富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

文字の大きさ
2,034 / 3,215

百家の来訪 Ⅲ

しおりを挟む
 また尊正さんたちをリヴィングに戻したが、いろいろ不味いことになった。
 俺が想像も付かない百家の伝承が重なったようだ。
 元々ヒヒイロカネが出現したこと自体が、とんでもない伝承だったようだ。
 更にそれがロボの爪痕が見つかり、途方もないことになっているらしい。

 「石神さん、大変なことになりました」
 「そうなんですか!」

 本当に大変そうだが、俺には全然分からん。

 「もう、こうなっては全てを打ち明けましょう」
 「いや、別にいいんじゃないですか?」
 「あれだけの「御印」が出ては、そうも参りません」

 俺は聞きたくないのだが。
 尊正さんは緑さんと顔を合わせ、うなずき合った。

 「実は、百家の伝承で、この世の終わるほどの大災難の時に、ヒヒイロカネの円柱が現われるというものがあります」
 「へ、へぇー」

 マジか。

 「その現われる場所には、大悪魔と戦う勇者がいらっしゃるのだとされています」

 おい。

 「あ、あれはどっかからうちへ届いたんだっけかなー」
 「は、はい。確か、宅急便の人が置いてった……」

 亜紀ちゃんがヘルプに入ったが、宅急便は無理だろう。
 頭を引っぱたく。
 尊正さんが笑っていた。

 「石神さん。お気持ちは分かりますが、私どもも石神さんが「業」と戦う人間だと知っておりますので」
 「すいませんでしたぁー!」

 逃げられないようだ。
 尊正さんが真剣な顔に戻って言う。

 「続けても?」
 「どうぞ!」

 「ヒヒイロカネは、勇者の象徴であり、また勇者に絶大な力を与えるものとされています」
 「なるほど!」

 また全然分からん。

 「そして、さらに」
 「まだあるんですか?」
 「もしもヒヒイロカネに宇宙龍の印があったならば」
 「スゴイですね!」
 「それは、石神様が神となることを示しているということです」
 
 「じょ、冗談じゃねぇぞ!」

 思わず大声で叫んでしまった。
 尊正さんも緑さんも、子どもたちも驚いている。
 慌てて謝った。

 「あ、いや、すみませんでした。あのですね、俺はそんな大それたものじゃないですよ。本当にちっぽけな人間ですから」
 「こちらこそ、言葉を選ぶべきでした。石神さんは神になることなど望んではおられませんよね。でも、これは少々言い訳めいてもしまうのですが、神道における神というのは、優れた功績を成し遂げた人間も多いのです。八百万の神というのはそういうもので」

 菅原道真などが確かにいる。

 「まあ、俺はそういうことでも全然違いますけどね」

 俺は絶対に人間だ。
 尊正さんが俺を見ている。

 「石神さん。このことは石神さんの御意志とは別です。神託ですので」
 「ふぅー」

 冷たく言い放たれた。
 話し合うような問題でもない。
 しかしまた途方もないことを言われたものだ。
 子どもたちも驚いて俺を見ている。

 「百家としましても、全力で協力してまいりますので」
 「それはありがたいのですが、喫緊の問題としまして、あのヒヒイロカネはどうすればいいんですかね?」

 俺はそれだけ確認したかったのだが。

 「御協力したいのですが、余りにも曖昧な伝でして。そのまま申し上げれば、伝承では「虎王」を打ち上げた際に神宮寺の妻となった者の血筋にと」
 「はぁ」

 誰だよ。
 尊正さんが、百家に伝わる「虎王」の伝を教えてくれた。
 巫女の予言で、神宮寺の当主が百家にヒヒイロカネを貰い受けに来るというものがあったそうだ。
 その予言の通りになり、百家は鑑となっていたヒヒイロカネを渡したそうだ。
 そして、神宮寺の当主に百家にヒヒイロカネがあることを教えたのが、妻だったということだ。

 「女性のことですので、記録には結婚前の家名は残っておりません。ただ「蓮華」とだけ」

 「!」

 驚いたなんてもんじゃない。
 家名が分かったわけではないが、俺には確信が生まれた。

 「その蓮華の血筋とありますが、これ以上は私どもも検討も付きません」
 「神宮寺の当主の妻が「蓮華」という名前だったのですか!」
 「はい。そのように記されております」
 
 俺は蓮華と蓮花の双子の姉妹の話を尊正さんにした。

 「姉の蓮華は「業」に支配されて死にました。妹の蓮花は「業」と戦うために、その後から俺に協力してくれています」
 「なんと! では蓮華の血筋というのは!」
 「俺も丁度、蓮花にヒヒイロカネを送る段取りを組んでいたところだったんですよ!」
 「その蓮花様はどのようなことをなさっているのですか?」
 「俺たちの技術の中枢を。詳しくはお話しできませんが」
 
