富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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ミユキ・前鬼・後鬼 専用武器

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 「皇紀、まずはミユキたちの武器だ」
 「はい」

 俺たちはW塔(Weapon Tower)へ向かった。
 そこでは俺たちの多くの兵器の開発が為されており、実際の製造や組み立ては別な専用施設で行なわれることも多いが、最初の研究開発は主にこの塔で行なわれる。
 大型のレールガンや荷電粒子砲なども、最初はここで作られた。
 今は別な製造ラインがある「カサンドラ」も、プロトタイプまではこのW塔で作られたのだ。
 基礎研究やプロトタイプが終わると、専用の開発施設が作られることが多い。
 研究所員が1名か数名でそこの責任者となり、他はアンドロイドのスタッフと作業ロボットで生産を始める。
 随分と多くの専用施設が作られた。
 例外は「武神」だ。
 あれだけは俺と蓮花、他はアンドロイドとロボットのみで行なった。

 W塔の内部に入り、ブランたちの武器開発の区画へ移動した。
 皇紀がミユキ、前鬼の武器を出す。

 「ミユキさんたちは三人で動くことが多いのですが、ミユキさんは格闘戦に秀でています」
 
 皇紀が説明を始めた。
 ミユキの武器はガントレット(籠手)とソルレット(足籠手)だ。
 ガントレットは前腕肘近くまで覆い、左がメタリックブルーの合金で、右がメタリックレッドの合金、外側に鋭いブレードが付いている。
 ソルレットはガンメタリックの同様の合金で、こちらは前面にブレードがあり、膝下まで覆うデザインだ。

 「右手は断続して発射できる「パルス虚震花」と、左手は「無風花」が出せます。両足は「轟雷」ですね。ボディも同じ「Ωライト」の装甲のものを用意してます」
 「ミユキのオッパイは絶対に守れよ!」
 「はい!」

 皇紀と蓮花、ジェシカが笑った。

 「発射出来るのはどのくらいの時間だ?」
 「今は連射して各3分です。超小型の「ヴォイド機関」を搭載していますから、クールタイムは10分ですね」
 「そうか」

 「右は《フーファイト(虎戦)》と左を《ロンファイト(竜戦)》と名付けました。蓮花さんの命名です」
 「いいな!」
 「両足は《ランファイト(狼戦)》です」
 「蓮花、お前はいい趣味をしてるなぁ」
 「ありがとうございます」


 続いて前鬼だ。

 「「シャルア」という棒武器です」

 全長3メートルのロッドで、両端は少し膨らんでいる。
 太さは直径5センチ程だ。

 「メソポタミアの神話の武器だな」
 「はい。前鬼さんは拠点防御タイプですので、長距離の攻撃が出来るものにしました。広域殲滅の「ヴァジュラ」を連続で3回、クールタイムは10分です」
 「専用戦車もあるな」
 「はい、別な部屋にありますが、《グスタフ》はお姉ちゃんクラスの「ヴァジュラ」を撃てます。ミユキさんと後鬼さんも一緒に乗れますので、人間相手であれば、どこの軍隊にも負けないかと」
 「どっかと戦争してぇなぁ」
 「アハハハハハ!」

 前鬼には専用装甲を「Ωヘヴィ」で作ってある。

 「後鬼さんは既にタカさんから「黒笛」を渡されていますが、タカさんに言われた《アスラ・スレッド(阿修羅糸)》を開発しました。結構大変でしたよ」
 「カッコイイだろ?」
 
 皇紀たちが笑った。

 「「Ω」の粒体に「クロピョン」の「謎物質」を練り込んで、糸に加工しましたが、粒径が原子に近い大きさにまで持って行かないとタカさんの指定のものにならなかったんですよ」
 「ほう」
 「お陰でジェシカさんとバブル制御の機械を開発したりで、本当に苦労しました」
 「へぇ」

 蓮花が大笑いしていた。
 恐らくこいつも一生懸命に協力したのだろう。

 「あそこまでの超微粉末になると、突然液体みたいになったり、今度は固体みたいになったりで。ジェシカさんなんて、もう粉体工学のエキスパートですからね」
 「よかったね!」

