1,552 / 3,202
石神家本家 Ⅲ
しおりを挟む
「虎地獄」は続いていた。
タカさんは数人を相手にするようになり、ブズブスズバスバやられていた。
一定の傷になると休憩になり、私とハーで治療する。
タカさんは瀕死の息だ。
「おい、「Ω」と「オロチ」はあとどれくらいある?」
「ちょっとヤバいかも。まだあるけど、このペースだと無くなっちゃうよ」
「チッ!」
虎白さんがまた呼んだ。
「高虎ぁー! いつまで寝てやがるんだ! 来い!」
タカさんがフラつきながら立ち上がった。
傷はもう塞がり切ってない。
血が滴る。
「虎白さん! もうこの辺で勘弁してくれ!」
「あ? 寝ぼけてんじゃねぇ!」
「チクショー!」
タカさんが刀を構えた。
左手で握っている。
私とハーには分かった。
ついに「花岡」を使うんだ。
「おい! てめぇ、それはなんだ!」
「……」
「虎白! こいつ、何かやる気だぞ!」
「高虎! それは石神の剣じゃねぇだろうが!」
「ゴルァ! 俺らが折角石神の技を教えてやってんのによ!」
虎白さんが剣を降ろして行った。
「高虎。お前も石神の末席だ。だったらご先祖が何をやって来たか知ってんだろう!」
「……」
「石神家はよ、ずっと妖魔やとんでもねぇ連中とやり合って来たんだ。だからよ、初見で敗れたとしても、絶対に他の石神家の人間が返し技を編み出して来た」
「……」
虎白さんが他の人たちに言った。
「おい! 俺が高虎の技を受ける! お前ら! 後は頼むぞ!」
全員が雄叫びを挙げた。
「来い!」
タカさんは「虚震花」を撃った。
威力は相当落としている。
肉は爆ぜるだろうが、命には別条はないはずだ。
「あ?」
撃たれた虎白さんは、舞うような動きをした。
「あれ?」
何も起きないので、タカさんが呆然としている。
「高虎ぁ! てめぇ、なんだそりゃ!」
「え、えーと」
「何だと思えば「花岡」かよ! あー! 俺は命の覚悟をしてたのによ!」
「はい?」
「バァカ! そんなもの、とっくに返し技はあるわ! てめぇ、舐めてんのかぁ!」
「ヒィィィーーー!」
「このクサレモンに思い知らせてやれ!」
『オゥゥゥオオオー!』
全員でボコボコにされた。
一旦休憩。
「タカさん……」
「……」
「生きてますかー」
「……」
また何度かタカさんはブスブスのズバスバにされた。
ちょっと暗くなって来た。
「もう殺してくれ……」
「タカさーん」
「がんばー」
なんか、私とハーも慣れて来た。
「虎白! そろそろ腹が減ったな」
「おう、そう言えばそうだな」
「メシにすっか!」
「ああ。でも下まで行くのは面倒だな」
「どうすんよ?」
「あの!」
私が手を挙げた。
「イノシシとか捕まえて来ましょうか?」
「あんだ?」
「私たち、よく狩ってますから!」
みんなが笑った。
「そりゃいいや。じゃあ頼むぜ、嬢ちゃんたち」
「「はーい!」」
ハーと山に入った。
「お待たせしましたー!」
イノシシを二頭とウサギ、タヌキを狩って来た。
「おお! すげぇな!」
「やるな、嬢ちゃんたち!」
「「エヘヘヘヘ!」」
「おし! じゃあ捌くぞ!」
「高虎! 薪を拾って来い!」
タカさんがゾンビのように立ち上がって歩いた。
よく動けるな。
ハーが一緒に付いて行った。
私は解体を手伝おうと思っていた。
「危ねぇから、ちょっと離れてな」
「はい?」
男の人たちがイノシシなどを木に吊るし、下に木の枝を積んで葉などを敷いて行く。
虎白さんが、日本刀を一閃させた。
獲物の首から血が落ちて来る。
また一閃させると、内臓を傷つけずに腹が開いた。
何度も日本刀を振るい、地面に置いた木枝の上に、肉が重なって行った。
ゾンビタカさんとハーが木の枝を抱えて来た。
手際よく火が点けられ、みんな肉を木の枝に刺して焙り始めた。
私とハーも渡される。
「城の中に、味噌とかあっただろう」
「おう! 取って来る!」
味噌や醤油が出て来て、銘々に肉に塗って行く。
私とハーも真似した。
タカさんは地面に倒れていた。
「こいつ、もうダメかな」
みんなで肉にかぶりつきながら話していた。
「高虎! だらしねぇぞ!」
誰かがまた日本刀でタカさんのお尻を刺した。
「……」
無反応だった。
でも、顔を覗き込んでいた人が言った。
「あ! ちょっと顔を歪めたぞ!」
「てめぇ! 高虎! 死んだ振りかぁ!」
みんながタカさんを蹴り始め、タカさんが起き上がった。
「チキショー!」
タカさんが自分で肉を焼き始めた。
意外と元気だった。
流石タカさん!