 「そういうことでしたか」

 尊正さんは考え込んでいた。

 「これは私の想像なのですが」
 「はい、お聞かせ下さい」
 「恐らく、蓮花様はヒヒイロカネを目の前にすれば、何かが分かるのだと思います」
 「はい?」
 「神の託であれば、そのような仕儀になるかと。人はその影のようなものですから」
 「それでは、自動的に発現し、行動すると?」
 「その通りです。とにかく、ご心配はありません」
 「そうですか」

 またしても全然分からん。
 まあ、蓮花の研究所に送るしかないのだが。
 でも、これで百家の予言の話も聞いたし、実物も確認してもらった。
 俺の知りたくもないことも知ったし、知りたかったことも一応は分かった。

 響子を見ると、話の内容が難しく、眠そうにしていた。
 六花はいつものように腕を組んで目を閉じている。
 寝ているのだろう。
 俺が軽く声を掛けようと思うと、突然響子の目が見開いた。

 「「------」よ」

 まるで鈴の音のような音が聞こえた。
 言葉としては聞き取れない。

 「おい……」

 俺が響子に声を掛けると、全員が座ったまま昏倒した。

 「なんだ!」





 響子の身体が白く光っていた。
 俺と「響子」だけになった。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

完結‼️翡翠の歌姫は 後宮で声を隠す〜特殊な眼を持つ歌姫が、2人の皇子と出会い、陰謀に巻き込まれながら王家の隠した真実に迫る

雪城 冴
キャラ文芸
1/23本編完結‼️ 【中華サスペンス】 皇帝が隠した禁忌の秘密。 それを“思い出してはいけない少女”がいた―― 【あらすじ】 特殊な眼を持つ少女・翠蓮(スイレン)は、不吉を呼ぶとして忌み嫌われ、育ての父を村人に殺されてしまう。 居場所を失った彼女は、宮廷直属の音楽団の選抜試験を受けることに。 しかし、早速差別の洗礼を受けてしまう。 そんな翠蓮を助けたのは、危険な香りをまとう皇子と、天女のように美しいもう一人の皇子だった。 それをきっかけに翠蓮は皇位争いに巻き込まれ、選抜試験も敵の妨害を受けてしまう。 彼女は無事合格できるのか。 ◆二章◆ 仲間と出会い、心を新たにするも次なる試練が待ち受ける。 それは、ライバル歌姫との二重唱と、メンバーからの嫌がらせだった。 なんとか迎えた本番。翠蓮は招かれた地方貴族から、忌み嫌われる眼の秘密に触れる。 ◆三章◆ 翠蓮の歌声と真心が貴妃の目にとまる。しかし後宮で"寵愛を受けている"と噂になり、皇后に目をつけられた。 皇后の息子から揺さぶりをかけられ、もう一人の皇子とは距離が急接近。 しかし、後宮特有の嫌がらせの中で翠蓮は、自分の存在が皇子に迷惑をかけていると知る。 わずかに芽生えていた恋心とも尊敬とも付かない気持ちは、押さえつけるしかなかった。 ◆最終章◆ 後宮で命を狙われ、生死をさまよう翠蓮は、忘れていた記憶を取り戻す。 かつて王家が封じた“力”とは? 翠蓮の正体とは? 身分違いの恋の行方は? 声を隠すか歌うのか。 運命に選ばれた少女が、最後に下す決断とは―― ※架空の中華風ファンタジーです ※アルファポリス様で先行公開しており、書き溜まったらなろう、カクヨム様に移しています ※表紙絵はAI生成

あまりさんののっぴきならない事情

菱沼あゆ
キャラ文芸
 強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。  充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。 「何故、こんなところに居る? 南条あまり」 「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」 「それ、俺だろ」  そーですね……。  カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。

✿ 私は夫のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい 

設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀ 結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。 結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。 それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて しなかった。 呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。 それなのに、私と別れたくないなんて信じられない 世迷言を言ってくる夫。 だめだめ、信用できないからね~。 さようなら。 *******.✿..✿.******* ◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才   会社員 ◇ 日比野ひまり 32才 ◇ 石田唯    29才          滉星の同僚 ◇新堂冬也    25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社) 2025.4.11 完結 25649字 

理想の『女の子』を演じ尽くしましたが、不倫した子は育てられないのでさようなら

赤羽夕夜
恋愛
親友と不倫した挙句に、黙って不倫相手の子供を生ませて育てさせようとした夫、サイレーンにほとほとあきれ果てたリリエル。 問い詰めるも、開き直り復縁を迫り、同情を誘おうとした夫には千年の恋も冷めてしまった。ショックを通りこして吹っ切れたリリエルはサイレーンと親友のユエルを追い出した。 もう男には懲り懲りだと夫に黙っていたホテル事業に没頭し、好きな物を我慢しない生活を送ろうと決めた。しかし、その矢先に距離を取っていた学生時代の友人たちが急にアピールし始めて……?

処理中です...