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道間家 緊急防衛戦 Ⅲ
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母上たちが出掛けられて2時間が経った。
私は訓練を一段落し、蓑原たちと縁側に座って休んでいた。
夜羽は揺り籠にいるが、奈々の姿がいつの間にか縁側から消えていた。
あいつ、一体どこへ行ったか。
蓑原が冷たい茶を持って来てくれる。
夜羽は揺り籠で目を開いている。
私が顔を優しく撫でると喜んで私の手を小さな手で握った。
その時、突然目の前にハイファが現れた。
ハイファがこのような現われ方をすることは無かった。
いつも出現の前に、現われる合図をするのだ。
空間が淡く輝き、そこからハイファは出て来る。
私はすぐに緊急なのだと悟った。
「天狼様、すぐにわたくしと!」
「ハイファ! 何があった!」
「敵襲です。来ます!」
突然、警報が鳴った。
父上が備えて下さった「霊素観測レーダー」が発報したのだ。
すぐに父上が設置された超量子コンピューター《鎧(がい)》が状況を報告する。
《「ゲート」反応を感知。規模5キロメートル級多数。デュールゲリエ全機発進》
「天狼様、お急ぎ下さい」
「ハイファ、奈々がいない!」
「奈々様は武器庫にいらっしゃいます。わたくしが後でお連れしますので」
「ダメだ。今だ! 夜羽はここにいる!」
「分かりました。では先に少々片付けておきましょう」
そう言うとハイファは庭先に出て行った。
開き始めた「ゲート」に指先を向けて、一瞬で破壊した。
幾つかの「ゲート」がそれで消し飛んで行く。
私にも分からないが、途轍もない力だ。
基本的に「ゲート:は破壊出来ないと言われている。
だから以前は開いたゲートの中へ向かって攻撃することで、そこから出ようとする妖魔などを攻撃していた。
放置しておけば、膨大な数の妖魔たちが出て来て大変なことになる。
でも最近では父上が「ゲート」そのものを破壊する技を編み出して、少数の人間だけだが、出現した「ゲート」を破壊することが出来るようになったと聞いている。
父上、聖様、石神家の剣聖の方々、そして亜紀姉様とルー、ハー姉様。
だが今回のような5キロメートル級は、その中でも何人が破壊出来るのか分からない。
父上ならば造作もないことだろうが。
それを、ハイファは呆気なくやっている。
ハイファが戦う姿など、初めて見たのだが。
《5キロメートル級「ゲート」、多重結界の形成を始めました。妖魔100兆と推測。《デモノイド》50,ロシア軍と思しき軍人30名が排出」。蓮花研究所へスクランブル、ディアブロ出撃、アラスカからもスクランブル、《ロータス》が「マルドゥック》の発進を命じました。尚、《道間城》にも同規模の攻撃》
「なんだって!」
ここの機器の通報で続々と救援が来ているようだけど、多重結界はそうそうは破れない。
今は避難することが最優先だ。
そして、庭から叫び声を聞いた、。
「天狼様!」
ハイファの悲痛な叫びだ。
ハイファに何かあったのか!
私が目を向けるとハイファの姿が歪んでいた。
そしてたちまち見えなくなった。
一瞬ハイファの姿が戻った瞬間、凄まじい波動を感じた。
その直後、全ての「ゲート」が沈黙した。
既に出ていた無数の妖魔たちも消えていた。
ハイファの姿も、再び消えていた。
《「ゲート」沈黙。妖魔100兆が消滅。《デモノイド》50とロシア兵30名が残存》
私は消えたハイファのことを《鎧》に問い質した。
「《鎧》! ハイファはどうなった!》
《ハイファ? どの者でしょうか?》
「!」
《鎧》にはハイファを認識されていないのか!
すぐにそれはあり得ることだと感じた。
「庭で「ゲート」を攻撃していただろう!」
《いいえ》
「「ゲート」が消えていたじゃないか! 最後に「ゲート」から出ていた100兆の妖魔を殺した! あれをやっていた存在だ!」
《……天狼様の認識で現象を再構築。はい、未知の存在を仮定して、その位置を推測しました》
「それだ!」
《そこへ「ゲート」が出現、複数の「ゲート」が重なり合った後に、消滅しました」
「!」
私はすぐに理解した。
ハイファは「ゲート」に包まれて消えたのだ。
「ゲート」にそんな使い方があったとは!
恐らくハイファは最期の攻撃で、全ての妖魔を消し去ったのだ。
何重にも重なった「ゲート」を破壊しつつ、全ての妖魔を斃した。
ハイファの底知れぬ大きさを初めて知った。
だがまだ《デモノイド》とロシア兵は残っている。
ハイファも妖魔に集中し、人間の攻撃までは及ばなかったのだろうと私は考えた。
《道間家の護衛妖魔は全て沈黙。今は動けません。防衛システムを100%解放。避難をお急ぎ下さい》
護衛の妖魔が動かないのは、多分先ほどのハイファの力を浴びたせいだろう。
死んでいなければ良いのだが。
蓑原たち12名はすぐに集まって僕たちの周りに来た。
他の家の者たちも、既に避難を始めているに違いない。
幸い、《デモノイド》たちとはまだ距離がある。
多分、妖魔で私たちを殺そうとしたため、《デモノイド》とロシア兵は離れた位置の「ゲート」から出て来たのだ。
そのことも、ハイファの波動に殺されなかった所以だろう。
しかし、すぐに爆発音が響いて来る。
敵が破壊を始めたのだ。
「兄上様!」
奈々が走って来た。
良かった、無事でいてくれた!
「奈々、すぐに避難をするぞ」
「はい!」
夜羽は私が抱えた。
蓑原たちは万一の攻撃に備えているためだ。
今は練習用の木刀しか持っていないことが悔やまれた。
「兄上、武器庫へ!」
「なんだって?」
「武器が必要です! 先にそれを!」
蓑原たちは避難を先にと言った。
「いや、奈々の言う通りだ。避難場所も破られる可能性がある。武器を持っておいた方がいい」
「分かりました!」
全員で武器庫へ向かう。
私は母上たちの無事を祈った。
あちらにはハイファがいない。
100兆もの妖魔に襲われ、大変なことになっているだろう。
母上、五平所、どうか御無事で……
私は訓練を一段落し、蓑原たちと縁側に座って休んでいた。
夜羽は揺り籠にいるが、奈々の姿がいつの間にか縁側から消えていた。
あいつ、一体どこへ行ったか。
蓑原が冷たい茶を持って来てくれる。
夜羽は揺り籠で目を開いている。
私が顔を優しく撫でると喜んで私の手を小さな手で握った。
その時、突然目の前にハイファが現れた。
ハイファがこのような現われ方をすることは無かった。
いつも出現の前に、現われる合図をするのだ。
空間が淡く輝き、そこからハイファは出て来る。
私はすぐに緊急なのだと悟った。
「天狼様、すぐにわたくしと!」
「ハイファ! 何があった!」
「敵襲です。来ます!」
突然、警報が鳴った。
父上が備えて下さった「霊素観測レーダー」が発報したのだ。
すぐに父上が設置された超量子コンピューター《鎧(がい)》が状況を報告する。
《「ゲート」反応を感知。規模5キロメートル級多数。デュールゲリエ全機発進》
「天狼様、お急ぎ下さい」
「ハイファ、奈々がいない!」
「奈々様は武器庫にいらっしゃいます。わたくしが後でお連れしますので」
「ダメだ。今だ! 夜羽はここにいる!」
「分かりました。では先に少々片付けておきましょう」
そう言うとハイファは庭先に出て行った。
開き始めた「ゲート」に指先を向けて、一瞬で破壊した。
幾つかの「ゲート」がそれで消し飛んで行く。
私にも分からないが、途轍もない力だ。
基本的に「ゲート:は破壊出来ないと言われている。
だから以前は開いたゲートの中へ向かって攻撃することで、そこから出ようとする妖魔などを攻撃していた。
放置しておけば、膨大な数の妖魔たちが出て来て大変なことになる。
でも最近では父上が「ゲート」そのものを破壊する技を編み出して、少数の人間だけだが、出現した「ゲート」を破壊することが出来るようになったと聞いている。
父上、聖様、石神家の剣聖の方々、そして亜紀姉様とルー、ハー姉様。
だが今回のような5キロメートル級は、その中でも何人が破壊出来るのか分からない。
父上ならば造作もないことだろうが。
それを、ハイファは呆気なくやっている。
ハイファが戦う姿など、初めて見たのだが。
《5キロメートル級「ゲート」、多重結界の形成を始めました。妖魔100兆と推測。《デモノイド》50,ロシア軍と思しき軍人30名が排出」。蓮花研究所へスクランブル、ディアブロ出撃、アラスカからもスクランブル、《ロータス》が「マルドゥック》の発進を命じました。尚、《道間城》にも同規模の攻撃》
「なんだって!」
ここの機器の通報で続々と救援が来ているようだけど、多重結界はそうそうは破れない。
今は避難することが最優先だ。
そして、庭から叫び声を聞いた、。
「天狼様!」
ハイファの悲痛な叫びだ。
ハイファに何かあったのか!
