富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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吉野 牛鬼狩 Ⅱ

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 2体の牛鬼を斃してから、全員が分散して山林に入って行った。
 俺は最初は虎白さんと一緒に進むように言われた。
 優しい人だ。
 俺は「Ωコンバットスーツ」、虎白さんたちはいつもの着物に袴だ。
 足は流石に編み上げのブーツだったが。

 「高虎、お前剣士としてはどんどん強くなってんな」
 「そうです?」
 「ああ。こないだ怒貪虎さんに鍛えてもらった時もよ、お前の変わりように驚いたぜ」
 「そんなことは」

 まあ、一応鍛錬はしている。
 だが、石神家の虎白さんたちは一日中鍛錬しているのだ。
 俺などは全然褒められるほどの努力はしていない。

 「やっぱ虎影の兄貴の子どもだな!」
 「いやぁ」

 いつになく虎白さんが褒めてくれるので悪い気はしない。
 それに親父のことをそういうように言ってくれるのは本当に嬉しい。

 「お、いたな。ちょっとお前やってみろ」
 「はい!」

 俺たちの前方に気配があった。
 殺気と飢えた感覚。

 俺が独りで進んで行くと、頭上から降って来た。
 7メートル半。
 さっきよりもでかい。
 こんなでかい奴が木々の上にいられるわけはない。
 どこかからジャンプして来たのだ。
 とんでもない跳躍力だ。

 俺は腰の「流星剣」を抜き、一動作で牛鬼を両断した。
 刀身を突き立てながら走り抜けた。
 牛鬼の身体が両断されている。

 「おー、やるな!」
 「エヘヘヘヘ」

 その時、牛鬼の下腹から袋状のものが零れて破れた。

 「?」

 拳大の子蜘蛛が一斉に出て来て俺に向かった。
 百以上はいる。

 「なんだ!」

 俺は慌てて剣を振るい斬って行くが、何匹か足から昇って来た。

 「高虎! 早く殺せ!」
 「でも!」

 腿に鋭い痛みを感じた。
 咬まれたようだ。
 全身が痺れた。

 俺は全身に「螺旋花」を纏い、身体に着いた子蜘蛛を粉砕して殺した。
 「震花」を一帯に放って残りの子蜘蛛を殺す。

 「おい、動けっか?」
 「ちょっと痺れてますよー」
 「だから気を付けろって言っただろう!」
 「聞いてませんよ!」

 虎白さんは、メスの牛鬼は子胞を持っていることがあるので、腹を割いて焼かなければならないと言った。

 「おめえはほんとに人の話を聞かねぇからなぁ」
 「……」

 こういう人だ。
 もう諦めた。

 「Ω」「オロチ」の粉末で痺れも回復した。

 「じゃあ、こっからは別行動な。油断すんなよ!」
 「はい!」

 虎白さんと別れた。

 「まあ、やるっきゃないよなぁー」

 俺は独りで進んだ。




 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 「タカさん、大丈夫かなー」
 「平気でしょ! タカさんだから」
 「うーん」

 ハーは「李さん」の占いを気にしている。
 来る前も、何度も私に「なんだろね?」と言っていた。
 分からないので答えようもない。
 結局やっぱり「李さん」の自己修復モードは解除されず、占いの結果は分からず仕舞だった。

 「早く帰って来ないかなー」
 「乙女か!」
 「アハハハハハ!」

 さっきから山の中にいくつもの大きな気配がする。
 きっとタカさんたちが戦っているのだ。
 気配の大きさで、敵の強さも分かる。
 結構強そうな奴だけど、タカさんや石神家本家の人たちは大丈夫そうだ。

 「みんなついてるから、大丈夫だよ」
 「そうだね!」

 ハーもニッコリと笑い、二人でお菓子を拡げた。
 今日は何となくカールも大量に持って来た。
 こないだ怒貪虎さんと一緒に食べてからお気に入りになった。
 関東地方には無いことが分かり、ネットで大量に仕入れた。

 暇なので、歌を歌いながら食べた。

 ♪ ドドンコー ドドンーコー ドンドコドン(どんとこどん) ♪

 「ケロケロ」
 「「あー!」」

 怒貪虎さんがいた。

 「「怒貪虎さーん!」」

 二人で抱き着いた。
 怒貪虎さんが私たちの頭を撫でてくれる。

 「来てくれたんですかー!」
 「ケロケロ」
 「ありがとうございます!」
 「ケロケロ」

 すぐにカールの袋を開けて渡した。

 「さっきね、タカさんたちが山に入って行ったの」
 「大丈夫かなー」

 「ケロケロ」

 怒貪虎さんは嬉しそうにカールを頬張り、うなずいていた。

 「そうだよね! タカさんだもんね!」
 「ケロケロ」

 怒貪虎さんに「だし味うすしお」のカールを出した。
 
 「これ、抜群に美味しいよ!」
 「ケロケロ!」

 気に入ってくれた。
 三人でカールを食べながらお喋りをした。
 タカさん、早く帰って来てね!




 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 虎白さんと別れて山林を進んで行った。
 30分も進むと、ようやく気配を感じた。

 「やっぱバラけてるな。数は少ないか」
 
 体長4メートル。
 さっきの奴よりも大分小さい。

 「恨みはねぇんだけど、悪いな」

 俺は「流星剣」で斬り掛かった。
 かわされた。

 「!」

 速い。
 しかもかわしながら足の爪で攻撃して来る。

 「てめぇ!」

 背中の剛毛が逆立った。
 俺は咄嗟に脇に転がって避けた。
 俺の立っていた場所に、無数の剛毛が突き刺さった。

 「あの人! ほんとに何も話してくれねぇんだからぁ!」

 俺は連撃で脚を斬り払いながら頭部を粉砕した。
 オスメスは分からないので、下腹部を「虚震花」で消し飛ばす。

 「ふぅー」

 地面に腰を下ろして腰の水筒から水を飲んだ。

 「一休みしよーっと」

 俺は背負ったリュックから握り飯を出した。
 マグロフレークを入れたものだったが、美味い。
 15分程休んでまた立ち上がる。

 「さーて、どっちに行くかなぁー」

 



 その時、遠くで絶叫が聞こえた。

 《逃げろォォォーーー!》

 「なんだ!」

 俺はそっちへ向かって「飛行」した。 
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