2,494 / 3,202
再び「カタ研」サバイバルキャンプ Ⅳ
しおりを挟む
「ウラ! 何であいつらがいるんだ!」
「そんなこと、私にも分からん!」
「揚陸部隊は全滅だぞ!」
「すぐに硬い連中を送る! まだ手を出すな!」
「早くしろ!」
ミハイルが慌てていた。
日本の「悪魔島」で、今日途轍もなく強大な悪魔が出現することが分かっていた。
「業」様がその悪魔を吸収するために、我々が動いたのだ。
しかし、思わぬ石神亜紀たちの伏兵により、最初の回収部隊が全滅してしまった。
何故、あいつらがあの島にいるのだ!
あの悪魔は短時間しか地球上に存在出来ない。
私は手元にいる強い妖魔たちを前線に派遣した。
「ウェアウルフ・タイプを前に出す! どこかの《ハイヴ》を使って妖魔を送り込む!」
「どのくらいの数だ!」
「数億はいる。石神自身はいないようだから、数で押せるはずだ!」
今、あの島は悪魔の結界で誰も入れないはずだ。
ゲートを開いている我々以外には。
《ハイヴ》を使うのは惜しいが、そうも言っていられない。
あの悪魔は絶対に「業」様へお届けしなければ。
「妖魔を送って、回収部隊に影響はないか?」
「回収部隊は前に出すな! 石神家を滅ぼしてからだ!」
石神はあの島のことまで知っていたのか。
我々でさえ、「タイニータイド」の予言が無ければ決して辿り着くことは無かった島なのに。
まさか数百年に一度しか降臨しない悪魔がいるとは。
とにかく今はあの悪魔を捕獲しなければ。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「亜紀ちゃん、ライカンスロープが出て来る! スピードタイプだよ!」
「分かった!」
隣でハーが言う。
「あ!」
「どうしたの!」
「あの光の奴、不味いよ!」
「え、何!」
霊的感応力の高いルーとハーが慌てている。
「え、え、えぇー! あいつ、とんでもないよ!」
「どうしたの!」
「私たちじゃ無理! タカさんが必要だよ!」
「え、そんなに強いの!」
「桁が違う!」
その時、上空で轟音が響いた。
何かが無理矢理ここに来ようとしている。
ギャリギャリギャリ ゴウンゴウンゴウン
紫色の電光が走り、釣鐘のようなものが下に降りて来る。
「「グランマザー!」」
上空から降りて来たのは「大銀河連合」のグランマザーだった。
「皆様、ご無事ですかぁ!」
「グランマザー、どうしてここに!」
「苦労いたしました! 非常に強力な結界が張られております!」
「だからどうして!」
「500年に一度なのでございます」
「何が?」
「あの山頂の光です。この地球の言葉にすれば《宇宙の悪魔》でございます」
「《宇宙の悪魔》?」
「はい! 普段は広大な宇宙空間で拡散していますので、それほどの影響は無いのですが、500年に一度この場所で物質化いたします。その折のエネルギーは尋常なものではございません」
「そうか!」
私にはよく分からないが、ハーは何か理解しているらしい。
「グランマザー、それは分かるよ! あれはとんでもないよ!」
「ハー様、落ち着き下さい。この地球上で物質化するのは30分ほどです。その時間であれば、《宇宙の悪魔》が動き出すことはございません」
「そうなの!」
「はい。もしもアレの意志で動き出すにはおよそ1000年は必要になります。物質化はそれほどに難しいのでございます」
「分かった、じゃああと30分凌ぎ切ればいいんだね」
「そうなのですが、問題はあの「業」の軍勢でございます。あれは恐らく《宇宙の悪魔》を回収しに参ったのでしょう」
「なんですってぇ!」
「「業」が《宇宙の悪魔》をその身に取り込めば、その力は計り知れないほどに拡大するでしょう。何としてもここで食い止めなければなりません」
「そんな!」
グランマザーが微笑んだ。
「ご安心ください。そのためにわたくしが参りました!」
「ありがとう!」
「先ほど、結界の一部に穴を空けましたので。あそこから支援部隊が参ります!」
「ほんとに!」
みんなでグランマザーが来た上空を見上げた。
「あ」
「どうしたの?」
「結界が今、塞がりました」
「……」
「すいません」
『……』
と、とにかく、頑張るしかないぞー!
