2,041 / 3,202
ロボの御飯皿 Ⅱ
しおりを挟む
俺は鷹と美味い夕飯を一緒に作り、その後で一緒に風呂に入った。
風呂場で、そしてベッドで2回。
鷹が荒い息をついていて、3回目と思っていた所に、亜紀ちゃんから電話が来た。
何か慌てていたが、事情を聞いて家に戻ることにした。
「鷹、悪いな。ちょっと急用が出来た」
「い、いいえ。また是非」
「おう!」
もう一回ヤリたかったのに。
鷹はちょっとホッとしてた。
「おい、どうなってんだよ」
ロボの皿を割ってしまったと聞いた。
そしてロボが泣いているのだと。
ルーが玄関に迎えに来た。
ロボは来ない。
相当ショックを受けているのだろう。
「私がね、皇紀ちゃんにジンジャーエールの瓶を投げたの」
「あ?」
「そうしたら皇紀ちゃんが床のロボのお皿を踏んじゃって」
「何やってんだ!」
「ごめんなさい」
リヴィングに上がると、ソファでロボが亜紀ちゃんに抱き締められて、本当に泣いていた。
俺の顔を見ると、亜紀ちゃんから俺の方へ駆けて来て、俺に飛びつく。
ポロポロと涙を流し、俺の顔を見ている。
「おい、元気出せよ」
「にゅう」
ロボを優しく撫でてやった。
しばらくして、ロボが泣き止む。
「とにかく、ロボの新しい皿を用意しねぇとな」
ロボがそんなにあの皿が好きだったとは思わなかった。
でも、そう言えばどこへ行くにも、あの皿を持って行っていた。
御堂の家、蓮花研究所、ニューヨーク、アラスカ、斬の家でも千万組の所でも。
早乙女の家では違うこともあったが、あれは大好きな雪野さんが作ってくれてたせいかもしれない。
ロボはあの古伊万里の大皿が大好きだったのだ。
「タカさん、他に似たようなお皿は無いですか?」
「うちには古伊万里はあの大皿だけだったんだよ。普通の有田焼は何枚かあるけどなぁ」
俺は美術品には興味があったが、骨董品はそれほどだった。
あの古伊万里の大皿は、ある縁で手に入れたものだった。
ロボの御飯皿にしたのは、俺にも思い出の愛着があるものだったからだ。
可愛いロボのために使おうと思った。
まあ、割れてしまったものは仕方が無い。
俺は何枚か、大きさの近い皿を出した。
ウェッジウッド、クリストフル、マイセン、ロイヤル・コペンハーゲン、香蘭社、マリメッコ等々。
亜紀ちゃんも有田焼などの皿を探して来た。
ロボの前に置いてみるが、ロボはどうも気に入るものが無いようだった。
悲しそうな顔をして、俺を見上げるばかりだ。
亜紀ちゃんが綺麗な有田焼の皿の上に、ロボの好物のマグロを置いた。
でも食べなかった。
「そっかー」
こうなっては、探すしかない。
可愛いロボのためだ。
皇紀が落ち込んでいる。
「皇紀、そんなに落ち込むな。俺が必ず何とかするからな」
「僕も手伝います!」
「いいよ。お前に出来ることはほとんどない。お前は自分の仕事をしろ」
「はい……」
皇紀の頭を撫でて、部屋へ行かせた。
「タカさん、どうします?」
「古伊万里を探そう。どうもあの柄と雰囲気が好きだったんだろうよ」
「そうですかー」
古伊万里は江戸時代の有田焼のことだ。
豪華絢爛な紋様が、日本ばかりでなく海外の王侯貴族にも好まれた。
ヨーロッパにいたロボは、どこかで古伊万里の皿を見ていたのかもしれない。
そういうものなので、金を出せばデパートで買えるものではない。
骨董品として扱っている業者から出物を探し出さねばならない。
すぐには見つからないだろう。
「柳、正巳さんに電話してくれ」
「は、はい!」
「御堂の家ならば、いい古伊万里を持っていらっしゃるかもしれない。あれば譲って頂こう」
「はい!」
柳が電話した。
もう7時を回っていた。
俺が電話を替わり、正巳さんに相談した。
「石神さん! ああ、何枚かあるよ。すぐに送るから」
「いえ、あの、申し訳ないのですが、これから伺ってもいいですか?」
「え、これから? ああ、構わないよ。じゃあ、待ってます」
「ロボを連れて行きますので」
「はいはい。分かりました」
正巳さんは快諾して下さった。
「ロボ、御堂の実家にあるってさ。一緒に行こう」
「にゃー」
「Ωスーツ」に着替えて、ロボと飛んだ。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「夜分にすみません」
「いや、まだ10分も経ってないが、流石だね」
「アハハハハハ」
ロボの明日の御飯のためだ。
正巳さんと一緒に、蔵に入る。
皿や食器の置いてある所へ行った。
桐箱から正巳さんが次々に出して下さい。
流石に、何があるのかを把握しているようだ。
「これなんかどうかな」
箱を開いて見せて下さり、俺はロボの前に置いてみる。
5枚も見せたところで、正巳さんが次の箱を出して来た。
やはり御堂の実家は凄い。
「これは銘が知られていないものなんだけどね。ある有名な窯で焼かれたことは確かなんだ」
「そうなんですか」
箱書を見た。
《怒貪虎》
「なんですか、これ!」
「え? ああ、なんて読むのかな。でも「虎」の字があるから石神さんにお似合いじゃないか」
「いえ、そうじゃなくってですね!」
正巳さんは俺の驚きが分からず、笑って紐を解いて箱を開いた。
カエルをモティーフにした大皿だった。
「……」
「蛙なんて珍しいだろう? でも、非常に美しい。それにほら、周囲に蛙が楽しそうに踊っているじゃないか。何かの振り付けのようにも見えるよね?」
『怒貪虎音頭』のものだ。
俺はロボの前に置いた。
「ニャァーー!」
ロボが大興奮で、皿に頬を擦り付け、舐め始めた。
「ワハハハハハハ! 良かった! 気に入ったようだね!」
「は、はい。助かりました」
なんなんだ。
俺が皿の代金をと言うと、やはり断られた。
「何をあんなもの。石神さんにしてもらったことに比べたら!」
「すいません」
帰りにオロチたちに挨拶した。
ニジンスキーたちが、8メートルにも成長していてびっくりした。
「飛行」で家に帰り、すぐに子どもたちに皿を見せた。
「「怒貪虎さんだー!」」
双子も大喜びだった。
俺が皿を洗い、ロボにマグロを盛って食べさせた。
ロボが唸りながらマグロを綺麗に食べた。
皇紀も大喜びでロボに抱き着き、謝っていた。
しかし、怒貪虎さんって、何をしてたんだろう。
風呂場で、そしてベッドで2回。
鷹が荒い息をついていて、3回目と思っていた所に、亜紀ちゃんから電話が来た。
何か慌てていたが、事情を聞いて家に戻ることにした。
「鷹、悪いな。ちょっと急用が出来た」
「い、いいえ。また是非」
「おう!」
もう一回ヤリたかったのに。
鷹はちょっとホッとしてた。
「おい、どうなってんだよ」
ロボの皿を割ってしまったと聞いた。
そしてロボが泣いているのだと。
ルーが玄関に迎えに来た。
ロボは来ない。
相当ショックを受けているのだろう。
「私がね、皇紀ちゃんにジンジャーエールの瓶を投げたの」
「あ?」
「そうしたら皇紀ちゃんが床のロボのお皿を踏んじゃって」
「何やってんだ!」
「ごめんなさい」
リヴィングに上がると、ソファでロボが亜紀ちゃんに抱き締められて、本当に泣いていた。
俺の顔を見ると、亜紀ちゃんから俺の方へ駆けて来て、俺に飛びつく。
ポロポロと涙を流し、俺の顔を見ている。
「おい、元気出せよ」
「にゅう」
ロボを優しく撫でてやった。
しばらくして、ロボが泣き止む。
「とにかく、ロボの新しい皿を用意しねぇとな」
ロボがそんなにあの皿が好きだったとは思わなかった。
でも、そう言えばどこへ行くにも、あの皿を持って行っていた。
御堂の家、蓮花研究所、ニューヨーク、アラスカ、斬の家でも千万組の所でも。
早乙女の家では違うこともあったが、あれは大好きな雪野さんが作ってくれてたせいかもしれない。
ロボはあの古伊万里の大皿が大好きだったのだ。
「タカさん、他に似たようなお皿は無いですか?」
「うちには古伊万里はあの大皿だけだったんだよ。普通の有田焼は何枚かあるけどなぁ」
