富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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双子と皇紀の修学旅行 Ⅸ

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 マニラ市内のレストランを貸切にした昼食を食べた。
 本場のフィリピン料理のお店だ。
 折角フィリピンに来たのだから、ということだった。
 
 豚の丸焼きレチョン。
 ゴロゴロお肉たっぷりのアドボ。
 カレーみたいなカレカレ。
 さっぱりスープのシニガン。
 焼きぞばみたいなパンシット。
 その他春巻きみたいなものとか他の肉や魚料理がどんどん出て来る。
 もちろん、普通のステーキも大量だ。

 僕たちの食欲に、お店の人たちも大笑いしながら次々と出してきてくれた。
 1時間も食べ続け、みんなでデザートのハロハロを楽しんで店を出た。
 僕はお店の人に色紙にサインを頼まれた。

 「皇紀ちゃん、有名人だよね」
 「うん」

 これまでも何度もあったので慣れた。
 ルーとハーが僕のイラストを描いてくれた。
 妹たちは絵が上手い。
 お店の人に妹たちだと言うと、色紙をとても喜んでくれた。

 お店を出て、水族館へ行って時間を潰した。
 そして顕さんのお宅へ伺う。
 大人数なので、庭でお茶の用意をしてもらった。

 「皇紀君! ルーちゃん! ハーちゃん!」
 
 顕さんと、お腹の大きくなったモニカさんが歓迎してくれた。

 「「「こんにちはー!」」」

 みんなで挨拶し、庭へ案内してもらった。
 白いテーブルと椅子が並んでいる。
 
 「こないだね、東雲さんが運んでくれたんだよ」
 「しのちゃん!」
 「うん。君たちが来るのを聞いて、椅子とか足りないだろうってね」
 「さすが!」
 
 みんなで紅茶をいただいた。
 「人生研究会」の幹部たちは顕さん会ったことはないが、みんなタカさんと奈津江さんの話は知っている。
 だから顕さんのことも分かっていて、フィリピンでのことをみんなで話し、楽しく過ごした。
 特に馬込君は、顕さんがタカさんの兄貴分の人だということで、やたらと尊敬していた。

 「皇紀君の頭は相変わらずスゴイね」
 「アハハハハハ!」
 「ルーちゃんとハーちゃんも」
 「皇紀ちゃんが付き合えっていうもんで」
 「困ったものです」
 「おい!」

 顕さんが大笑いした。
 顕さんはお元気そうだった。

 「何かお困りのことはありませんか?」
 「全然無いからね!」

 顕さんが慌てた表情で叫んだ。
 全員が驚いて見る。

 「あのさ、石神君からも突然別荘をもらったり、ご祝儀だって10億ドルもらったり、ここの周辺の土地が買い上げられて防衛システムだのってさ!」
 「「「ワハハハハハハハ!」」」

 「それにさ! ローマ教皇とかアメリカ大統領とかお祝いが届いて、フィリピンの大統領なんて国宝を持って来たりさ!」
 「「「ワハハハハハハハ!」」」

 「先日はレジーナって物凄く綺麗な人が来てね。お祝いだってレンブラントの絵を持って来たんだよ!」
 「レジーナさんが!」
 「誰だか知らないんだけど、石神君の恋人なんだって言ってたよ! 誰なの、あの物凄い綺麗な人!」
 「ああ、ちょっと説明しにくいんですけど、本当にタカさんの関係者ですよ」
 「そうなのかい? まあ、びっくりしたなぁ。黒服の集団に囲まれてさー。ああ、物凄い豪華な馬車に乗って来たんだよ!」
 「大変ですね」

 顕さんは本当に困った顔をしていた。

 「僕なんか、普通のサラリーマンだよ? 他にもいろんなところからとんでもないものが来てさ。モニカと本当に困ってるんだ」
 「まあ、タカさんの一番大事な人ですからね」
 「嬉しいけど困るんだよー!」

 みんなで笑った。
 タカさんは自分の子どもの祝いはそれほど貰っていない。
 普通に一江さんたちとか周囲の人間だけだ。
 でも、顕さんのことは嬉しくてしょうがなかったのだろう。
 だからいろんな人に話したのだと思う。
 顕さんも大変だ。

 楽しくみんなで話し、顕さんの家を出た。

 「すぐにあの山に戻らないとね」
 「うん」

 「人生研究会」の幹部たちは先にホテルへ戻し、僕たちだけで「ヘヴンズ・フォール」の山に戻った。
 結構急いだ。

 



 儀式の場所には5時頃に着いた。
 もうタカさんとお姉ちゃんが来ていて驚いた。
 先ほど着いた所らしい。
 僕たちは慌ててタカさんの所へ行った。

 「おい! なんだよ、これは!」

 タカさんが思った通りに怒っていた。

 「あのね、皇紀ちゃんのせいなの!」
 「皇紀ちゃんが呼び出したのよ?」
 「おい! 何言ってんだよ!」

 妹たちが僕のせいにした。

 「ふざけんなぁ!」

 三人ともぶっ飛ばされた。
 タカさんは誤魔化されない。

 ローライさんが今回の能力者たちをタカさんに紹介した。
 みんなタカさんに会えて感激していた。
 タカさんも愛想よく挨拶していく。
 ローライさんが、儀式のことや今回の大規模な結果についてタカさんに説明していく。
 先に降って来た「ヘヴンズ・フォール」の品もタカさんに見せる。
 そっちもタカさんは驚いていたが、何しろ巨大な水晶の珠がある。
 しばらくタカさんとお姉ちゃんがそっちを見ていた。
 段々、日が暮れて来た。

 タカさんが水晶の「ヘヴンズ・フォール」に近づいた。

 「ミスター・イシガミ! それに触れるのは危険です!」

 タカさんは振り向いて笑って手を振った。
 近づいて行って、水晶の「ヘヴンズ・フォール」に両手を置いた。
 みんなが驚いたが、次の瞬間に、「ヘヴンズ・フォール」が淡く輝き出し、どんどんその光が強くなって行った。
 目を開けていられない。

 「なんかスゴイことが起きてるよ!」
 「なにこのエネルギー!」

 妹たちが驚いている。
 他の能力者の人たちも騒いでいた。

 10分程も経ってようやく光が弱まって行き、目を開いた。
 水晶の「ヘヴンズ・フォール」が無かった!

 「ミスター・イシガミ! 何が起きたんだ!」

 ローライさんが叫び、僕たちもタカさんに駆け寄った。
 ルーとハーがタカさんに必死で「手かざし」をして状態を調べる。

 「あ、分かんねぇ」
 「でも、あれは一体どこへ消えたんだ!」
 「分からないよ。俺も眩しくって」
 「!」

 ローライさんがタカさんに、どうしてあれに触れたのかと聞いた。

 「なんだか呼ばれているような気がしてな。いやあ、びっくりしたぜぇ」
 「あれほどの質量を!」
 「まあ、でかかったな。でも、どこに行ったかなぁ」
 「ミスター・イシガミ!」
 
 みんな混乱していた。
 でも、タカさんが分からないと言うので、それ以上はどうしようもない。
 予言者のブラヴァードさんがタカさんに聞いた。

 「「虎」の方。我々はお役に立てたでしょうか?」
 
 タカさんはニッコリと笑ってうなずいた。

 「深く感謝します。みなさんの御協力のお陰で、素晴らしいことになりました」

 ブラヴァードさんが微笑み、拍手をした。
 他の全員も大きな拍手をした。
 僕と妹たちに向いてタカさんが言った。

 「さて、じゃあ俺たちは帰るからな」
 「え、そうなんですか?」
 「ばかやろう! もうヘンな事件を起こすなよな!」
 「は、はい!」
 「お前らもいいな!」
 「「はい!」」

 お姉ちゃんが僕たちを抱き締めて「まったくもう」と言って微笑んだ。
 みんなでタカさんとお姉ちゃんを見送った。
 ローライさんたちも撤収の準備を始める。

 「遅い時間まですみませんでした」
 「いや、僕たちのやったことだからね。それに素晴らしい結果になった」
 「はい。でも、あの水晶の「ヘヴンズ・フォール」は残念でしたね」
 「いいや、あれは元々「虎」に差し上げるものだったのだからね。君たちも最初に降って来たものは持ち帰ってね」
 「いいんですか?」
 「もちろんだ。あれらがどういうものなのかは分からないけどね」

 僕たちもみなさんにお礼を言い、先に帰らせてもらった。





 「あの程度で済んで良かったね!」

 ルーが運転しながら言った。
 
 「僕のせいにしようとしたね!」
 「「ワハハハハハハ!」」

 まあ、いいけど。
 ホテルの夕飯は遅くなってしまったけど、ちゃんと僕たちの分は残されていた。
 三人で仲良く食べた。

 しかし、あの水晶の「ヘヴンズ・フォール」は一体どうなったんだろう。
 タカさんは何か分かっていた感じだったけど。

 まあ、帰れば話してくれるのかな。
 それに、明日は本当に何事もありませんよーに! 
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