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御堂、衆院選 英雄「御堂」
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俺たちが羽田空港から帰ると、もう10時前だった。
風呂に入って、飲みたければと御堂を酒に誘った。
正巳さんが飲むので、御堂も付き合う。
菊子さんと澪さんはもう長野へ帰っている。
正巳さんに、事件の概要を話した。
「石神さん、今日は大変だったな」
「はい。正巳さんは丁度出掛けていましたが、大丈夫でしたか?」
「ああ、わしは選挙対策委員長との簡単な打ち合わせだったからな。でも出掛け先で事件を聞いて驚いた」
「ええ。まさか「業」がこのタイミングで仕掛けて来るとは思いませんでした。まあ、だからこそでしょうけどね」
戦いのコツは、相手が嫌がることを嫌がるタイミングでやることだ。
「このバカが勝手に飛び込んできまして。肝を冷やしましたよ」
「そうか」
正巳さんは笑っている。
「大人しいようにみんな考えているんだがな。こいつは結構やんちゃなんだよ」
「思い知りましたよ。まったく無茶なことをしやがる」
「あはははは」
「笑ってんじゃねぇ!」
亜紀ちゃんと柳も来た。
自分たちのつまみを作り始めた。
「石神、一つ聞きたいんだけど」
「なんだ?」
「青嵐さんの「Death Wish」って何だったんだ?」
「あれか」
俺は少し迷ったが、話すことにした。
御堂も半分気付いているようだったためだ。
「あれは青嵐と紫嵐にだけ許可していることなんだ。あいつらの判断で、俺たちが持っている全ての車両、航空機などが自在に扱えることが出来るようになる」
「ああ」
「俺たちの持っているものは、結構な武装があるものも多い。普段は俺が許可を出して段階を追って解放することが出来るんだけどな。でも危急の場合もあるから、乗り物のプロフェッショナルである青嵐と紫嵐には俺の権限を一切外して使えることが出来るようにしているんだ。あいつらを信頼しているからな」
「うん」
御堂はもう分かったようだった。
「だけど、それは一度きりだ。その権能を使う際には、命を懸けろと言っている。事が終われば自害するようにな。青嵐は今回それを使ったようだ」
「……」
「あのシボレー・コルベットには町を破壊するほどの装備がある。青嵐はお前を渋谷に届けるために、そしてお前を守るために、使った」
「やはりそうだったんだね。よく分かったよ」
「この数日間、青嵐たちはお前と一緒にいた。そしてお前が日本を守り、「業」との戦いで大きな存在となることを肌で感じた。だからだろうよ。お前の決意を助け、お前を守るために命を躊躇しなかった。まあ、実際、今日はお前が来なければ苦戦していたかもしれない」
「……」
「最も危なかったのは、あの憑依妖魔が俺たちにも通用したかもしれないということだ。磯良がやられかけた。自分で寸前に入って来ようとする妖魔を斬っていたようだけどな。一部が身体に入り、危なかった」
「……」
御堂が青嵐のことを考えているのが分かった。
「御堂、お前が動くというのは、そういうことだ。忘れるな」
「うん、絶対に忘れないよ」
御堂は微笑んで言った。
こいつは忘れないでいてくれるだろう。
「でも石神、お前は本当に命を奪うつもりだったのか? 兵器を使うことがそれほどに……」
「そうだ」
「それは余りにも大きな代償なんじゃないのか?」
「それは違う、御堂。今回は街一つを破壊すると言ったがな。それは無尽蔵に出来るんだぞ? デス・ウィッシュが発動されれば、青嵐たちの権能は自分が終わりだと言うまで続く」
「え?」
「それにな。俺は青嵐たちに、もっと大きな機械兵力の権能も与えている。俺に万一があった場合に使えるようにだ。だから最大機械兵力の「武神」も、青嵐たちには使える。その命を代償としてだがな」
「石神……」
