3,060 / 3,202
《ラヴァーズ》 Ⅷ
しおりを挟む
♪ はあぁぁぁ~ 今日もギョロちゃん 大きなオメメでぇ(ギョロギョロギョロギョロ) たのもし監視ぃ 敵を見つけりゃ即座に(ドトンガトン ドドンガトン) ギョロちゃん音頭だギョロッギョロ…… ♪
亜紀の城で一緒に『ギョロちゃん音頭』を踊っていたら、《超光速ギンギン通信》が来た。
《こんにちギンギン》
「あー、ギンちゃんか、どした?」
《また羽入さんたちが大変です!》
あー、前にもあったかー。
あの時は洞窟の中で妖魔に埋まってたなー。
「またかー、今度はなに?」
《強い敵が来て、《流星剣》の限定解除が起きそうなんです!》
知ってる。
あれを解放して、タカトー死んだもんなー。
「あー、あれかー。死んじゃうんだよね?」
《そうなんですよ! ロボさん、助けてあげてください!》
「分かった。あいつら、いとしのタカトラのお気に入りだしなー。じゃあ、ちょっと行って来るわー」
《オナシャス!》
「うん」
《では、ばいばいギンギン》
「ばいばいギンギン」
亜紀と一緒に『ギョロちゃん音頭』を踊るのは楽しいのだが、しょうがない。
「にゃー(亜紀、ちょっとゴメン)」
亜紀の足を叩いた。
「あれ、ロボ、飽きちゃった?」
「にゃー(違うけどちょっと行くね)」
「じゃあ、『ヒモダンス』にする?」
「にゃう(それは最高だけどさ)」
「え、なに? あ、ロボ!」
ふよふよ……スン
「あーん、ロボぉーーー!」
亜紀の声が遠くで聞こえた。
また来るね。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
やはり《ガイア》を喪った俺たちは劣勢だった。
幸いにも青い《地獄の悪魔》は他の戦線に移動していた。
紅の《ガイア》を破壊したことで俺たちに興味を喪ったか。
マクレガー大隊も半数が戦線から離脱している。
まだ救援は来ない。
どうやら大規模な襲撃が各地で展開しているようだ。
だからここへ増援を回せないでいることが分っていた。
俺たちしかいないのだ。
特に青い《地獄の悪魔》が行った先ではすぐに戦線が崩壊していく。
しかし即座に殲滅するのではなく、青い《地獄の悪魔》は何かを試すかのように、幾つかの攻撃を仕掛けては移動する。
何がしたいのかよく分からない。
やっと「トラキリー」が到着し、負傷者を運んで行く。
再び青い《地獄の悪魔》が俺たちの前に戻って来た。
だが俺たちは膨大な妖魔を相手に苦戦しているところだった。
青い《地獄の悪魔》はそんな俺たちを眺めるだけで、何も仕掛けては来ない。
「紅、大丈夫か!」
「羽入!」
紅の「バハムート」は破損し、1体のデュールゲリエだけがまだ維持しているが、他の2体の装備も破壊されている。
紅は周囲に「カサンドラ」を並べて応戦しているが、どれほどももたないだろう。
「羽入!」
「おう! 紅!」
互いの名前を呼んだ。
俺たちも終わる。
最期まで紅と一緒にいられるだけで満足だ。
「じゃあ、最後にやるぞ!」
「ああ、全力でな!」
紅が俺の後ろに回って背中を重ねた。
俺は集中して《流星剣》を握り締めた。
真言を唱える。
何かが流れ込んで来た。
《流星剣》から膨大な奔流が俺の身体を通って行く。
離れて見ていた青い《地獄の悪魔》がゆっくりと迫って来るのを感じた。
「なんだこれは!」
「羽入! 霊素の量が尋常じゃない! おい、何が起こっている!」
紅が心配そうに俺の背中で振り返ったのを感じた。
「羽入、白く光っているぞ!」
「!」
俺には分からない。
だがこれまでにない、俺の身体の中に膨大な何かが流れ込んで来るばかりだ。
それはどこまでも終わらない。
最期の意識で俺は「煉獄」を周囲に放った。
溢れかえっていた妖魔が消えた。
次いで青い《地獄の悪魔》に「連山」を放った。
そこで意識が途切れた。
何か夢を見ていたが、よくは思い出せなかった。
俺は知らない人物に自分が重なっているような感じがしていた。
「にゃー」
顔を舐められている感触で目を覚ました。
ベッドに寝かされている。
「え、ロボさん?」
「にゃ」
なんでロボさんがここに?
それよりも戦闘はどうなった!
「羽入!」
俺の意識がはっきりすると同時に紅に抱き締められた。
「紅、戦闘はどうなった!」
「羽入!」
「おい!」
紅は泣きじゃくり、俺を抱き締めていた。
ロボさんはベッドから降りてどこかへ行った。
何となく頭が痛いが、身体が無事なのは自分で確認出来た。
紅は泣いたまま俺を抱いている。
「おい、説明してくれよ」
紅は泣き止まず、しばらくこうしているしかないか。
まあ、全然分からないが、この状態であるのならば、戦闘は終了しているのだと思った。
少しして声を掛けられた。
「羽入、起きたか」
「石神さん!」
石神さんだった。
石神さんまで、どうしてここにいらっしゃるのか。
「石神さん、戦闘はどうなったんですか!」
「ああ、終わったよ、お前の一撃でな」
「なんですって!」
全然分からない。
紅に聞きたいが、今は無理そうだ。
「《流星剣》の力なんだろうな。お前の一撃で全ての妖魔が駆逐された。ああ、あのバカ強ぇ青い《地獄の悪魔》もな。ありゃ、すげぇな」
「そうなんですか! 俺は全然覚えてないんですけど!」
「ワハハハハハハ!」
石神さんは笑って俺のベッドの脇に座り、紅の頭を撫でた。
石神さんのお陰で紅が少し落ち着いて来る。
紅は常に石神さんの前では凛々しく振る舞っている。
そんな紅がこんなにも乱れているのは、相当なことなのだと思った。
一体何があったと言うのか。
「俺も映像で見ただけだ。お前の身体が真っ白に輝いて、お前は「煉獄」と「連山」を撃った。それだけだ」
「え、どういうこってすか?」
「お前がやったんだよ! 俺に分かるか!」
「はぁ」
さっぱり分からねぇ。
だけど、とにかく俺たちは勝ったのか。
「「霊素観測レーダー」とかな。いろいろ解析したんだが、《流星剣》に秘められた力としか分からん。、剣から膨大なエネルギーが湧き出していたことだけだ。その大半はまだ解析出来てねぇ。どうもやはりとんでもない神剣らしいな」
「そうですか」
「その膨大なエネルギーが貫通して、お前は心停止した」
「え!」
「お前は死んだんだよ。ロボが助けた」
「え、ロボさん!」
また全然分からねぇ。
「体調はどうだよ? まあロボがやったんだから大丈夫だろうけどな」
「はい、問題ないようです。頭痛がちょっとだけ」
「ああ、刺されたからなぁ。すぐに治まるよ」
「そうなんですか?」
刺されたってなんだろう。
とにかく、また俺たちは生き残ったわけだ。
一体何度、紅と終わる覚悟をしたことか。
まあ、今回は俺は本当に死んだらしい。
ロボさんが助けてくれたわけだが、紅の喜びは分かる。
紅、愛しているぞ。
亜紀の城で一緒に『ギョロちゃん音頭』を踊っていたら、《超光速ギンギン通信》が来た。
《こんにちギンギン》
「あー、ギンちゃんか、どした?」
《また羽入さんたちが大変です!》
あー、前にもあったかー。
あの時は洞窟の中で妖魔に埋まってたなー。
「またかー、今度はなに?」
《強い敵が来て、《流星剣》の限定解除が起きそうなんです!》
知ってる。
あれを解放して、タカトー死んだもんなー。
「あー、あれかー。死んじゃうんだよね?」
《そうなんですよ! ロボさん、助けてあげてください!》
「分かった。あいつら、いとしのタカトラのお気に入りだしなー。じゃあ、ちょっと行って来るわー」
《オナシャス!》
「うん」
《では、ばいばいギンギン》
「ばいばいギンギン」
亜紀と一緒に『ギョロちゃん音頭』を踊るのは楽しいのだが、しょうがない。
「にゃー(亜紀、ちょっとゴメン)」
亜紀の足を叩いた。
「あれ、ロボ、飽きちゃった?」
「にゃー(違うけどちょっと行くね)」
「じゃあ、『ヒモダンス』にする?」
「にゃう(それは最高だけどさ)」
「え、なに? あ、ロボ!」
ふよふよ……スン
「あーん、ロボぉーーー!」
亜紀の声が遠くで聞こえた。
また来るね。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
やはり《ガイア》を喪った俺たちは劣勢だった。
幸いにも青い《地獄の悪魔》は他の戦線に移動していた。
紅の《ガイア》を破壊したことで俺たちに興味を喪ったか。
マクレガー大隊も半数が戦線から離脱している。
まだ救援は来ない。
どうやら大規模な襲撃が各地で展開しているようだ。
だからここへ増援を回せないでいることが分っていた。
俺たちしかいないのだ。
特に青い《地獄の悪魔》が行った先ではすぐに戦線が崩壊していく。
しかし即座に殲滅するのではなく、青い《地獄の悪魔》は何かを試すかのように、幾つかの攻撃を仕掛けては移動する。
何がしたいのかよく分からない。
やっと「トラキリー」が到着し、負傷者を運んで行く。
再び青い《地獄の悪魔》が俺たちの前に戻って来た。
だが俺たちは膨大な妖魔を相手に苦戦しているところだった。
青い《地獄の悪魔》はそんな俺たちを眺めるだけで、何も仕掛けては来ない。
「紅、大丈夫か!」
「羽入!」
紅の「バハムート」は破損し、1体のデュールゲリエだけがまだ維持しているが、他の2体の装備も破壊されている。
紅は周囲に「カサンドラ」を並べて応戦しているが、どれほどももたないだろう。
「羽入!」
「おう! 紅!」
互いの名前を呼んだ。
俺たちも終わる。
最期まで紅と一緒にいられるだけで満足だ。
「じゃあ、最後にやるぞ!」
「ああ、全力でな!」
紅が俺の後ろに回って背中を重ねた。
俺は集中して《流星剣》を握り締めた。
真言を唱える。
何かが流れ込んで来た。
《流星剣》から膨大な奔流が俺の身体を通って行く。
離れて見ていた青い《地獄の悪魔》がゆっくりと迫って来るのを感じた。
「なんだこれは!」
「羽入! 霊素の量が尋常じゃない! おい、何が起こっている!」
紅が心配そうに俺の背中で振り返ったのを感じた。
「羽入、白く光っているぞ!」
「!」
俺には分からない。
だがこれまでにない、俺の身体の中に膨大な何かが流れ込んで来るばかりだ。
それはどこまでも終わらない。
最期の意識で俺は「煉獄」を周囲に放った。
溢れかえっていた妖魔が消えた。
次いで青い《地獄の悪魔》に「連山」を放った。
そこで意識が途切れた。
何か夢を見ていたが、よくは思い出せなかった。
俺は知らない人物に自分が重なっているような感じがしていた。
「にゃー」
顔を舐められている感触で目を覚ました。
ベッドに寝かされている。
「え、ロボさん?」
「にゃ」
なんでロボさんがここに?
それよりも戦闘はどうなった!
「羽入!」
俺の意識がはっきりすると同時に紅に抱き締められた。
「紅、戦闘はどうなった!」
「羽入!」
「おい!」
紅は泣きじゃくり、俺を抱き締めていた。
ロボさんはベッドから降りてどこかへ行った。
何となく頭が痛いが、身体が無事なのは自分で確認出来た。
紅は泣いたまま俺を抱いている。
「おい、説明してくれよ」
紅は泣き止まず、しばらくこうしているしかないか。
まあ、全然分からないが、この状態であるのならば、戦闘は終了しているのだと思った。
少しして声を掛けられた。
「羽入、起きたか」
「石神さん!」
石神さんだった。
石神さんまで、どうしてここにいらっしゃるのか。
「石神さん、戦闘はどうなったんですか!」
「ああ、終わったよ、お前の一撃でな」
「なんですって!」
全然分からない。
紅に聞きたいが、今は無理そうだ。
「《流星剣》の力なんだろうな。お前の一撃で全ての妖魔が駆逐された。ああ、あのバカ強ぇ青い《地獄の悪魔》もな。ありゃ、すげぇな」
「そうなんですか! 俺は全然覚えてないんですけど!」
「ワハハハハハハ!」
石神さんは笑って俺のベッドの脇に座り、紅の頭を撫でた。
石神さんのお陰で紅が少し落ち着いて来る。
紅は常に石神さんの前では凛々しく振る舞っている。
そんな紅がこんなにも乱れているのは、相当なことなのだと思った。
一体何があったと言うのか。
「俺も映像で見ただけだ。お前の身体が真っ白に輝いて、お前は「煉獄」と「連山」を撃った。それだけだ」
「え、どういうこってすか?」
「お前がやったんだよ! 俺に分かるか!」
「はぁ」
さっぱり分からねぇ。
だけど、とにかく俺たちは勝ったのか。
「「霊素観測レーダー」とかな。いろいろ解析したんだが、《流星剣》に秘められた力としか分からん。、剣から膨大なエネルギーが湧き出していたことだけだ。その大半はまだ解析出来てねぇ。どうもやはりとんでもない神剣らしいな」
「そうですか」
「その膨大なエネルギーが貫通して、お前は心停止した」
「え!」
「お前は死んだんだよ。ロボが助けた」
「え、ロボさん!」
また全然分からねぇ。
「体調はどうだよ? まあロボがやったんだから大丈夫だろうけどな」
「はい、問題ないようです。頭痛がちょっとだけ」
「ああ、刺されたからなぁ。すぐに治まるよ」
「そうなんですか?」
刺されたってなんだろう。
とにかく、また俺たちは生き残ったわけだ。
一体何度、紅と終わる覚悟をしたことか。
まあ、今回は俺は本当に死んだらしい。
ロボさんが助けてくれたわけだが、紅の喜びは分かる。
紅、愛しているぞ。
2
あなたにおすすめの小説
烏の王と宵の花嫁
水川サキ
キャラ文芸
吸血鬼の末裔として生まれた華族の娘、月夜は家族から虐げられ孤独に生きていた。
唯一の慰めは、年に一度届く〈からす〉からの手紙。
その送り主は太陽の化身と称される上級華族、縁樹だった。
ある日、姉の縁談相手を誤って傷つけた月夜は、父に遊郭へ売られそうになり屋敷を脱出するが、陽の下で倒れてしまう。
死を覚悟した瞬間〈からす〉の正体である縁樹が現れ、互いの思惑から契約結婚を結ぶことになる。
※初出2024年7月
芙蓉は後宮で花開く
速見 沙弥
キャラ文芸
下級貴族の親をもつ5人姉弟の長女 蓮花《リェンファ》。
借金返済で苦しむ家計を助けるために後宮へと働きに出る。忙しくも穏やかな暮らしの中、出会ったのは翡翠の色の目をした青年。さらに思いもよらぬ思惑に巻き込まれてゆくーーー
カクヨムでも連載しております。
【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。
文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。
父王に一番愛される姫。
ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。
優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。
しかし、彼は居なくなった。
聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。
そして、二年後。
レティシアナは、大国の王の妻となっていた。
※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。
小説家になろうにも投稿しています。
エールありがとうございます!
後宮なりきり夫婦録
石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」
「はあ……?」
雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。
あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。
空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。
かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。
影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。
サイトより転載になります。
【完結】狡い人
ジュレヌク
恋愛
双子のライラは、言う。
レイラは、狡い。
レイラの功績を盗み、賞を受賞し、母の愛も全て自分のものにしたくせに、事あるごとに、レイラを責める。
双子のライラに狡いと責められ、レイラは、黙る。
口に出して言いたいことは山ほどあるのに、おし黙る。
そこには、人それぞれの『狡さ』があった。
そんな二人の関係が、ある一つの出来事で大きく変わっていく。
恋を知り、大きく羽ばたくレイラと、地に落ちていくライラ。
2人の違いは、一体なんだったのか?
同窓会に行ったら、知らない人がとなりに座っていました
菱沼あゆ
キャラ文芸
「同窓会っていうか、クラス会なのに、知らない人が隣にいる……」
クラス会に参加しためぐるは、隣に座ったイケメンにまったく覚えがなく、動揺していた。
だが、みんなは彼と楽しそうに話している。
いや、この人、誰なんですか――っ!?
スランプ中の天才棋士VS元天才パティシエール。
「へえー、同窓会で再会したのがはじまりなの?」
「いや、そこで、初めて出会ったんですよ」
「同窓会なのに……?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる