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ついにあの妖怪が!
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9月中旬の土曜日の朝。
俺は先週に続くオペの詰め込みでまた疲れていた。
昨晩は亜紀ちゃんたちと軽く飲んで9時まで寝て、今朝食を摂っている。
お気に入りの水色のニャンコ柄のパジャマだ。
柳は庭で鍛錬を始めていて、皇紀はもう研究を始めているのだろう。
ルーは知らない。
上からドタドタと階段を駆け下りて来る音が響いた。
俺は顔をしかめて、亜紀ちゃんに様子を見るように顎で示した。
俺は上品な人間だから、家の中で騒がしいのは嫌いだ。
入り口に向かった亜紀ちゃんが、最悪に下品な奴にぶつかって飛ばされた。
「た、た、タカさん!」
「ゴルゥァ!」
起き上がった亜紀ちゃんに、ハーが思い切り頭を引っぱたかれた。
「ゴメン! でも、タカさん! 大変だよ!」
「お前の格好が大変だぁ!」
「ん?」
素っ裸だった。
「なんなんだ、お前は!」
「あ! あのね! トイレでね!」
裸族のルーとハーは大きい方の場合は全裸でトイレに入る。
別に構わないので、そのままにさせている。
「お前! トイレに入っててそのまま来たのかよ!」
「だって! 大変なんだよ!」
「お前だぁ!」
亜紀ちゃんがちゃんと拭いてから来たのかと聞いた。
「ん?」
「「……」」
拭いてないようだ。
「拭いて来い!」
「無理だよ!」
「なんでだよ!」
「だって! ウンコの妖怪が出たんだよ!」
「「ん?」」
よく分からない。
「トイレでね、してたの!」
「もうそこはいいよ」
「そうしたら、足元にいたの!」
「何が?」
「だから! ウンコの妖怪だよ!」
俺の脳が理解を拒んでいる。
それ系には、散々苦労させられた。
「どんな奴なの?」
ローマ教皇が来ても動じない亜紀ちゃんが聞いた。
「ちっちゃいの。ウンコなの」
そりゃそうだろうな。
「でもね、綺麗な波動だったよ?」
「ウンコだろう!」
脳が回り始めた俺が突っ込んだ。
「悪い奴じゃないみたい」
「雲国斎も俺たちに怨みがなきゃなぁ」
「おとなしいよ!」
「ばっちぃだろう」
「うーん」
「臭いは?」
亜紀ちゃんがまた聞いた。
「分かんない。でも、臭くなかったような気がする」
まあ、ハーのが出てるからなぁ。
うちで一番臭い。
ハーの後は、消臭スプレーの上で10分以上換気しないと入れない。
緊急時用に、真面目にガスマスクが置いてある。
「ちなみに、お前のは流してあるんだろうな」
「ん?」
俺が怒鳴って流して来いと言った。
「だから! ウンコの妖怪がいるんだって!」
最初に戻った。
とにかく2階のトイレでちゃんと拭いて来いと言った。
ルーが入ってて、ハーは暫く全裸のままだった。
「はやくー」
「もうちょっと!」
食事中の俺は、何度もその遣り取りを聞かされた。
ちなみに1階には皇紀が入っていた。
石神家あるあるだ。
「……」
「どんな奴なんだよ?」
2階のトイレでちゃんと処理して服も着て来たハーが、紙にスケッチで描いた。
とぐろを巻いている奴だった。
「ウンコだな」
「だよね!」
「俺、新橋の第一京浜を歩いてる時に、こんなの見た」(実話)
「すごいね!」
「ほんとにあるんだよなー」
「うん!」
「あの、タカさん。そろそろ」
亜紀ちゃんに言われてトイレから出たルーも連れて4人で行った。
3階のトイレの前にみんなで集まる。
「おい、開けろよ」
「コワイよ!」