それは「業」に成り代わり、世界を滅ぼす力を持つということだ。
もちろん、「武神」ほどのものを動かすには、様々なチェック機構をクリアする必要はある。
精神攻撃の有無や妖魔などからの精神操作の可能性が無いことが条件だ。
客観的な状況判断も考慮される。
御堂は尚も何か言いたいようだったが、俺は解散を宣言した。
御堂は疲れている。
御堂は柳と正巳さんと一緒に部屋へ向かった。
翌朝の土曜日。
テレビを付けると、当然昨日の渋谷の事件がどこの局でも報道されていた。
新聞も、当然全紙一面の扱いだ。
マスコミ各社は「業」の攻撃であることを発表したが、その内容が「無差別憑依」であることは伏せられていた。
ジャングル・マスターの情報操作だ。
万一「無差別憑依」が知られれば、全国民が疑心暗鬼に駆られる。
自分の隣にいる人間、愛する家族や友人、仲間たちが、いつ化け物になるのか分からない。
俺たちは至急、対策を立てなければならなかった。
御堂と正巳さんが起きて来た。
ゆっくり寝るように言ったが、やはり8時にリヴィングへ降りて来る。
「なんだよ、なんで寝てないんだ」
「いつもの癖でね。うちは朝が早いから」
「まあ、そのうちに「寝かせて下さい」って泣くことになるけどな」
「アハハハハハ!」
子どもたちが御堂と正巳さんの食事を用意する。
特別な物ではない。
焼き魚に出汁巻き卵、サラダ、味噌汁は舞茸だ。
それに御堂家の卵を付けた。
ハーが二人に言う。
「サタデー・エッグはね」
「サタデー・エッグ?」
「そう! 御堂家の卵は日曜日の朝だけなの! だから他の日に食べるのは、本当に特別なんですよ!」
「そうなんだ」
御堂は大笑いした。
「私たちは食べて無いの」
「バカ! 元々御堂の家のものだ!」
ハーの頭を引っぱたいた。
御堂と正巳さんは大笑いして食べて行った。
「石神、もっと卵を送るよ」
「ほんと!」
ハーの頭を引っぱたく。
「いいよ。いままでも多すぎだ。日曜の楽しみくらいが丁度いいんだよ」
「でも、うちでも余ってしまって困っているんだ。ほら、去年の夏にルーちゃんとハーちゃんが何かしてくれただろ? あれからそうなんだよ」
「ああ」
双子がお世話になっているお礼だと、あちこちで「手かざし」をした。
米が大量に出来てうちにも引き取って欲しいと言われた。
まだうちにも喰い切れない量がある。
他の野菜なども同様だ。
「今度、有精卵も送ろうか?」
「いや、うちじゃ使い道もないよ」
「ここでも育てればいいよ。きっと美味しい卵を産んでくれると思うよ?」
俺は断ろうと思ったが、ハーが飛びついた。
以前の「卵の思い出」があるせいだ。
「御堂さん! 是非!」
「おい、ここじゃ鶏なんて飼えないぞ」
「私たちが面倒みるから!」
「あのなぁ。御堂の家みたいに敷地が広ければいいけどよ。あの臭いはちょっと困るぜ」
「離れた場所で飼う!」
御堂が笑ってやらせればいいと言った。
「菊子さんにいろんなお話を聞いてるから! 大丈夫だよ!」
正巳さんも菊子さんの名前が出て喜んだ。
「じゃあ、しっかり面倒を見るんだぞ」
「うん!」
ハーがルーの所へ行き、二人で喜んだ。
まあ、動物の世話をするのは悪いことではない。
今日は全ての予定をキャンセルし、御堂と正巳さんにゆっくりしてもらった。
みんなで朝から「虎温泉」に浸かり、双子が昼食にほうとう鍋を作って御堂と正巳さんを喜ばせた。
午後は少し寝るように言ったが、御堂は進学しないという皇紀と話したがった。
しばらくして俺も少し寝ようと上に上がると、皇紀の鳴き声が聞こえた。
御堂な何か話してくれたのだろう。
3時前に起きて、みんなでお茶にしようと思った。
「タカさん! テレビで御堂さんのことが!」
亜紀ちゃんが言って、テレビを付けた。
昨日の渋谷の事件で、御堂が現場にいたことが話されていた。
《救助された方々の証言で、今回衆院選で注目されていた御堂正嗣氏が目撃されていることが分かりました》
御堂が異様なスポーツカーで現場に現われ、自分を囮にして「虎」の軍に協力していたことが判明していた。
街頭カメラの映像や、一部自分のスマホで撮影していた人間もいたようだ。
特に、御堂がシボレー・コルベットで流した大音量の声は、はっきりと録音されていた。
自分の身を犠牲にしてまで、市民を守ったと分かっている。
更に、その後の救助活動にも最後まで現場にいたことも伝えられていた。
《御堂氏は元々お医者さんでした。ですから応急処置も御自分でなさっていたようです》
《全身に血を浴びて、一緒にいた方や二体のアンドロイドも御堂氏の指示で救助活動をされていました》
《でも、御堂氏からは何のコメントも発表も無いんですよね?》
《そうなんです! これからの選挙戦に向けて、こういう言い方は申し訳ないのですが、売名に使えばいいと思うのですが》
《助けられた人々からは、親身に声を掛けてもらい、応急手当を受けただけだと。実際、御堂氏と知らずにいた方も多いようです》
新聞各社は号外を発行し、全国で御堂の英雄的な行動が知らされた。
「おい、御堂。大変なことになったな」
「……うん……」
御堂は呆然としていた。
俺はもちろん予想はしていたが、御堂は全くの想定外のようだった。
自由党の人間からもどんどん連絡が来た。
御堂が対応に追われ、説明に窮していた。
御堂は、俺たちや現場の人間たちを助けたかっただけなのだ。
柳がネットでの状況を調べて来た。
「もう、「祭」になってますよ!」
あちこちの掲示板やニュースの閲覧数が物凄いことになっていた。
コメントの数も尋常ではない。
海外でも反応が出始め、やがて全世界的に御堂の行動が知られるだろう。
「どうだよ、「フェラーリ・ダンディ」の恐怖が分かったか」
「うん」
俺は大笑いで亜紀ちゃんにコーヒーを淹れるように言った。
今日は葛餅を出した。
「石神」
「なんだ?」
「これ、どうにかならないかな」
「ああ! 俺もずっとそう思ってた!」
「いしがみー」
みんなで大笑いした。
御堂は本当に辛そうに俯いていた。
風呂に入って、飲みたければと御堂を酒に誘った。
正巳さんが飲むので、御堂も付き合う。
菊子さんと澪さんはもう長野へ帰っている。
正巳さんに、事件の概要を話した。
「石神さん、今日は大変だったな」
「はい。正巳さんは丁度出掛けていましたが、大丈夫でしたか?」
「ああ、わしは選挙対策委員長との簡単な打ち合わせだったからな。でも出掛け先で事件を聞いて驚いた」
「ええ。まさか「業」がこのタイミングで仕掛けて来るとは思いませんでした。まあ、だからこそでしょうけどね」
戦いのコツは、相手が嫌がることを嫌がるタイミングでやることだ。
「このバカが勝手に飛び込んできまして。肝を冷やしましたよ」
「そうか」
正巳さんは笑っている。
「大人しいようにみんな考えているんだがな。こいつは結構やんちゃなんだよ」
「思い知りましたよ。まったく無茶なことをしやがる」
「あはははは」
「笑ってんじゃねぇ!」
亜紀ちゃんと柳も来た。
自分たちのつまみを作り始めた。
「石神、一つ聞きたいんだけど」
「なんだ?」
「青嵐さんの「Death Wish」って何だったんだ?」
「あれか」
俺は少し迷ったが、話すことにした。
御堂も半分気付いているようだったためだ。
「あれは青嵐と紫嵐にだけ許可していることなんだ。あいつらの判断で、俺たちが持っている全ての車両、航空機などが自在に扱えることが出来るようになる」
「ああ」
「俺たちの持っているものは、結構な武装があるものも多い。普段は俺が許可を出して段階を追って解放することが出来るんだけどな。でも危急の場合もあるから、乗り物のプロフェッショナルである青嵐と紫嵐には俺の権限を一切外して使えることが出来るようにしているんだ。あいつらを信頼しているからな」
「うん」
御堂はもう分かったようだった。
