富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

文字の大きさ
2,990 / 3,202

パオパオ Ⅵ

しおりを挟む
 ジェイたちが覆われた「ゲート」の多重結界は、《御虎シティ》に配備していた「マルドゥック」たちによりすぐに破壊された。
 更に、逸早く斬が大穴を開けてくれていたお陰で、商業地区の様子は全て把握していた。
 そのため「マルドゥック」たちも内部に影響がないように「ゲート」を内側から素早く破壊出来た。
 ジェイたちの変身ももちろん観測していた。
 俺も呆気にとられたが。
 想定外過ぎる。
 一瞬、あいつらが妖魔に憑依されたかとも思ったくらいだ。
 俺はすぐに現場へ飛んだが、既に戦いは終わっていた。
 230体もの《地獄の悪魔》が数分で斃されていたことにまた驚いた。
 しかもほとんどを「マンモスの牙隊」の連中で屠ったのだ。。
 斬は数体をやったに過ぎない。
 完全に「マンモスの牙隊」の戦果だった。
 
 俺が行った時も、まだジェイたちはマンモス人間の姿のままだった。
 こんな身体になって心配もしたが、何しろ周囲は濃厚な「栗の花の臭い」でなんかどうでもよくなった。
 恐ろしく強い連中なのだが、下品なことこの上ない。
 褒める気も失せた。
 まあ、このままでも問題ねぇだろう、とすら思ってしまった。
 ジェイたちはまだ呆然として動いてはいないが、負傷は無いことは《ミトラ》の観測で分かっている。
 大分放心しているが、意識もある。
 あいつらがマンモス人間に変化した時には俺も驚いたが、とにかく凄まじい攻撃力だった。
 股間から伸びた黒い触手が縦横無尽に《地獄の悪魔》たちを切り裂いて行ったのも見ている。

 「おい、お前、説明しろ」
 
 斬が物凄く不快そうな顔で俺に言った。
 恐らく折角の獲物をジェイたちに奪われたことと、こんなとんでもねぇものを見せられたご立腹だ。
 斬も決してお上品な人間じゃねぇのだが、何しろ無茶苦茶過ぎる。
 性的絶頂の中で凄まじい攻撃を繰り広げたのだ。
 冗談にもならねぇ。

 「ジェイたちだよ。マンモスの牙を装着して、ああなったんだ」
 「だからそれを説明しろと言っておる!」
 「俺にも分かんねぇんだよ!」
 
 しょうがねぇだろう!
 分かるわけねぇだろうがぁ!

 「おい、ジェイ、大丈夫か?」

 激怒している斬を放っておいて、俺は突っ立ったままでいるジェイたちに声を掛けた。
 どいつがジェイなのかも分からねぇ。
 牙の根元に名前が書いてあることを思い出したが、確認したくもねぇ。
 ドロドロとした白い粘液が股間に滴っている。
 絶対ぇ触りたくねぇ。

 「あいつら、射精していたようじゃぞ」
 「ああ、双子が牙の中にオナニーシリコンを仕込んだんだ」
 「なんじゃぁ!」
 「うるせぇよ!」

 その時ジェイたちの全身から激しい水蒸気が噴き出た。
 数分後、ジェイたちが元の姿のままで立っていた。

 「ヘイ?」

 もう顔で見分けがつくので、ジェイに声をかけた。
 こいつ、にやけてやがる。

 「タイガー、やったぜ」
 「あ、ああ、そうだな」
 
 多少放心した顔をしているが、意識ははっきりしているようだ。
 股間から大量の精液が零れているので、放心の原因は分かっている。

 「気分はどうだ?(心配してねぇが)」
 「ああ、いい気分だぜ、あんなにイッたのは初めてだ」
 「そうか(バカヤロウ)」
 
 ジェイが顔を歪ませた。

 「あ!」
 「おい、どうした!」
 「キンタマがいてぇ!」
 「……(死ね!)」

 斬がなんか構えたので慌てて止めた。
 俺は輸送用のトラックを呼び、ジェイたちを病院に運んだ。
 マンモスの牙は自分で外させた。
 斬は不貞腐れた顔でそのまま飛んで帰って行った。
 あいつ、また来てくれるかなー。




 ジェイたちを基地内の医療施設で全身を念入りに調べたが、異常は無かった。
 もちろん霊素反応も調べたのだが、妖魔の反応は一切無い。
 蓮花も呼んで一緒にデータを見たが、何も分からなかった。
 ライカンスロープ化での人体変化は、仕組みは分かっている。
 妖魔霊素が瞬時に元素変換と結合返還を行ない、身体がメタモルフォーゼするのだ。
 ジェイたちのあのマンモス人間への変化も同じ仕組みだろうが、ジェイたちの体内に妖魔の霊素は無かった。

 「おい、どんな気分だった?」
 「とにかくよ! ものすっげぇ気持ち良かった!」
 「……」
 「チンコがさ、ニュルニュルニュルニュルでよぉ! ありゃ最高だぜぇ」
 「……」
 「何度も逝っちまった。でもよ、幾らでも出るんだよなぁ。あ、聞いてる?」
 「……(おい、そんな話は聞いてねぇぞ)」