「俺だってヤだよ!」
動じない亜紀ちゃんが開けた。
「ふん!」
いた。
トイレの隅にいる。
「おい」
「はい」
「お前、なんなの?」
「あの、産まれたばかりなので」
「あ?」
「自分でもよく分からなくって」
「……」
困る。
「ルー、妖怪図鑑持って来い」
「そんなのないよ!」
「麗星さんに聞きましょうよ」
亜紀ちゃんに言われて仕方なく俺が電話し、その間にハーのを流させた。
「よう!」
「あなたさまー!」
「ちょっと困ったことがあってさ」
「今から参ります!」
「いや、いいんだ。実はさ……」
俺は今朝の一連の出来事を話した。
「あの……それは……もう、そういうことで宜しいのではないかと」
「そういうことって?」
「それはですね……あの……う、ウンチの妖怪ということで」
「あー! お前は「ウンチ」って言う派かぁ!」
「それは、あの、あなたさまは?」
「俺? 「ウンコ」って言う派!」
「さようでございますか」
「天狼は「ウンチ」って言う派でいいからな!」
「それは、あの、あ、ありがとうございます」
電話を切った。
「おい! 麗星は「ウンチ」って言う派だってさ!」
「あの、タカさん、それはどうでも」
「そう?」
「問題は、これをどうするのかということで」
「ああ! そう言えば聞いてなかった!」
「「「……」」」
最初に戻った。
俺が交渉した。
「おい、悪いんだけどさ。お前がそこにいると、俺たちが困るんだよ」
「そうですか」
「出てってくんないかな?」
「はい、それはもちろんですが」
「あ、そのまま歩いて出られると困るんだ!」
「そうですか」
「ハー! 運んでやれよ!」
「タカさん!」
ウンコのプロフェッショナルのハーが嫌がった。
ルーが捨ててもいいダンボール箱を持って来た。
「よし! じゃあこの中に入ってくれ!」
「あの」
「あんだよ?」
「動けないんです。生まれたばかりで」
「そっか。ハー!」
ハーが涙目になりながら、備え付けの割箸で摘まんで入れてやった。
「そういえばお前、どこでも大丈夫?」
「あの、出来ればウンコの傍がいいんですが」
「そりゃそうだろうなぁ。じゃあ早乙女の家に」
亜紀ちゃんに後頭部を引っぱたかれた。
「あいつの家って広いからいいだろう!」
「ダメですよ!」
「あいつ、俺から貰うと何でも喜ぶじゃん」
「絶対ダメですって、こんなの!」
ウンコの妖怪が悲しそうな顔をした。
「あ、ごめん」
「ちょっと言い過ぎだぞ」
「そうだよ、亜紀ちゃん!」
「……」
ハーにダンボール箱を持たせ、みんなで外に出た。
庭で鍛錬していた柳に事情を話した。
「柳! アルファードを出せ」
「えぇ! 私の車ですかぁー!」
「早くしろよ」
「えーん」
亜紀ちゃんとルーは付いて来なかった。
適当に走らせて、杉並の古そうな大型マンションの敷地に入った。
柳に見張らせて、ハーに浄化槽の蓋を開けさせる。
思った通り、単独処理浄化槽であり、トイレの排水のみが溜まる構造だ。
ハーにまた割箸で摘まませて中に入れてやる。
「ああ! ここは素敵です!」
「おう! 時々清掃が入るかもしれないから、その時は気を付けてな!」
「ありがとうございます!」
「いいって!」
ハーに蓋を戻させ、ダンボール箱を畳んでゴミ置き場に捨てた。
割箸も。
持って来たアルコールでみんなで手を消毒する。
三人で帰った。
「なんか臭いですね」
「そうだな」
窓を開けた。
「幸せに暮らして欲しいね!」
「そうだよな!」
「……」
ノリの悪い柳は黙って運転していた。