「だけど、それは一度きりだ。その権能を使う際には、命を懸けろと言っている。事が終われば自害するようにな。青嵐は今回それを使ったようだ」
「……」
「あのシボレー・コルベットには町を破壊するほどの装備がある。青嵐はお前を渋谷に届けるために、そしてお前を守るために、使った」
「やはりそうだったんだね。よく分かったよ」
「この数日間、青嵐たちはお前と一緒にいた。そしてお前が日本を守り、「業」との戦いで大きな存在となることを肌で感じた。だからだろうよ。お前の決意を助け、お前を守るために命を躊躇しなかった。まあ、実際、今日はお前が来なければ苦戦していたかもしれない」
「……」
「最も危なかったのは、あの憑依妖魔が俺たちにも通用したかもしれないということだ。磯良がやられかけた。自分で寸前に入って来ようとする妖魔を斬っていたようだけどな。一部が身体に入り、危なかった」
「……」
御堂が青嵐のことを考えているのが分かった。
「御堂、お前が動くというのは、そういうことだ。忘れるな」
「うん、絶対に忘れないよ」
御堂は微笑んで言った。
こいつは忘れないでいてくれるだろう。
「でも石神、お前は本当に命を奪うつもりだったのか? 兵器を使うことがそれほどに……」
「そうだ」
「それは余りにも大きな代償なんじゃないのか?」
「それは違う、御堂。今回は街一つを破壊すると言ったがな。それは無尽蔵に出来るんだぞ? デス・ウィッシュが発動されれば、青嵐たちの権能は自分が終わりだと言うまで続く」
「え?」
「それにな。俺は青嵐たちに、もっと大きな機械兵力の権能も与えている。俺に万一があった場合に使えるようにだ。だから最大機械兵力の「武神」も、青嵐たちには使える。その命を代償としてだがな」
「石神……」
それは「業」に成り代わり、世界を滅ぼす力を持つということだ。
もちろん、「武神」ほどのものを動かすには、様々なチェック機構をクリアする必要はある。
精神攻撃の有無や妖魔などからの精神操作の可能性が無いことが条件だ。
客観的な状況判断も考慮される。
御堂は尚も何か言いたいようだったが、俺は解散を宣言した。
御堂は疲れている。
御堂は柳と正巳さんと一緒に部屋へ向かった。
翌朝の土曜日。
テレビを付けると、当然昨日の渋谷の事件がどこの局でも報道されていた。
新聞も、当然全紙一面の扱いだ。
マスコミ各社は「業」の攻撃であることを発表したが、その内容が「無差別憑依」であることは伏せられていた。
ジャングル・マスターの情報操作だ。
万一「無差別憑依」が知られれば、全国民が疑心暗鬼に駆られる。
自分の隣にいる人間、愛する家族や友人、仲間たちが、いつ化け物になるのか分からない。
俺たちは至急、対策を立てなければならなかった。
御堂と正巳さんが起きて来た。
ゆっくり寝るように言ったが、やはり8時にリヴィングへ降りて来る。
「なんだよ、なんで寝てないんだ」
「いつもの癖でね。うちは朝が早いから」
「まあ、そのうちに「寝かせて下さい」って泣くことになるけどな」
「アハハハハハ!」
子どもたちが御堂と正巳さんの食事を用意する。
特別な物ではない。
焼き魚に出汁巻き卵、サラダ、味噌汁は舞茸だ。
それに御堂家の卵を付けた。
ハーが二人に言う。
「サタデー・エッグはね」
「サタデー・エッグ?」
「そう! 御堂家の卵は日曜日の朝だけなの! だから他の日に食べるのは、本当に特別なんですよ!」
「そうなんだ」
御堂は大笑いした。
「私たちは食べて無いの」
「バカ! 元々御堂の家のものだ!」
ハーの頭を引っぱたいた。
御堂と正巳さんは大笑いして食べて行った。
「石神、もっと卵を送るよ」
「ほんと!」
ハーの頭を引っぱたく。
「いいよ。いままでも多すぎだ。日曜の楽しみくらいが丁度いいんだよ」
「でも、うちでも余ってしまって困っているんだ。ほら、去年の夏にルーちゃんとハーちゃんが何かしてくれただろ? あれからそうなんだよ」
「ああ」