俺は美術品には興味があったが、骨董品はそれほどだった。
あの古伊万里の大皿は、ある縁で手に入れたものだった。
ロボの御飯皿にしたのは、俺にも思い出の愛着があるものだったからだ。
可愛いロボのために使おうと思った。
まあ、割れてしまったものは仕方が無い。
俺は何枚か、大きさの近い皿を出した。
ウェッジウッド、クリストフル、マイセン、ロイヤル・コペンハーゲン、香蘭社、マリメッコ等々。
亜紀ちゃんも有田焼などの皿を探して来た。
ロボの前に置いてみるが、ロボはどうも気に入るものが無いようだった。
悲しそうな顔をして、俺を見上げるばかりだ。
亜紀ちゃんが綺麗な有田焼の皿の上に、ロボの好物のマグロを置いた。
でも食べなかった。
「そっかー」
こうなっては、探すしかない。
可愛いロボのためだ。
皇紀が落ち込んでいる。
「皇紀、そんなに落ち込むな。俺が必ず何とかするからな」
「僕も手伝います!」
「いいよ。お前に出来ることはほとんどない。お前は自分の仕事をしろ」
「はい……」
皇紀の頭を撫でて、部屋へ行かせた。
「タカさん、どうします?」
「古伊万里を探そう。どうもあの柄と雰囲気が好きだったんだろうよ」
「そうですかー」
古伊万里は江戸時代の有田焼のことだ。
豪華絢爛な紋様が、日本ばかりでなく海外の王侯貴族にも好まれた。
ヨーロッパにいたロボは、どこかで古伊万里の皿を見ていたのかもしれない。
そういうものなので、金を出せばデパートで買えるものではない。
骨董品として扱っている業者から出物を探し出さねばならない。
すぐには見つからないだろう。
「柳、正巳さんに電話してくれ」
「は、はい!」
「御堂の家ならば、いい古伊万里を持っていらっしゃるかもしれない。あれば譲って頂こう」
「はい!」
柳が電話した。
もう7時を回っていた。
俺が電話を替わり、正巳さんに相談した。
「石神さん! ああ、何枚かあるよ。すぐに送るから」
「いえ、あの、申し訳ないのですが、これから伺ってもいいですか?」
「え、これから? ああ、構わないよ。じゃあ、待ってます」
「ロボを連れて行きますので」
「はいはい。分かりました」
正巳さんは快諾して下さった。
「ロボ、御堂の実家にあるってさ。一緒に行こう」
「にゃー」
「Ωスーツ」に着替えて、ロボと飛んだ。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「夜分にすみません」
「いや、まだ10分も経ってないが、流石だね」
「アハハハハハ」
ロボの明日の御飯のためだ。
正巳さんと一緒に、蔵に入る。
皿や食器の置いてある所へ行った。
桐箱から正巳さんが次々に出して下さい。
流石に、何があるのかを把握しているようだ。
「これなんかどうかな」
箱を開いて見せて下さり、俺はロボの前に置いてみる。
5枚も見せたところで、正巳さんが次の箱を出して来た。
やはり御堂の実家は凄い。
「これは銘が知られていないものなんだけどね。ある有名な窯で焼かれたことは確かなんだ」
「そうなんですか」
箱書を見た。
《怒貪虎》
「なんですか、これ!」
「え? ああ、なんて読むのかな。でも「虎」の字があるから石神さんにお似合いじゃないか」
「いえ、そうじゃなくってですね!」
正巳さんは俺の驚きが分からず、笑って紐を解いて箱を開いた。
カエルをモティーフにした大皿だった。
「……」
「蛙なんて珍しいだろう? でも、非常に美しい。それにほら、周囲に蛙が楽しそうに踊っているじゃないか。何かの振り付けのようにも見えるよね?」
『怒貪虎音頭』のものだ。
俺はロボの前に置いた。
「ニャァーー!」
ロボが大興奮で、皿に頬を擦り付け、舐め始めた。
「ワハハハハハハ! 良かった! 気に入ったようだね!」
「は、はい。助かりました」
なんなんだ。
俺が皿の代金をと言うと、やはり断られた。
「何をあんなもの。石神さんにしてもらったことに比べたら!」
