富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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天丸と天豪 Ⅴ

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 蓑原たちの鍛錬は、天丸たちにとっても有用なものになったようだ。
 剣での戦いに加え、道間家の秘術での鍛錬もある。
 天丸と天豪も多少手ほどきを受けて、一緒に参加した。
 天豪と蓑原が組み手をし、体格で圧倒する天豪が呆気なく倒された。
 天丸も他の人間と組み手をしたようだが、勝てなかったようだ。

 「あの人たちがT1に出れば、すぐに優勝だろうな」
 「ワハハハハハハハハ!」
 「俺たちは頂点だと思っていたが、とんでもねぇな」
 「まあ、表には表の様式があるんだ。お前たちは間違いなく頂点だよ」
 「裏はもっと深いってか」
 「様式が違うだけだ。目的もな。俺たちは相手を殺すことを前提にしている。だから、そういう技があるだけだ。殺さない表の人間とは違うだけだよ」
 「なるほどな」
 「それに、裏の技が表に出れば、みんなが扱うようになる。そうなれば、表だった人間も負けるわけはない」
 「そういうことだな。俺たちはこれからどんどん学んでいくぜ」
 「ああ」



 

 夕飯はすき焼きがメインで、他に京懐石の料理だった。
 いい気温だったので、庭で食べることにした。
 大量の肉が用意されており、天丸たちが恐縮した。
 高級な肉なのは、いいものを喰い慣れている天丸たちにも分かった。
 他にも鮑の煮物や伊勢海老などの高級食材も多い。
 それも何人前も揃えられているのだ。
 まあ、俺の好物が多いのだが。
 もちろん、手を尽くした器が幾つもある。
 それらも間違いなく美味い。

 「すいません、俺たちが大食いなもんで」
 「オホホホホ! そんな、ご遠慮なさらず」
 「でも、随分と普通の量じゃありませんよね?」
 「そんなこと! 旦那様のお子さんたちが来ると大変ですけどね」
 「あいつら、一人10キロずつ喰うからなぁ」
 「オホホホホホ!」
 
 「「!」」

 天丸と天豪が驚いている。
 流石に、こいつらもそこまでは食べない。
 人間の胃袋の限界は決まっている。

 「あのさ、ちょっと前に、近所の焼き肉屋で亜紀ちゃんが70キロ喰ったってさ。柳も40キロだったか」
 「そんなにですか!」
 「「!」」

 天丸たちも驚いている。
 実際、人間の体重だ。

 「ああ。ほら、真夜が《リア・ファル》を掘り出した時だよ」
 「ああ、あの時!」
 「流石に二人とも物凄い下痢になってなぁ」
 「あなたさま、おやめくださいませ」
 「あ、悪ぃ悪ぃ!」

 天丸と天豪が遠慮なく喰った。
 天狼と奈々が俺の隣で嬉しそうに食べている。
 奈々はまだだが、天狼は食べ方が美しい。
 麗星が俺の向かいで鍋を甲斐甲斐しく作ってくれた。
 天丸と天豪には五平所が付いていた。
 天丸たちは、どの料理も最高に美味いと言い、五平所を喜ばせた。
 確かにその通りだ。
 蓮花の料理も美味いが、ここは高級料亭に匹敵する。
 俺も他には鷹の料理しか並ぶものは思いつかない。
 
 「おい、本当にここは飯が最高だよな!」
 「あなたさま、是非ここにお住みくださいませ!」
 「まあ、もっと来るようにするな!」
 「是非!」

 天丸たちも笑っていた。
 俺が何人もの妻を持っていることは話している。
 俺が器でそのまますき焼きを食べているのを、天狼が見ていた。
 
 「父上は卵は使わないのですか?」
 「ああ、使うこともあるんだけどな。でも、俺は基本的にすき焼きそのものの味が好きだからな」
 「そうですか!」

 天狼が器の卵を呑み干し、俺と同じように食べ始めた。
 奈々も真似をする。

 「おい、自分の好きなように食べていいんだぞ」
 「わたくしはこれが好きになりました」
 「わたしも!」

 「おう、じゃあますます強くなるかもな」
 「はい!」
 「奈々、五平所には加減してやれよ」
 「はい!」

 「石神様……」

 五平所が困った顔で笑い、みんなで笑った。
 俺が天丸たちに、奈々が五平所を何度も殺し掛けた話をしてやる。

 「庭のトリカブトを喰わせようとするんだぜ」
 「ほんとかよ!」
 「こないだ三輪車に槍をくくり付けてたって」
 「おい!」
 「あなたさま、先日はマシンガンを三輪車に」
 「マジか!」
 「蓑原が気付いて、なんとか」
 「ヤバかったな!」
 「五平所はもう長くないかと」
 「お屋形様!」

 みんなで笑った。
 天丸と天豪は若干引き攣っていた。
 奈々が一番ニコニコしていた。
 麗星も暴走族「狐火」を率いていたと話すと、天丸が喜び麗星がやめてくれと言った。

 「こいつ、有名な寺に放火してよ。自分が宝物殿に忍び込んだ証拠を消すためにな」
 「あなたさま! もうおやめください!」
 「天竜寺の多宝殿でございます」
 「五平所!」
 「あの時は、流石に道間家の資産が大分減りました」
 「黙りなさい、五平所!」

 「その詫びだって、そっから大阪の闇金を襲ったりなぁ。な、五平所?」
 「はい、大変でございました。なんとか山王会と手打ちをいたしました」
 「あなたさま! ほんとうにどうか!」
 「俺らもワルだったけどよ、そこまでのことはしなかったよなぁ」
 「いや、トラはやってたろ?」
 「おい!」

 みんなで笑った。
 天丸と天豪は、本当に遠慮なく食べ、麗星たちも喜んだ。
 二人ですき焼きの肉は5キロ程で済んだ。
 まーなー。





 夕飯の後で風呂に入った。
 俺は麗星、天狼、奈々と一緒に入る。
 天狼と奈々は先に出し、麗星と少し愛し合った。
 風呂から出ると、酒席が用意してあった。

 「おい、天豪も飲めるんだろう?」
 「まあな、でも普段は飲ませてねぇんだ」
 「大丈夫だ。ここは治外法権だからな!」
 「オホホホホホ!」

 麗星が笑い、天豪の分のグラスも用意される。
 今日は俺の好きなワイルドターキーだった。
 つまみはナスのグラタン。
 スモークサーモン。
 漬けマグロ。
 アボガドのチーズ焼き。
 カプレーゼなど。
 麗星は授乳があるので、酒は飲まない。
 しばらく「ルート20」の話などをして、麗星と五平所、そして天豪を喜ばせた。

 「おい、麗星。本当のことを教えてくれ」
 「なんでございましょう?」
 「日向さんと静香さんのことだ。どうしてあんな場所にいたんだ?」
 「そのことでございますか」

 麗星が隠し事をしていれば、俺には分かる。
 天真爛漫な性格で、元々他人を騙すことは苦手なのだ。
 特に俺に対しては。

 「あなたさまにとっては仇のことでもございましたので。余計なことはお知りにならなくても良いかと」
 「宇羅のことか」
 「はい」
 
 俺は麗星に微笑んで言った。

 「宇羅は今は敵同士だけどな。でも、俺が子どもの頃に救ってもらったことは確かだ。そのことは今でももちろん感謝している」
 「あなたさま……」
 「本当だ。親父もそう思っていたから、自分の全てを捧げたんだよ」
 「……」

 麗星は話し出した。
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