富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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道間家 緊急防衛戦 Ⅶ

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 タカさんはまだ「虎星」へ出掛けていた。
 明日の昼まで戻らなと聞いている。
 最近は「魔法陣」の習得を大勢に教えるために、いろいろな人間を入れ替わりに連れて出掛けている。
 地球上では敵に知られる可能性があるためだ。
 今回は「虎酔会」の方々だったはずだ。 
 今までは万一にも敵に知られないように、「魔法陣」を一握りの人間にしか伝えていなかった。
 だが、最近は多くの戦場で使っているので、もう解禁ではないが裾野を広げる方針に切り替えたようだ。
 徹底的に「魔法陣」と隠ぺいのためのカバーの光円の作成を習得させ、一定の熟練に達したところで「虎星」に連れて行く。
 私と柳さん、双子は今回は同行していない。
 私は今日は講義が無いために家でロボと一緒にいた。
 双子は「人生研究会」の会合で出掛け、柳さんは御堂さんの所へ行っていて私とロボだけだ。
 家の掃除などを終えて、ちょっと休んでから昼食をと思っていた。

 《アイオーン》が緊急の連絡を伝えた。

 《道間家、「道間城」にそれぞれ100兆の妖魔。多重結界の「ゲート」に覆われ、詳しい状況は不明》
 「なんだってぇ!!」

 《《ロータス》と《ウラノス》からディアブロの出撃を要請。石神家から剣聖、アラスカから「ニーズヘッグ」、蓮花研究所から「マルドゥック」が出撃。ディアブロもお急ぎ下さい》

 「分かったぁー!」

 急いで「Ωコンバットスーツ」に着替えた。
 早乙女さんのお宅に連絡し、雪野さんにロボを預かってもらう。
 その間に《アイオーン》から続報の状況の説明がある。
 建設中の「道間城」には麗星さんと五平所さん、そして道間家には天狼、奈々、夜羽が遺されている。
 建設中の「道間城」には石神家の剣聖の方々3名が護っている。
 今は麗星さんも「道間城」にいるはずだ。
 でも、屋敷の方に天狼たちしかいない!
 蓮花さんの研究所から「マルドゥック」が13機、全機出たそうだ。
 あそこの防衛に支障を来すだろうけど、蓮花さんは麗星さんたちを何としても救いたいのだろう。
 アラスカからも「ニーズヘッグ」が8機スクランブルで出撃している。
 石神家からも虎白さんたちが向かって下さるそうだ。
 戦力は十分だ。
 あとは時間との勝負になるだろう。

 「ウォォォォーーーー!」

 私も全力で飛んだ。



 

 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■





 《敵を半数まで減らしました。残存《デモノイド》10、ロシア兵22です》

 《鎧》から報告があった。
 どうやら《デモノイド》を優先して攻撃したようだ。
 だが今も敵の攻撃は続いている。
 防衛機構も大部分が破壊されたためだ。

 《携帯ミサイル「ジャベリン」残存2門、ダネルNTW1門、AKー12、95連ドラムマガジンを全員が携行》

 《鎧》が敵の現在位置と共に武装を報せて来る。
 屋敷の被害も酷く、「ジャベリン」による破壊が何か所もあった。
 母上と五平所がさぞ嘆くことだろう。
 東側でが特に酷い。
 私たちの寝所だ。
 敵はこの屋敷の構造を知っているようだった。
 恐らくは道間家の裏切り者・宇羅の情報だろう。
 襲われた箇所は、私たちがいそうな場所ばかりが優先的に狙われているのも分かった。

 だが、この武器庫のことは知らないようだった。
 父上が新たに設置した場所だからだろうか。
 ならば、敵は旧い屋敷しか知らない可能性が高い。
 幸いにも父上が設置してくれた防火設備が起動し、火災はすぐに鎮火している。
 《鎧》が敵の位置をまた報せてくれる。
 しかし敵も高速移動を始めており、私たちが見つかるのもそう遠くはないだろう。
 《鎧》は救援が来るまでの予測時間はあと10分だと言っていた。
 
 「兄上、私が敵を惹き付けます」
 「何を言っている!」

 奈々がとんでもないことを言った。

 「《道間皇王》である兄上は絶対に生き延びなければなりません」
 「お前を残して逃げるわけがないだろう!」

 こんな状況の中で、奈々が不意に満面の笑顔になって私を見た。
 本当に清らかで透明な笑顔だ。

 「兄上、私は父上と母上の間にこの世に生まれてまいりました。わたしの夢が叶ったのでございます」
 「奈々、何を言っているんだ?」

 意味は分からないが、奈々が本心からそう思っていることは分かった。

 「父上の子として生まれるのがわたしの夢でございました。そして父上から母上から、それに兄上からかわいがってもいただきました」
 「奈々!」
 「五平所にも大変に可愛がってもらいました。もう思い残すことはありません」
 「ばか!」

 奈々の頬を打った。
 これまで、奈々に手を挙げたことは無い。
 奈々も驚いていた。

 「私は確かにお前の言う《道間皇王》だ! 私が必ずお前たちを護るぞ!」
 「兄上……」
 「私に任せろ!」
 「!」

 奈々が微笑んだ。
 もう時間が無い。

 「蓑原、ここで敵を迎え撃つぞ」
 「避難所へは行かないのですか?」
 「無理だ。敵に見つかる可能性が高い。それに武器庫の前であれば、周囲は頑丈に作られている」
 「はい!」
 「兄上、バリケードをきずきましょう!」
 「ああ、そうだな。奈々、蓑原たちに指示してくれ」
 「はい!」

 奈々はこういう場面で頼りになる。
 奈々がすぐに指示した。
 
 「鹿島、お前はいちばん銃の扱いが上手い。優先して「ジャベリン」を破壊しなさい!」
 「はい!」
 「ぶち込まれれば終わりよ! 私も援護する!」
 「分かりました!」

 鹿島がM82を構えて床に伏せた。
 その間に、蓑原たちが奈々の指示でどんどんバリケードを築いていく。
 武器庫の中には分厚い鋼鉄製のデスクが幾つもあった。
 蓑原たち全員が防弾着を装備する。
 私たちにはサイズが大きいので、ポリカーボネートの防弾楯を何人かで立ててくれた。
 父上が特別に開発させた高性能のものだ。
 また奈々の指示でクレイモア対人地雷を全て仕掛けた。
 60個もあった。
 全て無線で起爆させるようになっており、奈々が《鎧》に命じて起爆のタイミングを任せた。

 「この紙を「クレイモア」にかぶせて!」

 奈々が廊下の端に設置した「クレイモア」を薄葉紙で覆うように指示した。
 「クレイモア」が見えていては警戒されてしまうためか。
 「道間家」であれば、薄葉紙が廊下に敷かれてあっても違和感は無い。
 何かの呪術的なものと捉えられることだろう。
 まったくよく考えている。
 ここの廊下は分厚い鋼鉄製の壁であり、20メートル先に左右に走る廊下がある。
 敵はそのどちらかから来るはずだ。
 屋敷の中の映像は《鎧》が私たちに見せてくれている。
 奈々はその端末を目の前に置いた。。
 敵はまだ屋敷内を探っている。
 《デモノイド》とロシア兵は分かれて動いているようだ。
 《デモノイド》がこちらへ近づいて来るのが分かった。

 《《デモノイド》来ます》

 《鎧》が知らせる。



 全員が集中した。
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