富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

文字の大きさ
1,984 / 3,215

皇紀 行方不明 Ⅲ

しおりを挟む
 「やっぱりダメだ!」

 さっきからラペルピンの破壊を試みていた。
 「花岡」の技も使ったが、どうやら「エグリゴリΩ」の翅を加工したものらしく、全然通じない。
 熱もダメだった。
 それまでの普通の「Ω」とは桁違いの性能だ。
 熱も衝撃も電磁波も放射能も利かない。
 
 「どうしよー」

 絶対に見られるわけにはいかない。 
 僕の信用がゼロになる。

 「やめとけばよかったー! でも我慢できなかったー!」

 自分の弱さが悔やまれた。
 海外でみんなと離れて気が緩んでいた。
 ラペルピンに、そんな仕掛けがあるなど、思いも寄らなかった。

 「しょうがない。丹沢にでも行って大技で破壊するかぁ」

 僕が自分で作ったものであれば簡単だったが、何しろルーとハーがオリジナルで作ったものだ。
 僕がこれから何か装置を作ろうとしても、あの二人以外にはセキュリティは突破出来ない。
 外からの信号で内部の記憶装置と交信する構造なのは分かっている。
 でも、その信号の周波数や暗号化されたコードはどうにもならない。
 蓮花さんの研究所へ行けば何とかなるかもしれないが、蓮花さんが絶対にタカさんに知らせるだろう。
 もう既に連絡が行っている可能性も高い。

 丹沢へ行く決意を固めたその瞬間、巨大なプレッシャーが5つ近づいて来た。

 


 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 「いたよ!」

 タブレットを睨んでいたルーが叫んだ。
 全員がホッとする。
 新宿の中央公園だった。
 まあ、俺たちにはいろいろと思い出深い。
 楽しい思い出ではないが。

 「あ! 逃げようとしてる! 気付かれたよ!」
 「全員! 確保!」
 「「「「はい!」」」」

 ハマーを路肩に止め、俺たちは一斉に襲い掛かった。
 空中へ飛ぼうとしたところを、亜紀ちゃんが蹴りで地面に叩きつけた。
 皇紀も尚も抵抗はしたが、俺たち5人にかかれば呆気なかった。
 握りしめていたラペルピンをハーが奪い取る。

 「ラペルピンは無事だよ!」
 「おし! 亜紀ちゃん、皇紀を縛れ!」
 「はい!」
 「妖魔に操られてるかもしれん! しっかり縛れよ!」
 「分かりました!」

 ハマーから「Ωワイヤー」を持って来て、亜紀ちゃんが皇紀をぐるぐる縛った。

 「やめてよー!」
 「皇紀! 大丈夫か!」
 「大丈夫じゃないですー!」
 「しっかりしろ! 取り敢えず家に帰るぞ!」

 皇紀を荷台に乗せ、ルーとハーが一緒に乗って心配そうに見ていた。
 必死に手をかざして妖魔の気配を探っている。

 「やっぱり私たちじゃ分からない」
 「皇紀ちゃん、必ず助けるからね!」
 「助けてよー!」

 双子に感知できないとすれば、相当厄介な精神攻撃だ。





 家に着いてすぐに俺はタマを呼んだ。

 「タマ!」
 「なんだ」
 「すぐに皇紀を見てくれ! 妖魔の精神攻撃かもしれない!」
 「分かった」

 タマが皇紀を見た。

 「何も無いようだが」
 「もっとよく見ろ!」
 「見ている。少なくとも今は何も痕跡はないぞ」
 「そうか! じゃあ、やっぱりフィリピンでの攻撃だったんだな!」
 「タカさん!」
 
 ルーが泣きそうに叫ぶ。

 「おい、すぐにラペルピンの映像を観るぞ! 用意をしろ!」
 「はい!」

 「絶対にやめてぇー!」

 皇紀が叫ぶ。

 「亜紀ちゃん! 皇紀の口を塞げ!」
 「はい!」

 亜紀ちゃんが「Ωボールギャグ」で皇紀の口を塞いだ。
 尚も皇紀は何かを訴えようとしている。
 もう少し待っていろ、皇紀!
 皇紀を地下室へ運ぶ。
 タマも付いて来た。

