富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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蓮花研究所 防衛戦

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 「タイガー! ロシアのクラスノヤルスクの《ハイヴ》で熱源反応だ!」
 「早速過ぎるな」
 
 アラスカのターナー大将からの連絡だった。
 柳が蓮花研究所の外壁を破壊してから1週間だ。
 ロシア上空の監視衛星からの情報であり、俺たちの幾つもの監視衛星『御幸』が世界中を覆っている。
 そこからのデータはアラスカに送られ、常時解析されているのだ。
 
 「来るとは思っていたけどよ、こりゃ随分と早かったよなぁ」
 「ああ、だがやはりシオリとシオウの動向はあちらにも分かっているようだな」
 「規模はどうだ?」
 「地上型ジェヴォーダン40、バイオノイド4000で、そのうちの100体くらいは《デモノイド》ではないかと推測されている」
 「霊素が違うんだな?」
 「そうだ。それにジェヴォーダンはお前が言っていたように、別途飛行型がいるようだ。そちらは4体いる」
 「やっぱりか。ついにジェヴォーダンで飛ぶ奴が来るな」

 俺の足元で、ロボが腿に身体を伸ばして来た。
 なんだ?

 「にゃ!(それ知ってる! 何度もシュパってしたよ!)」
 「ロボ、ちょっと今電話中なんだ。大人しくしててくれ」
 「にゃー(なんでよー!)」

 柳に言ってロボを連れて行ってもらう。
 あ、柳がぶっ飛ばされた。

 「悪いな。妖魔の方は分かるか?」
 「ああ、大体8000万くらいらしい。それに、やはりでかい奴がいるぞ」
 「当然だな。あそこはレベル5の《ハイヴ》だ。穴底の奴も相当だろう」
 「輸送はしないな」
 「そうだ。また「業」の空間転移で送られるだろうよ」

 前に「業」は空間転移で蓮花研究所に来た。
 当時は短距離しか転移出来なかったようだが、そのうちに遠距離に部隊や神を送り込めるようになったようだ。
 俺たちは超々音速機「タイガーファング」などを開発したが、敵も同様に兵站を自在に送り込めるようになった。
 但し、相当なエネルギーを使うようで、制限はあると考えられていた。
 それに、結界を超えることは出来ない。
 麗星とタヌ吉の結界の手前に出現するだろう。
 距離にして30キロだ。

 「大丈夫か?」
 「ワハハハハハハ! 石神家本家がいるんだぞ!」
 「そうか。頼もしいな」
 「任せておけ」

 ターナー大将が別な話をした。

 「ところで、例の謎の《ハイヴ》消滅なんだが」
 「ああ、どうした?」
 「観測の解析結果が出た。やはり既にレベル7になっていたものだ」
 「なんだと? レベル7って、これまでの最高度だろう?」
 「そうなんだ。それが突然だ。観測衛星『ミユキ』も、霊素観測レーダーも何も捉えていない。突然未知の高エネルギーが生じて、直後に全ての反応がなくなった。光学観測では大穴が空いていたよ」
 「おい、そりゃどうなってんだよ」

 ロボがまたやって来て、俺の肩に飛び乗って鳴きまくる。

 「にゃーにゃー(それ、私がやったんだよ!)」
 「おい、だから電話中なんだ。降りてくれ」

 柳がまた来て、俺からロボを引き剥がそうとする。
 怒ったロボが「ブーメラン・ヘルスイング・キック」を柳に見舞う。
 大丈夫か?

 「まあ、《ハイヴ》には不安定な要素もあるのかもな。今は蓮花研究所の防衛に集中するよ」
 「分かった。何かあればいつでもこちらから応援を送る」
 「おう、じゃあまたな」

 ターナー大将との通話を切った。
 蓮花研究所に連絡し、敵が一両日で来ることを知らせた。
 虎白さんにも連絡し、襲撃が近いと言った。

 「恐らく、明日、明後日のうちです」
 「そうか! やるぜぇ!」
 「アハハハハ、お願いしますね」
 「おう、任せろ!」

 俺は虎白さんに敵の規模を知らせた。

 「どうやら《地獄の悪魔》も来るようです」
 「楽しみだぜぇ!」

 虎白さんは喜んでいた。
 本当に戦闘が好きな人たちだ。
 今回は噛み応えがあるだろう。
 数で押して来る敵に対し、俺たちは力で押し返す。
 「業」との戦いの縮図となるだろう。

 俺も獰猛に笑った。





 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■





 蓮花研究所の外壁が柳によって破壊され(二度も)、俺は虎白さんにしばらくの防衛を頼んだ。
 子どもたちが腹を空かせて先に食堂へ行きたいと言ったが、俺が止めた。
 今日はカレーだ。
 俺の分が残るわけがねぇ。
 虎白さんに電話した。

 「虎白さん、お願いがあるんですけど」
 「おう、なんだ?」
 
 俺は状況を説明し、数か月の間、剣士たちを送って欲しいと頼んだ。
 
 「じゃあ、明日の朝に行くぜ! 剣士は全員連れてく」
 「ほんとですか!」

 流石に虎白さんの決定は早い。

 「任せろ。そこはお前の大事な場所なんだろ?」
 「ええ、それに妻の栞と子どもの士王がここにいるようになったんです」
 「おお、そうか! 士王に会えるんだな!」
 「はい!」
 「じゃあ、俺もちょっと鍛えてやるかぁ」
 「アハハハ、お願いしますね。ああ、斬も「花岡」を教えて行くそうです」
 「そっか! 斬と会うのも楽しみだぜぇ!」
 「はい、じゃあ宜しくお願いします」
 「おう! じゃあ明日の8時にあのでかい輸送機を寄越してくれ」
 「分かりました」

 虎白さんはまったく迷うことなく引き受けてくれた。

 「高虎、やっとお前の役に立てるぜ」
 「何言ってんですか。俺が世話になってるのに」
 「今度はしくじらねぇ」
 「はい」
 
 電話を切った。

 「蓮花、石神家が剣士を全員連れて来てくれるってよ」
 「さようでございますか! 有難いことです!」
 「ああ。あ!」
 「どうされました?」
 「そういやよ、今、剣士って何人になってんだろ?」
 「はい?」
 「こないだ行った時は96人って言ってたなー」
 「まあ、随分と多くなりましたね」

 蓮花にも石神家の剣士の話はしている。

 「まだ2週間くらいだ。変わってないだろう」
 「さようでございますか」
 「俺、虎白さんとの会話ってどうにもおっかなくてよ。つい聞きそびれちゃうんだよな」
 「オホホホホホ」
 
 説明を聞いてないことも多いのだが、若干は俺の落ち度もあるのかもしれない。
 いや、そんなことはねぇか。

 「まあ、100人くらいと思っておけば大丈夫だろう」
 「分かりました」

 みんなで食堂へ移動した。
 怒涛の勢いで子どもたちがカレーを喰い漁る。
 やっぱり先に行かせないで良かったー。
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