富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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襲撃計画と卵

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 ハーも自分も一緒に聞きたいと言い、連れて来た。

 「千両、お前気付いているか?」
 「はい。どうにも嫌な臭いがいたしますね」
 「そうだよな」

 今回の事件は、政治家が目論んだにしては過激すぎる。

 「「愛国義兵団」という荒事の連中がいたにしても、やることが本格的過ぎます。もしも六花さんだけであったら、何か起きても不思議ではなかった」
 「ああ。あいつは基本的にのんびりしているからな。戦いになれば優秀だが、こういう絡み手で来られると危ない」
 「だから石神さんは護衛を付けていたんですね?」
 「そうだ。栞の時にも俺の子どもは狙われたからな」
 「それに、今回は動機がやけに滑らか過ぎる」
 「お前もそう思うか。如何にも納得するような理由だが、やってることが高度過ぎる。今はスキャンダルで足を引っ張るのが主流だからな。こんな血腥いやり方は思いも寄らないだろうよ」
 「ならば」
 「「業」が絡んでいるな」
 「「!」」

 ルーとハーが驚く。

 「ルー、「日本一新会」と「愛国義兵団」はいつから手を組んでいる?」
 「はい! 12年前に「日本一新会」が一時的に政権を取る前からです!」

 「愛国義兵団」は20年前に設立された新興右翼団体だった。
 幾つかの右翼団体を脱退した人間が集まって立ち上げた。
 当初から過激な集団だった。
 立件されなかったが、幾つかの右翼団体や新興宗教団体が襲撃され、数多くの死傷者が出たのは、「愛国義兵団」の仕業と思われている。
 12年前、「日本一新会」は、自由党に対して日本医師会など大きな票田が愛想を尽かした時に、議席を大きく伸ばして与党となった。
 その時の選挙資金を「愛国義兵団」が支えたお陰と思われる。
 そこから、「日本一新会」と「愛国義兵団」との蜜月関係が始まった。
 政治的な後ろ盾を得て、「愛国義兵団」は傘下に多くの右翼組織や関連構成員を得た。
 中核の人数は当初のメンバーのままだが、右翼団体としては、日本有数の規模となった。

 そして、今も過激な戦闘集団のままだ。
 まるで暴れるために生きているような連中だった。

 


 「いつから「業」の枝が付いたのかは分からん。多分この数年のことと思う。北方領土問題あたりで持ちかけられ、接触したんだろうよ」
 
 北方領土の返還に貢献すれば、政治家としては大きなアドバンテージを得ることが出来る。

 「ところが御堂さんが登場された」
 「そうだ、千両。もう日本の政治で御堂を揺るがすことは出来ない。このまま御堂を頂点とした政治体制になることは明白だからな」
 「その牙城を崩すために、今回の事件を起こしたと」
 「表向きはな。でも、裏でそれを具体的に指示している奴がいる。そいつも御堂の台頭を許せないでいる」
 「「業」ですな」
 「そうだ。あいつは「日本一新会」なんてどうでもいい。国内で動ける戦闘集団が欲しかっただけだ。「愛国義兵団」はうってつけだったな」
 「はい」

 俺たちは詳細な作戦を立て、三日後に実行することにした。




 「タカさん、夕飯は「鳥鍋大会」なんですけど、そのままでいいですか?」

 リヴィングに上がると、亜紀ちゃんが聞いて来た。

 「ああ。おい、千両! 鳥鍋でいいよな?」
 「はい、戴きます」

 「ああ、千両、桜! ハーと一緒に卵を取って来てくれ」
 「はい」

 千両は普通に返事したが、桜が不思議そうな顔をしている。
 ハーが笑って、外へ連れて行った。




 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 「あの、ハーさん。どちらへ?」

 桜がハーに聞いた。

 「もうそこ」

 200メートル程歩いた高い塀に囲まれた土地だった。
 そこに6羽の鶏がいる。
 ハーが塀の中に作られた鋼鉄の扉を開ける。

 「こんにちはー!」
 「「「「「「こんにちは」」」」」」

 「「!」」

 体長2メートル以上のでかい鶏がいた。
 そいつらが挨拶して来た。

 「気を付けてね。結構強いよ?」

 桜に鬼アキが迫って来た。
 その瞬間、右の羽でサクラが吹っ飛ばされた。
 コッコが千両に迫る。
 千両は見事な踏み込みで胸に正拳突きを放った。
 コッコは咄嗟に後ろへ飛び退いて避ける。

 「やるな!」
 「コケェー!」

 「一度やっつけないと、卵もらえないよー」

 千両は右手の人差し指を伸ばし、横に薙いだ。
 コッコの胸元が赤く染まる。
 千両がそのまま地面を一閃した。
 地面が爆発し、一直線に抉れた。
 ニッコリと笑い、コッコを見た。 
 コッコが地面に座り、頭を下げた。

 「スゴイね!」
 「「糸斬り」です。刀が無い時の刀法ですよ」
 「さっすがぁー!」

 桜も地面から起き上がり奮戦していた。
 手数で鬼アキを押し、隙を見て首に両手を回してそのまま回転した。
 伸身から身を逆さに捻って鬼アキの頭頂に膝を落とす。
 鬼アキが横に倒れた。

 「はい! 終わりー!」

 ハーが叫び、鶏たちは銘々に組み手を始めた。
 ガシンガシンと音が響く。

 ハーは持って来たリュックサックに卵を4つ入れた。
 大きさは25センチほど。
 敷地を出て、ハーは鍵を閉めた。
 放心した桜がハーに聞いた。

 「あの、なんですか、これ」
 「え? タマゴだよ?」
 「はぁ」
 「美味しいよ!」

 千両が大笑いしていた。

 「まだおっきくなりそうなの!」
 「そうですか」
 「楽しみだね!」
 「はい」

 


 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 




 千両たちが無事にタマゴを持ち帰った。
 
 「これを今日の夕飯に?」

 桜が恐る恐る聞いて来る。

 「いや、お前らへの土産だよ」
 「え!」
 「みんなで喰ってくれ。ああ、喰ったら感想を教えてくれよ」
 「はぁ」

 最近になって、双子が育てた鶏たちが卵を産むようになったと聞いていた。
 しかし、とてもじゃないが喰う気がしなかった。



 後日。
 桜から電話を貰い、大変美味かったと聞いた。

 「食べた奴らは元気になったんじゃねぇか?」
 「ああ! そう言えば調子良さそうですね!」
 「そうか!」




 毒性はないようだ。
 俺はその後で亜紀ちゃんに卵を回収して来るように言った。 
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