富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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ダーティ玻璃 Ⅳ3

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 翌朝ハーと一緒に起きた。
 私たちは大体いつも同時に寝て同時に起きる。
 ハーが昨晩のことを謝って来た。

 「いいよ、驚いたけどね!」
 「ゴメン。でも、ウンちゃんの力が何か進化したみたいなんだ」

 ハーがそう言った。
 前にもあったことで、夢の中でウンちゃんがそう教えてくれるらしい。

 「そうなの!」
 「うん、そんな予感がする」
 「スゴイウンコだったもんね!」
 「エヘヘヘヘヘヘ」

 まー、尋常じゃないもんなー。
 ウンコと言えばそりゃウンちゃんかー。
 でも、ハーにもよく分からないらしい。
 顔を洗って一緒にリヴィングに降りた。

 「「おはよー!」」
 「ああ、おはよう」
 「ハーちゃん、大丈夫?」
 「うん、柳ちゃん、ごめんなさい。亜紀ちゃんも」
 「もういいよ。でも身体は大丈夫なの?」
 「うん!」

 一緒に朝食を食べた。
 私とハーはその後でベッドごとウッドデッキに運んで一生懸命消毒して干した。
 捨てたいんだけど、タカさんから貰ったものだから大事にしたい。
 ウンコくらいで捨てられるわけもない。
 
 「ルー、私がやるよ」
 「何言ってんの。これは二人のベッドでしょ!」
 「ルー、ありがとう!」
 「うん!」

 ウンコくらいで私とハーの絆は壊れん!
 二人でお喋りしながら消毒し、ウッドデッキに干した。
 今日は晴れでよかったー。

 「じゃあ、いつもの家の掃除をすっかー」
 「うん!」

 亜紀ちゃんと柳ちゃんは先に始めている。
 私たちの分担まで始めてくれているので、急いで加わった。
 皇紀ちゃんのベッドも借りたので、ついでに一緒に干した。

 「ヘンな臭いしたね」
 「ワハハハハハハハハハ!」

 皇紀ちゃんの部屋のお掃除もする。
 お世話になりましたー。

 昼食の時間になり、みんなでステーキうどんを作る。

 「今晩はさ、お詫びにわたしが「桜蘭」でおごるよ」
 「「「やったぁー!」」」

 ハーが気を遣って言った。
 申し訳ない気もするけど、ハーも気にしていることだろう。

 「じゃあ、電話しとくね」

 ハーが固定電話で「桜蘭」に電話しようとした。
 なんか身体を掻いてる。
 ハーが立ち止まった。
 ん?

 ハーが倒れた!

 「ハー!」

 私が駆け寄ると、あ、なんかクサイ!
 ロボが「フッシャー」と鳴いてリヴィングを駆け出てった。
 倒れたハーの全身にウンコが拡がってるぅ!
 これはお尻からじゃないそー!

 「ハー、どうしたの!」
 「……」

 ハーの意識が無い!
 その間にもウンコがハーの全身を覆って行く!

 「ハー!」

 叫びながら、ハーに触れなかった。
 ウンコだもん!

 「き、救急車!」

 柳ちゃんんが叫んで、自分のスマホを手に取った。
 その時、ハーが目を覚ました。
 もちろんウンコだらけだ!
 ちょっと動くとどんどんウンコが床に零れる!

 「ハー! 大丈夫なの!」
 「うん、へーき。今ね、ウンちゃんと夢の中で話したの」
 「ウンちゃん!」
 「あのね、ちょっと前にルーと南極と北極で「ヒモダンス」やったじゃん」
 「ああ、あれ?」
 「そう! 両極の地磁気とか循環してるいろんなエネルギーが関わってね、それでウンちゃんもまた進化したんだって」
 「ヒモダンス!」

 亜紀ちゃんが感動してる。
 おい、今それどこじゃねぇぞ。
 話している間にも、ハーはウンコに覆われてる!

