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大雪の日
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2月下旬の木曜日。
久し振りに大雪が降った。
予報で分かっていたので、俺は病院の手の空いている人間を総動員して、朝の6時に集合して地下鉄口から病院までの雪かきをした。
元々、近所の煎餅屋が無償でうちの病院までやってくれたのだ。
だから前回はお礼を兼ねてうちでやろうとしたら、またやって頂く羽目になった。
しかも、うちが人手を出したお礼だと、店の美味しい煎餅まで大量に頂いてしまった。
本当に申し訳ない。
そこで、今年は早朝の集合にした。
絶対にうちで雪かきをする。
幸いに、夜明け前に雪はやんでいた。
うちの病院の人間は10人。
俺もやる。
「強制では無いが、明日の早朝にうちの病院の周辺の雪かきをする!」
夕べ子どもたちを集めて俺が言った。
「強制ではないぞ? でも、やりたい奴は朝の5時半に出発だ!」
「「「「「……」」」」」
全員来てくれた。
うちからスコップなどの道具も積んで来た。
亜紀ちゃんと柳は日比谷線神谷町駅から。
皇紀と双子は銀座線虎ノ門駅から。
俺は煎餅「ハリマン屋」周辺を。
他の10人は病院の周辺をやらせた。
大雪と言っても、東京だ。
歩道の雪を車道へ投げて行けば通行の車が踏んで溶かしてくれる。
量が多い場合は車道の脇に積み上げて行った。
俺の指示通りに子どもたちが動く。
病院の10人は玄関から敷地の通り道を雪かきして行く。
それと駐車場の入り口周辺。
俺はハリマン屋の入り口や社員さんの通りそうな場所の雪をどけていった。
途中で警備員が出て来たが、名刺を渡し、以前にうちの病院への道の雪かきをしていただいたのだと言うと、感謝された。
「前回の大雪の時にもうちでやろうとしたんですけどね。ここの社員さんの方が手際がよくて」
「そうだったんですか!」
「今年こそは、うちでやらせていただきますよ!」
「それはそれは。まだ誰も出勤していないので申し訳ありません」
「とんでもない! こちらこそです!」
作業に戻った。
動いていると暑くなり、俺はボンバージャケットを脱いで薄手のセーターになった。
それでも汗が出て来た。
7時頃になると、子どもたちが既に分担の作業を終えて来た。
まだ時間は余っているので、周辺のビルなども入り口までの雪かきをさせた。
異例の大雪のため、子どもたちは休校だった。
交通機関が動いていないものが多い。
8時になり、周辺はほぼ終わった。
病院内も綺麗に道が整っている。
ハリマン屋の方らしい人間が挨拶に来た。
「石神先生! 今年は申し訳ありませんでした!」
「いいえ、何度もうちがお世話になってましたので。今年こそはと頑張りましたよ!」
俺が明るい笑顔で笑うと、ハリマン屋の人も笑ってくれた。
俺は子どもたちに言って、食堂からでかい寸胴を3つ持って来させた。
一緒にハリマン屋まで行く。
「みなさん、寒い中を集まられて冷えたでしょう。甘酒を作りましたので、どうぞ召し上がって下さい」
「そんな! 石神先生!」
子どもたちが寸胴から紙コップに注いで渡して行った。
俺たちもハリマン屋の敷地で一緒に頂く。
「前回はうちが何もしないのに、美味しいお煎餅まで頂いてしまって。今年は全部うちでやらせてください」
「困りましたなぁ」
名刺を交換すると、支店長さんだった。
トップ自ら陣頭指揮を執るなんて、大した店だ。
「あとでうちの煎餅を持たせますので、みなさんで召し上がって下さい」
「いいえ! それも前回で恥ずかしい思いをいたしました。みなさんにやって頂いた上に労われてしまいまして。どうか今年はうちに全部やらせてやってください」
「そう言われましても」
俺は何とか納めてもらった。
それでも支店長さんも納まらず、人数も少ないということで、一袋だけ頂いた。
病院の人間と子どもたちを食堂へ連れて行き、朝食を食べさせた。
朝から何も食べていないので、みんな空腹だった。
厨房長の岩波さんが、食事を用意してくれていた。