 検査入院の最中に、ジェイたちが俺に頼んで来た。

 「タイガー、お願い」
 「あんだよ?」
 「マンモスの牙、洗っといて」
 「ふざけんなぁ!」
 「だってよ! 精液を落としとかねぇと!」
 「後で自分らでやれ!」
 「たのむよー!」
 「……(やるわけねぇだろうがぁ!)」

 一応、装備部門の連中に相談したが、断られた。
 建前は、特殊過ぎるものなので、手が出せないと言われた。
 まーなー。
 検査入院を終えて、ジェイたちが自ら洗った。
 ガビガビにこびり付いた「モノ」をブラシで落としたら、下のマジックの名前まで消えた奴もいた。
 だが、「正装」になってみると、自分のものが分かるようだった。

 「あ、俺んじゃねぇ!」
 「早く次を試せ!」
 「おう!」

 全員が自分の「モノ」を取り戻した。
 良かったね。





 蓮花と話した。
 二人でジェイたちの戦闘映像を観た。

 「あの触手の攻撃はやっぱ「クロピョン」だよなぁ」
 「そうですね」

 俺は一つの仮説を立てた。
 元々「マンモスの牙隊」が使っているマンモスの牙は、子どもたちが庭に温泉を掘っている途中で見つけたものだ。
 100本以上あったらしい。
 それを双子が冗談半分でジェイたちに与えたのだ。
 俺の家の庭に埋まっていたということは、当然クロピョンが絡んでいる。

 「また双子の悪戯かぁ」
 「そういうことでございますね」

 要は、クロピョンの能力を使えるアイテムということか。
 それも「黒笛」以上に。
 もしかすると、あれはマンモスの牙とは違うものなのかもしれない。
 クロピョンの趣味は分からねぇ。




 後日、御堂に話した。

 「あの「マンモスの牙隊」の「正装」な」
 「うん」
 「ありゃ、防衛で絶対に必要なもんだった」
 「……」

 御堂も「マンモスの牙隊」の今回の活躍は知っている。
 顔を物凄く顰めながら無言だった。

 「な、そういうことだから」
 「……」
 「すまんね」
 「……」

 御堂は「分かった」とは言わなかった。
 ジェイたちには今後も御堂を警戒しろと言っておいた。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

【完結】狡い人

ジュレヌク
恋愛
双子のライラは、言う。 レイラは、狡い。 レイラの功績を盗み、賞を受賞し、母の愛も全て自分のものにしたくせに、事あるごとに、レイラを責める。 双子のライラに狡いと責められ、レイラは、黙る。 口に出して言いたいことは山ほどあるのに、おし黙る。 そこには、人それぞれの『狡さ』があった。 そんな二人の関係が、ある一つの出来事で大きく変わっていく。 恋を知り、大きく羽ばたくレイラと、地に落ちていくライラ。 2人の違いは、一体なんだったのか?

【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。

文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。 父王に一番愛される姫。 ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。 優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。 しかし、彼は居なくなった。 聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。 そして、二年後。 レティシアナは、大国の王の妻となっていた。 ※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。 小説家になろうにも投稿しています。 エールありがとうございます!

【完結】シュゼットのはなし

ここ
恋愛
子猫(獣人)のシュゼットは王子を守るため、かわりに竜の呪いを受けた。 顔に大きな傷ができてしまう。 当然責任をとって妃のひとりになるはずだったのだが‥。

【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

竜帝は番に愛を乞う

浅海 景
恋愛
祖母譲りの容姿で両親から疎まれている男爵令嬢のルー。自分とは対照的に溺愛される妹のメリナは周囲からも可愛がられ、狼族の番として見初められたことからますます我儘に振舞うようになった。そんなメリナの我儘を受け止めつつ使用人のように働き、学校では妹を虐げる意地悪な姉として周囲から虐げられる。無力感と諦めを抱きながら淡々と日々を過ごしていたルーは、ある晩突然現れた男性から番であることを告げられる。しかも彼は獣族のみならず世界の王と呼ばれる竜帝アレクシスだった。誰かに愛されるはずがないと信じ込む男爵令嬢と番と出会い愛を知った竜帝の物語。

芙蓉は後宮で花開く

速見 沙弥
キャラ文芸
下級貴族の親をもつ5人姉弟の長女 蓮花《リェンファ》。 借金返済で苦しむ家計を助けるために後宮へと働きに出る。忙しくも穏やかな暮らしの中、出会ったのは翡翠の色の目をした青年。さらに思いもよらぬ思惑に巻き込まれてゆくーーー カクヨムでも連載しております。

さようなら、初恋

芙月みひろ
恋愛
彼が選んだのは姉だった *表紙写真はガーリードロップ様からお借りしています

後宮なりきり夫婦録

石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」 「はあ……?」 雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。 あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。 空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。 かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。 影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。 サイトより転載になります。

処理中です...