富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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茜の雪辱修行 Ⅲ

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 2ヶ月経ち、私がやっと「魔法陣」を自在に描けるようになると、トラさんが来た。
 虎蘭さんと一緒に鍛錬場に来たのでびっくりした。
 虎蘭さんが本当に嬉しそうな顔をしていた。

 「よう」
 「トラさん!」

 トラさんが青月ちゃんを抱いている。
 青月ちゃんが嬉しそうに笑っていた。

 「あ、笑ってる!」
 「あんだよ?」
 「だって! 私初めて笑ってるとこ見ましたよ!」
 「そうなのか?」

 虎蘭さんが不満そうな顔で言った。

 「そうなの。私も見たこと無いよ。高虎さんが来たら急に笑うようになってね」
 「やっぱそうなんっすか!」
 「なんだ、そうだったのかよ?」
 「そうですよ、まあ、高虎さんですからね」
 「なんだよ!」

 高虎さんは笑って青月ちゃんをあやしていた。

 「それでよ、やっと「魔法陣」が描けるようになったって?」
 「はい!」
 「2週間くらいでと思ってたんだがなぁ。お前の物覚えの悪さを忘れてたぜ」
 「えぇ! そうだったんですかぁ!」

 虎蘭さんが笑っていた。
 トラさんとお会いしたのは、アラスカで処罰を命じられて以来だったが、実はちょくちょくここへは来ていたそうだ。
 でも私には合わずに、いつも私の様子を虎蘭さんや虎水さんたちに聞いて帰っていたという。

 「毎回、茜さんのことを心配してたのよ?」
 「そうなんですか!」

 トラさんが笑っていた。

 「一応処罰ってことで命じたからなぁ。俺が顔を出して励ましちゃおかしいだろ?」
 「すいませんでしたぁ!」
 「まあ、お陰で葵の訓練も相当進んだけどな」
 「葵!」
 「じゃあよ、「虎星」に行くぞ」

 あにそれ?

 「とらぼし?」
 「行きながら説明するよ。虎蘭も一緒に来るか?」
 「もちろん!」

 トラさんと鍛錬場の広い場所へ行くと、多くの剣士の方々が揃っていた。
 みんなタイガーストライプのコンバットスーツを着ている。
 荷物も沢山あった。
 なんか、でっかいUFOがあった……

 「茜!」

 UFOから、飛び出して私に駆け寄って来た。

 「葵!」

 思わず涙が出た。
 葵と抱き合って再会を喜んだ。

 「おい、後にしろ。すぐに出発すんぞ!」

 トラさんに言われてUFOに乗り込むと、ロボさんもいた。
 虎蘭さんと青月ちゃんに飛び上がって挨拶し、虎白さんや虎水さんたちにも挨拶する。
 私と葵の所まで来てくれて、しゃがむと顔を舐めてくれた。

 「ロボさんも一緒ですか」
 「ああ、あっちじゃロボは欠かせねぇんだよ」
 「そうなんすか!」

 なんだろ?
 トラさんはロボさんを抱き上げて可愛がって、「よろしくなー」と声を掛けていた。
 グランマザーさんという、大きな釣鐘に顔がある方がいて、おっかなかった。
 剣士の方々は数百名もいて、トラさんが全員に大きなスクリーンで説明してくれた。
 私と葵は夢中で別れてからのことを話し合っていて、説明はあんまし聞いてなかった。
 20分ほどすると、スクリーンに大きな惑星が投影されていた。

 「おし、着いたぞ! これからさっき言った降下艇に移ってもらう。行け!」

 剣士の方々がぞろぞろと移動していく。
 私は慌ててそれについて行った。
 ら、トラさんに頭を引っぱたかれた。

 「お前はこっちだって言っただろう!」
 
 私と葵はトラさんと一緒の降下艇に乗り込んだ。
 みんな一遍に降りるんじゃないんだー。
 私たちはトラさん、ロボさん、虎蘭さんと青月ちゃん、虎水さんたちと一緒だった。
 グランマザーさんもいて怖かった。
 なんだろ、あの方。
 
 「どうだ、驚いたかよ?」

 トラさんに声を掛けられた。

 「はい、まあ」
 「あれ?」
 
 どこか外国だろうけど、どこなのだろうか。
 降下艇が地上に着陸した。
 後部ハッチからみんなで外に出る。
 空気が美味しい。
 だだっ広い荒野だった。
 地平線まで岩とかしかない。
 どこだろう?

 みんなで外に出ると、虎白さんたちが剣士の方々に指示をして鍛錬を始める。

 「いいか、まずは連山からだ! 一人ずつやれ!」
 『オス!』

 虎白さんが見本で「魔法陣」を描いた。
 そして「連山」を繰り出す。
 とんでもないでかさの技が空中に伸びて行った。
 あんなのは鍛錬中に見たことはない!
 剣士の方々も驚いていた。

 「これが「神雷」だ! 「魔法陣」によって技の威力が絶大になる。今の威力で、《地獄の悪魔》も撃破出来る。教わった奴もいるだろうがまだ高位の「魔法陣」は使うな、ヤバい奴が出て来るからな!」
 『オス!』

 そうか、私が練習させられていたのは、このためか!
 トラさんが私に言った。

 「さて、お前もやってみるか」
 「はい!」

 私は「小雷」で「魔法陣」を描いた。

 「よし、「槍雷」をその中心に撃て!」
 「はい!」

 出来なかった。

 「おい、どうしたんだよ!」
 「あの、「魔法陣」を描くのに精いっぱいで、「槍雷」の動きが出来ません!」
 「!」

 高虎さんが呆れていた。

 「お前がバカだったことを忘れてたぜぇ……」
 「すいません……」

 トラさんが自ら指導してくれ、2時間で何とか出来るようになった。
 私でもとんでもない威力の技が出せた!

 「ふぅー、何とかなったな」
 「ありがとうございます!」
 「ここまで来て無駄に終わるかと心配したぜ」
 「ワハハハハハハ!」
 「笑うんじゃねぇ!」

 その時、地平線の向こうからでかい何かが来た。
 みんな警戒する。

 「みんな心配すんな! 舎弟が来ただけだ!」

 近くに来ると、真っ白い巨大なドラゴンだった。
 え、ドラゴン?

 「偉大なる王よ」

 ドラゴンが喋ったぁー!

 「おう、何しに来た」
 「はい、偉大なる王がいらしたのを感じ、御挨拶に参りました」

 虎白さんがトラさんの近くに来た。

 「こいつが前に話してた奴か」
 「はい、そうです」
 「剣士たちの的にしていい?」
 「いや、辞めてやってください」

 巨大ドラゴンが泣きそうな顔をしていた。
 ドラゴンもそんな顔するんだぁー。

 「でも、お前は散々ぶっ殺したんだろ?」
 「だから許したんですよ! もう手は出さないで下さいね」
 「あんだよ」

 虎白さんは戻って剣士たちに鍛錬を再開した。
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