材料はうちの持ち込みだ。
けんちん汁。
焼き鮭(50切れ)。
目玉焼き(50枚)。
ハム焼き(厚切り100枚)。
それに漬物。
みんなで頂いた。
岩波さんたちにお礼を言って、子どもたちは帰った。
俺はスーツに着替えて仕事に入った。
響子に頂いたカレー煎餅を持って行くと喜んだ。
響子の好物だ。
「美味しいね!」
「そうか」
六花と一緒に嬉しそうに食べていた。
その夜、8時頃に家に帰り、夕食を食べた。
カレーだった。
「お替り」
「え?」
亜紀ちゃんが不思議そうな顔をする。
「なんだよ?」
「それで最後です」
「あんだと!」
「だって、カレーですよ?」
残るわけがないと言われた。
そういう家だった。
俺も諦めて風呂に入り、酒の用意をした。
つまみに焼きウドンを作った。
亜紀ちゃんに半分喰われた。
「今日は御苦労さん」
亜紀ちゃんと柳に言った。
「寒かったですよね」
「そうだな」
「みんなで虎温泉に入りました」
「優雅だな!」
「アハハハハハ!」
何となく酒の回りが早かったので、俺は切り上げて寝ることにした。
「なんか寒いな」
「そうですか?」
「暖房は入ってるよな?」
「それはもう。私は温かいですよ?」
「私もです」
亜紀ちゃんと柳が不思議がった。
「そうか。まあ、もう寝るわ」
「あ! 私もー!」
「じゃあ、私もー!」
俺は笑って、早く片付けて来いと言った。
部屋で横になると、ロボが寒いのでくっついてくる。
「お前の身体も冷たいなー」
寒い。
ロボが寒いだろうと抱き締めてやる。
本当に身体が冷たくて可哀そうだった。
亜紀ちゃんと柳が入って来て、一緒にベッドに潜る。
「タカさん、あったかいですね!」
「ほんとだ!」
二人が喜ぶ。
俺は二人の身体が冷たいので参った。
寝ようと思ったが、寒くて眠れない。
亜紀ちゃんと柳は温かいと喜んでいる。
おかしい。
それでも徐々に温まり、俺も眠った。
夢を見た。
久し振りに、日本地図が天井に浮かび上がり、それが徐々に黒く塗りつぶされて行く。
俺が子どもの頃から何度も見た、高熱を発した時の夢だ。
意識が明滅する。
不味いと思うすぐ後で意識を喪う。
それを繰り返した。
身体を動かそうとするが、意識が途切れ夢の中と現実が交錯する。
何も出来ない。
「タカさん! タカさん!」
亜紀ちゃんと柳が俺を揺り起こそうとしている。
「柳さん! タカさんに声を掛け続けて」
「うん!」
亜紀ちゃんが離れてすぐに戻って来た。
「44度!」
亜紀ちゃんの叫び声が聞こえた。
そのまま部屋を飛び出して行った。
次に目が覚めた時、俺は意識を取り戻していた。
「タカさん!」
亜紀ちゃんが泣いていた。
柳が部屋に入り、氷を洗面器に入れて来た。
「おう。熱が出たようだな」
「タカさん! 大丈夫ですか!」
「ああ、大分いいよ。熱を測ってくれ」
亜紀ちゃんが枕元の体温計を見た。
「42度です!」
「下がったか」
「覚えているんですか!」
「44度というのはな。久しぶりだ」
亜紀ちゃんが抱き着いて来る。
「薬剤庫に「アセトアミノフェン」の錠剤がある。柳、分かるか?」
「はい! 探してきます!」
「頼む」
解熱させなければ、身体が不味い。
下がらなければ、また氷風呂だ。
そういうことを亜紀ちゃんに話した。
「用意をしておきます」
「まだいい。薬を飲んでみてからだ」
亜紀ちゃんが心配そうだ。
「ああ、柳に経口補水液も持って来るように言ってくれ。冷蔵庫に在庫があるはずだ」
「はい!」
亜紀ちゃんが走って行った。
すぐに見つけて持って来る。
俺はコップにあけて一杯飲んだ。
身体に染みわたる感覚がある。
やはり、脱水症状を呈していたようだ。
その自覚も無いままでいた。
あまり良い状態ではない。
「院長先生をお呼びしますか?」
「まだいい。薬で経過を見てからだ」
「はい」
柳が薬を持って来た。
俺が確認して二錠口に入れて経口補水液で呑み込む。
双子が亜紀ちゃんに呼ばれて入って来た。
泣きそうな顔になって俺に抱き着いて来た。
「タカさん! すぐに治すから!」
「待っててね!」
俺に「手かざし」をした。
身体がどんどん楽になっていく。
