富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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皇紀 行方不明 Ⅱ

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 丁度その時、顕さんから電話が来た。

 「やあ、石神くん!」
 「顕さん!」

 こちらは9時で、向こうは夜の8時くらいのはずだ。
 俺が寛いでいる時間を見計らって電話してくれたのだろう。
 
 「実はさ、今度うちにテレビ局の取材が入るんだよ」
 「え、そうなんですか?」
 「ほら、皇紀君が度々出入りしてたじゃない。今、皇紀君、ああ、「金髪頭の悪魔」がこっちで大人気でね」
 「ああ、そうみたいですよね」

 顕さんの話では、皇紀がよく行っていた顕さんのお宅に取材し、皇紀のことをいろいろと聞きたいということらしい。
 テレビ局が取材の中で、顕さんの家に皇紀がよく行っていたことを掴んだらしい。
 
 「それはご迷惑をお掛けしました」
 「いいんだよ。僕も噂ばかりが先行するよりも、ちゃんと取材を受けて説明しておきたいしね」

 顕さんが、皇紀のことをどういう説明で話せばよいのかと相談して来たのだ。
 皇紀が「虎」の軍の人間であることは、向こうでも広まっている。
 顕さんたちに迷惑が掛からないようにしなければならない。

 「まあ、顕さんたちも「虎」の軍に協力しているということでいいんじゃないでしょうか」
 「そう話してもいいかい?」
 「はい。これからフィリピンも本格的に「虎」の軍に関わっていきますし、反対勢力もほとんどいなくなりましたしね」
 「じゃあ、そういうことで話をするよ」
 「本当にお手数をお掛けします」
 「いいよ! 石神君と関わるのは僕も嬉しいんだ」
 「そう言って貰えると」

 顕さんは、フィリピン中であの皇紀の金髪ポンパドールが大人気なのだと教えてくれた。

 「中には女性でもやってる人もいるんだよ」
 「へぇー! スゴイですね!」
 「マニラ市内じゃ特によく見るよ。何かね、あのヘアスタイルにすると自分が強くなった気がするんだってさ」
 「そうなんですか」
 「まあ、お陰で治安もちょっと良くなってるよ」
 「なんなんですかね!」

 俺も笑った。

 「でもさ、こないだもあのヘアスタイルの人が町のチンピラを負かしちゃってさ。インタビューで「「金髪頭の悪魔」の力だ」って言ってたんだよ」
 「!」
 「精神的なものだろうけどね。不思議だよね」

 俺の中で一気に不安が増した。

 「すいません、顕さん。ちょっとこれから用事がありまして」
 「ああ、そうなのか。ごめんね、忙しい時に」
 「とんでもない、こちらこそすいません。またお話ししましょうね!」
 「ああ、いつでも待ってるよ!」

 俺は電話を切り、全員に言った。

 「皇紀は妖魔の精神攻撃を受けている可能性があるぞ!」
 「「「「エェ!」」」」

 子どもたちが驚いていた。

 「俺も迂闊だった。ボディガードにルーシーとハーマイオニーを付けたが、対妖魔の対策はそれほど取っていなかった」
 「でも、そこまでの危険性はないと……」
 「いや、甘かったんだよ。「業」も俺たちの動きを掴んでいる可能性だってあったんだ。皇紀たちは結構暴れ回ったしな」
 「じゃあ、皇紀ちゃんは!」

 ハーが叫ぶ。

 「まだ分からん! でも、あいつが俺に逆らうのって余程のことなんじゃないのか?」
 「「「「そう言えば!」」」」

 皇紀は俺に逆らったことはない。
 双子のとばっちりで俺に怒られることは数々あったが、あいつはどんな理不尽な理由であっても甘んじて罰を受け入れて来た。
 もちろん自分の失敗ならば尚更だ。
 俺に隠し事をすることも多少はあったが、全部後から打ち明け、途中でバレれば素直に謝って来た。
 それらも、全然大したものじゃない。
 じゃあ、今回はどうしたのだ。

 「妖魔に操られたのかもしれん」
 「大変だよ!」
 
 ルーとハーが特に不安になっている。
 皇紀が大好きだからだ。

 「皇紀が持っている機密は、俺たちにとっても非常に重要なものだ。俺はもっとあいつを護ってやらなければならなかったんだ」
 「タカさんのせいじゃありませんよ! 私たちだって!」

 亜紀ちゃんも泣きそうだ。
 時にいじめることはあっても、心底弟思いの優しい姉なのだ。

 「今はとにかく、あいつを探そう! あいつが持って出たのは、ラペルピンだけだな?」
 「うん。後は財布とか電話くらいかなー」
 「機密情報は他に持ち出してはいないな?」
 「すぐ確認します!」

 ルーとハーが皇紀の部屋へ入る。
 まあ、機密情報の入った記憶媒体は、俺の許可なく持ち出せないようにはなっている。
 外からの回線のアクセスも出来ない。
 外部と切り離されたスタンドアロンのマシンだからだ。
 記憶媒体も、普通のPCなどでは繋げられない仕様だ。
 そういう意味ではラペルピンも同様なのだが。

 俺は皇紀の部屋の双子を見に行った。

 「どうだ?」
 「うん、大丈夫っぽい。でもタカさん、本当に妖魔が狙ったのかな」
 「まだ確定じゃないけどな」
 「でも、皇紀ちゃんにヘンな感じはなかったよ?」
 「決めつけるな! つい最近もカエルの化け物とかいただろう!」
 「怒貪虎さんはいい人だよ!」
 「タカさん、おーぼーだよ!」

 「う、うるせぇ」

 すっかり洗脳されてるじゃねぇか。

 双子が一通りシステムの確認をし、みんなで探しに行くことになった。
 亜紀ちゃんと柳が皇紀のスマホを呼んでいる。

 「電源切ってやがる!」
 
 亜紀ちゃんが怒っている。
 俺は皇紀が行きそうな人間に電話をしていった。

 「風花! ちょっと皇紀がおかしいんだ。そっちへ行ったらすぐに俺に連絡してくれ」
 「皇紀さんに何があったんですか!」
 「落ち着け! まだ問題というほどじゃない。ちょっと兄弟と喧嘩して家を飛び出してしまってな」
 「そうなんですか!」

 風花が心配していたが、兄弟喧嘩という理由を聞いて一安心した。

 「まあ、とにかく連絡をな。皇紀は普通に入れてやってくれ」
 「分かりました! 何か分かったら私にも連絡下さい!」
 「ああ、必ずな。夜分に悪かったな」
 「いいえ!」

 あとはどこだ。
 葵ちゃんたちとは別れている。
 響子や六花、鷹の所へは行かないだろう。
 中学で親しい人間も多少はいたが、こういう場合に匿ってくれるほどではない。
 でも、一応は連絡しておくか。

 「あ!」

 ルーが叫んだ。

 「どうした!」
 「ラペルピンにGPSが付いてるんだった!」
 「早く言え!」

 早速柳のタブレットにプログラムをインストールし、みんなでハマーで出掛けた。

 「あっち!」
 「おう!」

 ルーがタブレットを手に助手席に座って俺に指示を出す。
 他の三人は後ろのシートで黙って座っている。

 「タカさん! 急いで下さい!」

 後ろで亜紀ちゃんが必死に言う。

 「落ち着け! 必ず見つけてあいつを助けるからな!」
 「お願いします!」

 柳が亜紀ちゃんを抱き締めて落ち着かせようとしている。
 ハーはルーを後ろから見ていた。




 待ってろ、皇紀!
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