双子がお世話になっているお礼だと、あちこちで「手かざし」をした。
米が大量に出来てうちにも引き取って欲しいと言われた。
まだうちにも喰い切れない量がある。
他の野菜なども同様だ。
「今度、有精卵も送ろうか?」
「いや、うちじゃ使い道もないよ」
「ここでも育てればいいよ。きっと美味しい卵を産んでくれると思うよ?」
俺は断ろうと思ったが、ハーが飛びついた。
以前の「卵の思い出」があるせいだ。
「御堂さん! 是非!」
「おい、ここじゃ鶏なんて飼えないぞ」
「私たちが面倒みるから!」
「あのなぁ。御堂の家みたいに敷地が広ければいいけどよ。あの臭いはちょっと困るぜ」
「離れた場所で飼う!」
御堂が笑ってやらせればいいと言った。
「菊子さんにいろんなお話を聞いてるから! 大丈夫だよ!」
正巳さんも菊子さんの名前が出て喜んだ。
「じゃあ、しっかり面倒を見るんだぞ」
「うん!」
ハーがルーの所へ行き、二人で喜んだ。
まあ、動物の世話をするのは悪いことではない。
今日は全ての予定をキャンセルし、御堂と正巳さんにゆっくりしてもらった。
みんなで朝から「虎温泉」に浸かり、双子が昼食にほうとう鍋を作って御堂と正巳さんを喜ばせた。
午後は少し寝るように言ったが、御堂は進学しないという皇紀と話したがった。
しばらくして俺も少し寝ようと上に上がると、皇紀の鳴き声が聞こえた。
御堂な何か話してくれたのだろう。
3時前に起きて、みんなでお茶にしようと思った。
「タカさん! テレビで御堂さんのことが!」
亜紀ちゃんが言って、テレビを付けた。
昨日の渋谷の事件で、御堂が現場にいたことが話されていた。
《救助された方々の証言で、今回衆院選で注目されていた御堂正嗣氏が目撃されていることが分かりました》
御堂が異様なスポーツカーで現場に現われ、自分を囮にして「虎」の軍に協力していたことが判明していた。
街頭カメラの映像や、一部自分のスマホで撮影していた人間もいたようだ。
特に、御堂がシボレー・コルベットで流した大音量の声は、はっきりと録音されていた。
自分の身を犠牲にしてまで、市民を守ったと分かっている。
更に、その後の救助活動にも最後まで現場にいたことも伝えられていた。
《御堂氏は元々お医者さんでした。ですから応急処置も御自分でなさっていたようです》
《全身に血を浴びて、一緒にいた方や二体のアンドロイドも御堂氏の指示で救助活動をされていました》
《でも、御堂氏からは何のコメントも発表も無いんですよね?》
《そうなんです! これからの選挙戦に向けて、こういう言い方は申し訳ないのですが、売名に使えばいいと思うのですが》
《助けられた人々からは、親身に声を掛けてもらい、応急手当を受けただけだと。実際、御堂氏と知らずにいた方も多いようです》
新聞各社は号外を発行し、全国で御堂の英雄的な行動が知らされた。
「おい、御堂。大変なことになったな」
「……うん……」
御堂は呆然としていた。
俺はもちろん予想はしていたが、御堂は全くの想定外のようだった。
自由党の人間からもどんどん連絡が来た。
御堂が対応に追われ、説明に窮していた。
御堂は、俺たちや現場の人間たちを助けたかっただけなのだ。
柳がネットでの状況を調べて来た。
「もう、「祭」になってますよ!」
あちこちの掲示板やニュースの閲覧数が物凄いことになっていた。
コメントの数も尋常ではない。
海外でも反応が出始め、やがて全世界的に御堂の行動が知られるだろう。
「どうだよ、「フェラーリ・ダンディ」の恐怖が分かったか」
「うん」
俺は大笑いで亜紀ちゃんにコーヒーを淹れるように言った。
今日は葛餅を出した。
「石神」
「なんだ?」
「これ、どうにかならないかな」
「ああ! 俺もずっとそう思ってた!」
「いしがみー」
みんなで大笑いした。
御堂は本当に辛そうに俯いていた。
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