私とハーはいつものようにガンガン食べた。
みんなに褒められた。
エヘヘヘヘ。
タカさんは数人を相手にするようになり、ブズブスズバスバやられていた。
一定の傷になると休憩になり、私とハーで治療する。
タカさんは瀕死の息だ。
「おい、「Ω」と「オロチ」はあとどれくらいある?」
「ちょっとヤバいかも。まだあるけど、このペースだと無くなっちゃうよ」
「チッ!」
虎白さんがまた呼んだ。
「高虎ぁー! いつまで寝てやがるんだ! 来い!」
タカさんがフラつきながら立ち上がった。
傷はもう塞がり切ってない。
血が滴る。
「虎白さん! もうこの辺で勘弁してくれ!」
「あ? 寝ぼけてんじゃねぇ!」
「チクショー!」
タカさんが刀を構えた。
左手で握っている。
私とハーには分かった。
ついに「花岡」を使うんだ。
「おい! てめぇ、それはなんだ!」
「……」
「虎白! こいつ、何かやる気だぞ!」
「高虎! それは石神の剣じゃねぇだろうが!」
「ゴルァ! 俺らが折角石神の技を教えてやってんのによ!」
虎白さんが剣を降ろして行った。
「高虎。お前も石神の末席だ。だったらご先祖が何をやって来たか知ってんだろう!」
「……」
「石神家はよ、ずっと妖魔やとんでもねぇ連中とやり合って来たんだ。だからよ、初見で敗れたとしても、絶対に他の石神家の人間が返し技を編み出して来た」
「……」
虎白さんが他の人たちに言った。
「おい! 俺が高虎の技を受ける! お前ら! 後は頼むぞ!」
全員が雄叫びを挙げた。
「来い!」
タカさんは「虚震花」を撃った。
威力は相当落としている。
肉は爆ぜるだろうが、命には別条はないはずだ。
「あ?」
撃たれた虎白さんは、舞うような動きをした。
「あれ?」
何も起きないので、タカさんが呆然としている。
「高虎ぁ! てめぇ、なんだそりゃ!」
「え、えーと」
「何だと思えば「花岡」かよ! あー! 俺は命の覚悟をしてたのによ!」
「はい?」
「バァカ! そんなもの、とっくに返し技はあるわ! てめぇ、舐めてんのかぁ!」
「ヒィィィーーー!」
「このクサレモンに思い知らせてやれ!」
『オゥゥゥオオオー!』
全員でボコボコにされた。
一旦休憩。
「タカさん……」
「……」
「生きてますかー」
「……」
また何度かタカさんはブスブスのズバスバにされた。
ちょっと暗くなって来た。
「もう殺してくれ……」
「タカさーん」
「がんばー」
なんか、私とハーも慣れて来た。
「虎白! そろそろ腹が減ったな」
「おう、そう言えばそうだな」
「メシにすっか!」
「ああ。でも下まで行くのは面倒だな」
「どうすんよ?」
「あの!」
私が手を挙げた。
「イノシシとか捕まえて来ましょうか?」
「あんだ?」
「私たち、よく狩ってますから!」
みんなが笑った。
「そりゃいいや。じゃあ頼むぜ、嬢ちゃんたち」
「「はーい!」」
ハーと山に入った。
「お待たせしましたー!」
イノシシを二頭とウサギ、タヌキを狩って来た。
「おお! すげぇな!」
「やるな、嬢ちゃんたち!」
「「エヘヘヘヘ!」」
「おし! じゃあ捌くぞ!」
「高虎! 薪を拾って来い!」
タカさんがゾンビのように立ち上がって歩いた。
よく動けるな。
ハーが一緒に付いて行った。
私は解体を手伝おうと思っていた。
「危ねぇから、ちょっと離れてな」
「はい?」
男の人たちがイノシシなどを木に吊るし、下に木の枝を積んで葉などを敷いて行く。
虎白さんが、日本刀を一閃させた。
獲物の首から血が落ちて来る。
また一閃させると、内臓を傷つけずに腹が開いた。
何度も日本刀を振るい、地面に置いた木枝の上に、肉が重なって行った。
ゾンビタカさんとハーが木の枝を抱えて来た。
手際よく火が点けられ、みんな肉を木の枝に刺して焙り始めた。
私とハーも渡される。
「城の中に、味噌とかあっただろう」
「おう! 取って来る!」
味噌や醤油が出て来て、銘々に肉に塗って行く。
私とハーも真似した。
タカさんは地面に倒れていた。
「こいつ、もうダメかな」
みんなで肉にかぶりつきながら話していた。
「高虎! だらしねぇぞ!」
誰かがまた日本刀でタカさんのお尻を刺した。
「……」
無反応だった。
でも、顔を覗き込んでいた人が言った。