「業」の軍勢は、すぐに態勢を変更したようだった。
最初はロシア軍の人間に作業させるつもりが、私たちの存在に気付いて、バイオノイドに作業させるつもりだ。
敵ながら、鮮やかな方向転換だった。
しかしながら、専門的な作業も必要なようで、一部に軍人が混じっている。
何か大きな機械を島に持ち込もうとしているのが分かった。
多分、アレが《宇宙の悪魔》を取り込む装置なのだろう。
「亜紀ちゃん! 《デモノイド》がいるよ!」
「あたしにまかせろー!」
「妖魔反応! 数は2億!」
「来るかぁー!」
「柳ちゃん! 「オロチデストロイ」の出番だね!」
「あたしたちも「神雷」を出すよ!」
「みんながんばろー!」
「パレボレ! あの機械を中心に破壊して!」
「はい!」
「坂上さんたちは「カサンドラ」で随時攻撃を!」
「分かった!」
「敵の攻撃は私たちで絶対に防ぐからね」
「お願いします!」
「真夜さん、真昼はみんなを守って! 妖魔の攻撃は「轟雷」で大体防げるから!」
「分かりました!」
ルーが次々と指示を出し、全員が全力で動く。
こんな本格的な戦いは私たち以外は誰も経験していないが、みんな必死に頑張っている。
やるぞー!
今回助かっているのは、何と言ってもゲートが狭いことだ。
半径100メートルほどの蒲鉾型のものなので、出て来る数も限られて攻撃を集中出来る。
それでも、《デモノイド》などは攻撃を回避しながら飛び出して来る。
それを私とハーが駆逐していく。
大量の妖魔たちは柳さんとルーの攻撃で何とか凌いでいる。
マザーは謎エネルギーで、バリアみたいなものを張ってくれている。
光の柱が生じてから15分が経過した。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「ウラ! 全然ダメではないかぁ!」
「うるさい! 今やっている!」
「あと15分だぞ!」
「分かってる!」
ミハイルが焦り過ぎだ。
私が止めても、作業員を送り込もうとし、その度に全員が死んでいく。
私は神の一柱を呼び出そうとしていた。
また別な《ハイヴ》の一つを犠牲にして、召喚するつもりだった。
「《ハイヴ108》上空にUFOの大群!」
「なんだと!」
「いきなり出現しました! レーダーが埋め尽くされています! どれほどの数がいるのか!」
《ハイヴ》の管制室から連絡が来た。
UFOとはどうしたことだ!
そして突然、連絡が途絶えた。
「おい! 応答しろ!」
無駄だった。
何が起きたのかも分からない。
もう時間が無い。
私はここから打てる手を考えた。
「業」様のお怒りの顔が思い浮かび、恐ろしかった。
「そんなこと、私にも分からん!」
「揚陸部隊は全滅だぞ!」
「すぐに硬い連中を送る! まだ手を出すな!」
「早くしろ!」
ミハイルが慌てていた。
日本の「悪魔島」で、今日途轍もなく強大な悪魔が出現することが分かっていた。
「業」様がその悪魔を吸収するために、我々が動いたのだ。
しかし、思わぬ石神亜紀たちの伏兵により、最初の回収部隊が全滅してしまった。
何故、あいつらがあの島にいるのだ!
