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みんなで真冬の別荘 XⅣ
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アザーロフ・ドミトリーは、元はロシア陸軍の情報将校だった男だ。
長年情報部に属し、諜報畑を歩いて来た人間だった。
ドミトリーは当時陸軍情報部の少佐であり、非常に優秀な人物で出世も早かった。
些細な事象を見逃さず、大きな功績を挙げて来た男だ。
その一方で愛国心が強く、また仲間に対する愛情が深い。
諜報の人間はとかく冷酷になりがちであるが、ドミトリーは違った。
決して甘い男ではなかったが、しかるべき人間にはその優しさを示し、多くの人間に愛されていた。
彼はある時、偶然目に留まった書類の中で陸軍の動きに不審なものを感じた。
陸軍の作戦行動に関する報告書を見て行く中で、ドミトリーの勘に引っ掛かるものがあったのだ。
それは凡そ戦略的に無意味な行動をしている小隊の動きであり、都市から離れて孤立しているような小村への遠征の報告書だった。
一応の体裁は整っており、どこにも不審な個所も無い。
しかし、その目的自体が意味のある事とは思えなかった。
何のために……
もちろん、遠征という目的は理解出来る。
長距離の移動は軍隊に必須のことではある。
だが、ドミトリーはその小隊が過去に同じく戦略的に無意味な別の村へも遠征していたことを覚えていた。
だからその小隊に関する別な報告書にもあたってみた。
様々な訓練、演習をしている陸軍ではあったが、ある特定の小隊が何度か小村へ出向いていたことが判明した。
ドミトリーはその装備などを調べ、毎回同じような小火器と大型の輸送用のトラックで移動していることを知った。
ますます意図が分からない。
そしてその小村についても調べて行った。
もしかすると反政府ゲリラの拠点の可能性もある。
しかし特段の戦闘の記録も無かった。
おかしい。
都市からも近隣の町や村からも離れたほとんど孤立している小村への遠征。
一体何の目的なのか。
部下に命じてその小隊の記録を当たらせたが、無意味な遠征を繰り返していることの他には特段怪しい点は無かった。
「長距離遠征の演習のようですね。少人数での移動や兵士の護衛輸送を想定した長距離行軍の訓練のようです」
「そうか」
「毎回若干の弾薬を消費していますが、途中で何かの訓練でもしたのでしょう」
「……」
確かにドミトリーが調べた内容に合致する報告であった。
しかしドミトリーは尚も何か払拭出来ないものを感じていた。
「軍の内部への不審であれば、憲兵隊に連絡すればよろしいのでは?」
そうも部下から言われたが、確たる証拠は無かった。
あくまでもドミトリーの勘だけなのだ。
言った部下もそれが分かっていての、柔らかな皮肉だった。
情報部は膨大な報告書を扱っており、無意味な作業を嫌ってのことだった。
ドミトリーはそこから自分一人で小隊を動かしている人物を調べて行き、それがある将校クラスの人物からの命令であることを知り驚いた。
将校が直接小隊を指揮するのはおかしい。
ドミトリーはようやく疑念の確実な事象を掴んだのだ。
そしてその小隊が特別な任務を持っていることを感じた。
他の部署には知られない秘匿された任務。
一体、それはどのようなものなのか。
ただ、秘密部隊であればドミトリーのような情報部の人間であっても気軽に探って良いものではない。
上官へ報告の上、軍部に背信や不利益があると確信された場合だけだ。
しかし現時点ではただの遠征演習であり、上官へ報告すべきものではなかった。
それでもドミトリーはこの小隊が気になった。
理屈ではなく、途轍もない国家への反逆。
まさかそんなことがあろうはずもないのだが。
ドミトリーは独りで小隊について更に探って行った。
上官や同僚、部下にも知られないように密かに。
そして小隊の兵士を一人一人綿密に調べて行き、全員何らかの重い処罰を受けている者たちであり、本来は除隊か処刑されているべき人間たちであることも知った。
更に、犯罪者の入隊すらもあることも分かった。
ろくでもない連中が集められた小隊。
それが周囲と隔離されているような小村に出向いている。
ドミトリーは小隊に命じている将校に面談を求めたが、拒否された。
機密作戦であるとだけ言われた。
その後にドミトリーは自分が見張られていることを感じた。
自身の身辺の周囲に危険を感じ始めたドミトリーは、信頼できる陸軍のアレクサンドロ中佐に情報を流した。
アレクサンドロは参謀本部に属していたが、彼なりに近年の軍の暗部の存在に気付いていた。
そして1か月後、ドミトリーとは別にロシア軍を裏で掌握する「業」の存在を知り、軍を抜けて「虎」の軍へ亡命した。
その頃にはドミトリーとは連絡が取れなくなっており、単身で亡命するしか無かった。
また誰がどこまで「業」の側に侵食されているのかも分からず、他の誰も誘えなかった。
後にアレクサンドロは、シベリア大移送作戦で俺たちに協力してくれた人物だ。
「虎」の軍に加わり、彼自身が掴んでいた「業」のロシア軍への浸食の状況を話してくれた。
俺たちはその情報を基に「シベリア大脱走計画」を立てたのだ。
アレクサンドロは最も危険な現地での指揮官を引き受けてくれた。
そして最後まで激しい戦闘の中を残り、作戦は大成功した。
ドミトリーもアレクサンドロも、自分のために生きている人間たちではない。
二人とも、自分が大切にする美しい何かのために生きているのだ。
愛国心を持つ二人は、祖国が恐ろしい悪魔に掌握されつつあることを知った。
