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ダーティ玻璃 Ⅲ みんなダーティ
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年明け。
石神家本家に行っていた馬込が結構仕上がって来て、葉佩兄妹や他のメンバーとの顔合わせもあり、一度一堂に集めた。
馬込を「ハイドラ」の部隊長に任命し、副長として葉佩兄妹を俺が部隊員の前で正式に任命した。
馬込の挨拶の後、全ての部隊員が馬込よりも年長であったが、そこに拘る人間はいなかった。
それは主に馬込の強さを示されたことによる。
あいつは若輩の自分を認めさせるために考えていたのだ。
アラスカの訓練場に「ハイドラ」の全メンバーが集められた。
馬込の希望だ。
あいつは最初から、17歳の自分が部隊を率いることへの反発を理解していた。
それは無理のないことで、命がけの戦場で若干10代半ばの人間が部隊の指揮を執ることで不安にならない方がおかしい。
だから実力を示す必要性を馬込は感じていたのだ。
馬込が考えたのは、単純な方法だった。
自分よりも強い人間がいれば、挑戦して来いと。
馬込は訓練場で希望者の挑戦を受けた。
学者連中はともかく、気の荒い奴も多い人選だったため、挑戦者は多かった。
上級ソルジャーも20名程いて、腕自慢のそいつらは全員が挑戦を希望した。
「分かった。じゃあ、お前らの中で一番強いのは誰だ?」
「モーガン、お前がやれよ」
元アメリカ海軍のシールズ上がりのモーガンが馬込に挑戦した。
馬込は石神家本家で身につけた「虎相」になった。
モーガンは威圧され、向かっては行ったが呆気なく馬込に斃された。
馬込は自身の実力はここにいる連中以上だと考えてはいたが、馬込も部隊員の実力は詳細には把握していなかった。
だから一対一での戦闘を最初に提示したのだ。
そして最強の人間の実力を測り、馬込は部隊員の戦闘力を把握した。
自分の余裕も理解した。
「誰でもいい。3人で掛かって来い」
馬込に3人が挑んだ。
三方からの同時攻撃は見事だったが、馬込が回転しながら瞬時に降した。
更に馬込は把握したことで宣言した。
「全員で来い」
残った30名以上の人間が馬込に襲い掛かったが、30秒ほどで全員が地面に伏した。
馬込は圧倒的だった。
一緒に来ていたルーとハーが大喜びだった。
二人が馬込の頬にチューをし、馬込が満面の笑みで二人を抱き締めて唇を突き出し、双子に激しい蹴りを入れられてぶっ飛んだ。
「「調子のんなぁ!」」
部隊員全員が大笑いした。
馬込は圧倒的な強さと共に、自分が四角四面な堅物ではないことをそうやって示したのだ。
馬込の人心掌握の高い能力を知った。
部隊員たちも「花岡」の技以上に、戦場での戦い方を徹底的に鍛え上げられていた。
他のソルジャーも決して無能ではないのだが、石神家本家で鍛え上げられた馬込の実力は別格だ。
だから馬込は圧倒することが出来た。
柔軟さと言う以上に縦横無尽に戦う石神家の戦闘は、他のいかなる軍事教練も追いつかない。
今後、馬込が「ハイドラ」の部隊員をその域に仕上げ、またそれ以上に思いもよらない戦略で絶対防衛を構築するのだ。
馬込の練り上げた戦闘力に加え、今後は奇策めいた戦術まで考えて行く。
今日は脳筋連中に分かり易く君臨するための機会だ。
これから本格的に部隊を鍛え上げるための訓練をしていく。
馬込たちは一度蓮花研究所に移動し。「ポッド」を使って徹底的に戦術の訓練をする。
あらゆる状況で「ハイドラ」が戦い抜く訓練が始まって行った。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
馬込たちは「蓮花研究所」のポッドを使い、ヴァーチャル空間で訓練をした。
《ロータス》が様々な状況を「ハイドラ」に設定し、馬込たちがそれを撃破していく。
