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あの日、あの時: 赤木巡査 Ⅵ
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赤木さんは署内でも皆に慕われていた。
赤木さんが退院し、警察署に戻ると、みんなが大歓迎した。
しかし赤木さんは警察官を辞めることを決めており、みんなに惜しまれた。
盛大な送別会が開かれ、俺まで呼んで頂いた。
赤木さんを助けた俺のことも、みなさんが良く言ってくれ、感謝された。
俺の振るった暴力は激しく、「死蝋」の多くが重傷だった。
60人以上だ。
死者は奇跡的にいなかったが、障害を負った人間もいた。
しかし、佐野さんをはじめとする警察官たちの証言で、俺が赤木さんを助けに入ったことと、武装していた連中相手だったこと。
そしてあいつらが赤木さんに行なった凶悪で残酷な状況証拠で、俺は正当防衛であり、むしろ単身で警察官を救った功労者とまでされてしまった。
功労など全くない。
赤木さんを半身不随にしてしまった。
死んでいておかしくなかった。
それは、俺が赤木さんと親しかったからに他ならない。
でも、誰もそんなことは言わなかった。
赤木さん自身が真っ向からそれを否定した。
俺は表彰を辞退し、和久井署長や佐野さんからの慰労も断った。
そんな俺を、全警察官の方々が良く思ってくれた。
俺はそんなことを本当に申し訳なく思っていた。
時は流れ、南の原作として『虎は孤高に』の放映が始まり、大ヒットした。
ある時、ヤマトテレビに俺宛の荷物が届いた。
4分の1サイズの俺のフィギュアだった。
だから50センチ近い。
「ルート20」の特攻隊長「赤虎」の姿だった。
真っ赤な特攻服の裾を靡かせ、背中には「六根清浄」の金糸の刺繍。
顔は俳優のものではなく、あの頃の俺の顔にそっくりだった。
見事な製作だった。
番組宛に全国から様々なものが届いたが、そのフィギュアは別格で次元が違った。
ヤマトテレビの人間が直接、俺に届けに来た。
送り主は「赤木誠一郎」と書いてあった。
俺も大層驚いたことはもちろんだ。
《石神高虎様、いや、親愛なるトラ君。君のドラマを観て、本当に驚いた。君が今も活躍していると知り、本当に嬉しかった。そう思ったら、何も手につかず、ずっとこの像を作っていた。僕の最高傑作。僕の最高の憧れ。これを作らせてくれてありがとう……》
そういう言葉が綴ってあった。
赤木さんの思いが詰まった長文の手紙だった。
俺は赤木さんが今でも健在でおられることが嬉しく、少し調べてフィギュア界で「神」と呼ばれるほどの有名な方になっていることを知った。
流石は赤木さんだ。
やっぱり最高の人だ。
俺の大好きな人だ。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「た、タカさん!」
亜紀ちゃんが大興奮だった。
「そのフィギュア、見せて下さい!」
「あ?」
「あ、じゃねぇだろ!」
「バカヤロウ! なんだてめぇ!」
亜紀ちゃんの頭を引っぱたいた。
まったく、『虎は孤高に』のことになると感情が抑えきれない。
亜紀ちゃんは謝りながら、俺の肩をポカポカしてくる。
「タカさーん! お願いですぅー! ほんとにぃー!」
「バカ! お前にやったろう!」
「へ?」
亜紀ちゃんがポカンとしていた。
「「アクァ・ギィ」の一点物の製作だから大事にしろって言っただろう!」
「ん?」
亜紀ちゃんが自分のこめかみを両拳でグリグリしていた。
「あ」
「おい!」
「もらった」
また頭を引っぱたいた。
「アクァ・ギィ、つまり赤木さんだぁ!」
「ハウゥ!」
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
赤木さんから造形師になると聞いた数日後、また見舞いに行くと、嬉しそうに俺に言った。
「トラ君! 僕、思いついたんだ」
「なんですか?」
「アクァ・ギィ!」
「え?」
「アクアって、青のイメージじゃない!」
「ああ、そうですね」
「アカギ、アクァ・ギィ、ね、いいでしょ?」
「ああ、なるほど!」