「ああ、気持ちがいいぞ」
「「うん!」」
俺は眠った。
久し振りに大雪が降った。
予報で分かっていたので、俺は病院の手の空いている人間を総動員して、朝の6時に集合して地下鉄口から病院までの雪かきをした。
元々、近所の煎餅屋が無償でうちの病院までやってくれたのだ。
だから前回はお礼を兼ねてうちでやろうとしたら、またやって頂く羽目になった。
しかも、うちが人手を出したお礼だと、店の美味しい煎餅まで大量に頂いてしまった。
本当に申し訳ない。
そこで、今年は早朝の集合にした。
絶対にうちで雪かきをする。
幸いに、夜明け前に雪はやんでいた。
うちの病院の人間は10人。
俺もやる。
「強制では無いが、明日の早朝にうちの病院の周辺の雪かきをする!」
夕べ子どもたちを集めて俺が言った。
「強制ではないぞ? でも、やりたい奴は朝の5時半に出発だ!」
「「「「「……」」」」」
全員来てくれた。
うちからスコップなどの道具も積んで来た。
亜紀ちゃんと柳は日比谷線神谷町駅から。
皇紀と双子は銀座線虎ノ門駅から。
俺は煎餅「ハリマン屋」周辺を。
他の10人は病院の周辺をやらせた。
大雪と言っても、東京だ。
歩道の雪を車道へ投げて行けば通行の車が踏んで溶かしてくれる。
量が多い場合は車道の脇に積み上げて行った。
俺の指示通りに子どもたちが動く。
病院の10人は玄関から敷地の通り道を雪かきして行く。
それと駐車場の入り口周辺。
俺はハリマン屋の入り口や社員さんの通りそうな場所の雪をどけていった。
途中で警備員が出て来たが、名刺を渡し、以前にうちの病院への道の雪かきをしていただいたのだと言うと、感謝された。
「前回の大雪の時にもうちでやろうとしたんですけどね。ここの社員さんの方が手際がよくて」
「そうだったんですか!」
「今年こそは、うちでやらせていただきますよ!」
「それはそれは。まだ誰も出勤していないので申し訳ありません」
「とんでもない! こちらこそです!」
作業に戻った。
動いていると暑くなり、俺はボンバージャケットを脱いで薄手のセーターになった。
それでも汗が出て来た。
7時頃になると、子どもたちが既に分担の作業を終えて来た。
まだ時間は余っているので、周辺のビルなども入り口までの雪かきをさせた。
異例の大雪のため、子どもたちは休校だった。
交通機関が動いていないものが多い。
8時になり、周辺はほぼ終わった。
病院内も綺麗に道が整っている。
ハリマン屋の方らしい人間が挨拶に来た。
「石神先生! 今年は申し訳ありませんでした!」
「いいえ、何度もうちがお世話になってましたので。今年こそはと頑張りましたよ!」
俺が明るい笑顔で笑うと、ハリマン屋の人も笑ってくれた。
俺は子どもたちに言って、食堂からでかい寸胴を3つ持って来させた。
一緒にハリマン屋まで行く。
「みなさん、寒い中を集まられて冷えたでしょう。甘酒を作りましたので、どうぞ召し上がって下さい」
「そんな! 石神先生!」
子どもたちが寸胴から紙コップに注いで渡して行った。
俺たちもハリマン屋の敷地で一緒に頂く。
「前回はうちが何もしないのに、美味しいお煎餅まで頂いてしまって。今年は全部うちでやらせてください」
「困りましたなぁ」
名刺を交換すると、支店長さんだった。
トップ自ら陣頭指揮を執るなんて、大した店だ。
「あとでうちの煎餅を持たせますので、みなさんで召し上がって下さい」
「いいえ! それも前回で恥ずかしい思いをいたしました。みなさんにやって頂いた上に労われてしまいまして。どうか今年はうちに全部やらせてやってください」
「そう言われましても」
俺は何とか納めてもらった。
それでも支店長さんも納まらず、人数も少ないということで、一袋だけ頂いた。
病院の人間と子どもたちを食堂へ連れて行き、朝食を食べさせた。
朝から何も食べていないので、みんな空腹だった。
厨房長の岩波さんが、食事を用意してくれていた。
材料はうちの持ち込みだ。
けんちん汁。
焼き鮭(50切れ)。
目玉焼き(50枚)。
ハム焼き(厚切り100枚)。
それに漬物。
みんなで頂いた。