もちろん俺も報告を受け、時折馬込たちが見せる「奇策」に驚き、そして喜んでいた。
ポッド以外でも学者たちも含めて実際の戦闘訓練を受け、全員が肉体的にも精強になっていった。
ブランたちやデュールゲリエたちを使って実際の肉体での戦闘もこなしていく。
蓮花研究所での訓練を終え、馬込たち「トラキリー」は聖の指導で演習訓練を始めた。
アラスカだ。
聖は俺の意図を汲んで、「トラキリー」を防衛戦に特化した部隊に鍛え上げてくれるだろう。
1月の下旬のことだった。
「トラ!」
聖から連絡があった。
「おう、どうした?」
「「トラキリー」なんだけどよ、そろそろ実戦に近い訓練をしたいんだ」
「おお、早いな」
「ああ、あいつら結構やるよ。あの馬込って奴が優秀だ」
「そうか」
聖によれば、馬込が予想以上に部隊の指揮に優れており、聖が出す戦況の課題に十二分に対応するのだという。
だから聖は実際の戦場に近い集団戦をやらせたいようだったが、一つ問題があった。
聖が復帰していることは、まだ極秘事項だったのだ。
だからアラスカのソルジャーを使うわけにも行かず、「セイントPMC」の人間にもごく一部しか聖の無事は知らされていない。
そういうわけで聖は俺にデュールゲリエを揃えられないかと相談して来たのだ。
「もちろんいいぜ」
「ありがとう! じゃあ、デュールゲリエを200体と「スズメバチ」を数万借りれるか?」
「分かった、すぐに用意するよ。他には必要なものはないか?」
「いや大丈夫だ」
俺と聖でデュールゲリエの装備と戦力を話し、俺はその設定で1月中に送ろと答えた。
デュールゲリエの調整は多忙な蓮花や皇紀でなくとも出来る。
俺は双子にやらせることにし、二人に頼んだ。
「タカさん、じゃあ私たちも行くよ」
ハーが言った。
馬込のことが気になるのだろう。
二人でよく石神家本家にも顔を出していたし、アラスカへ来てからも何度も行っていた。
「そうか。まあ俺も行くつもりだったし、一緒に行くか」
「「うん!」」
カワイイ双子と一緒に動くのは楽しい。
亜紀ちゃんも戦闘訓練に参加したいと言い、四人で出掛けることにした。
石神家本家に行っていた馬込が結構仕上がって来て、葉佩兄妹や他のメンバーとの顔合わせもあり、一度一堂に集めた。
馬込を「ハイドラ」の部隊長に任命し、副長として葉佩兄妹を俺が部隊員の前で正式に任命した。
馬込の挨拶の後、全ての部隊員が馬込よりも年長であったが、そこに拘る人間はいなかった。
それは主に馬込の強さを示されたことによる。
あいつは若輩の自分を認めさせるために考えていたのだ。
アラスカの訓練場に「ハイドラ」の全メンバーが集められた。
馬込の希望だ。
あいつは最初から、17歳の自分が部隊を率いることへの反発を理解していた。
それは無理のないことで、命がけの戦場で若干10代半ばの人間が部隊の指揮を執ることで不安にならない方がおかしい。
だから実力を示す必要性を馬込は感じていたのだ。
馬込が考えたのは、単純な方法だった。
自分よりも強い人間がいれば、挑戦して来いと。
馬込は訓練場で希望者の挑戦を受けた。
学者連中はともかく、気の荒い奴も多い人選だったため、挑戦者は多かった。
上級ソルジャーも20名程いて、腕自慢のそいつらは全員が挑戦を希望した。
「分かった。じゃあ、お前らの中で一番強いのは誰だ?」
「モーガン、お前がやれよ」
元アメリカ海軍のシールズ上がりのモーガンが馬込に挑戦した。
馬込は石神家本家で身につけた「虎相」になった。
モーガンは威圧され、向かっては行ったが呆気なく馬込に斃された。
馬込は自身の実力はここにいる連中以上だと考えてはいたが、馬込も部隊員の実力は詳細には把握していなかった。
だから一対一での戦闘を最初に提示したのだ。
そして最強の人間の実力を測り、馬込は部隊員の戦闘力を把握した。
自分の余裕も理解した。
「誰でもいい。3人で掛かって来い」
馬込に3人が挑んだ。
三方からの同時攻撃は見事だったが、馬込が回転しながら瞬時に降した。
更に馬込は把握したことで宣言した。
「全員で来い」
残った30名以上の人間が馬込に襲い掛かったが、30秒ほどで全員が地面に伏した。
馬込は圧倒的だった。
一緒に来ていたルーとハーが大喜びだった。
二人が馬込の頬にチューをし、馬込が満面の笑みで二人を抱き締めて唇を突き出し、双子に激しい蹴りを入れられてぶっ飛んだ。
「「調子のんなぁ!」」
部隊員全員が大笑いした。
馬込は圧倒的な強さと共に、自分が四角四面な堅物ではないことをそうやって示したのだ。
馬込の人心掌握の高い能力を知った。
部隊員たちも「花岡」の技以上に、戦場での戦い方を徹底的に鍛え上げられていた。
他のソルジャーも決して無能ではないのだが、石神家本家で鍛え上げられた馬込の実力は別格だ。
だから馬込は圧倒することが出来た。
柔軟さと言う以上に縦横無尽に戦う石神家の戦闘は、他のいかなる軍事教練も追いつかない。
今後、馬込が「ハイドラ」の部隊員をその域に仕上げ、またそれ以上に思いもよらない戦略で絶対防衛を構築するのだ。
馬込の練り上げた戦闘力に加え、今後は奇策めいた戦術まで考えて行く。
今日は脳筋連中に分かり易く君臨するための機会だ。
これから本格的に部隊を鍛え上げるための訓練をしていく。
馬込たちは一度蓮花研究所に移動し。「ポッド」を使って徹底的に戦術の訓練をする。
あらゆる状況で「ハイドラ」が戦い抜く訓練が始まって行った。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
馬込たちは「蓮花研究所」のポッドを使い、ヴァーチャル空間で訓練をした。
《ロータス》が様々な状況を「ハイドラ」に設定し、馬込たちがそれを撃破していく。
もちろん俺も報告を受け、時折馬込たちが見せる「奇策」に驚き、そして喜んでいた。
ポッド以外でも学者たちも含めて実際の戦闘訓練を受け、全員が肉体的にも精強になっていった。
ブランたちやデュールゲリエたちを使って実際の肉体での戦闘もこなしていく。
蓮花研究所での訓練を終え、馬込たち「トラキリー」は聖の指導で演習訓練を始めた。
アラスカだ。
聖は俺の意図を汲んで、「トラキリー」を防衛戦に特化した部隊に鍛え上げてくれるだろう。
1月の下旬のことだった。
「トラ!」
聖から連絡があった。
「おう、どうした?」
「「トラキリー」なんだけどよ、そろそろ実戦に近い訓練をしたいんだ」
「おお、早いな」
「ああ、あいつら結構やるよ。あの馬込って奴が優秀だ」
「そうか」
聖によれば、馬込が予想以上に部隊の指揮に優れており、聖が出す戦況の課題に十二分に対応するのだという。
だから聖は実際の戦場に近い集団戦をやらせたいようだったが、一つ問題があった。
聖が復帰していることは、まだ極秘事項だったのだ。
だからアラスカのソルジャーを使うわけにも行かず、「セイントPMC」の人間にもごく一部しか聖の無事は知らされていない。
そういうわけで聖は俺にデュールゲリエを揃えられないかと相談して来たのだ。
「もちろんいいぜ」
「ありがとう! じゃあ、デュールゲリエを200体と「スズメバチ」を数万借りれるか?」
「分かった、すぐに用意するよ。他には必要なものはないか?」
「いや大丈夫だ」
俺と聖でデュールゲリエの装備と戦力を話し、俺はその設定で1月中に送ろと答えた。
デュールゲリエの調整は多忙な蓮花や皇紀でなくとも出来る。
俺は双子にやらせることにし、二人に頼んだ。
「タカさん、じゃあ私たちも行くよ」
ハーが言った。
馬込のことが気になるのだろう。
二人でよく石神家本家にも顔を出していたし、アラスカへ来てからも何度も行っていた。
「そうか。まあ俺も行くつもりだったし、一緒に行くか」
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