私が目を向けるとハイファの姿が歪んでいた。
そしてたちまち見えなくなった。
一瞬ハイファの姿が戻った瞬間、凄まじい波動を感じた。
その直後、全ての「ゲート」が沈黙した。
既に出ていた無数の妖魔たちも消えていた。
ハイファの姿も、再び消えていた。
《「ゲート」沈黙。妖魔100兆が消滅。《デモノイド》50とロシア兵30名が残存》
私は消えたハイファのことを《鎧》に問い質した。
「《鎧》! ハイファはどうなった!》
《ハイファ? どの者でしょうか?》
「!」
《鎧》にはハイファを認識されていないのか!
すぐにそれはあり得ることだと感じた。
「庭で「ゲート」を攻撃していただろう!」
《いいえ》
「「ゲート」が消えていたじゃないか! 最後に「ゲート」から出ていた100兆の妖魔を殺した! あれをやっていた存在だ!」
《……天狼様の認識で現象を再構築。はい、未知の存在を仮定して、その位置を推測しました》
「それだ!」
《そこへ「ゲート」が出現、複数の「ゲート」が重なり合った後に、消滅しました」
「!」
私はすぐに理解した。
ハイファは「ゲート」に包まれて消えたのだ。
「ゲート」にそんな使い方があったとは!
恐らくハイファは最期の攻撃で、全ての妖魔を消し去ったのだ。
何重にも重なった「ゲート」を破壊しつつ、全ての妖魔を斃した。
ハイファの底知れぬ大きさを初めて知った。
だがまだ《デモノイド》とロシア兵は残っている。
ハイファも妖魔に集中し、人間の攻撃までは及ばなかったのだろうと私は考えた。
《道間家の護衛妖魔は全て沈黙。今は動けません。防衛システムを100%解放。避難をお急ぎ下さい》
護衛の妖魔が動かないのは、多分先ほどのハイファの力を浴びたせいだろう。
死んでいなければ良いのだが。
蓑原たち12名はすぐに集まって僕たちの周りに来た。
他の家の者たちも、既に避難を始めているに違いない。
幸い、《デモノイド》たちとはまだ距離がある。
多分、妖魔で私たちを殺そうとしたため、《デモノイド》とロシア兵は離れた位置の「ゲート」から出て来たのだ。
そのことも、ハイファの波動に殺されなかった所以だろう。
しかし、すぐに爆発音が響いて来る。
敵が破壊を始めたのだ。
「兄上様!」
奈々が走って来た。
良かった、無事でいてくれた!
「奈々、すぐに避難をするぞ」
「はい!」
夜羽は私が抱えた。
蓑原たちは万一の攻撃に備えているためだ。
今は練習用の木刀しか持っていないことが悔やまれた。
「兄上、武器庫へ!」
「なんだって?」
「武器が必要です! 先にそれを!」
蓑原たちは避難を先にと言った。
「いや、奈々の言う通りだ。避難場所も破られる可能性がある。武器を持っておいた方がいい」
「分かりました!」
全員で武器庫へ向かう。
私は母上たちの無事を祈った。
あちらにはハイファがいない。
100兆もの妖魔に襲われ、大変なことになっているだろう。
母上、五平所、どうか御無事で……
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