岩波さんたちにお礼を言って、子どもたちは帰った。
俺はスーツに着替えて仕事に入った。
響子に頂いたカレー煎餅を持って行くと喜んだ。
響子の好物だ。
「美味しいね!」
「そうか」
六花と一緒に嬉しそうに食べていた。
その夜、8時頃に家に帰り、夕食を食べた。
カレーだった。
「お替り」
「え?」
亜紀ちゃんが不思議そうな顔をする。
「なんだよ?」
「それで最後です」
「あんだと!」
「だって、カレーですよ?」
残るわけがないと言われた。
そういう家だった。
俺も諦めて風呂に入り、酒の用意をした。
つまみに焼きウドンを作った。
亜紀ちゃんに半分喰われた。
「今日は御苦労さん」
亜紀ちゃんと柳に言った。
「寒かったですよね」
「そうだな」
「みんなで虎温泉に入りました」
「優雅だな!」
「アハハハハハ!」
何となく酒の回りが早かったので、俺は切り上げて寝ることにした。
「なんか寒いな」
「そうですか?」
「暖房は入ってるよな?」
「それはもう。私は温かいですよ?」
「私もです」
亜紀ちゃんと柳が不思議がった。
「そうか。まあ、もう寝るわ」
「あ! 私もー!」
「じゃあ、私もー!」
俺は笑って、早く片付けて来いと言った。
部屋で横になると、ロボが寒いのでくっついてくる。
「お前の身体も冷たいなー」
寒い。
ロボが寒いだろうと抱き締めてやる。
本当に身体が冷たくて可哀そうだった。
亜紀ちゃんと柳が入って来て、一緒にベッドに潜る。
「タカさん、あったかいですね!」
「ほんとだ!」
二人が喜ぶ。
俺は二人の身体が冷たいので参った。
寝ようと思ったが、寒くて眠れない。
亜紀ちゃんと柳は温かいと喜んでいる。
おかしい。
それでも徐々に温まり、俺も眠った。
夢を見た。
久し振りに、日本地図が天井に浮かび上がり、それが徐々に黒く塗りつぶされて行く。
俺が子どもの頃から何度も見た、高熱を発した時の夢だ。
意識が明滅する。
不味いと思うすぐ後で意識を喪う。
それを繰り返した。
身体を動かそうとするが、意識が途切れ夢の中と現実が交錯する。
何も出来ない。
「タカさん! タカさん!」
亜紀ちゃんと柳が俺を揺り起こそうとしている。
「柳さん! タカさんに声を掛け続けて」
「うん!」
亜紀ちゃんが離れてすぐに戻って来た。
「44度!」
亜紀ちゃんの叫び声が聞こえた。
そのまま部屋を飛び出して行った。
次に目が覚めた時、俺は意識を取り戻していた。
「タカさん!」
亜紀ちゃんが泣いていた。
柳が部屋に入り、氷を洗面器に入れて来た。
「おう。熱が出たようだな」
「タカさん! 大丈夫ですか!」
「ああ、大分いいよ。熱を測ってくれ」
亜紀ちゃんが枕元の体温計を見た。
「42度です!」
「下がったか」
「覚えているんですか!」
「44度というのはな。久しぶりだ」
亜紀ちゃんが抱き着いて来る。
「薬剤庫に「アセトアミノフェン」の錠剤がある。柳、分かるか?」
「はい! 探してきます!」
「頼む」
解熱させなければ、身体が不味い。
下がらなければ、また氷風呂だ。
そういうことを亜紀ちゃんに話した。
「用意をしておきます」
「まだいい。薬を飲んでみてからだ」
亜紀ちゃんが心配そうだ。
「ああ、柳に経口補水液も持って来るように言ってくれ。冷蔵庫に在庫があるはずだ」
「はい!」
亜紀ちゃんが走って行った。
すぐに見つけて持って来る。
俺はコップにあけて一杯飲んだ。
身体に染みわたる感覚がある。
やはり、脱水症状を呈していたようだ。
その自覚も無いままでいた。
あまり良い状態ではない。
「院長先生をお呼びしますか?」
「まだいい。薬で経過を見てからだ」
「はい」
柳が薬を持って来た。
俺が確認して二錠口に入れて経口補水液で呑み込む。
双子が亜紀ちゃんに呼ばれて入って来た。
泣きそうな顔になって俺に抱き着いて来た。
「タカさん! すぐに治すから!」
「待っててね!」
俺に「手かざし」をした。
身体がどんどん楽になっていく。
「ああ、気持ちがいいぞ」
「「うん!」」
俺は眠った。
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