 ジェシカが苦笑する。

 「でも、物凄いのが出来ましたよ。実験的に後鬼さんに試してもらいましたが、全長200メートルまで自在に操れるようになりました」
 「今後、あいつの訓練次第で楽しみだな」
 「はい。0.1ミクロンなんて、自分でもどうやって実現出来たか分かりません。ですが、そのために重量はもう考えなくていいくらいで」
 「引張強度が200000㎬以上ですから、あの太さで2トンのものを吊れるんですからね! もう何がしたいのかって感じですよ」
 「ワハハハハハハ!」
 
 皇紀が真剣な顔で俺を見ている。

 「でもタカさん。試しにミユキさんや前鬼さんにも使ってもらったんですが、自在に操れるのは後鬼さんだけでした」
 「そうか」
 「どういうことなんでしょうか?」

 「後鬼は「黒笛」を預けている。あれは神剣の一つだと百家でも言われた」
 「はい」
 「神剣ということは、持ち主を選ぶということなんだ。後鬼が「黒笛」を使えているということは、あいつが認められたということになる」
 「そうですね」
 
 皇紀たち三人が俺を見ている。

 「「黒笛」だけは、その出自を誰も知らない。記録にもない。でも俺はな、あれは「クロピョン」が作ったんじゃないかと考えているんだ」

 「「「!」」」

 三人が驚愕した。

 「だからお前に「糸の武器」を頼んだ時に、「クロピョン」に協力させた。俺のイメージを伝え、それが出来るものを貰ったんだよ。上手く行ったようだな」
 「じゃあ、後鬼さんしか操れないのは!」
 「「クロピョン」に認められる必要があるんだろうな。まあ、俺の認可ということもあるのかもしれないが」
 「でも、「アスラ・スレッド」は凄い武器ですよ」
 「そうだな。あれで主力戦車も両断できるし、今後数キロまで伸ばせれば、航空戦力とも渡り合える」
 「はい!」
 「多分、妖魔にも有効だ。「クロピョン」の力が入っているからな」
 「そうですね」

 「ミユキと前鬼の武器にも「クロピョン」の物質を練り込んだ」
 「タカさん! じゃあ!」
 「恐らく、今はまだ不明だが、あいつらの武器もお前が設定したもの以上の力があると思うぞ」
 「どうやったら発現するんでしょうか」
 「分からん。だが、まずは「クロピョン」に認められる必要があるだろうな」
 「まさか……試練ですか?」
 
 皇紀が不安そうな顔になる。
 俺がクロピョンから受けた試練で死に掛けたからだ。

 「いや、多分なぁ。俺がクロピョンに言えばいいんだと思うぞ?」
 「へ?」
 「後鬼だって、何の試練も与えられてねぇだろうが」
 「そうだ!」
 「お前はイマイチ頭が固いよなぁ」
 
 蓮花とジェシカが笑った。

 「だって、あまりにも常識外れですから」
 
 俺は皇紀の頭を撫でた。

 「お前は山中の血を引いている。あいつは物凄い科学者だった。いいか皇紀、科学っていうのは、目の前のことを全て受け入れろ。どんなに荒唐無稽に見えても、どんなに自分の予想と違っても、それが「在る」のなら受け入れて柔軟に考えろ」
 「はい!」
 「山中はそうやって生きた。お前もそうしろ」
 「分かりました!」

 皇紀が嬉しそうに笑った。
 皇紀の成果は世の中には知られない。
 山中も名声や評価を一切考えなかった。
 自分も同じ道を歩んでいることが、皇紀の誇りだ。

 「他のブランたちにも、今後専用武器を与えるかもしれない。その時はまた頼むぞ」
 「「「はい!」」」

 俺たちは休憩にし、蓮花とジェシカがコーヒーを淹れて来た。
 四人で俺が土産に持って来た「PATISSERIE JIHEI」の焼き菓子を食べる。
 千葉の店だが、ナースから紹介されて気に入った。
 店に頼んで、大量に送ってもらったものを持って来ている。
 甘すぎないが、それでいてしっかりと上質の砂糖の味を感じる。
 素晴らしい職人だ。
 蓮花もジェシカも喜んでくれた。

 「シャドウにも持ってってやれよ」
 「はい!」

 


 蓮花が一層嬉しそうに笑った。
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