富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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双子と皇紀の修学旅行 XⅠ 終幕

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 夕べ散々な目に遭ったが、今日で修学旅行も終わり日本へ帰る。
 いろいろとあったが、まあ僕も楽しかった。
 妹たちが僕のために無理をして誘ってくれた気持ちが、本当に嬉しい。
 酷い目にも遭ったけどさ。

 朝食を食べて、荷物をまとめた。
 昼食をホテルで食べたら空港へ行く。
 僕たちはみんなでお土産を買いに出た。

 カピス貝の工芸品や、民族衣装、それにゴールデンパールなどの宝飾品を妹たちが買い漁って行く。
 前はハワイで老舗のアロハシャツの店ごと購入した二人だ。
 やはりとんでもない量になり、後から航空便で送ることになった。
 でも、買い物も楽しかった。

 「柳ちゃんに、あの魔除けのお面を買おうよ」
 「このゴールデンパールのブレスレット、タカさんに似合うよね!」
 「あの派手なスリットの衣装! 亜紀ちゃんだね!」
 「六花ちゃんに、あのイヤリング!」
 「栞ちゃんにあのネックレス!」
 「士王ちゃんに……」
 「吹雪ちゃんには……」
 「麗星ちゃんに……」
 「天狼ちゃん……」
 「ジャムは早乙女さんとこに一杯……」
 「このドギツイ奴、雪野さんに贈ろう!」

 本当に楽しい。
 すぐに昼食の時間になり、大量のステーキを食べた。
 いよいよ空港へ行く。
 搭乗手続きを終え、みんなで乗り込んだ。
 やっぱりファーストクラスだった。
 先生方に申し訳ない。

 「敵襲が無くてよかったね!」
 「飛行機とか落とされると面倒だもんね」

 まあ、それはこれからの話だが。
 でも、デュールゲリエたちが周囲を警戒しながら並走してくれるし、まずは大丈夫だろう。
 それに、霊素観測レーダーを積んだ「タイガーファング」もこっそり同行してくれる。
 タカさんが特別に手配してくれている。

 妹たちは、「ヘヴンズ・フォール」での落下物を大事に手荷物で持って来ていた。
 僕もあの槍のようなものを手荷物にしている。
 一応刃の部分にはラバーをかけて、偽装している。
 まあ、妹たちがフィリピン政府と日本政府に特別な交渉をしていて、検査のたぐいも簡易なものになっているのだけど。

 飛行機が離陸し、すぐに機内食が出る。
 僕らだけだ。
 「人生研究会」の幹部たちも一緒に食べる。
 
 みんなで旅行の楽しかった話などをして盛り上がった。

 「皇紀さん! あの槍を見せて下さいよ!」
 
 馬込君が言った。

 「ああ、いいよ」

 僕は笑って固定していた槍を外して馬込君に見せた。

 「やっぱりスッゲェですねぇ」
 「そうだね。装飾品として見ても素晴らしいよ」

 ルーとハーも、自分たちがもらった腕輪のようなものを見せた。

 「馬込、いいだろう?」
 「ヘッ! 皇紀さんのが最高だよ! ああ、石神さんのは次元が違うけどな」
 
 妹たちが笑っていた。
 他の「人生研究会」の幹部たちも席を立って観に来る。
 僕の槍も、妹たちの腕輪も褒めてくれた。

 「神様の世界から来たらしいからね。大事にするよ」
 「そうですよね!」

 みんながうっとりと見ていた。

 「そうだ!」

 ハーが言い、僕の手から槍を預かった。
 僕に応援旗を持たせるようにした。
 
 「皇紀ちゃん、もっと下」
 「え?」

 槍の石突の方を股間に持って来る。
 
 「あ、そうか!」
 
 ルーも叫び、二人で腕輪を槍に通して下に持って来る。
 腕輪の位置を調整する。

 「「ギャハハハハハハハハハ!」」
 「……」

 オチンチンとタマタマになった。

 「おい!」

 でも僕も笑った。

 「アハハハハハ!」

 
 ドフン!