 双子がPCと複数の機械を持って来る。

 「これならHDMIで外部出力ができます!」
 「よし!」

 俺がすぐにテレビに繋げ、ハーがPCでコードを打ち込んで行く。
 
 「映像出ます!」

 最初は皇紀が大統領と会食する時の映像だ。
 早送りで観て行く。
 翌日に最初に見に行った土地での戦闘シーン。
 昼食の中華料理屋。
 全員で画面に喰いついて観て行く。
 異常はまだ見られない。

 二日目の夜。

 「あ! 街に独りで出て行くよ!」
 「いよいよ操られ始めたか!」

 皇紀の唸り声が大きくなる。

 「一倍速に戻せ! ここから集中して観ろ!」
 「「「「はい!」」」」
 「にゃー!」

 ロボも懸命に観てくれる。

 「あ! お店に入るよ!」
 「?」
 「にゃ?」

 風俗店のようだが。

 「カワイイ子だ!」
 「まだ若いね」
 「オッパイは普通だね」
 「一緒にシャワー浴びてるよ」

 始まった。


 HAH! GOOD! SO GOOD! MORE! CAMONN! HAH! AN! AN! AN! OH FUCK!

 
 「「「「「……」」」」」」
 「にゃー……」

 粘膜のこすれる音が聴こえる。
 上着がハンガーに掛けられたか、少し高い位置からベッドの男女の営みが見える。
 皇紀の唸り声が、さめざめと泣く声に変わった。

 俺が操作を教わり、翌晩、翌々晩の映像を確認する。
 毎日通ってた。

 一週間後。

 「おい、こいつはフローレスじゃねぇか」
 「「「「……」」」」」

 どこかのホテルで待ち合わせしていたようだ。

 「お前よ、確かもう風花だけだって言ってたよな?」
 「……」
 「これだけ毎晩いろんな女とやってて、風花のとこに一週間もいたのかよ?」
 「……」

 「俺はもう帰ってもいいか」
 「お、おう」

 タマが消えた。
 亜紀ちゃんに皇紀のボールギャグを外させた。

 「殺して……」
 「おう、覚悟しろや」

 亜紀ちゃんが冷たい声で言い、全員で皇紀を庭に運び上げた。
 




 ボコボコにされた。




 俺が許してやれと言っても、2週間、誰も皇紀と口を利かなかった。
 亜紀ちゃんが風花に映像を送ると言ったが、それだけは勘弁してやれと言った。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

あまりさんののっぴきならない事情

菱沼あゆ
キャラ文芸
 強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。  充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。 「何故、こんなところに居る? 南条あまり」 「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」 「それ、俺だろ」  そーですね……。  カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。

幸せになれると思っていた

里見知美
恋愛
18歳になったら結婚しよう、と約束をしていたのに。 ある事故から目を覚ますと、誰もが私をいないものとして扱った。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

後宮なりきり夫婦録

石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」 「はあ……?」 雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。 あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。 空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。 かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。 影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。 サイトより転載になります。

付喪神狩

やまだごんた
キャラ文芸
古い道具には年月と共に人の情念が蓄積され、それが意思を持ったものが付喪神と呼ばれる。 容姿端麗だが口も性格も女癖も悪い大和御門は日本で唯一の付喪神狩として、付喪神を祓う能力者。 自分に取り憑いた大口真神を引き連れ、同居中の相方・棚橋亨と繰り広げる現代異能バトル

おしどり夫婦の茶番

Rj
恋愛
夫がまた口紅をつけて帰ってきた。お互い初恋の相手でおしどり夫婦として知られるナタリアとブライアン。 おしどり夫婦にも人にはいえない事情がある。 一話完結。『一番でなくとも』に登場したナタリアの話です。未読でも問題なく読んでいただけます。

処理中です...