あの悪魔は短時間しか地球上に存在出来ない。
私は手元にいる強い妖魔たちを前線に派遣した。
「ウェアウルフ・タイプを前に出す! どこかの《ハイヴ》を使って妖魔を送り込む!」
「どのくらいの数だ!」
「数億はいる。石神自身はいないようだから、数で押せるはずだ!」
今、あの島は悪魔の結界で誰も入れないはずだ。
ゲートを開いている我々以外には。
《ハイヴ》を使うのは惜しいが、そうも言っていられない。
あの悪魔は絶対に「業」様へお届けしなければ。
「妖魔を送って、回収部隊に影響はないか?」
「回収部隊は前に出すな! 石神家を滅ぼしてからだ!」
石神はあの島のことまで知っていたのか。
我々でさえ、「タイニータイド」の予言が無ければ決して辿り着くことは無かった島なのに。
まさか数百年に一度しか降臨しない悪魔がいるとは。
とにかく今はあの悪魔を捕獲しなければ。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「亜紀ちゃん、ライカンスロープが出て来る! スピードタイプだよ!」
「分かった!」
隣でハーが言う。
「あ!」
「どうしたの!」
「あの光の奴、不味いよ!」
「え、何!」
霊的感応力の高いルーとハーが慌てている。
「え、え、えぇー! あいつ、とんでもないよ!」
「どうしたの!」
「私たちじゃ無理! タカさんが必要だよ!」
「え、そんなに強いの!」
「桁が違う!」
その時、上空で轟音が響いた。
何かが無理矢理ここに来ようとしている。
ギャリギャリギャリ ゴウンゴウンゴウン
紫色の電光が走り、釣鐘のようなものが下に降りて来る。
「「グランマザー!」」
上空から降りて来たのは「大銀河連合」のグランマザーだった。
「皆様、ご無事ですかぁ!」
「グランマザー、どうしてここに!」
「苦労いたしました! 非常に強力な結界が張られております!」
「だからどうして!」
「500年に一度なのでございます」
「何が?」
「あの山頂の光です。この地球の言葉にすれば《宇宙の悪魔》でございます」
「《宇宙の悪魔》?」
「はい! 普段は広大な宇宙空間で拡散していますので、それほどの影響は無いのですが、500年に一度この場所で物質化いたします。その折のエネルギーは尋常なものではございません」
「そうか!」
私にはよく分からないが、ハーは何か理解しているらしい。
「グランマザー、それは分かるよ! あれはとんでもないよ!」
「ハー様、落ち着き下さい。この地球上で物質化するのは30分ほどです。その時間であれば、《宇宙の悪魔》が動き出すことはございません」
「そうなの!」
「はい。もしもアレの意志で動き出すにはおよそ1000年は必要になります。物質化はそれほどに難しいのでございます」
「分かった、じゃああと30分凌ぎ切ればいいんだね」
「そうなのですが、問題はあの「業」の軍勢でございます。あれは恐らく《宇宙の悪魔》を回収しに参ったのでしょう」
「なんですってぇ!」
「「業」が《宇宙の悪魔》をその身に取り込めば、その力は計り知れないほどに拡大するでしょう。何としてもここで食い止めなければなりません」
「そんな!」
グランマザーが微笑んだ。
「ご安心ください。そのためにわたくしが参りました!」
「ありがとう!」
「先ほど、結界の一部に穴を空けましたので。あそこから支援部隊が参ります!」
「ほんとに!」
みんなでグランマザーが来た上空を見上げた。
「あ」
「どうしたの?」
「結界が今、塞がりました」
「……」
「すいません」
『……』
と、とにかく、頑張るしかないぞー!
「業」の軍勢は、すぐに態勢を変更したようだった。
最初はロシア軍の人間に作業させるつもりが、私たちの存在に気付いて、バイオノイドに作業させるつもりだ。
敵ながら、鮮やかな方向転換だった。
しかしながら、専門的な作業も必要なようで、一部に軍人が混じっている。
何か大きな機械を島に持ち込もうとしているのが分かった。
多分、アレが《宇宙の悪魔》を取り込む装置なのだろう。
「亜紀ちゃん! 《デモノイド》がいるよ!」
「あたしにまかせろー!」
「妖魔反応! 数は2億!」
「来るかぁー!」
「柳ちゃん! 「オロチデストロイ」の出番だね!」
「あたしたちも「神雷」を出すよ!」
「みんながんばろー!」
「パレボレ! あの機械を中心に破壊して!」
「はい!」
「坂上さんたちは「カサンドラ」で随時攻撃を!」
「分かった!」
「敵の攻撃は私たちで絶対に防ぐからね」
「お願いします!」
「真夜さん、真昼はみんなを守って! 妖魔の攻撃は「轟雷」で大体防げるから!」
「分かりました!」
ルーが次々と指示を出し、全員が全力で動く。
こんな本格的な戦いは私たち以外は誰も経験していないが、みんな必死に頑張っている。
やるぞー!
今回助かっているのは、何と言ってもゲートが狭いことだ。
半径100メートルほどの蒲鉾型のものなので、出て来る数も限られて攻撃を集中出来る。
それでも、《デモノイド》などは攻撃を回避しながら飛び出して来る。
それを私とハーが駆逐していく。
大量の妖魔たちは柳さんとルーの攻撃で何とか凌いでいる。
マザーは謎エネルギーで、バリアみたいなものを張ってくれている。
光の柱が生じてから15分が経過した。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「ウラ! 全然ダメではないかぁ!」
「うるさい! 今やっている!」
「あと15分だぞ!」
「分かってる!」
ミハイルが焦り過ぎだ。
私が止めても、作業員を送り込もうとし、その度に全員が死んでいく。
私は神の一柱を呼び出そうとしていた。
また別な《ハイヴ》の一つを犠牲にして、召喚するつもりだった。
「《ハイヴ108》上空にUFOの大群!」
「なんだと!」
「いきなり出現しました! レーダーが埋め尽くされています! どれほどの数がいるのか!」
《ハイヴ》の管制室から連絡が来た。
UFOとはどうしたことだ!
そして突然、連絡が途絶えた。
「おい! 応答しろ!」
無駄だった。
何が起きたのかも分からない。
もう時間が無い。
私はここから打てる手を考えた。
「業」様のお怒りの顔が思い浮かび、恐ろしかった。
1
あなたにおすすめの小説
烏の王と宵の花嫁
水川サキ
キャラ文芸
吸血鬼の末裔として生まれた華族の娘、月夜は家族から虐げられ孤独に生きていた。
唯一の慰めは、年に一度届く〈からす〉からの手紙。
その送り主は太陽の化身と称される上級華族、縁樹だった。
ある日、姉の縁談相手を誤って傷つけた月夜は、父に遊郭へ売られそうになり屋敷を脱出するが、陽の下で倒れてしまう。
死を覚悟した瞬間〈からす〉の正体である縁樹が現れ、互いの思惑から契約結婚を結ぶことになる。
※初出2024年7月
芙蓉は後宮で花開く
速見 沙弥
キャラ文芸
下級貴族の親をもつ5人姉弟の長女 蓮花《リェンファ》。
借金返済で苦しむ家計を助けるために後宮へと働きに出る。忙しくも穏やかな暮らしの中、出会ったのは翡翠の色の目をした青年。さらに思いもよらぬ思惑に巻き込まれてゆくーーー
カクヨムでも連載しております。
【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。
文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。
父王に一番愛される姫。
ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。
優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。
しかし、彼は居なくなった。
聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。
そして、二年後。
レティシアナは、大国の王の妻となっていた。
※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。
小説家になろうにも投稿しています。
エールありがとうございます!
後宮なりきり夫婦録
石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」
「はあ……?」
雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。
あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。
空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。
かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。
影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。
サイトより転載になります。
【完結】狡い人
ジュレヌク
恋愛
双子のライラは、言う。
レイラは、狡い。
レイラの功績を盗み、賞を受賞し、母の愛も全て自分のものにしたくせに、事あるごとに、レイラを責める。
双子のライラに狡いと責められ、レイラは、黙る。
口に出して言いたいことは山ほどあるのに、おし黙る。
そこには、人それぞれの『狡さ』があった。
そんな二人の関係が、ある一つの出来事で大きく変わっていく。
恋を知り、大きく羽ばたくレイラと、地に落ちていくライラ。
2人の違いは、一体なんだったのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる