富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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ガンスリンガー Ⅵ

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 リンダと名乗った女を抱え、ギリギリのタイミングで逃げた。
 空中に上がった俺を、4人の「ガンスリンガー」が狙って撃って来た。
 俺はすぐに高速で飛び去ったので当たることも無かったが、少しでももたついていればやられただろう。
 トラの話を聞いていなければ危なかった。
 人間のガンマンの域じゃない。

 女を抱えていたので、時速300キロくらいで飛行していた。
 それでも生身の人間には辛い速度だ。
 しかし、俺はトラからトラを襲った「ガンスリンガー」が亜音速の無人機に掴まって逃げた話を聞いていた。
 だから、この女も耐えるだろうと考えた。
 実際、女は意識をしっかり保っている。

 「おい、身体は辛くねぇか?」
 
 女はスーパーブラックホークを俺に取り上げられ、俺の手足で完全に拘束されている。

 「フン、私たちは高速で飛翔する銃弾を操るのよ? こんな生ぬるい速度なんて」
 「そうか! 良かった!」
 「え?」

 俺は喜んだ。
 そうか、こいつ大丈夫なのか!

 「俺、早く帰りたかったんだよ!」
 「なによ?」
 「じゃー飛ばすかんな!」
 「え、ちょっと……」

 マッハ3で飛行する。
 俺は最初から「Ωコンバットスーツ」を着ているので大丈夫だが、女の衣服は全部千切れ飛んだ。

 「おい、大丈夫か?」
 「……」

 女がグッタリしている。
 そのうち、尻と前から漏らしやがった。

 「おい!」

 俺は速度を落とし、一度地上へ降りた。
 ケンタッキー州のレキシントン南方の森林だ。
 確認すると女の心臓が止まっていた。

 「お前! 大丈夫だって言っただろう!」

 仕方なく蘇生措置をする。
 心臓マッサージをして、口で肺に酸素を送った。
 10分程で女が意識を取り戻した。
 酷く咳き込んで俺を睨む。

 「おま、え……ゴホッゴホゴホゴホ!」
 「口ほどにもねぇ。無駄な時間を使ったぜ! ウンコ女!」

 女は自分が漏らしたことを自覚した。
 俺を物凄い顔で睨む。
 俺はまた女を後ろから抱きかかえ、空中へ飛んだ。
 今度は時速600キロ程度で飛ぶ。

 「辛かったら言え」
 「……」

 答えないので、女の後頭部に噛みついた。

 「イタイ!」
 「返事しろ! ブス!」
 「分かったわよ!」

 30分後、セイフハウスの一つの屋上に降り立った。
 5階建ての小さなビルの一室に入り、女の身体検査をした上で椅子に拘束した。






 トラに連絡した。

 「トラ、「ガンスリンガー」の女を一人捕まえて来た」
 「そうなのか!」

 俺はトラに、先ほどの状況を話した。

 「待ち合わせ場所には5人の「ガンスリンガー」がいたよ」
 「全員そうだったのか?」
 「ああ。みんなスーパーブラックホークを持ってた。腕前もお前を襲った奴と同じくらいだろう」

 トラに状況を説明した。

 「武装解除されそうになって、女が俺の「散華」に触ったんだ」
 「ほう」
 「すぐに気付かれた。女が「崋山だ」と叫んだ。だから咄嗟に女を抱えて逃げた」
 「おい!」

 トラも驚いていた。
 トラも敵が「崋山」の銃を知っているとは思わなかった。

 「ホルスターから抜こうとして分かったんだな」
 「主以外には持ち上がらないからな」

 そのことで、俺の銃が「崋山」製の特別なものだと判断した。
 どうしてそのことを知っているのか。
 トラが言った。

 「銃に関しては恐ろしいほどのものがあるな」
 「ああ」
 「お前、これからどうする?」
 「女を尋問するよ」
 
 トラが一瞬の間を空けて言った。

 「いや、待て。その連中は意識の方も相当やってるぞ。俺が行ってタマを呼ぶ」
 「あいつか!」
 「タマに探らせた方がいいだろう」
 「あいつ、苦手なんだよなー」

 トラが笑っていた。

 「我慢しろ。じゃあ、すぐに行くからな」
 「分かったよ」

 まあ、どんな状況でもトラに会えるのは嬉しい。
 俺はトラを待った。





 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■





 聖が「ガンスリンガー」の女を捕えたと聞いて、すぐに飛んだ。
 セイフハウスの場所は聞いた。
 俺が行くと、女の前で聖が待っていた。

 「よう!」
 「ごくろうさん!」

 聖が嬉しそうな顔をする。
 女は全裸だった。
 「飛行」で衣服が無くなったことはすぐに分かった。
 着せてやるほど、聖は優しくねぇ。
 無駄なことはしない奴だ。

 「気持ち悪い奴だな」
 「そうだな」

 50ミリほどの短髪。
 浅黒い肌は、黒人の混血か。
 身長は175センチほどで痩せていて手足が長い。
 30代の後半に見えるが、顔は老成している感じもある。
 何よりも雰囲気が違う。
 恐ろしく深い奴だ。
 この状況をまったく恐れてもいなかった。

 「お前は誰だ」

 女が俺に聞く。

 「俺の顔を知らないのか」
 「知らない。有名なのか?」
 「大統領よりもな」
 「なんだ?」

 聖が話す。

 「こいつ、ウンコと小便を漏らしやがってよ」
 「マジか!」
 「自分は高速に慣れてるって言うからさ。マッハで飛んだらもう」
 「ダッセぇー!」
 「な!」

 女が物凄い顔で睨む。
 普通に感情はあるようだ。
 俺は女を観察した。

 「掌が硬いな。相当撃ってるな」
 「ああ。銃も調べたよ。バレルが微妙に歪んでいるようだ」
 「あの長いバレルは、技を施すのに都合がいいんだろう」
 「そうだな」

 女は手足にでかい拘束の金具を嵌められ、椅子に縛られている。
 女の腕に触れた。

 「なるほど、鍛え上げた筋肉だな」
 「パワーもあるが、細かな筋肉がよく発達している」
 「自決の措置は?」
 「ああ、歯に仕込んであった。ちょっと前に抜いたよ」
 「そうか」

 流石は聖だ。
 これほどの組織が、自決用の毒などを用意していないわけがない。
 俺が来る前に、手早く調べてくれたのだろう。
 だが女は余裕があった。
 ここから生還出来るつもりだ。
 
 タマを呼んだ。

 「タマ!」
 「なんだ、主」

 突然俺の横に現われた着物姿のタマを見て、女が初めて驚愕した。

 「お前はなんなんだ!」
 「ゲゲゲの鬼太郎だ」
 「げげげ?」
 
 流石に日本のギャグは通じない。

 「タマ、こいつの記憶を探れ。「ガンドッグ」についてと、銃を使った不思議な技のことだ」
 「分かった」






 タマが話し始めた。
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