守るべき人民が同じロシア人の手によって悲惨な目に遭っていることに怒り立ったのだ。
アレクサンドロも危険な戦場に立ったが、ドミトリーはより過酷な戦いに身を置くことになった。
長年情報部に属し、諜報畑を歩いて来た人間だった。
ドミトリーは当時陸軍情報部の少佐であり、非常に優秀な人物で出世も早かった。
些細な事象を見逃さず、大きな功績を挙げて来た男だ。
その一方で愛国心が強く、また仲間に対する愛情が深い。
諜報の人間はとかく冷酷になりがちであるが、ドミトリーは違った。
決して甘い男ではなかったが、しかるべき人間にはその優しさを示し、多くの人間に愛されていた。
彼はある時、偶然目に留まった書類の中で陸軍の動きに不審なものを感じた。
陸軍の作戦行動に関する報告書を見て行く中で、ドミトリーの勘に引っ掛かるものがあったのだ。
それは凡そ戦略的に無意味な行動をしている小隊の動きであり、都市から離れて孤立しているような小村への遠征の報告書だった。
一応の体裁は整っており、どこにも不審な個所も無い。
しかし、その目的自体が意味のある事とは思えなかった。
何のために……
もちろん、遠征という目的は理解出来る。
長距離の移動は軍隊に必須のことではある。
だが、ドミトリーはその小隊が過去に同じく戦略的に無意味な別の村へも遠征していたことを覚えていた。
だからその小隊に関する別な報告書にもあたってみた。
様々な訓練、演習をしている陸軍ではあったが、ある特定の小隊が何度か小村へ出向いていたことが判明した。
ドミトリーはその装備などを調べ、毎回同じような小火器と大型の輸送用のトラックで移動していることを知った。
ますます意図が分からない。
そしてその小村についても調べて行った。
もしかすると反政府ゲリラの拠点の可能性もある。
しかし特段の戦闘の記録も無かった。
おかしい。
都市からも近隣の町や村からも離れたほとんど孤立している小村への遠征。
一体何の目的なのか。
部下に命じてその小隊の記録を当たらせたが、無意味な遠征を繰り返していることの他には特段怪しい点は無かった。
「長距離遠征の演習のようですね。少人数での移動や兵士の護衛輸送を想定した長距離行軍の訓練のようです」
「そうか」
「毎回若干の弾薬を消費していますが、途中で何かの訓練でもしたのでしょう」
「……」
確かにドミトリーが調べた内容に合致する報告であった。
しかしドミトリーは尚も何か払拭出来ないものを感じていた。
「軍の内部への不審であれば、憲兵隊に連絡すればよろしいのでは?」
そうも部下から言われたが、確たる証拠は無かった。
あくまでもドミトリーの勘だけなのだ。
言った部下もそれが分かっていての、柔らかな皮肉だった。
情報部は膨大な報告書を扱っており、無意味な作業を嫌ってのことだった。
ドミトリーはそこから自分一人で小隊を動かしている人物を調べて行き、それがある将校クラスの人物からの命令であることを知り驚いた。
将校が直接小隊を指揮するのはおかしい。
ドミトリーはようやく疑念の確実な事象を掴んだのだ。
そしてその小隊が特別な任務を持っていることを感じた。
他の部署には知られない秘匿された任務。
一体、それはどのようなものなのか。
ただ、秘密部隊であればドミトリーのような情報部の人間であっても気軽に探って良いものではない。
上官へ報告の上、軍部に背信や不利益があると確信された場合だけだ。
しかし現時点ではただの遠征演習であり、上官へ報告すべきものではなかった。
それでもドミトリーはこの小隊が気になった。
理屈ではなく、途轍もない国家への反逆。
まさかそんなことがあろうはずもないのだが。
ドミトリーは独りで小隊について更に探って行った。
上官や同僚、部下にも知られないように密かに。
そして小隊の兵士を一人一人綿密に調べて行き、全員何らかの重い処罰を受けている者たちであり、本来は除隊か処刑されているべき人間たちであることも知った。
更に、犯罪者の入隊すらもあることも分かった。
ろくでもない連中が集められた小隊。
それが周囲と隔離されているような小村に出向いている。
ドミトリーは小隊に命じている将校に面談を求めたが、拒否された。
機密作戦であるとだけ言われた。
その後にドミトリーは自分が見張られていることを感じた。
自身の身辺の周囲に危険を感じ始めたドミトリーは、信頼できる陸軍のアレクサンドロ中佐に情報を流した。
アレクサンドロは参謀本部に属していたが、彼なりに近年の軍の暗部の存在に気付いていた。
そして1か月後、ドミトリーとは別にロシア軍を裏で掌握する「業」の存在を知り、軍を抜けて「虎」の軍へ亡命した。
その頃にはドミトリーとは連絡が取れなくなっており、単身で亡命するしか無かった。
また誰がどこまで「業」の側に侵食されているのかも分からず、他の誰も誘えなかった。
後にアレクサンドロは、シベリア大移送作戦で俺たちに協力してくれた人物だ。
「虎」の軍に加わり、彼自身が掴んでいた「業」のロシア軍への浸食の状況を話してくれた。
俺たちはその情報を基に「シベリア大脱走計画」を立てたのだ。
アレクサンドロは最も危険な現地での指揮官を引き受けてくれた。
そして最後まで激しい戦闘の中を残り、作戦は大成功した。
ドミトリーもアレクサンドロも、自分のために生きている人間たちではない。
二人とも、自分が大切にする美しい何かのために生きているのだ。
愛国心を持つ二人は、祖国が恐ろしい悪魔に掌握されつつあることを知った。
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