富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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TORA コンサート Ⅳ

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 オークラに頼んでおいたシャトルバスで、みんな移動した。
 ローマ教皇やVIPたちは別な車両で移動して行く。
 俺は亜紀ちゃんの運転するロールスロイスだ。
 後ろに蓮花と便利屋を乗せた。

 「何かあったか?」
 「はい。ロシアが核ミサイルを発射しました」
 「マジか!」
 「アラスカから迎撃いたしました」
 「あいつらー」

 俺たちがこれだけ集うのだから、何らかの攻撃があることを警戒していた。
 まさか全面戦争を辞さないとは思わなかった。
 便利屋に聞く。

 「妖魔関連はどうだった?」
 「へい、そちらはそんなに。タヌ吉さんたちが全部納めてらっしゃいました」
 「そっか」
 「いつもいる、偵察的な連中ですね」
 「分かった」

 頼りになる。
 しかし弾道ミサイルを撃ち込んで来るとは。
 だからコンサートなど嫌だったのだ。

 「明日にでもぶっちめに行きますか!」
 「いいよ! のんびりさせろ」
 「あ、『虎は孤高に』を観ましょうね!」
 「だからのんびりするんだって!」
 「えぇー!」

 まあ、一緒に観てやるか。





 オークラの会場に入り、俺が挨拶した。
 橘弥生を隣に立たせて。
 みんなから「おめでとー」と言われ、橘弥生が俺を睨んでいた。

 「世界的なニュースですかね」
 「何言ってるの!」

 みんなが笑っていた。
 まあ、俺のジョークだとほとんどの連中は思っている。
 世界の橘弥生にあんなジョークを飛ばせる人間がいるわけもないのだが。

 会場の一角に、先ほどステージにあった俺たちのフィギュアが置かれた。
 みんなが見に行っている。
 着席ビュッフェの形式だが、隅に獣用の肉コーナーを設けている。
 ロープの結界を置いてもらい、「危険なので近づかないように」とプレートを提げている。

 俺は最初にローマ教皇たちに挨拶に行った。
 他のテーブルから離れた場所に、専用のテーブルを用意させた。
 マクシミリアンが立って他の人間を近づけない。

 「まさかお出でとは思いませんでしたよ」
 「いいコンサートでした」
 
 俺は礼を言った。

 「マクシミリアン、一言教えてくれよ」
 「お前の驚く顔が見たかった」
 「ばかやろう」

 俺は響子とアルたちを呼んで、ローマ教皇に紹介した。
 三人とも流石に緊張している。

 「「光の女王」、やっと相まみえることが出来ました」

 ローマ教皇が立ち上がって響子の手を取り、膝を付いてキスをした。
 みんなが驚く。

 「タカトラ!」
 「おう、良かったな」
 「う、うん」

 響子も戸惑っていた。
 30分程もすると、ローマ教皇たちは帰って行った。

 俺は御堂たちの所へ行く。
 御堂と大渕さん、それに正巳さんと菊子さん、澪さん。
 今日はみんなで御堂の家に泊まる予定だ。

 「御堂、わざわざありがとうな」
 「いや、いいコンサートだったよ」

 俺は聖と早乙女を呼んだ。

 「お前たちが揃うのも珍しいからな」

 聖は御堂を見て言った。

 「いい顔だな」
 「そうだろう?」
 「聖さん、あなたの話は石神からよく聞いています」
 「ああ、俺もあんたのことも聞いているよ。トラを一杯助けてくれてるんだよな」
 「聖さんこそ」
 「これからもお願いします」

 聖が頭を下げたので驚いた。

 「いえ、僕の方こそ。石神を助けてやって下さい」
 
 二人が握手をした。
 
 「あの、俺も……」
 
 早乙女が言う。
 
 「ああ、あんたも宜しくな。ところで何をやってんの?」
 「!」

 俺は笑って警察で「アドヴェロス」という対妖魔の特殊セクションを率いていると言った。

 「ああ、あそこのヤル連中か」

 聖が磯良や早霧たちを向いて言った。

 「あの子どもが一番ヤルな」
 「分かるか」
 「ああ、修羅だ」
 「そうだな」

 磯良のことだ。

 「この人は心が綺麗だよな」
 「ああ」
 「!」

 早乙女が言われて喜んだ。

 「俺も! 石神のためになんでもやりますから」
 「ああ、頼むな」
 「はい!」

 まあ、聖なりの気遣いだ。
 早乙女は戦士ではない。
 でも、俺のために懸命にやってくれていることは分かったのだろう。
 
 挨拶する人間が多かった。
 院長夫妻や千両たちや「紅六花」の連中。
 ミユキたちや「アドヴェロス」の連中にも顔を出した。
 早霧が大興奮で俺に握手を求めて来た。
 磯良には悪いが、タマによる認識疎外を掛けている。
 以前に会っているからだ。

 「TORAのギターは最高です!」
 「そうですか、ありがとう」
 
 どうもギターマニアのようだった。
 竹流が来た。

 「神様! 本当に良かったです!」
 「そうか。わざわざありがとうな。ああ、紹介しておこう」

 俺は竹流を連れて橘弥生に紹介した。

 「俺の弟子なんです」
 「え!」
 「こいつも、もうギターから離れられなくしてやりましたよ」
 「あなた、お名前は!」
 「はい! 連城竹流です!」
 「今度聴かせて!」
 「はい?」

 俺は大笑いした。

 「あの、神様から頂いて、橘さんのCDは全部持ってます!」
 「そうなの! トラ、本当にこの子の演奏を聴かせて」
 「ダメですよ。まだ先です」
 「お願い!」
 「竹流の方を好きになられると困りますからね」
 「と、トラ!」

 みんなが笑った。
 栞が来た。
 俺の手を引いて離れた場所へ移動する。

 「ねぇ、本当に橘さんとお付き合いするの?」

 やはり栞には分かったようだ。

 「ああ」
 「まあ、私には止められないけど、ちょっと凄すぎない?」
 「アハハハハハ!」

 俺は笑って言った。

 「俺と橘さんとの付き合いは、お前たちとは違うよ。あくまで音楽を通してだからな」
 「そうなの?」
 「そうだよ」
 「ふーん」

 まあ、説明が難しい話だ。
 俺は子どもたちの尻を蹴って、そろそろ来客を歓待しろと言った。
 俺は鷹と話し、六花とも楽しく話した。
 士王と吹雪、天狼を連れて、デザートを食べさせた。
 聖の所へ行き、聖雅と会わせた。

 「トラの子が勢ぞろいだな」
 「ああ、おいこの子が聖雅だ。仲良くするんだぞ」
 「「「はい!」」」

 三人とももう拙いが言葉が喋れる。
 聖雅が一番年長か。
 
 「みんなカワイイわね!」

 アンジーが一人一人ハグしていった。
 他の人間も集まって来る。
 この四人が揃うのは滅多にないだろう。
 全ての関係を知る人間は多くは無いが。
 早乙女が怜花を連れて来た。

 「うちの子も入れてくれ!」
 「ああ」

 みんなで写真を撮った。
 この会場では撮影禁止になっているので、俺たちだけだ。
 



 響子がナースたちに囲まれていた。
 俺が『KYOKO』の演奏でステージに上げたからだ。
 みんなに羨ましいと言われ、いい曲だったと褒められ、響子が可愛かったと言われて喜んでいた。

 挨拶回りで忙しく、俺は何も食べられなかった。
 しかし、満足だった。
 俺なんかのために、こうしてみんなが来てくれた。

 ありがたいことだ。
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