「あ! ちょっと顔を歪めたぞ!」
「てめぇ! 高虎! 死んだ振りかぁ!」
みんながタカさんを蹴り始め、タカさんが起き上がった。
「チキショー!」
タカさんが自分で肉を焼き始めた。
意外と元気だった。
流石タカさん!
私とハーはいつものようにガンガン食べた。
みんなに褒められた。
エヘヘヘヘ。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】狡い人
ジュレヌク
恋愛
双子のライラは、言う。
レイラは、狡い。
レイラの功績を盗み、賞を受賞し、母の愛も全て自分のものにしたくせに、事あるごとに、レイラを責める。
双子のライラに狡いと責められ、レイラは、黙る。
口に出して言いたいことは山ほどあるのに、おし黙る。
そこには、人それぞれの『狡さ』があった。
そんな二人の関係が、ある一つの出来事で大きく変わっていく。
恋を知り、大きく羽ばたくレイラと、地に落ちていくライラ。
2人の違いは、一体なんだったのか?
【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。
文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。
父王に一番愛される姫。
ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。
優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。
しかし、彼は居なくなった。
聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。
そして、二年後。
レティシアナは、大国の王の妻となっていた。
※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。
小説家になろうにも投稿しています。
エールありがとうございます!
【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
竜帝は番に愛を乞う
浅海 景
恋愛
祖母譲りの容姿で両親から疎まれている男爵令嬢のルー。自分とは対照的に溺愛される妹のメリナは周囲からも可愛がられ、狼族の番として見初められたことからますます我儘に振舞うようになった。そんなメリナの我儘を受け止めつつ使用人のように働き、学校では妹を虐げる意地悪な姉として周囲から虐げられる。無力感と諦めを抱きながら淡々と日々を過ごしていたルーは、ある晩突然現れた男性から番であることを告げられる。しかも彼は獣族のみならず世界の王と呼ばれる竜帝アレクシスだった。誰かに愛されるはずがないと信じ込む男爵令嬢と番と出会い愛を知った竜帝の物語。
芙蓉は後宮で花開く
速見 沙弥
キャラ文芸
下級貴族の親をもつ5人姉弟の長女 蓮花《リェンファ》。
借金返済で苦しむ家計を助けるために後宮へと働きに出る。忙しくも穏やかな暮らしの中、出会ったのは翡翠の色の目をした青年。さらに思いもよらぬ思惑に巻き込まれてゆくーーー
カクヨムでも連載しております。
後宮なりきり夫婦録
石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」
「はあ……?」
雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。
あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。
空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。
かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。
影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。
サイトより転載になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる