富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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石神家の教育

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 ローマ教皇とガスパリ大司教が帰った。
 俺は全身から力が抜け、ちょっと放心状態だった。

 「タカさん、大変でしたね!」

 亜紀ちゃんが笑顔で言う。

 「まーな。俺だって世界中のキリスト教徒を敵に回したくねーし」
 「そうですよね」
 「亜紀ちゃんは全然平気だったよな」
 「そうですね」
 「さっきも手を振って見送ってたよな」
 「そうでしたっけ」

 取り敢えず一江に電話した。

 「悪い、今日は休むわ」
 「いろいろ大変でしたもんね」
 「ああ、さっきローマ教皇がうちに来てさ。それで疲れちゃった」

 一江が無言で電話を切りやがった。
 亜紀ちゃんにコーヒーを貰い、虎白さんに電話した。

 「あんだよ! 今鍛錬の最中なんだぞ!」
 「すいません! あの、さっきローマ教皇がうちに詫びに来まして!」
 「そんなことでいちいち電話すんな!」
 「はい、すみません! 当主の高虎でした!」
 
 当主って何なんだろう。
 それにそんなことって……
 
 サンルームのガラスが割れた。
 見ると、テーブルに日本刀が突き刺さっていた。

 「……」

 まさか、ね。
 便利屋を呼んで修理を頼んだ。

 


 蓮花研究所、斬、千万組、早乙女、聖、ロックハート家、アメリカ大使館、六花、風花、その他関係各所に電話し、事件が終わったことを話した。
 聖にはスージーを週末までうちで預かって歓待したいと言うと、嬉しそうにそうしてくれと言っていた。

 「スージーが来てくれて本当に助かったぜ」
 「良かったよ。あいつも忙しそうにしてる奴だから、のんびりさせてやってくれ」
 「分かった!」

 電話が終わり、みんなでのんびりした。

 「教皇様って、すぐにうちのために来たんですかね?」
 
 柳がお茶を飲みながら俺に聞いた。

 「そうなんじゃねぇか? 飛行機だって、相当時間が掛かるだろうからな」
 「忙しい人ですよね、きっと」

 俺は柳を見て言った。

 「柳。人間は自分の非を詫びるためには、自分の都合なんて考えちゃダメだ」
 「そうですね」

 双子が血相を変えて部屋を出て行った。
 ルーが俺の緑のニャンコ柄のパジャマを持って来た。

 「タカさん」
 「どうしたんだよ」
 「こないだね、洗濯して干そうとしてたの」
 「ああ」
 「クシャミが出てね。そうしたら破いちゃった」
 「……」

 裾から上が見事に裂けていた。

 「しょうがねぇ。今度はもうちょっと早く言うようにな」
 「はい!」

 お気に入りだったのだが、仕方がない。
 後ろでハーが待っていた。

 「あのね、タカさん」
 「お前もかよ」
 「こないだアイロンを掛けててね」
 
 俺の夏物のお気に入りの麻のスーツだった。

 「ロボが途中でじゃれてきて、相手してたら焦がしちゃった」
 「お前ぇー!」
 「ごめんなさい!」

 俺は振り上げた腕を降ろした。

 「やっちまったことはしょうがねぇ! でも、こういうことはすぐに言え! 俺は失敗では怒らないって言っているだろう!」
 「ごめんなさい!」

 まったく。
 皇紀が双子に、今話せと言われていた。

 「皇紀! 何をやった!」
 「は、はい! あの、こないだハマーの洗車をしてまして!」
 「おう!」
 「小石が跳ねたか傷があったものですから」
 「おう!」
 「エアスプレーで色を乗せようとして、失敗しました!」
 「なんだと!」

 一緒にガレージに見に行った。
 皇紀が示したフロントの塗装がヘンだった。
 頭を小突いて、午後に便利屋が来るから相談しておけと言った。
 リヴィングに戻り、皇紀が俺に殴られた頭を撫でている。
 ハーが「手かざし」をしていた。

 亜紀ちゃんの顔が青い。
 俺はじっと見つめた。
 脂汗が流れている。
 
 「亜紀ちゃん」
 「はい?」
 「どうした?」
 「いえ、あの」

 いきなり床に土下座した。

 「何をしたぁ!」
 「こないだ、真夜と一緒に青山の蓮見さんの店に行きまして」
 「あそこかぁ!」
 「それで、楽しくて、ほんのちょっと暴れちゃいまして!」
 「なんだとぉー!」
 「カウンターをカチ割っちゃって……」

 呆れた。

 「おい、頭を出せ」
 「か、カチ割らないでぇー!」

 思い切りぶん殴った。
 床に顔をぶつけて、3秒失神した。

 「あいたたたた」

 「もう勝手に行くな! 行きたければ俺と一緒だ」
 「うれしい!」
 
 俺は柳を睨んだ。
 柳は、顔の前で手を振っている。
 スージーも俺の怒気に当てられて手を振っていた。
 ロボも付き合いで手を振る。
 亜紀ちゃんはルーにティッシュを鼻に突っ込まれた。

 「お前らなぁ。前から言っているだろう。何かやったらすぐに言えって」
 「「「「「すいませんでした!」」」」」

 スージーと柳も謝る。

 「俺の教育は、言ってみればそれだけだ。やるべきことをやる! それだけだぞ。だから謝るべきことはすぐに謝る。隠すんじゃねぇ! もたもたするんじゃねぇ!」
 「「「「「はい!」」」」」

 左門から電話が来た。

 「病院に連絡したら、今日はズル休みだって一江さんに言われて」
 「あいつー!」
 「それで、こないだトラ兄さんに言われて、サリンの解毒薬のPAMを送ったじゃない」
 「あ!」
 「あれ、すぐに返してもらう約束だったんだけど」
 「忘れてた! ちょっとお前が誤魔化しといてくれよ」
 「それは無理だよ! 僕も化学戦の部署から怒られてるんだから!」
 「なんだよ、俺は自衛隊には随分としてやってるじゃないか」
 「それとこれとは別だよ。トラ兄さん、頼むよ」
 「分かったよ!」

 子どもたちが俺をじっと見ていた。

 「あんだよ」

 皇紀が大きな声で言った。

 「ウラノス、命令! 今の通話をスピーカーで流して!」
 「おい!」

 俺と左門の電話の録音が流れた。

 亜紀ちゃんが鼻から真っ赤になったティッシュを抜いて俺の前に放った。
 俺は立ち上がって頭を下げた。




 「ごめんなさい」




 その後で、左門にも謝った。
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