富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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みんなで真冬の別荘 XⅡ

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 丁度夕飯の準備も出来て、みんなで食卓に着く。

 伊勢海老とヒラメ、ひらすのお造り。
 マグロの握り。
 能登ブリと海老芋の煮物。
 レンコンの挟み揚げ
 カサゴの揚げ物。
 神戸和牛シャトーブリアンのロースト(ワサビ醤油)。
 米ナスの味噌田楽。
 タラバガニの鍋(大量)。
 芝海老の西京焼き。
 各種器。
 松茸ご飯。
 ハマグリの吸い物。
 
 カニ鍋は当然獣用と分ける。
 普通は喰いきれない量だが、俺たちは平気だ。
 それに鷹の作った和食はどれも美味い。
 まあ、亜紀ちゃんたちがいる限り、料理が余ることは心配ない。
 石神家には「食品ロス」という言葉は無い。
 まあ「喰い過ぎ」という批判はあるかもしれんが。
 虎蘭が食べながら狂喜し、鷹を褒め称えた。
 風花も絶賛し、他の人間も鷹に感謝した。
 道間家の麗星、天狼、奈々はこの中では一番良いものを日常でも食べているが、鷹の料理に感動している。

 「石神先生がいい食材を揃えて下さったからですよ」
 「鷹の腕だよ」

 確かにスーパーの店長に特別な食材は頼んでいたが。
 鷹の指定を聞き、産地まで限定してお願いした。
 真の料理とは、そういう産地に拘ったものになるのだ。
 店長さんが手配してくれたことに加え、状態の良いものを選んで揃えてくれた。
 普通は出来ることではない。
 一品ずつ、味わってみんなで食べる。
 鷹はおせち料理もと言ったが、俺が断った。
 あまりにも負担が大きい。
 それに俺自身があまり好きではないためだ。
 だから石神家では亜紀ちゃんたちを迎えた初年以外は出していない。
 それでも鷹がせめてもと俺の好きなものは用意してくれている。
 黒豆や栗きんとん、ブリの照り焼きなどだ。
 年中休むことのない病院の仕事で、俺自身が正月気分というものに拘っていない。
 まあ、貧乏で子どもの頃も正月など無かったことも影響しているのだろうが。

 響子がカニと格闘しているので、俺が身を割ってやった。

 「ありがとー!」
 「おう」

 本来の響子番の六花は獣鍋で楽しく争っている。
 虎蘭が遠慮して食べないので、俺が身を割って器に入れた。
 遠慮が必要な量ではないのだ。
 響子がニコニコして虎蘭を見ている。

 「あ、ありがとー」
 「おう!」

 みんなが笑った。
 虎蘭も段々うちのノリが分かって来た。
 士王と天狼は自分でカニを食べているが、吹雪は拙い。
 普段は食べないせいだろう。
 奈々は麗星にもらっている。
 鷹が吹雪に身を取り出してやった。
 吹雪がニコニコして礼を言い、鷹も嬉しそうだった。
 ゆっくりと鷹の料理を味わい、順番に風呂に入った。
 俺が鷹と虎蘭、麗星と一緒に入っていると、士王と吹雪、天狼が飛び込んで来た。
 士王を引っぱたき、三人の身体を洗ってやり一緒に入った。

 「虎蘭と麗星がいるからなぁ」
 「エヘヘヘヘヘ」

 笑って二人の間に座る士王。
 虎蘭も麗星も苦笑しながら士王の頭を撫でてやった。

 「虎蘭さんの顔の疵はカッコイイですね!」
 「そう? あまり気にしたことはないんだけど」
 「ううん、綺麗です! カッコイイ!」
 「そう」

 言いながら士王は前からオッパイに寄り掛かって虎蘭の頬を撫でる。

 「お父さんと一緒です。だから綺麗だ」
 「そう!」

 虎蘭が喜んだ。
 麗星にも甘え、ちゃんと鷹パイも触っていた。
 
 俺たちが出ると、桜花たちが士王を探しており、風呂場にいたので呆れていた。
 士王たちを桜花たちに任せ、俺と鷹で蕎麦の用意をした。
 出汁はとってあるので、主に天ぷらだ。
 芝海老、ナス、マイタケ、タマネギのかき揚げ、牛ロースと豚ロース。
 亜紀ちゃんたちが自分たち用の唐揚げも揚げ始める。
 大量の蕎麦を軽く茹で、寸胴でつゆを運んだ。
 他に丼と薬味をそれぞれ運ぶ。
 あとはテーブルや椅子とでかいガスコンロ。
 士王たちチビも今日は少し付き合わせる。
 「幻想空間」でそれぞれの器に蕎麦を盛って配って行く。
 みんなで年越し蕎麦を味わった。

 「虎蘭、石神家でも年越し蕎麦は食べるのか?」
 「人によりますね。全員でということはありません」
 「虎白さんは?」
 「ああ、食べてますね。何人か呼んで、そのまま酒盛りですが」
 「そうかぁ」

 ちなみに三が日も鍛錬をするそうだ。
 やっぱなぁ。

 「元旦は午前中に「虎神社」にお参りします」
 「なんだそれ! 俺、行ったことねぇぞ!」
 「あれ、そうでした?」

 当主なのにぃー。

 「元旦は境内で鍛錬なんですよ。まあ、軽くやってから終わります」
 「へぇー!」
 
 奉納のようなものだろうか?
 
 「お前は行かないで良かったの?」
 「別に。高虎さんと一緒の方がいいですよ」

 隣の虎蘭を可愛くて抱き締めた。
 虎蘭が赤い顔をする。
 蕎麦を喰い終わって士王たちを下に行かせた。
 桜花たちが一緒に行って世話をする。
 亜紀ちゃんたちが蕎麦の器を片付けて行く。
 天ぷらが結構あったが、鷹が他の肴を作りに行った。
 洗い物をする亜紀ちゃんたちも手伝う。
 肴は簡単なものだけにする。

 雪野ナス。
 アスパラベーコン。
 厚揚げ焼き。
 新生姜とゴボウの漬物。
 それにレンコンガレット。
 
 上に運んで酒を飲んだ。
 俺と鷹と亜紀ちゃんが熱燗にし、他の連中は温めた甘酒。
 亜紀ちゃんがニコニコして言う。

 「さーて、今日も「トラキリー」か「ハイドラ」のお話かなぁー!」
 「あんだよ!」
 「別なお話でもいいですよ?」
 「だからなんなんだよ!」

 虎蘭が亜紀ちゃんに目で合図され、俺に腕を絡めて言う。
 こいつ、段々石神家の「ノリ」を覚えて来やがった。

 「高虎さんのお話っていいですよね!」
 「おい!」

 同じく麗星も亜紀ちゃんの目配せで腕を絡めて来た。

 「あなた様、お願いします」
 「しょうがねぇなぁ」

 まあ、話したいことはあったのだ。
 俺はまた語った。
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