「すいません」
帰りにオロチたちに挨拶した。
ニジンスキーたちが、8メートルにも成長していてびっくりした。
「飛行」で家に帰り、すぐに子どもたちに皿を見せた。
「「怒貪虎さんだー!」」
双子も大喜びだった。
俺が皿を洗い、ロボにマグロを盛って食べさせた。
ロボが唸りながらマグロを綺麗に食べた。
皇紀も大喜びでロボに抱き着き、謝っていた。
しかし、怒貪虎さんって、何をしてたんだろう。
1
あなたにおすすめの小説
烏の王と宵の花嫁
水川サキ
キャラ文芸
吸血鬼の末裔として生まれた華族の娘、月夜は家族から虐げられ孤独に生きていた。
唯一の慰めは、年に一度届く〈からす〉からの手紙。
その送り主は太陽の化身と称される上級華族、縁樹だった。
ある日、姉の縁談相手を誤って傷つけた月夜は、父に遊郭へ売られそうになり屋敷を脱出するが、陽の下で倒れてしまう。
死を覚悟した瞬間〈からす〉の正体である縁樹が現れ、互いの思惑から契約結婚を結ぶことになる。
※初出2024年7月
芙蓉は後宮で花開く
速見 沙弥
キャラ文芸
下級貴族の親をもつ5人姉弟の長女 蓮花《リェンファ》。
借金返済で苦しむ家計を助けるために後宮へと働きに出る。忙しくも穏やかな暮らしの中、出会ったのは翡翠の色の目をした青年。さらに思いもよらぬ思惑に巻き込まれてゆくーーー
カクヨムでも連載しております。
【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。
文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。
父王に一番愛される姫。
ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。
優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。
しかし、彼は居なくなった。
聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。
そして、二年後。
レティシアナは、大国の王の妻となっていた。
※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。
小説家になろうにも投稿しています。
エールありがとうございます!
後宮なりきり夫婦録
石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」
「はあ……?」
雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。
あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。
空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。
かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。
影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。
サイトより転載になります。
【完結】狡い人
ジュレヌク
恋愛
双子のライラは、言う。
レイラは、狡い。
レイラの功績を盗み、賞を受賞し、母の愛も全て自分のものにしたくせに、事あるごとに、レイラを責める。
双子のライラに狡いと責められ、レイラは、黙る。
口に出して言いたいことは山ほどあるのに、おし黙る。
そこには、人それぞれの『狡さ』があった。
そんな二人の関係が、ある一つの出来事で大きく変わっていく。
恋を知り、大きく羽ばたくレイラと、地に落ちていくライラ。
2人の違いは、一体なんだったのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる