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九州・我當会 Ⅲ
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我當や若頭の座光寺たちが真剣な目で俺を見ていた。
「俺が全国の極道を統一したことは知っているよな?」
「もちろんです。もう極道で石神さんに逆らう者はおりません」
「ならば、どうしてお前たちは来なかったんだ?」
「お声が掛からなかったからです」
「なんだと?」
「自分たちのような者は、石神さんには必要ないのだろうと。ですので」
「お前らよう」
我當が笑っていた。
もちろん、そういうことではない。
独立自尊の我當会は、相手が強大だからといって、尻尾を振る連中ではない。
たとえ組が全滅しても、最後まで戦う連中だ。
極道とはそういうものだと考えている。
俺に着くのが得だとか損だとか、そんなことを考えない連中だ。
恐らく、千万組も敵対すれば最後まで戦う連中だっただろう。
だが、独立自尊ではない別な思想で動いていた。
だから、俺が最高の死に場所を与えると信じて俺の下に降ったのだ。
では、我當会はどうしてだ?
我當も、その当然の俺の疑問を理解していた。
「実は、「ボルーチ・バロータ」から接触がありました」
「なんだと!」
「ボルーチ・バロータ」は「業」のための工作部隊であり、様々な世界戦略を実行している中枢の連中だ。
最初は「業」に操られるマフィアのようなものかと考えていたが、実態はもっと中心に近い、「業」のための幅広い意味での実行部隊であることが分かって来た。
「デミウルゴス」の供給を皮切りに、そのネットワークの構築と、恐らくは生産まで担っている。
そして世界各国に浸透し、「虎」の軍に反抗する勢力を組織して行っている。
日本では外道会を支配し、俺たちを苦しめて来た。
恐らくは《ニルヴァーナ》の生産にも関わっているだろう。
時折《ハイヴ》で見つかる人間は、「ボルーチ・バロータ」だと思われるが、俺たちの襲撃が激し過ぎて生きていたことがない。
少し前に佐野さんが轟と一緒に捕まえた奴が唯一の手掛かりとなった。
また「グレイプニル」が先日ヨーロッパ各地で展開した臓器売買のネットワークの壊滅戦で更に数人の「ボルーチ・バロータ」の人間を捕えている。
タマやルイーサたちの精神走査によって、徐々にだが組織のことが分かって来たところだ。
「「ボルーチ・バロータ」と手を組めば、莫大な利益を保証されました。世界殲滅後の命の保証も」
「まるで話にならんな」
「仰る通りです。奴らは我々を利用したいだけで、約束事など守るはずもありません」
「それで俺たちに声を掛けたか」
「はい。「ボルーチ・バロータ」に逆らえば、私らなどは容易く殺されるでしょう。まあ、それでも構わないのですが、何とか一矢報いることが出来るのであればと。それに我々に声を掛けて来たということは、我々も今後はこの戦争に深く関わらざるを得ません。そうであれば、石神様に着くべきと判断しました」
「俺はお前たちに何の利益も与えないぞ」
「構いません。存分に使い潰して頂ければ、それで結構です」
「そうか」
もちろん、我當も本当にそうなるとは思っていない。
「虎」の軍に編入されれば、自分たちも護られる。
だが、それは望んでもいまい。
我當会は、もう「業」に目を付けられたと知り、「虎」の軍で一緒に戦いたいということだ。
それに口には出さないが、我當会は以前から「虎」の軍に加わりたい気持ちもあったのだろう。
そのタイミングを逸していたが、「ボルーチ・バロータ」の接近はいい口実にもなった。
だから、即座に千両を通して俺たちの軍門に降りたいと言って来たのだ。
俺にもよく理解出来た。
多分、万一俺に断られたとしても、最後まで戦おうとする連中だろう。
「「カサンドラ」を貸与すればいいのか?」
「はい、それだけでも結構です。あとは自分らで何とかします」
「「花岡」はいらないか?」
「教えて頂けるものでしたら。でも、私らは新参ですので、信用して頂けないかと」
「俺たちに助けて欲しいとは言わないのか?」
我當やその場にいた全員が笑った。
「散々好き勝手して来た自分らです。今更命が惜しいから守って欲しいなどとは口が裂けても」
「そうかよ」
やはり、その通りなのだろう。
でも、俺たちが勝手に敵を殲滅することには文句も言うまい。
「話は分かった。「カサンドラ」で戦えそうな奴は何人いる?」
「ざっと1000人は」
「ほう!」
驚いた。
やはり日本有数の武闘派だ。
戦闘員の数だろうが、恐らく優秀な連中だ。
それを1000人も揃えている。
「そうか、ならば俺たちが試して合格した奴らの分は用意しよう」
「本当ですか!」
我當も驚いていた。
まさかそんな好条件で「カサンドラ」が手に入るとは思っていなかっただろう。
「俺たちが認めればだ。何を基準にするかは教えない。1000人でもいいぞ」
「ありがとうございます! では、いつお時間を頂けますか?」
「今すぐだ。俺たちはヒマじゃねぇ」
「はい! 分かりました!」
我當に躊躇は無かった。
いい組織だ。
俺は我當に、1000人を広い場所に集めるように言った。
2キロほど離れた場所に、我當会の演習場があることを聞いた。
やはり戦闘訓練をしているのだ。
俺たちはまたリムジンに乗って移動する。
3キロ平米はある、広大な場所に来た。
周囲は高い建物が無く、畑や田が拡がっている。
演習場は高さ12メートルの高い塀で囲われていた。
北の端に鉄筋の4階建ての建物がある。
恐らく宿泊施設と武器弾薬の保管のためのものだろう。
ここでは、思う存分に銃器も使った戦闘訓練をしているのだろう。
驚いたことに、既に1000人の戦闘員が揃って整列していた。
どこでどうしていたのかは分からないが、時間通りにこれだけの戦闘員が集められるというのは優秀過ぎる組織と思った。
まあ、俺たちが来ることは分かっていたわけだから、あらかじめ近くに配備していたのかもしれないが、恐らくこれが我當会の最大戦力であり、荒事屋の全てだ。
それを俺の前に差し出すという心意気も気に入った。
俺に潰される可能性だってあるのだ。
基本的な訓練の後にはなるが、俺はこいつらに「カサンドラ」を渡し、一部には「花岡」をある程度は教えることを決めていた。
我當会を気に入った。
でも、俺は甘い態度は見せなかった。
「こいつらでいいのか?」
「はい、お願いします」
「分かった。亜紀ちゃん、やれ」
亜紀ちゃんが目を丸くして俺に向いた。
「え? どうすればいいんですか?」
「……」
考えて無かった。
柳が目を逸らしていた。
我當と座光寺が心配そうな目で俺を見ている。
「ああ、適当に相手して見ろ」
「え、殺しちゃってもいいですか?」
我當と座光寺が驚いた目で俺を見ている。
えーと、甘い態度は見せたくはないが、殺しちゃうのはなー。
「石神さん、ここは私が」
千両が名乗り出てくれた。
「ああ、じゃあお前に任せる」
「ありがとうございます」
たすかったぁー。
「俺が全国の極道を統一したことは知っているよな?」
「もちろんです。もう極道で石神さんに逆らう者はおりません」
「ならば、どうしてお前たちは来なかったんだ?」
「お声が掛からなかったからです」
「なんだと?」
「自分たちのような者は、石神さんには必要ないのだろうと。ですので」
「お前らよう」
我當が笑っていた。
もちろん、そういうことではない。
独立自尊の我當会は、相手が強大だからといって、尻尾を振る連中ではない。
たとえ組が全滅しても、最後まで戦う連中だ。
極道とはそういうものだと考えている。
俺に着くのが得だとか損だとか、そんなことを考えない連中だ。
恐らく、千万組も敵対すれば最後まで戦う連中だっただろう。
だが、独立自尊ではない別な思想で動いていた。
だから、俺が最高の死に場所を与えると信じて俺の下に降ったのだ。
では、我當会はどうしてだ?
