富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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顕さんと冬の別荘 X

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 話し終えると、俺の正面に座っていた双子が、両側から皇紀にしがみついていた。
 何か感じたようだ。

 「ちょっと続きがあってな」
 「なんですか!」

 亜紀ちゃんが叫ぶ。

 「俺は芳樹と一緒に遊んだお陰で、本当に気が楽になったんだ。不思議なんだけどな。だから、改めて礼をしたかったんだよ。うちに誘うって話したし、そうしようと思ったんだ」
 「はい、是非! タカさんをそんなに助けてくれた子なんて!」

 亜紀ちゃんが興奮している。

 「早乙女に頼んで、調べてもらった。芳樹の苗字は聞いていたからな。その苗字で浅草警察署に勤務している警察官だ」
 「はい」
 
 俺は双子を見た。
 既に震えている。

 「見つからなかったんだ。念のために近くの他の警察署もな。でもいなかった」
 「どういうことですか?」

 「分からない。俺は名刺を渡したんだが、芳樹のお父さんからはもらってないんだ。まあ、ああいう仕事だから私的な用件では渡さないようになってるんだろうと思った」
 「あの、電話は?」

 柳が言った。

 「そうなんだ。一度電話したから、履歴でもう一度と思った。でもな、俺のスマホに履歴が無かった」
 「「「「「「「え!」」」」」」」
 「にゃ!」

 全員が驚く。

 「俺は確かに警察官の父親と話したんだよ。でも、その履歴が残ってなかったんだ」
 「それって!」
 「その後も、探偵事務所を使って、近隣の小学校を全てあたって「芳樹」の名前を探した」
 「それも出て来なかったんですか!」
 「まあ、ちょっとな。出ては来たんだ」
 「なんだぁ!」

 みんなが安心した。
 双子以外は。

 「一年前に交通事故で死んだ子どもの名前が出て来た」
 「「「「「「「!」」」」」」」

 双子が立ち上がって皇紀に抱き着く。

 「親子三人での事故だった。母親は意識不明の状態でしばらく生きていたようだが、結局亡くなった」
 「あの、焼き肉屋は!」

 肉食の女王が言った。

 「それもな、無かった。俺は記憶をたどってみたんだが、支払った覚えが無いんだ。俺が支払うと言ったことは覚えているんだが、じゃあ幾らだったのかというと、覚えてねぇ」
 「タカさんは、全部お金の出し入れを覚えてますよね」
 「そうだ。だけど、あの店の記憶がねぇ。店の名前すら覚えてない。場所は覚えていたから探偵事務所に探させたが、そんな店はなかった。あの近辺の焼き肉屋を全て探させたが、全部俺が入った店では無かった」

 全員が沈黙した。

 「そこで調査を止めた。だから芳樹のお父さんが警察官だったかどうかも分からん。早乙女に言えば亡くなった警察官の名前も分かるだろうけどな。でも俺がそうは言わなかった」
 「じゃあ、タカさん。芳樹君は幽霊……」

 亜紀ちゃんが恐る恐る言った。

 「分からんよ。あの近所の子どもでは無かったのかもしれないしな」
 「でも、電話の履歴が無くなっていたんですよね?」
 「それも俺が操作を誤って消してしまったのかもしれないよ」
 「そんな……」

 「まあ、何にしてもだ。俺は芳樹に救われた。それだけが大事なことだ。今でもあいつには感謝しているし、本当に楽しかった」

 双子が俺を見ている。
 俺は双子の後ろの空間に手を振った。

 「おう、芳樹! 来てくれたのか!」
 「「「「「「「ギャァァァァァァーーーー!!!!」」」」」」」

 全員が悲鳴を上げた。

 「おい、冗談だって!」
 「タカさん!」

 亜紀ちゃんが怒る。
 俺は笑った。

 「世の中には不思議なことがあるよ。お前らにもよく話しているだろう?」
 
 俺は近所にスゴイ幽霊屋敷があると顕さんに話した。
 今度一緒に行きましょうと言ったが、二人が猛然と断った。

 「ルー、ハー、今日は一緒に寝るか?」
 「「お願いしますぅー!」」

 俺は笑って解散にした。
 双子が俺の両側で寝た。
 相変わらず、カワイイことこの上ない寝顔だった。





 翌朝。
 朝食の後で、子どもたちは別荘の掃除をした。
 先に屋上の掃除をさせ、俺は顕さんとモニカとでのんびりした。

 「ああ、明るいと全然違うね」
 「そうですよね。ああ、雪が降るとまたいいんですよ!」
 「なるほど!」
 「前に一人で来た時に、丁度振りましてね。ずっとここにいました」
 「いいだろうなぁ」

 モニカは雪を知らない。

 「見てみたかったですね」
 「いつか日本に住むようになったら、また。二人で来て下さい」
 「はい、必ず!」

 「雨もいいだろうね」
 「その通り!」

 三人で笑った。




 昼はカレーだった。
 モニカがまた喜んでくれた。

 「カレー、美味しいです!」
 「そうでしょう。うちはよくやるんですよ」
 「私、大好きになりました!」

 フィリピンにもカレーはあるが、日本のものとは大分違う。

 「石神くん、レシピを教えてもらえないか」
 「もちろん! 後でメモしますよ」
 「ありがとう」

 顕さんがモニカに作ってやりたいのだろう。
 モニカが嬉しそうに顕さんを見た。

 食事を終え、俺たちは帰ることにした。

 先に甲府駅に寄って、柳を実家に帰す。

 「じゃあ、御堂や皆さんによろしくな!」
 「はい!」

 途中のサービスエリアで、みんなでソフトクリームを食べた。

 「こんなもの、久し振りだよ」
 「アハハハハハ!」

 顕さんが嬉しそうにソフトクリームを食べた。
 
 一度病院へ寄って、みんなで響子の部屋へ行った。
 もう六花は出掛けているはずだ。
 夕方の5時なので、響子も起きていた。

 「タカトラ! 顕さん!」

 響子が嬉しそうに俺たちを見て喜んだ。

 「今別荘の帰りなんだ。六花はもう出掛けたな」
 「うん! みんな来てくれて嬉しい!」
 「明日からまた一緒だな」
 「うん!」

 部屋には六花がやったであろう、響子の荷造りが終わっている。

 「よし、俺が荷物の最終チェックをしてやろう」
 「いいよ!」
 「ダメだ! 俺の好みの下着がちゃんと入ってるか確認しないとな!」
 「ダメだよー!」

 響子が怒る。
 みんなが笑った。

 「響子ちゃん、またしばらく会えないけど」
 「うん」
 「いや、みんなでフィリピンに行こうか?」
 「ほんと!」
 「ああ。もう響子の移動手段もちゃんとあるしな」
 「嬉しい!」

 顕さんも喜ぶ。

 「石神くん、本当に来てよ!」
 「はい。伺いますよ。夏くらいになりますかね」
 「本当だよ! 待ってるからね!」

 響子の夕飯が運ばれて来たので、みんなで帰ることにした。
 響子は廊下の端まで見送りに来た。

 



 「石神くん、本当に楽しかった」
 「そうですか。また行きましょうね」
 「ああ」

 モニカも礼を言って来た。
 二人を家まで送りながら、顕さんに教わったステーキハウスでみんなで夕食を食べた。





 相変わらずのうちの子どもたちの喰いっぷりに、二人が爆笑した。
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