 「だからね、これは一時的な現象で、脱皮みたいなものなんだってさ」
 「ウンコの?」
 「しょうがないじゃん、ウンちゃんだもん」
 「そ、そうかー……」

 亜紀ちゃんがハーに駆け寄ろうとして危ないところで立ち止まった。

 「ハー! これは「ヒモダンス」のお陰なの!:
 「うん、そーみたい」
 「それで、《ヒモダンス・タイガー》さんは!」
 「え、そんなの知らない」
 「テッメェー! 大事なことだぞー!」
 「そうなの?」

 柳さんが「まあまあ」と言って亜紀ちゃんを宥めた。
 ところで、ハーの周りにどんどんウンコが……

 「あのさ、ハー、歩ける?」
 「えーと、今はちょっと無理かな」
 「そうなの! 困ったな、じゃあ救急車よぶかー」
 「病院に行くの?」
 「しょうがないじゃん、普通じゃないよ、それ!」
 「そっかー」

 なんたって、ウンコだらけだ。
 さっき救急車を呼ぼうとしてた柳ちゃんが言った。

 「これ、もしかしたら病院じゃまずいんじゃない?」
 「柳ちゃん、どういうこと?」
 「だって、どういう治療をするの? それに下手をしたら、身体に却って不味いことだって」
 「そっか、ウンちゃんの進化だもんね」
 「うん」

 亜紀ちゃんが腕を組んで考えていた。

 「それならさ、ウンちゃんの所が良くない?」
 「あ、そうか!」
 「それにさ、あそこならウンちゃんがウンコを綺麗にしてくれるよ」
 「亜紀ちゃん、さすが!」
 「ま、まあね」

 私は褒めたけど、亜紀ちゃんはハーをここに置いときたくないだけだろう。
 悪いけど同意。

 「えー、ウンちゃんのマンホールに行くの?」
 「それがいいよ、ハー!」
 「うーん」
 「ねえ、このままウンコ塗れでいたいの?」
 「そうじゃないけどさー」
 「じゃあ、行こうよ。柳ちゃん、アルファードを出して!」
 「ゲェェェェェーー!」
 
 柳ちゃんが泣きそうな顔になった。
 優しい柳ちゃんは絶対に「イヤ」と言えない人だ。
 亜紀ちゃんと私でブルーシートを持って来て、ハーを包む。
 ハーには無理して立ってもらい、ブルーシートに乗ってもらった。
 床に落ちたウンコも拾って、隙間に詰め込んで行く。
 ハーが文句を言ったけど、お前はもうウンコだらけだろう!
 巻き込んでいく。

 「ウンコだよー!」
 「しょうがないでしょ!」

 なんかネッチャリする。
 ハーを持ち上げると、ブルーシートの隙間からウンコがはみ出て来る。
 亜紀ちゃんと注意しながら運んだ。
 臭いもきっついよー!
 一旦外に運び出して、リヴィングの床を消毒して掃除した。
 70リットルのゴミ袋が一杯になった。
 スッゲぇなー。
 ガレージから柳ちゃんがアルファードを出して来る。

 「あのさ、ルーフに乗せてね!」
 「「うん」」
 
 ここは私と亜紀ちゃんで担ぎ上げた。
 ネッチョリする。
 あ、ブルーシートの隙間からまたウンコがはみ出て来てる!
 そりゃそうかー、ハーからどんどん出て来るもんなー・
 もっと巻いても同じなので、柳ちゃんには黙ってた。
 亜紀ちゃんも気付いてるけど黙ってる。
 アルファードのルーフが汚れて行く。
 柳ちゃん、ごめんね。
 一応ロープでルーフのブルーシートを固定した。
 あ、またはみ出て来る。
 ルーフはもうウンコだらけだけど、見えないから柳ちゃんには黙ってる。
 私たちは車内に乗り込む。
 私が助手席に座った。

 「じゃあ行くよ」
 
 ウンちゃんの居場所は柳ちゃんも覚えてる。
 記憶から消したいだろうにー。
 赤信号で停止した。

 「ギャァァァァァァァァァーーーーーー!」

 フロントウィンドウにウンコがタレ流れて来た!

 「ハーちゃん! 何とかして!}
 「無理だよ、ブルーシートもうないし」
 「じゃあどうすんのよ!」

 柳ちゃんは半狂乱だ。

 「このままいくしかないね」
 「ちょっとぉー!」
 「ごー!」

 柳ちゃんが泣き出した。
 「ゴメンネ」と繰り返し呟いてる。
 亜紀ちゃんは後ろで知らんぷりしてた。
 ずっこいなー。

 「涙で前が見えない」

 私が運転を替わった。
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