいだろうよ」
 「分かってます」




 柳がいい顔で微笑んだ。
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