家に着くと、柳が消臭スプレーをアルファードの中にガンガン撒き、アルコールで丁寧に中を拭いた。
夜まで口を利いてくれなかった。
俺は先週に続くオペの詰め込みでまた疲れていた。
昨晩は亜紀ちゃんたちと軽く飲んで9時まで寝て、今朝食を摂っている。
お気に入りの水色のニャンコ柄のパジャマだ。
柳は庭で鍛錬を始めていて、皇紀はもう研究を始めているのだろう。
ルーは知らない。
上からドタドタと階段を駆け下りて来る音が響いた。
俺は顔をしかめて、亜紀ちゃんに様子を見るように顎で示した。
俺は上品な人間だから、家の中で騒がしいのは嫌いだ。
入り口に向かった亜紀ちゃんが、最悪に下品な奴にぶつかって飛ばされた。
「た、た、タカさん!」
「ゴルゥァ!」
起き上がった亜紀ちゃんに、ハーが思い切り頭を引っぱたかれた。
「ゴメン! でも、タカさん! 大変だよ!」
「お前の格好が大変だぁ!」
「ん?」
素っ裸だった。
「なんなんだ、お前は!」
「あ! あのね! トイレでね!」
裸族のルーとハーは大きい方の場合は全裸でトイレに入る。
別に構わないので、そのままにさせている。
「お前! トイレに入っててそのまま来たのかよ!」
「だって! 大変なんだよ!」
「お前だぁ!」
亜紀ちゃんがちゃんと拭いてから来たのかと聞いた。
「ん?」
「「……」」
拭いてないようだ。
「拭いて来い!」
「無理だよ!」
「なんでだよ!」
「だって! ウンコの妖怪が出たんだよ!」
「「ん?」」
よく分からない。
「トイレでね、してたの!」
「もうそこはいいよ」
「そうしたら、足元にいたの!」
「何が?」
「だから! ウンコの妖怪だよ!」
俺の脳が理解を拒んでいる。
それ系には、散々苦労させられた。
「どんな奴なの?」
ローマ教皇が来ても動じない亜紀ちゃんが聞いた。
「ちっちゃいの。ウンコなの」
そりゃそうだろうな。
「でもね、綺麗な波動だったよ?」
「ウンコだろう!」
脳が回り始めた俺が突っ込んだ。
「悪い奴じゃないみたい」
「雲国斎も俺たちに怨みがなきゃなぁ」
「おとなしいよ!」
「ばっちぃだろう」
「うーん」
「臭いは?」
亜紀ちゃんがまた聞いた。
「分かんない。でも、臭くなかったような気がする」
まあ、ハーのが出てるからなぁ。
うちで一番臭い。
ハーの後は、消臭スプレーの上で10分以上換気しないと入れない。
緊急時用に、真面目にガスマスクが置いてある。
「ちなみに、お前のは流してあるんだろうな」
「ん?」
俺が怒鳴って流して来いと言った。
「だから! ウンコの妖怪がいるんだって!」
最初に戻った。
とにかく2階のトイレでちゃんと拭いて来いと言った。
ルーが入ってて、ハーは暫く全裸のままだった。
「はやくー」
「もうちょっと!」
食事中の俺は、何度もその遣り取りを聞かされた。
ちなみに1階には皇紀が入っていた。
石神家あるあるだ。
「……」
「どんな奴なんだよ?」
2階のトイレでちゃんと処理して服も着て来たハーが、紙にスケッチで描いた。
とぐろを巻いている奴だった。
「ウンコだな」
「だよね!」
「俺、新橋の第一京浜を歩いてる時に、こんなの見た」(実話)
「すごいね!」
「ほんとにあるんだよなー」
「うん!」
「あの、タカさん。そろそろ」
亜紀ちゃんに言われてトイレから出たルーも連れて4人で行った。
3階のトイレの前にみんなで集まる。
「おい、開けろよ」
「コワイよ!」
「俺だってヤだよ!」
動じない亜紀ちゃんが開けた。
「ふん!」
いた。
トイレの隅にいる。
「おい」
「はい」
「お前、なんなの?」
「あの、産まれたばかりなので」
