富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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皇紀&風花 結婚式 外伝: 竹流2

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 翌朝。
 7時に朝食を食べて、8時にみんなで出掛けた。
 一部の「紅六花」の幹部の人たちと一緒に、僕も結婚式に参列させてもらった。
 この日のために、みなさんが僕にダークスーツを作って下さった。
 結婚式など、もちろん初めてだ。

 「あたしらは何度も出ているけどさ。仲間で結婚した奴も多いからな」

 よしこさんがそう言っていたけど、実際に結婚式場に入ってみんな驚いていた。

 「なんだこりゃ……」

 広大な式場で、正面には巨大なステンドグラスがある。
 そこから色とりどりの光が入っていて、圧倒される美しさがあった。
 大勢の人たちが入っている。
 案内のデュールゲリエが来て、席に連れて行ってくれる。
 僕はみなさんとは別に案内された。
 亜紀さんがニコニコして手招いてくれた。

 「竹流君! こっち!」

 驚いたことに、石神家のみなさんと並んだ席だった。
 神様もいた。
 
 「よう、そこへ座れよ」
 「神様! でもよしこさんたちは」
 「お前は俺の息子だ。そこへ座れ!」

 言われて涙が出そうになった。
 神様はいつもそう言ってくれてるけど、本当に亜紀さんたちと同じ席に座らされたことが嬉しかった。

 「竹流君、相当やってるらしいね!」
 「頑張ってるってね!」

 天使の衣装のルーさんとハーさんが声を掛けてくれる。
 嬉しくてしばらく楽しく話した。
 やがて式典が始まり、僕はどれも初めてのことなので、感動して見ていた。
 気になっていることを、合間に亜紀さんたちに聞いた。

 「あの、神様の鎧って」
 「あー、びっくりだよね! ちょっと前にレジーナ様がタカさんのために持って来たの」
 「そうなんですか!」
 「タカさん、気に入っちゃってね。式はあれで通すらしいよ?」
 「へぇー!」

 銀色の素敵な甲冑だ。
 レジーナ様というのは、前にちょっと聞いているけど、ドイツの偉い人だ。
 式典でも、僕たちと同じ、一番前に座っている。
 恐ろしいくらいに綺麗な人たちだった。
 衣装もとんでもなく豪華だ。
 釣り合うのは、神様くらいか。
 何よりも、強烈な波動を感じる。
 戦う力も相当だと感じた。
 特にレジーナ様は、この中では神様、聖さんと並ぶ実力か。
 他にも相当な人たちがいるけど、この三人が傑出しているのが分かる。

 式典は何時間も続き、横でルーさんとハーさんが寝ていた。
 亜紀さんはずっと泣いていた。
 僕は後からローマ教皇が取仕切っていたと聞いて驚いた。






 披露宴は隣接した巨大なドーム競技場だった。
 こんなに大きな競技場は見たことがない。
 上には開閉式のドームがあって、雨天でも競技が出来るらしい。
 今回は「紅六花」の人たちと一緒だった。
 僕が気軽に楽しめるようにという、神様の配慮だろう。
 あちこちに料理のお店や出店が並び、好きに取って来れるようになっている。
 最初は音楽ショーで、有名な人たちの歌唱や演奏だ。
 そして神様のライブもあり、一部僕も一緒にステージに立った。
 神様とバッハの『シャコンヌ』を演奏した。
 僕がクラシックギターで演奏し、神様がエレキギターでアドリブで鳴らした。
 緊張したけど、大感動だった。
 大きな拍手ももらったけど、それじゃない。

 「俺の唯一の弟子! 俺の愛する息子! 竹流だぁ!」

 演奏を終えて神様がそう僕を紹介してくれた。
 そのことが一番嬉しかった。

 ステージを降りて、「紅六花」のテーブルに戻ると、みんなが褒めたたえてくれた。
 キッチさんは抱き着いて僕に何度もキスをし、よしこさんに怒られていた。
 みんなが大笑いした。

 ショーが続き、2日目になると今度は仕合が始まった。
 様々な組み合わせだったけど、どれも凄い戦いだった。
 特に花岡家の斬さんと石神家の虎白さんの戦いは凄まじかった。
 そしてそれ以上に感動したのは、神様と聖さんとの戦いだった。
 大技は出なかった。
 でも二人の美しい攻防は忘れられない光景になった。
 他の人たちにも分かったと思う。
 「戦う」という点に関して、これほど美しく素晴らしいものは無い。
 僕たちはこういう人たちの下で戦うのだ。
 そのことに、全員が誇りを持てた。






 披露宴(?)は三日三晩続き、全員が好きな時に席を外して休んだ。
 僕は最後の方で神様に呼ばれた。

 「おう、どうだった?」
 「はい! どれも素敵なショーでした! 特に神様の演奏と、神様と聖さんの仕合は忘れられません」
 「そうか、まあ、俺も流石に疲れたよ」
 「アハハハハハ」

 神様は披露宴の最中もあちこちに行って話し込んでいた。
 今ここにいるのは、「虎」の軍にとって重要な仲間や関係者たちだ。

 「ところでよ、竹流は高校に行かないって言ってるらしいな」
 「はい!」
 「駄目だ、お前は進学しろ!」

 神様がコワイ顔で言った。
 
 「いいえ、僕はもう「虎」の軍で戦いたいです」
 「俺が高校に行けと言っているんだ。行け!」
 
 僕は神様の前で姿勢を正し、頭を下げた。

 「すいません。僕を「虎」の軍に入れてください」
 「俺がこれほど言ってもか」
 「はい!」

 神様は不満げな顔をされたけど、すぐに笑顔になった。

 「しょうがねぇな。一応聞くけど、まさか学校の学費とかなんて心配してねぇよな?」
 「はい。奨学金でも行けますし」
 「まあ、お前の場合成績優秀だからよ。無償で入れてくれる学校も幾らでもあるけどな。でも、そういうんじゃないんだな?」
 「はい、僕は「虎」の軍に入りたいだけです!」
 「そうか、じゃあしょうがねぇ。お前は戦うことでも超優秀だからな」
 「はい!」
 「もう一つ、ギタリストになる気は無いのか?」
 「はい!」
 「俺の弟子なのに?」
 「はい、神様もギタリストではありませんから!」
 「ワハハハハハハハハ!」

 神様が大笑いした。

 「まあ、今回結婚した皇紀も中学で十分だと言った。竹流も俺の息子だ。これはしょうがねぇな。前例を作った皇紀が悪い」
 「アハハハハハ」
 「よしこたちはお前に高校に行って欲しいんだよ」
 「はい、分かります」
 「お前には普通の暮らしをして欲しいんだとさ」
 「はい、有難いことです」
 
 神様が微笑んで見ていた。

 「お前は俺の息子だからな」
 「はい!」
 「じゃあ、やっぱその道だよな」
 「はい、そうです!」

 神様が僕を抱き寄せてくれた。

 「お前が六花の、「紅六花」の街を守ってくれた」
 「いいえ、みなさんが頑張ったからです」

 頭を優しく撫でられた。

 「しっかりやれ。頼むぞ」
 「はい!」
 「お前には期待している」
 「は、はい!」






 僕はこうして「虎」の軍に入ることになった。
 この時、神様が僕に二つ名を下さった。

 《サイレント・タイガー(沈黙の虎)》

 素敵な名だ。
 「タイガー」を冠するのは、今まで一人の人間だけだそうだ。
 《タイガー・レディ》。
 「紅六花」の総長さんと同じトラネームの《サイレント・タイガー》だ。
 僕はこの名に恥じない生き方をしよう。

 そう誓った。

 そして僕は、あの日の襲撃のことを思い出していた。
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