 何かが爆発する音がした。

 「敵襲か!」
 
 僕が叫んで、みんなに席に座るように指示する。
 「虎の穴」の端末をすぐにチェックするが、異常事態は無かった。

 「あ! エンジンが!」

 誰かが叫び、窓から左翼を指差した。
 左のエンジンの一つが燃えている。


 ドフン!


 右翼で音がして、同じくエンジンが燃えた。

 「おい、これ、不味かったんじゃないか?」
 
 オチンチン・タマタマ槍を指差した。
 
 「そ、そんなことないよ」
 「へーきだよ」


 ドフン! ドフン! ドフン! ドフン!


 全部のエンジンから火が出た。

 「「「怒ってるね……」」」

 「あ! 全部落ちますよ!」

 翼の中の燃料に引火すると大変だと思ったが、火を噴いたエンジンはみんな落下して行った。
 パイロットが緊急の機内放送をする。

 「ただいま、当機はエンジントラブルのため、海上に緊急着陸をします! 乗客は直ちに着席し、シートベルトを着用の上、緊急態勢を……」

 パイロットも慌てている。
 スチュワーデスのみなさんも、僕たちに大声で指示を出していく。

 「皇紀ちゃん、これって……」
 「もしかして、墜ちるの……」
 「……」

 絶対間違いないだろう。
 僕は「タイガーファング」に敵襲の可能性を確認したが、やはり敵はいなかった。
 僕がタカさんに連絡しようとすると、妹たちが必死に止めようとしてきた。

 「これさ、後から分かったら、僕ら死ぬよ?」
 「「……」」

 あらためてタカさんに連絡した。

 「どうした?」
 「あの、「ヘヴンズ・フォール」で落ちて来た槍と腕輪をですね」
 「あんだ?」
 「股間でオチンチンを作ってですね」
 「おい、皇紀、何言ってんだよ?」
 「そうしたら、突然エンジンが全部燃えて落ちてですね」
 「?」

 「これから海上に胴体着陸をします」
 「……」

 タカさんが無言で電話を切った。




 並走して飛んでいたデュールゲリエたちが飛行機の万一の事故に備えて集まって来る。
 パイロットは非常にソフトなランディングをし、機体を海上に浮かべることが出来た。

 「この機体は沈みません! 安心して下さい! 救助信号もちゃんと通じてます! すぐに救助が来るはずですから、みなさん落ち着いて下さい!」

 機内放送で、僕たちに不安を与えないように懸命に説明していた。
 僕と妹たちで、操縦席に向かった。

 僕たちが特別なことは知らされているので、すんなりと操縦席に入れた。

 「あの、僕たちで飛行機を牽引します」
 「え!」
 「「虎」の軍の力を使えば可能ですので」
 「そうなんですか!」
 「はい」

 本当に申し訳ない。
 事情は話せないけど。

 「ではお願いします!」
 「「「はい!」」」

 三人で外に出て、ルーが左翼、ハーが右翼、僕が後翼について、「飛行」で飛行機を押した。
 相当重かったが、頑張って行くと結構なスピードになり、徐々に海上を浮かぶようになった。
 パイロットの人が翼を調整してくれたのだろう。

 もちろん救助隊も即座に派遣され、タカさんの指示で「虎」の軍の人たちが飛んで来てくれた。
 デュールゲリエも協力して、大勢で「飛行」で飛行機を押した。
 羽田空港に着く頃には飛行機を全員で浮かせ、滑走路に胴体着陸をソフトに終えた。




 
 「お帰り」
 「おう!」

 空港で物凄い顔をしたタカさんと、「ディアブロ・モード」の鬼お姉ちゃんが待っていた。
 みんなと別れてから駐車場で死ぬかと思うほど折檻された。

 土曜日一杯、妹たちと食事も出来ずに寝込んだ。
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