「あ?」
「自分でもよく分からなくって」
「……」
困る。
「ルー、妖怪図鑑持って来い」
「そんなのないよ!」
「麗星さんに聞きましょうよ」
亜紀ちゃんに言われて仕方なく俺が電話し、その間にハーのを流させた。
「よう!」
「あなたさまー!」
「ちょっと困ったことがあってさ」
「今から参ります!」
「いや、いいんだ。実はさ……」
俺は今朝の一連の出来事を話した。
「あの……それは……もう、そういうことで宜しいのではないかと」
「そういうことって?」
「それはですね……あの……う、ウンチの妖怪ということで」
「あー! お前は「ウンチ」って言う派かぁ!」
「それは、あの、あなたさまは?」
「俺? 「ウンコ」って言う派!」
「さようでございますか」
「天狼は「ウンチ」って言う派でいいからな!」
「それは、あの、あ、ありがとうございます」
電話を切った。
「おい! 麗星は「ウンチ」って言う派だってさ!」
「あの、タカさん、それはどうでも」
「そう?」
「問題は、これをどうするのかということで」
「ああ! そう言えば聞いてなかった!」
「「「……」」」
最初に戻った。
俺が交渉した。
「おい、悪いんだけどさ。お前がそこにいると、俺たちが困るんだよ」
「そうですか」
「出てってくんないかな?」
「はい、それはもちろんですが」
「あ、そのまま歩いて出られると困るんだ!」
「そうですか」
「ハー! 運んでやれよ!」
「タカさん!」
ウンコのプロフェッショナルのハーが嫌がった。
ルーが捨ててもいいダンボール箱を持って来た。
「よし! じゃあこの中に入ってくれ!」
「あの」
「あんだよ?」
「動けないんです。生まれたばかりで」
「そっか。ハー!」
ハーが涙目になりながら、備え付けの割箸で摘まんで入れてやった。
「そういえばお前、どこでも大丈夫?」
「あの、出来ればウンコの傍がいいんですが」
「そりゃそうだろうなぁ。じゃあ早乙女の家に」
亜紀ちゃんに後頭部を引っぱたかれた。
「あいつの家って広いからいいだろう!」
「ダメですよ!」
「あいつ、俺から貰うと何でも喜ぶじゃん」
「絶対ダメですって、こんなの!」
ウンコの妖怪が悲しそうな顔をした。
「あ、ごめん」
「ちょっと言い過ぎだぞ」
「そうだよ、亜紀ちゃん!」
「……」
ハーにダンボール箱を持たせ、みんなで外に出た。
庭で鍛錬していた柳に事情を話した。
「柳! アルファードを出せ」
「えぇ! 私の車ですかぁー!」
「早くしろよ」
「えーん」
亜紀ちゃんとルーは付いて来なかった。
適当に走らせて、杉並の古そうな大型マンションの敷地に入った。
柳に見張らせて、ハーに浄化槽の蓋を開けさせる。
思った通り、単独処理浄化槽であり、トイレの排水のみが溜まる構造だ。
ハーにまた割箸で摘まませて中に入れてやる。
「ああ! ここは素敵です!」
「おう! 時々清掃が入るかもしれないから、その時は気を付けてな!」
「ありがとうございます!」
「いいって!」
ハーに蓋を戻させ、ダンボール箱を畳んでゴミ置き場に捨てた。
割箸も。
持って来たアルコールでみんなで手を消毒する。
三人で帰った。
「なんか臭いですね」
「そうだな」
窓を開けた。
「幸せに暮らして欲しいね!」
「そうだよな!」
「……」
ノリの悪い柳は黙って運転していた。
家に着くと、柳が消臭スプレーをアルファードの中にガンガン撒き、アルコールで丁寧に中を拭いた。
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