富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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激涙! 暁の三連星 Ⅱ

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 俺が早乙女達を玄関まで見送ると、亜紀ちゃんが一人でウッドデッキで肉を焼いているのが見えた。

 「どうした、他の連中は?」

 亜紀ちゃんが大泣きして俺に駆け寄って抱き着いて来た。

 「タカさーん!」
 「おい!」

 本当に涙をどんどん流して、たちまち俺の胸が濡れて行った。

 「おい、落ち着け! 何があったんだよ!」
 「タカさーん!」

 ダメだ。
 俺は亜紀ちゃんを椅子に座らせ、肉を焼いて食べさせた。
 泣きながらも、ちょっとずつ食べる。
 肉も他の食材も大分残っていた。
 ほとんど消費していない。

 「皇紀たちはどうしたんだよ?」
 「タカさーん!」

 また泣くので、どんどん肉を食べさせた。
 いつもならば、それで機嫌が治るのだが。
 でも、あの亜紀ちゃんが肉の喰いが悪い。
 30分も黙って俺が焼いて、ようやく落ち着いて来た。

 さっき、下でルーに責められたらしい。
 要は亜紀ちゃんの攻撃力が他の子どもたちよりもずっと上回っていて、亜紀ちゃんだけが大方を食べている状況をだ。
 まあ、気付いてはいたが、それも子どもたちのコミュニケーションだと思って俺も放置していた。

 「私、自分勝手だったんですね」
 「まあなぁ」

 確かにそうとも言えるが、元々争って食べていた連中だ。
 それを今更誰かに負けるので文句を言うというのは筋違いだ。
 そういう話をすると亜紀ちゃんも納得する。

 「私もそうだと思って、手加減しないで楽しんでしまってたんです。でも、みんなお肉が食べたいに決まってますよね? その気持ちに気付かなかった」
 「まあなぁ」
 「私、独りでなんて食べたくないですよー!」
 
 また泣き出した亜紀ちゃんを抱き締めて慰めた。

 この状況は、仕方が無い面もある。
 皇紀や双子は研究や解析の仕事などで、鍛錬の時間が亜紀ちゃんよりもずっと少なくなっている。
 それに加えて、亜紀ちゃんは超天才だ。
 近接戦闘では六花が最高だか、それに次ぐのは確実に亜紀ちゃんだった。
 ルーとハーも天才だが、これまでは二人の連携で何とか対応していた。
 皇紀は防御力で突破していたが、最近ではそれも亜紀ちゃんに通用しなくなって来ている。

 「皇紀や双子は仕事が忙しくなったからな。最近じゃ鍛錬の時間も少ないだろう?」
 「はい」
 「だから差がついた、ということだな。これはしょうがねぇ」
 「そうですね。あ、柳さんは?」

 柳は優先的に鍛錬の時間をもらっているのだが。

 「あいつはなぁ。お前らと比べて才能がねぇからなぁ」
 「あぁ」
 「真面目で頑張る奴なんだけどな。だからお前らも手加減してたじゃねぇか」
 「そうですね」

 ほんとか?

 「あ、タカさん、お鍋はすみませんでした」
 「いいよ。早乙女たちの手前怒鳴ったけどな。それはあれだ。前にも言った通り、俺の客の前では、という話だよ」
 「はい。でも本当にすみません」

 そこはもう責めるつもりはない。
 調子に乗ったことは事実だが、もうこいつらも反省しているだろう。
 
 「それよりもな。一緒に謝りに行こうぜ」
 「タカさん!」
 「俺も一緒に行くよ。ちゃんと話し合えよ」
 「はい!」

 亜紀ちゃんを連れて上に上がった。
 四人は双子の部屋にいた。

 「おい、亜紀ちゃんを許してやれよ」
 「タカさん!」
 「亜紀ちゃんも反省してるよ。な?」
 「みんな! ごめんなさい! 私、思い上がってた! 本当にごめんなさい!」

 亜紀ちゃんが四人に深々と頭を下げた。 
 四人が笑って立ち上がった。

 「亜紀ちゃん、私こそごめん! さっきは言い過ぎたよ!」
 「ルー!」
 「みんなで争うのが流儀だったよね? 自分たちが食べられないから、亜紀ちゃんに嫉妬するのは間違いだった」
 「ルー!」