我當も、その当然の俺の疑問を理解していた。
「実は、「ボルーチ・バロータ」から接触がありました」
「なんだと!」
「ボルーチ・バロータ」は「業」のための工作部隊であり、様々な世界戦略を実行している中枢の連中だ。
最初は「業」に操られるマフィアのようなものかと考えていたが、実態はもっと中心に近い、「業」のための幅広い意味での実行部隊であることが分かって来た。
「デミウルゴス」の供給を皮切りに、そのネットワークの構築と、恐らくは生産まで担っている。
そして世界各国に浸透し、「虎」の軍に反抗する勢力を組織して行っている。
日本では外道会を支配し、俺たちを苦しめて来た。
恐らくは《ニルヴァーナ》の生産にも関わっているだろう。
時折《ハイヴ》で見つかる人間は、「ボルーチ・バロータ」だと思われるが、俺たちの襲撃が激し過ぎて生きていたことがない。
少し前に佐野さんが轟と一緒に捕まえた奴が唯一の手掛かりとなった。
また「グレイプニル」が先日ヨーロッパ各地で展開した臓器売買のネットワークの壊滅戦で更に数人の「ボルーチ・バロータ」の人間を捕えている。
タマやルイーサたちの精神走査によって、徐々にだが組織のことが分かって来たところだ。
「「ボルーチ・バロータ」と手を組めば、莫大な利益を保証されました。世界殲滅後の命の保証も」
「まるで話にならんな」
「仰る通りです。奴らは我々を利用したいだけで、約束事など守るはずもありません」
「それで俺たちに声を掛けたか」
「はい。「ボルーチ・バロータ」に逆らえば、私らなどは容易く殺されるでしょう。まあ、それでも構わないのですが、何とか一矢報いることが出来るのであればと。それに我々に声を掛けて来たということは、我々も今後はこの戦争に深く関わらざるを得ません。そうであれば、石神様に着くべきと判断しました」
「俺はお前たちに何の利益も与えないぞ」
「構いません。存分に使い潰して頂ければ、それで結構です」
「そうか」
もちろん、我當も本当にそうなるとは思っていない。
「虎」の軍に編入されれば、自分たちも護られる。
だが、それは望んでもいまい。
我當会は、もう「業」に目を付けられたと知り、「虎」の軍で一緒に戦いたいということだ。
それに口には出さないが、我當会は以前から「虎」の軍に加わりたい気持ちもあったのだろう。
そのタイミングを逸していたが、「ボルーチ・バロータ」の接近はいい口実にもなった。
だから、即座に千両を通して俺たちの軍門に降りたいと言って来たのだ。
俺にもよく理解出来た。
多分、万一俺に断られたとしても、最後まで戦おうとする連中だろう。
「「カサンドラ」を貸与すればいいのか?」
「はい、それだけでも結構です。あとは自分らで何とかします」
「「花岡」はいらないか?」
「教えて頂けるものでしたら。でも、私らは新参ですので、信用して頂けないかと」
「俺たちに助けて欲しいとは言わないのか?」
我當やその場にいた全員が笑った。
「散々好き勝手して来た自分らです。今更命が惜しいから守って欲しいなどとは口が裂けても」
「そうかよ」
やはり、その通りなのだろう。
でも、俺たちが勝手に敵を殲滅することには文句も言うまい。
「話は分かった。「カサンドラ」で戦えそうな奴は何人いる?」
「ざっと1000人は」
「ほう!」
驚いた。
やはり日本有数の武闘派だ。
戦闘員の数だろうが、恐らく優秀な連中だ。
それを1000人も揃えている。
「そうか、ならば俺たちが試して合格した奴らの分は用意しよう」
「本当ですか!」
我當も驚いていた。
まさかそんな好条件で「カサンドラ」が手に入るとは思っていなかっただろう。
「俺たちが認めればだ。何を基準にするかは教えない。1000人でもいいぞ」
「ありがとうございます! では、いつお時間を頂けますか?」
「今すぐだ。俺たちはヒマじゃねぇ」
「はい! 分かりました!」
我當に躊躇は無かった。
いい組織だ。
俺は我當に、1000人を広い場所に集めるように言った。
2キロほど離れた場所に、我當会の演習場があることを聞いた。
やはり戦闘訓練をしているのだ。
俺たちはまたリムジンに乗って移動する。
3キロ平米はある、広大な場所に来た。
周囲は高い建物が無く、畑や田が拡がっている。
演習場は高さ12メートルの高い塀で囲われていた。
北の端に鉄筋の4階建ての建物がある。
恐らく宿泊施設と武器弾薬の保管のためのものだろう。
ここでは、思う存分に銃器も使った戦闘訓練をしているのだろう。
驚いたことに、既に1000人の戦闘員が揃って整列していた。
どこでどうしていたのかは分からないが、時間通りにこれだけの戦闘員が集められるというのは優秀過ぎる組織と思った。
まあ、俺たちが来ることは分かっていたわけだから、あらかじめ近くに配備していたのかもしれないが、恐らくこれが我當会の最大戦力であり、荒事屋の全てだ。
それを俺の前に差し出すという心意気も気に入った。
俺に潰される可能性だってあるのだ。
基本的な訓練の後にはなるが、俺はこいつらに「カサンドラ」を渡し、一部には「花岡」をある程度は教えることを決めていた。
我當会を気に入った。
でも、俺は甘い態度は見せなかった。
「こいつらでいいのか?」
「はい、お願いします」
「分かった。亜紀ちゃん、やれ」
亜紀ちゃんが目を丸くして俺に向いた。
「え? どうすればいいんですか?」
「……」
考えて無かった。
柳が目を逸らしていた。
我當と座光寺が心配そうな目で俺を見ている。
「ああ、適当に相手して見ろ」
「え、殺しちゃってもいいですか?」
我當と座光寺が驚いた目で俺を見ている。
えーと、甘い態度は見せたくはないが、殺しちゃうのはなー。
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