富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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スージー・マーフィ Ⅱ

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 俺は改めてスージーをみんなに紹介した。
 身長は170センチ少し。
 ソバージュのかかったセミロングで、顔立ちは綺麗と言うよりも精悍で知的な感じだ。
 魅力的ではある。
 化粧はほとんどしていない。
 白人特有のソバカスが清々しささえある。
 戦う女だ。

 ロボはもう、初めての人間を無意味に警戒しない。
 俺が笑って家に入れる人間が信頼できることを知っている。
 スージーの足に身体を押し付け、自分のものだとマーキングした。

 「まあ、これがロボさんなんですね!」
 「おお、カワイイだろ?」
 「はい! それに気品もあって」

 人間の言葉が分かるらしいロボが喜んで、ソファに座ったスージーの顔を舐めた。
 亜紀ちゃんがコーヒーを持って来て、スージーの前に置く。

 「石神家は食事がなんでも美味しいと聞きましたので、楽しみです」
 「亜紀ちゃん!」
 「はい!」
 「今日の塩ご飯は変更な!」
 「えー! じゃあ、パンの耳でいいですか?」
 「コンビニで捨てる弁当を貰って来い!」
 「はーい!」
 「往復で空き缶も集めて来るんだぞ!」
 「わかりましたー」

 スージーが笑っている。
 
 「大変ですね」
 「アラスカでバカみたいな金を使ったからな」
 「アハハハハハ!」

 スージーが、聖が亜紀ちゃんと双子を褒めていたと話した。

 「相当厳しく相手したのに、一歩も退かなかったって。セイントの指導は大変だったでしょう?」
 「毎日動けなくなって、ロックハートの家の前に放り出されましたね」
 「あのウンコカスにはいつか思い知らせるよ!」
 「「もう殺してください」って、いい声で鳴かせてやるよ!」

 双子は燃えていた。
 亜紀ちゃんはそんな二人を微笑んで見ている。




 俺は夕飯までの間に、少しスージーと話した。
 今分かっていることを全て話し、スージーの意見を聞いた。

 「石神さんがご心配されていることは良く分かります。爆発物の攻撃は「無駄」が多過ぎますからね」
 「そうだな。対象を確実に殺すためには、大規模な破壊が必要なことも多い。それに被害が大きい分、追及も激しいからな」
 「はい。それに大量の爆発物はどうしても目立ちます。石神さんたちを殺すつもりならば、結構な威力が必要ですしね」
 「効率も悪いよな」
 「私も石神さんの考えに同意です。これはミスリードを狙っている可能性が高いかと」
 「スージーもそう思うか?」
 「はい。決定的なのは、最初に何カ所かを狙わなかったことですね」
 「そうだ。俺たちに準備をさせる意味がねぇ」
 「でも、その裏も考えておく必要があるかと」
 「俺たちがミスリードと考えれば、また爆弾で来るってことか」
 「はい。どちらの手段も取れる敵であれば、そのような展開もあるかと」
 「まったく厄介だな」

 スージーが笑った。

 「世界最強の石神一家を狙うんですからね。正面から戦っては絶対に勝てない」
 「面倒だな」

 夕方になり、スージーに夕飯はすき焼きだと言った。

 「ああ! ニューヨークでも何度か社長と一緒に行きました! 一つの鍋をみんなでつつくのがいいのだと」
 「え? そう思う?」
 「はい! アメリカではあまりああいうものは無いですからね」
 「そっかー」
 
 スージーが楽しみにしているのならば仕方がない。
 じゃあ、味わってもらうか。




 「タカさん、鍋一緒でいいんですか?」
 「仲間同士で一つの鍋をつつくというのがいいんだ!」
 「はぁ」
 「スージーが楽しみにしてる!」
 「分かりましたけど」

 スージーがニコニコしていた。
 
 「じゃあ、いただきます!」
 「「「「「いただきます!」」」」」
 「イタダマス!」

 スージーは俺の隣だ。
 スージーが目の前の肉に箸を伸ばした。
 掴む寸前に、亜紀ちゃんが全て攫って行く。

 「え!」

 その亜紀ちゃんの肉を双子が跳ね上げ、空中で五人が奪い合う。

 「なに!」

 もう鍋には肉の一片すらねぇ。

 「!」

 次の肉が投入される。
 既に子どもたちはいい位置に着こうと殴り合っている。

 「なんなの!」
 「スージー、これが日本の鍋の「ツツキアイ」なんだぞ」
 「うそですよ!」
 「ワハハハハハ!」

 聖の会社の荒くれと一緒にいるスージーだったが、こんな食事はしていないだろう。
 仕方がないので、俺が領土宣言をし、スージーにも肉を食わせた。
 時々、それでも領土内の肉を狙ってくるので、俺がぶっ飛ばして行く。

 「……」

 俺もスージーの器に煮えた牛肉を入れて行ってやる。
 
 「美味いか?」
 「あの」
 「あんだ?」
 「お野菜とかもありますよね?」
 「ばかやろう!」
 「はい?」
 「こいつらの前で野菜なんか喰ってみろ! 一生バカにされることになるぞ!」
 「なんなんですかぁ!」

 子どもたちが薄笑いを浮かべ、亜紀ちゃんがスージーの器に春菊を入れやがった。

 「「「「「ワハハハハハハハ!」」」」」

 「スージー! それは食べるんじゃねぇ!」
 「なんでですか!」
 「すぐに全員の器に野菜を入れろ!」
 「無理ですってぇ!」

 「お手!」
 「「「「「!」」」」」

 子どもたちがテーブルの隅に移動して手を重ねる。

 「今のうちだぁ!」
 「なによ、これぇー!」

 それでもスージーはやった。

 「ふぅー」
 「石神さん」
 「あんだよ?」
 「私、お腹一杯です」
 「もうちょっと喰っとけ。一生の問題だからな」
 「重すぎですよー!」

 しばらくして30キロの牛肉が無くなり、みんな笑顔で野菜を食べ始めた。
 亜紀ちゃんが雑炊でいいか聞いて来る。
 
 「これでスージーも仲間だな!」
 「私、帰っていいですか?」

 それでもスージーは雑炊が美味しいと言い、お替りまでした。
 亜紀ちゃんがニコニコして、スージーの器に盛った。

 「石神さんって、やっぱりセイントの親友なんですね」
 「意味が分からねぇよ」
 「アハハハハハ!」

 


 スージーが楽しそうに笑っていた。 
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