 「僕もごめん、お姉ちゃん」
 「私もルーと一緒。亜紀ちゃんは何も悪くなかったよね?」
 「皇紀! ハー!」
 
 「あの、私、食べに行ってもいいですか?」
 「柳さん! もちろんです!」

 まあ、仲直りしたようだ。
 
 「おし! じゃあ、今日は俺が焼いてやろうか!」
 「「「タカさん!」」」
 「石神さん!」

 俺は笑ってみんなを連れて下へ降りた。
 俺が焼いて、子どもたちは仲良く食べた。
 なんだよ、ちゃんと大人しく喰えるじゃねぇか。

 でも、俺は根本的な解決には至っていないことに気付いていた。
 亜紀ちゃんの突出した戦闘力は、また夢中になった亜紀ちゃんによって発揮されてしまうだろう。
 何とかしなければ。





 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■





 亜紀ちゃんと柳が風呂に入っている間、俺は皇紀と双子を部屋に呼んだ。

 「お前ら、今日のことは分かっているな?」
 「はい、僕たちが間違ってました。お姉ちゃんは悪くないです」
 「いや、そういうことじゃなくてな。お前らと亜紀ちゃんの力の差が開き過ぎたということだ」
 「「「!」」」

 三人が驚いていた。

 「この問題は、今後も残っている。お前らはこれまでいい感じで釣り合っていたわけだけどな。しばらく皇紀は研究といろんな場所の視察と浮気で忙しかったからな」
 「タカさん!」

 双子が大笑いしていた。

 「ルーとハーもそうだ。皇紀の研究を手伝い、またお前らにしか出来ない解析の仕事が結構あった。だからお前ら三人はあまり鍛錬をする時間が無かった」
 「そうかー」
 「亜紀ちゃんはずっとやってたもんね」

 三人が納得した。

 「柳は、お前らと比較するとしょうがねぇ。これまで通り、手加減して守りながら付き合っていけ。でもお前らは違う。亜紀ちゃんのためにも、何とかしろ」
 「「「はい!」」」

 「お前らは兄弟だ。仲良くやってくれよ。そうしないと山中たちに顔向け出来ねぇ」
 「「「はい!」」」

 具体的な方法は何も示さなかった。
 三人で話し合って、きっと見出すだろう。

 俺はそれを信じて任せた。 





 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 「ねえ、どうしよっか?」

 また私たちの部屋に皇紀ちゃんを呼んで、三人で話し合った。

 「今日のさ、三人での連携は失敗しちゃったけど、亜紀ちゃんを止めたよね?」
 「うん、そうだね」
 「やっぱり、鍛錬の時間が少ないのはしょうがないよ。だからさ、三人で協力していくのがいいと思う」
 「僕も賛成だな!」
 「なんか武器使う?」
 「ルー! それはダメだよ!」
 
 まあ、そっか。

 「蓮花さんなら、いいの作ってくれるかもって思った」
 「だからさ」
 「うん、分かったよ」

 皇紀ちゃんが考えていた。

 「そう言えばさ、蓮花さんが乾さんのディディを作った時にさ」
 「なーに、皇紀ちゃん?」
 「うん、今思い出しただけなんだけど、機体の発想で、いろんな資料を読み返したんだって」
 「そうなんだ」
 「その話を聞いてね。装備を換装する発想を得たんだよ」
 「へぇー」

 まだ話がよく分かんない。
 皇紀ちゃんは何を言いたいんだろう?

 「それでね、蓮花さんって「ガンダムマニア」なんだって。全シリーズを持ってて、僕もDVDとか借りて観たんだけど、本当に面白かったよ」
 「「へぇー」」

 私もハーもまだ分からない。
 皇紀ちゃんがDVDを自分の部屋から持って来た。
 『機動戦士ガンダム』の第一作のものだった。

 「この中に面白い攻撃があったんだ」
 
 私たちのデッキにDVDを入れようとした。
 入ってたDVDを取り出した。

 『お尻に2本は無茶です、監督!』

 「……」

 「皇紀ちゃん、今度貸そっか?」
 「うん!」

 ガンダムを観た。

 「ここだよ!」

 《黒い三連星! ジェット・ストリーム・アタック!》

 三体のモビルスーツが一直線にガンダムに迫った。

 「「「これだぁ!」」」

 創作物だから、主人公が勝ったが、実際にやられたら亜紀ちゃんも沈む!





 三人で狂喜して、手を繋いで輪になって踊り、大笑いした。

 「うるせぇ!」

 タカさんに怒られた。
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