富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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奈々ちゃんの極道な日々 Ⅵ

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 「風花さんはお仕事でいないんです。ああ、奈々はすっかり眠ってますね」
 
 笑いながら中へ案内され、3階の寝室へ奈々様を横たえた。
 体形の割にずっしりと重い方だった。
 筋肉の付が良いのだろう。
 まあ、あれだけ喰って、対物ライフルを軽々と扱うお人だ。
 俺と濡木は下で紅茶をいただいた。
 あの皇紀さんのお宅でこんなことを。
 お手間を掛けさせたことを詫びた。

 「別にいいですよ。僕も奈々に会えて嬉しいし」
 「すいません」

 俺は一応、皇紀さんに奈々さんを預かった顛末を説明した。

 「ああ、「五頭会」ね、僕も聞いています。災難でしたね」
 「いいえ、平敷の奴がバカをしやがって。まさか道間家の方に失礼を働くとは」
 「アハハハハハハ!」

 皇紀さんは優しいお方なので、俺は平敷のことを聞いてみた。
 俺がこんなことはしているが、「五頭会」に対して道間家から処分の要請は無かったのだ。
 本来であれば何らかの要求があってもおかしくはない。
 10億は包んだが、他には奈々様を連れ出すこと以外は何も言われていない。
 道間家に関わるどなたかの手が差し伸べられたとしか考えられない。
 
 「あの、平敷の処分に口添えして下さったのは皇紀さんですか?」
 「まあ、ちょっとしたトラブルでしたからね」
 「ちょっとした……」

 皇紀さんが爆笑された。

 「奈々は前からああなんですよ。タカさんの影響で、幼い頃から武器の扱いに興味を持ってて」
 「あの、今も幼いんですが」
 
 また皇紀さんが笑った。

 「まあね。でもタカさんの子だから、もうソルジャーとしても十分にやれる実力を持ってます」
 「はい、自分も拝見しました。重いバレットM82を軽々と構えて。携帯ミサイルの「スティンガー」も9門も抱えて突っ込まれたようで」
 「アハハハハハハ!」

 いや、笑い事じゃないですが…… 
 でも、皇紀さんがお話し下さった。

 「《デモノイド》って知ってますか?」
 「はい。バイオノイドの発展形で、恐ろしく戦闘力が高い奴らと」
 「そうですよ。前に道間家が《デモノイド》とスペツナズの精鋭に襲われたことがあるんです。「道間城」の建設中で、生憎護衛妖魔も動けない状態で」
 「そんなことが」
 「天狼は6歳。奈々はまだ4歳でした。でも奈々の機転でクレイモア地雷やグレネードで《デモノイド》を撃破したんです」
 「え、4歳!」
 「そうです。僕も驚きました。通常の兵器で《デモノイド》を撃破なんて、多分他にはないでしょう。天狼も道間家の技で他の《デモノイド》を撃破しましたし、お姉ちゃんが最後は突入して助かったんですけどね。でも奈々の攻撃が無ければ天狼も奈々も夜羽も死んでいました」
 「そんなことがあったんですか」
 「奈々は凄いですよ。あれからタカさんも面白がって奈々に武器の扱いをどんどん教えてましたし。ああ、自衛隊の特殊戦群やイギリスの特殊部隊のSASの教官も呼んでました。他にもいろいろな専門家、ああ、聖さんにも頼んでましたしね。多分、僕たちの中では奈々が一番銃火器の扱いは上手いです」
 「それはもう、凄まじいお方で」

 皇紀さんはしばらく俺たちに付き合って、いろいろなお話をして下さった。

 「え、「宝来屋」に行ったんですか!」
 「はい、奈々様の御希望で」
 「そうかぁ、ああ、また行きたくなったなぁ」
 
 俺が奈々様が召し上がった量を話すと、また皇紀さんが笑った。

 「天狼は普通なんですけどね。奈々は僕たちに似てまして」
 「そうなんですか。お見事な喰いっぷりでした」
 「ワハハハハハハ!」

 楽しく話していると、3時になり、奈々様が起きて来られた。
 デュールゲリエの久流々さんに手を引かれている。

 「皇紀兄様!」
 「やあ、奈々、起きたんだね」
 「申し訳ございません! ご挨拶も出来ず」
 「いいよ。奈々は相変わらずカワイイね」
 「はい!」

 奈々様が皇紀さんに甘えて抱き着いた。
 本当に奈々様は皇紀さんが大好きのようだ。
 
 「折角だからお茶を飲んで行きなよ。子どもたちも呼ぶからさ」
 「よろしいのですか!」
 「もちろんだ。ちょっと待っててね」

 皇紀さんが立ち上がり、お子さんたちを連れて来られた。
 そして尖塔の豪華なお部屋へ案内された。

 「奈々はここが大好きだよね?」
 「はい!」

 本当に美しい部屋だった。
 八角形の壁で、ステンドグラスが美しい色とりどりの光を投げかけている。
 皇紀さんと風花さんのお子さん、金華様、銀華様、聖矢様、日葵様がいらっしゃった。
 金華様と銀華様は奈々様と同い年で特別に仲が良いようだ。
 並んで座って楽しそうに話している。
 猫耳のメイドさんが紅茶とモンブランを持って来た。
 俺たちは部外者だったのだが、皇紀さんが会話の中に入れてくれた。
 そういう優しいお方だ。
 俺などのヤクザなども色目で見てはいない。
 石神さんの下、ということで、平等に扱って下さる。

 「奈々、あんまり神さんたちを困らせないでね」
 「うん!」
 
 いや、もう既に……
 お邪魔したことを詫び、皇紀さんの家を出た。

 「奈々様、次は行きたい所はございますか?」
 「セツの見舞いに行きたい」
 「え!」

 まさか、そんな……
 どうして……

 「今、入院してるって聞いたの。だからね?」
 「はい、喜んで!」

 俺が最も行きたい場所だった。
 奈々様を案内する仕事が無ければ、行っていた場所だ。
 まさかそこへ奈々様が行きたいとおっしゃるとは。
 なんというお方だ。
 この方は自分が楽しみたいためではなく、姐さんに会いたいと仰っている。
 口ぶりでは姐さんのことは御存知のようだったが、そんなことまで気にかけて下さるとは。
 俺はすぐに病院へご案内した。
 濡木が姐さんに電話した。
 姐さんも奈々様が来るのであれば用意も必要だろう。



 奈々様はまたリュックサックを大事そうに前に抱えてニコニコされていた。
 時々俺の顔を見上げて、一層微笑まれる。
 天使のようなお方だと思った。
 ああ、やっぱり石神さんのお血筋だ。
 まあ、暴れっぷりもだけど。
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