本気で俺が好きな色だという青に拘っていたのか。
でも、俺も本当にいいネーミングだと思った。
「なんか、いいですね!」
「そうだろう?」
「「ワハハハハハハハハ!」」
二人で笑った。
赤木さんが本当に嬉しそうだった。
だから俺も嬉しかった。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「赤木さんはよ、大手の造形専門会社に就職して、そこで頭角を現わして行ったんだ」
「そうなんですね!」
「俺もあれを送ってもらってから調べてな。「アクァ名人」とか「ギィ神」って呼ばれるほどの大人気らしいぞ」
「へぇー! そうなんですか!」
「赤木さんが製作に携わったフィギュアは予約ですぐに完売なんだと。スゲェな!」
俺はフィギュアを受け取ってから、赤木さんに連絡した。
礼を言っている間に大泣きしてしまった。
赤木さんは笑って昔のように俺を落ち着かせ、二人で懐かしく話した。
一度直接お会いして食事をした。
電動車いすの生活だったが、赤木さんはお元気そうだった。
昔のあの優しい笑顔もそのままだった。
「独立の話も何度もあったんだけどな。赤木さんは自分を拾ってくれた今の会社に恩を返したいんだってさ。だからいつも断ってる。だからみんなに大事にされてる!」
「最高ですね!」
亜紀ちゃんが興奮していたが、ふいに沈んだ。
亜紀ちゃんが泣きそうな顔で俺を見ていた。
「おい、どうした!」
「だって! そんな大切な物! タカさんの寝室に置いて下さいよ!」
「なんだよ!」
「だってぇ!」
亜紀ちゃんの頭を抱き寄せて髪を撫でた。
「うちでよ」
「タカさーん!」
「一番『虎は孤高に』を大好きなのは亜紀ちゃんだろう」
「!」
「だから亜紀ちゃんに持っててもらいたいんだ」
「た、た、た、た……」
「亜紀ちゃんなら大事にしてくれるだろ?」
「た、タカさぁーーーん!」
亜紀ちゃんが大泣きだった。
他の人間はニコニコしていた。
亜紀ちゃんの『虎は孤高に』好きはみんなが知っている。
「な!」
「大事にしますぅーーー!」
みんなが笑った。
早乙女はやっぱり大泣きだった。
雪野さんが微笑みながら背中を撫でていた。
「トラ、俺にも見せてくれ」
「はい!」
佐野さんも目を潤ませていた。
赤木さんが退院し、警察署に戻ると、みんなが大歓迎した。
しかし赤木さんは警察官を辞めることを決めており、みんなに惜しまれた。
盛大な送別会が開かれ、俺まで呼んで頂いた。
赤木さんを助けた俺のことも、みなさんが良く言ってくれ、感謝された。
俺の振るった暴力は激しく、「死蝋」の多くが重傷だった。
60人以上だ。
死者は奇跡的にいなかったが、障害を負った人間もいた。
しかし、佐野さんをはじめとする警察官たちの証言で、俺が赤木さんを助けに入ったことと、武装していた連中相手だったこと。
そしてあいつらが赤木さんに行なった凶悪で残酷な状況証拠で、俺は正当防衛であり、むしろ単身で警察官を救った功労者とまでされてしまった。
功労など全くない。
赤木さんを半身不随にしてしまった。
死んでいておかしくなかった。
それは、俺が赤木さんと親しかったからに他ならない。
でも、誰もそんなことは言わなかった。
赤木さん自身が真っ向からそれを否定した。
俺は表彰を辞退し、和久井署長や佐野さんからの慰労も断った。
そんな俺を、全警察官の方々が良く思ってくれた。
俺はそんなことを本当に申し訳なく思っていた。
時は流れ、南の原作として『虎は孤高に』の放映が始まり、大ヒットした。
ある時、ヤマトテレビに俺宛の荷物が届いた。
4分の1サイズの俺のフィギュアだった。
だから50センチ近い。
「ルート20」の特攻隊長「赤虎」の姿だった。
真っ赤な特攻服の裾を靡かせ、背中には「六根清浄」の金糸の刺繍。
顔は俳優のものではなく、あの頃の俺の顔にそっくりだった。
見事な製作だった。
番組宛に全国から様々なものが届いたが、そのフィギュアは別格で次元が違った。
ヤマトテレビの人間が直接、俺に届けに来た。
送り主は「赤木誠一郎」と書いてあった。
俺も大層驚いたことはもちろんだ。
《石神高虎様、いや、親愛なるトラ君。君のドラマを観て、本当に驚いた。君が今も活躍していると知り、本当に嬉しかった。そう思ったら、何も手につかず、ずっとこの像を作っていた。僕の最高傑作。僕の最高の憧れ。これを作らせてくれてありがとう……》
そういう言葉が綴ってあった。
赤木さんの思いが詰まった長文の手紙だった。
俺は赤木さんが今でも健在でおられることが嬉しく、少し調べてフィギュア界で「神」と呼ばれるほどの有名な方になっていることを知った。
流石は赤木さんだ。
やっぱり最高の人だ。
俺の大好きな人だ。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「た、タカさん!」
亜紀ちゃんが大興奮だった。
「そのフィギュア、見せて下さい!」
「あ?」
「あ、じゃねぇだろ!」
「バカヤロウ! なんだてめぇ!」
亜紀ちゃんの頭を引っぱたいた。
まったく、『虎は孤高に』のことになると感情が抑えきれない。
亜紀ちゃんは謝りながら、俺の肩をポカポカしてくる。
「タカさーん! お願いですぅー! ほんとにぃー!」
「バカ! お前にやったろう!」
「へ?」
亜紀ちゃんがポカンとしていた。
「「アクァ・ギィ」の一点物の製作だから大事にしろって言っただろう!」
「ん?」
亜紀ちゃんが自分のこめかみを両拳でグリグリしていた。
「あ」
「おい!」
「もらった」
また頭を引っぱたいた。
「アクァ・ギィ、つまり赤木さんだぁ!」
「ハウゥ!」
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
赤木さんから造形師になると聞いた数日後、また見舞いに行くと、嬉しそうに俺に言った。
「トラ君! 僕、思いついたんだ」
「なんですか?」
「アクァ・ギィ!」
「え?」
「アクアって、青のイメージじゃない!」
「ああ、そうですね」
「アカギ、アクァ・ギィ、ね、いいでしょ?」
「ああ、なるほど!」
本気で俺が好きな色だという青に拘っていたのか。
でも、俺も本当にいいネーミングだと思った。
「なんか、いいですね!」
「そうだろう?」
「「ワハハハハハハハハ!」」
二人で笑った。
赤木さんが本当に嬉しそうだった。
だから俺も嬉しかった。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「赤木さんはよ、大手の造形専門会社に就職して、そこで頭角を現わして行ったんだ」
「そうなんですね!」
「俺もあれを送ってもらってから調べてな。「アクァ名人」とか「ギィ神」って呼ばれるほどの大人気らしいぞ」
「へぇー! そうなんですか!」
「赤木さんが製作に携わったフィギュアは予約ですぐに完売なんだと。スゲェな!」
俺はフィギュアを受け取ってから、赤木さんに連絡した。
礼を言っている間に大泣きしてしまった。
赤木さんは笑って昔のように俺を落ち着かせ、二人で懐かしく話した。
一度直接お会いして食事をした。
電動車いすの生活だったが、赤木さんはお元気そうだった。
昔のあの優しい笑顔もそのままだった。
「独立の話も何度もあったんだけどな。赤木さんは自分を拾ってくれた今の会社に恩を返したいんだってさ。だからいつも断ってる。だからみんなに大事にされてる!」
「最高ですね!」
亜紀ちゃんが興奮していたが、ふいに沈んだ。
亜紀ちゃんが泣きそうな顔で俺を見ていた。
「おい、どうした!」
「だって! そんな大切な物! タカさんの寝室に置いて下さいよ!」
「なんだよ!」
「だってぇ!」
亜紀ちゃんの頭を抱き寄せて髪を撫でた。
「うちでよ」
「タカさーん!」
「一番『虎は孤高に』を大好きなのは亜紀ちゃんだろう」
「!」
「だから亜紀ちゃんに持っててもらいたいんだ」
「た、た、た、た……」
「亜紀ちゃんなら大事にしてくれるだろ?」
「た、タカさぁーーーん!」
亜紀ちゃんが大泣きだった。
他の人間はニコニコしていた。
亜紀ちゃんの『虎は孤高に』好きはみんなが知っている。
「な!」
「大事にしますぅーーー!」
みんなが笑った。
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