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雪野出産/捕獲大作戦
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5月中旬の日曜日。
朝食の後、掃除をしようとタカさんのお部屋へ行くと、グローブトロッターの大きなキャリ^ケースを出して、タカさんが荷物を用意して出掛ける準備をしていた。
「あれ、タカさん、どこかへ出掛けるんですか?」
朝食の時にも、タカさんは全然そんなことは言っていなかった。
時々、私たちにも何も言わずに出掛けることがある人だ。
多分、お墓参りが一番多く、そういう時は大抵深夜で翌朝には戻って来ることも多い。
タカさんは生きている人もそうだけど、死んだ人にまで優しい。
また、私たちにも話せないような用事で出掛けることもある。
後から分かったが、ロボと一緒に「虎星」なんかで鍛錬している時もあった。
タカさんは人知れずそうやってどこかで鍛錬をしている。
だからいつも私たちよりも途轍もなく強い。
もう石神家本家でも、タカさんに敵う人間はいなくなっている。
あの一日中鍛錬をしている人たちよりも、タカさんはやっているということだ。
それを知らない人は「凄い才能ですね」とか言う。
でも、そんなものじゃない。
タカさんは必死で誰よりも努力しているのだ。
虎白さんたちにも、それは分かっている。
本当に尊敬する。
その上、普段は病院のお仕事もちゃんとやっているのだ。
そっちも論文を大量に読んで、一江さんたちの教育までしている。
まあ、たまーに怪しい用事もあるようだ。
タヌ吉さんたち妖魔と会っていることもあるみたいだ。
タカさんのエッチ!
「おう、もうすぐ雪野さんの出産だったろう」
「ああ、そうですね?」
「だからよ。俺、ちょっと身を隠しに行くわ」
「え、どういうことですか!」
タカさんが嫌そうな顔をしている。
でも私もなんにも聞いてないよー!
「あいつら、今度も子どもが生まれたらよ」
「はい」
「また俺に名付けを頼みに来るだろう!」
「ああ!」
「なんか前から早乙女が頼んで来てるしよ」
「でもなー」
タカさん、逃げる気かぁー。
タカさんは自分で着替えなどを揃えている。
下着やシャツなどとスーツも何着か。
量を見ると、結構な機関いなくなるつもりだぁ!
グローブトロッターの大きなキャリーケースにどんどん詰め込んでいるじゃないか!
雪野さんの出産予定日は金曜日だと聞いている。
じゃあ、その後も行方をくらます気だぁ!
私たちは連絡が付くんだろうか?
「それで、どこに行くんです?」
「仕事があるからなぁ。しばらく鷹のとこにでもいるよ」
不安だったが、タカさんは意外とあっさりと教えてくれた。
「じゃあ電話、忘れないで下さいね」
「おう!」
「ちゃんと充電して下さい!」
「鷹にやってもらう」
「はい!」
タカさんはスマホが苦手だ。
いつも充電は私たちがやってる。
そうしないとバッテリーが切れてタカさんと連絡が付かなくなる。
まあ、「虎」の軍の端末もあるのだが、私用でそれを使うと激しく怒られる。
タカさんは急いで出て行った。
雪野さんの出産予定日は金曜日にはどうしよう。
あー、私も知らないって言っとかないといけないのかー。
早乙女さんたち、どうするんだろう。
きっとスマホが通じないとなると、病院に電話するんだろうなぁ。
そうすると一江さんが「タカさんは出張中」とか嘘を言うんだろうなぁ。
タカさんも別に早乙女さんの家の出産が嫌なわけじゃないだろうけど。
あの名付けは本当に嫌がっているからなぁ。
それでも今までやってきたものだから、今回は物理的に逃げる、と。
気持ちは分かるけど、早乙女さんたちの気持ちも分かるしなー。
はぁー、どうしたもんか。
タカさんが出掛けた後で、机に色紙があるのを見つけた。
《ポチ》
「……」
タカさん、アンマリデスヨ……
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
金曜日のお昼。
やっぱり早乙女さんから電話が来た。
「もしもし、早乙女さん!」
「ああ、亜紀ちゃん! さっき雪野さんが出産したんだ」
「それはおめでとうございます!」
「ありがとう! 元気な女の子だよ!」
「そうですか!」
早乙女さんが本当に嬉しそうだった。
「ところでさ、石神に連絡が付かなくって」
「あ、ああー」
やっぱり来たかぁー。
「病院に電話したら、一江さんから出張中なんだって聞いてね」
「え、ええ、そうですね」
「いつ帰るのかな?」
「あ、ああ、私たちも詳しくは聞いてなくて。タカさんはしばらく戻らないかもって」
「そうなのか! ああ、困ったな」
「行き先も知らないんですよ」
「でも、スマホも繋がらないっておかしいじゃないか?」
「え、ええ、そうですね」
流石は警察官。
矛盾にもう気付いている。
タカさん、作戦がザル過ぎですよー!
「まさか、「虎」の軍の作戦行動中なのかな?」
「い、いいえ、あの……」
もうダメだよー!
「亜紀ちゃん、何か隠してる?」
「すいません!」
もう正直に白状した。
「亜紀ちゃん!」
「しばらく行方をくらますって言ってました!」
「なんだって!」
「すいません! 私もよくは分かりません!」
「石神に子どもの名前を頼みたいのに!」
うわぁぁぁぁ、早乙女さん、それですよー!
「タカさんには探すなって言われてます」
「そうなのか。分かった」
「え?」
早乙女さんが硬い声で言った。
「自分で探すよ」
「え、はい?」
あれ、なんかヘンな方向に向かってるぞ?
「じゃあ、もしも石神から連絡が来たら教えてくれる?」
「はい、それはもう!」
「ありがとう」
電話が切れた。
うーん……大丈夫だろうかぁー……
朝食の後、掃除をしようとタカさんのお部屋へ行くと、グローブトロッターの大きなキャリ^ケースを出して、タカさんが荷物を用意して出掛ける準備をしていた。
「あれ、タカさん、どこかへ出掛けるんですか?」
朝食の時にも、タカさんは全然そんなことは言っていなかった。
時々、私たちにも何も言わずに出掛けることがある人だ。
多分、お墓参りが一番多く、そういう時は大抵深夜で翌朝には戻って来ることも多い。
タカさんは生きている人もそうだけど、死んだ人にまで優しい。
また、私たちにも話せないような用事で出掛けることもある。
後から分かったが、ロボと一緒に「虎星」なんかで鍛錬している時もあった。
タカさんは人知れずそうやってどこかで鍛錬をしている。
だからいつも私たちよりも途轍もなく強い。
もう石神家本家でも、タカさんに敵う人間はいなくなっている。
あの一日中鍛錬をしている人たちよりも、タカさんはやっているということだ。
それを知らない人は「凄い才能ですね」とか言う。
でも、そんなものじゃない。
タカさんは必死で誰よりも努力しているのだ。
虎白さんたちにも、それは分かっている。
本当に尊敬する。
その上、普段は病院のお仕事もちゃんとやっているのだ。
そっちも論文を大量に読んで、一江さんたちの教育までしている。
まあ、たまーに怪しい用事もあるようだ。
タヌ吉さんたち妖魔と会っていることもあるみたいだ。
タカさんのエッチ!
「おう、もうすぐ雪野さんの出産だったろう」
「ああ、そうですね?」
「だからよ。俺、ちょっと身を隠しに行くわ」
「え、どういうことですか!」
タカさんが嫌そうな顔をしている。
でも私もなんにも聞いてないよー!
「あいつら、今度も子どもが生まれたらよ」
「はい」
「また俺に名付けを頼みに来るだろう!」
「ああ!」
「なんか前から早乙女が頼んで来てるしよ」
「でもなー」
タカさん、逃げる気かぁー。
タカさんは自分で着替えなどを揃えている。
下着やシャツなどとスーツも何着か。
量を見ると、結構な機関いなくなるつもりだぁ!
グローブトロッターの大きなキャリーケースにどんどん詰め込んでいるじゃないか!
雪野さんの出産予定日は金曜日だと聞いている。
じゃあ、その後も行方をくらます気だぁ!
私たちは連絡が付くんだろうか?
「それで、どこに行くんです?」
「仕事があるからなぁ。しばらく鷹のとこにでもいるよ」
不安だったが、タカさんは意外とあっさりと教えてくれた。
「じゃあ電話、忘れないで下さいね」
「おう!」
「ちゃんと充電して下さい!」
「鷹にやってもらう」
「はい!」
タカさんはスマホが苦手だ。
いつも充電は私たちがやってる。
そうしないとバッテリーが切れてタカさんと連絡が付かなくなる。
まあ、「虎」の軍の端末もあるのだが、私用でそれを使うと激しく怒られる。
タカさんは急いで出て行った。
雪野さんの出産予定日は金曜日にはどうしよう。
あー、私も知らないって言っとかないといけないのかー。
早乙女さんたち、どうするんだろう。
きっとスマホが通じないとなると、病院に電話するんだろうなぁ。
そうすると一江さんが「タカさんは出張中」とか嘘を言うんだろうなぁ。
タカさんも別に早乙女さんの家の出産が嫌なわけじゃないだろうけど。
あの名付けは本当に嫌がっているからなぁ。
それでも今までやってきたものだから、今回は物理的に逃げる、と。
気持ちは分かるけど、早乙女さんたちの気持ちも分かるしなー。
はぁー、どうしたもんか。
タカさんが出掛けた後で、机に色紙があるのを見つけた。
《ポチ》
「……」
タカさん、アンマリデスヨ……
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
金曜日のお昼。
やっぱり早乙女さんから電話が来た。
「もしもし、早乙女さん!」
「ああ、亜紀ちゃん! さっき雪野さんが出産したんだ」
「それはおめでとうございます!」
「ありがとう! 元気な女の子だよ!」
「そうですか!」
早乙女さんが本当に嬉しそうだった。
「ところでさ、石神に連絡が付かなくって」
「あ、ああー」
やっぱり来たかぁー。
「病院に電話したら、一江さんから出張中なんだって聞いてね」
「え、ええ、そうですね」
「いつ帰るのかな?」
「あ、ああ、私たちも詳しくは聞いてなくて。タカさんはしばらく戻らないかもって」
「そうなのか! ああ、困ったな」
「行き先も知らないんですよ」
「でも、スマホも繋がらないっておかしいじゃないか?」
「え、ええ、そうですね」
流石は警察官。
矛盾にもう気付いている。
タカさん、作戦がザル過ぎですよー!
「まさか、「虎」の軍の作戦行動中なのかな?」
「い、いいえ、あの……」
もうダメだよー!
「亜紀ちゃん、何か隠してる?」
「すいません!」
もう正直に白状した。
「亜紀ちゃん!」
「しばらく行方をくらますって言ってました!」
「なんだって!」
「すいません! 私もよくは分かりません!」
「石神に子どもの名前を頼みたいのに!」
うわぁぁぁぁ、早乙女さん、それですよー!
「タカさんには探すなって言われてます」
「そうなのか。分かった」
「え?」
早乙女さんが硬い声で言った。
「自分で探すよ」
「え、はい?」
あれ、なんかヘンな方向に向かってるぞ?
「じゃあ、もしも石神から連絡が来たら教えてくれる?」
「はい、それはもう!」
「ありがとう」
電話が切れた。
うーん……大丈夫だろうかぁー……
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